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第1308回 前走の人気と着順から皐月賞を分析する

2019/4/11(木)

先週行われた桜花賞では、朝日杯FS以来の休み明けだったグランアレグリアが優勝。これで昨年のアーモンドアイ(シンザン記念以来)に続き、前走「桜花賞トライアル以外」の組が2連勝となった。一方、今週行われる皐月賞では、2014年から17年に「皐月賞トライアル以外」(以下「別路線」とする)の組が4連勝を飾っていた。しかし昨年は、トライアル組のワンツー決着。これを機に流れが変わっても不思議はない。どちらを上位に取るべきか、近年の傾向からは判断が難しいのが今年の皐月賞だ。そこで今回は、前走レースを問わない「前走時の人気と着順」に注目してこのレースを分析したい。データの分析には、JRA-VAN DataLab.TARGET frontier JV馬天楼 for データde出〜たを利用した。

■表1 前走レース別成績(1)

前走レース名 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収
スプリングS 4-1-2-37/44 9.1% 11.4% 15.9% 79% 40%
共同通信杯 4-0-1-7/12 33.3% 33.3% 41.7% 397% 139%
弥生賞 1-5-3-32/41 2.4% 14.6% 22.0% 5% 89%
毎日杯 1-0-0-10/11 9.1% 9.1% 9.1% 203% 59%
若葉S 0-3-1-20/24 0.0% 12.5% 16.7% 0% 99%
アーリントンC 0-1-0-2/3 0.0% 33.3% 33.3% 0% 106%
京成杯 0-0-2-3/5 0.0% 0.0% 40.0% 0% 250%
きさらぎ賞 0-0-1-8/9 0.0% 0.0% 11.1% 0% 16%
すみれS 0-0-0-9/9 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
その他のレース 0-0-0-17/17 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%

まず表1は、皐月賞の前走レース別成績である。出走数、好走馬数ともに多いのが、スプリングS、弥生賞、そして若葉Sという皐月賞トライアル組。中でもスプリングS組は最多の4勝を挙げているが、これに並ぶのが別路線・共同通信杯組だ。

■表2 前走レース別成績(2)

前走 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収
2009〜13年 皐月賞トライアル 4-5-3-46/58 6.9% 15.5% 20.7% 39% 73%
トライアル以外 1-0-2-29/32 3.1% 3.1% 9.4% 22% 46%
2014〜18年 皐月賞トライアル 1-4-3-43/51 2.0% 9.8% 15.7% 28% 70%
トライアル以外 4-1-2-27/34 11.8% 14.7% 20.6% 185% 75%

2018/4/15 中山11R 皐月賞(G1)1着 7番エポカドーロ

前走を「皐月賞トライアル」と「トライアル以外」に分け、さらに5年ごとに区切ってみたのが表2である。冒頭でも触れたように、近5年では別路線組が4勝を挙げ、好走確率でも優勢だった。ただ、3着以内の好走馬数ではトライアル組8頭に対し、別路線組は7頭。そして直近の昨年は、トライアル組のワンツーで馬連万馬券決着になったことも考えると、今年、別路線組ばかりで馬券をかためてしまうのは少々危険な印象もある上、別路線組には人気馬が多く配当妙味にも欠ける。

■表3 前走着順、前走人気別成績

前走 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収
前走1着 8-5-4-52/69 11.6% 18.8% 24.6% 128% 73%
前走2着 2-3-2-26/33 6.1% 15.2% 21.2% 57% 96%
前走3着 0-0-2-21/23 0.0% 0.0% 8.7% 0% 64%
前走4着 0-2-0-8/10 0.0% 20.0% 20.0% 0% 73%
前走5着 0-0-0-6/6 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
前走6〜9着 0-0-2-21/23 0.0% 0.0% 8.7% 0% 61%
前走10着〜 0-0-0-11/11 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
前走1人気 6-7-6-23/42 14.3% 31.0% 45.2% 77% 123%
前走2人気 2-1-2-24/29 6.9% 10.3% 17.2% 101% 70%
前走3人気 1-0-0-20/21 4.8% 4.8% 4.8% 69% 20%
前走4人気 0-1-0-17/18 0.0% 5.6% 5.6% 0% 81%
前走5人気 0-1-2-17/20 0.0% 5.0% 15.0% 0% 110%
前走6〜9人 1-0-0-36/37 2.7% 2.7% 2.7% 83% 14%
前走10人〜 0-0-0-8/8 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%

「トライアル組」か「別路線組」かという分類以上に、はっきりと成績に差がつくのは、前走時の人気と着順別の成績だ。表3にあるように、過去10年の優勝馬すべて、連対馬では20頭中18頭が前走1〜2着馬。そして連対馬20頭中16頭は前走1〜2番人気馬から出ており、特に前走1番人気馬の複勝率は45.2%と非常に高い。
なお、優勝馬10頭のうち、馬券圏外に敗退した経験があったオルフェーヴル(京王杯2歳S10着)とロゴタイプ(函館2歳S、札幌2歳Sともに4着)、そしてアルアイン(シンザン記念6着)は、すべて前走で1着。前走2着から優勝したドゥラメンテとエポカドーロは、ともに複勝率100%を維持して本競走に出走していた。

■表4 前走人気+前走着順別成績

前走人気 前走着順 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収
1〜2番人気 1〜2着 8-7-5-33/53 15.1% 28.3% 37.7% 117% 103%
3着以下 0-1-3-14/18 0.0% 5.6% 22.2% 0% 95%
3番人気以下 1〜2着 2-1-1-45/49 4.1% 6.1% 8.2% 92% 55%
3着以下 0-1-1-53/55 0.0% 1.8% 3.6% 0% 34%

前走時の人気と着順の組み合わせで見ると、「1〜2番人気に推されて連対」を果たしていた馬が【8.7.5.33】で勝率15.1%、複勝率37.7%を記録し、他に圧倒的な差をつけている。この組の3着以内好走馬20頭はすべて、本競走での単勝オッズは40倍以下。単勝40倍を超えた馬を除けば【8.7.5.23】勝率18.6%、複勝率46.5%、そして単複の回収率は144%、128%と、さらに信頼性は高まる。

■表5 前走1〜2番人気で連対+皐月賞の単勝オッズ40倍以下の馬の成績

条件 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収 参考:過去10年全馬
前走距離 1600m 0-1-0-1/2 0.0% 50.0% 50.0% 0% 160% 0-1-0-7/8
1800m 7-1-2-9/19 36.8% 42.1% 52.6% 314% 129% 9-1-4-67/81
2000m 1-5-3-12/21 4.8% 28.6% 42.9% 10% 130% 1-8-6-56/71
2200m 0-0-0-1/1 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0% 0-0-0-13/13
間隔 中2週 1-0-0-0/1 100.0% 100.0% 100.0% 2240% 650% 1-0-0-12/13
中3週 3-3-2-8/16 18.8% 37.5% 50.0% 128% 123% 4-4-3-58/69
中4〜8週 4-4-0-11/19 21.1% 42.1% 42.1% 100% 77% 5-6-3-54/68
中9週〜 0-0-3-4/7 0.0% 0.0% 42.9% 0% 200% 0-0-4-16/20

その「前走1〜2番人気の連対馬」かつ「皐月賞の単勝オッズ40倍以下」の馬ついて、さらに振り分けるデータを探ると、前走の距離とレース間隔が挙げられる。前走で1800m戦に出走していた馬は7勝、勝率36.8%を記録するのに対し、2000m戦出走馬は1勝で勝率4.8%止まり。連対率や複勝率では差が詰まるものの、1着候補には1800m戦出走馬を据えたい。

そして前走からのレース間隔では、中9週以上開いていた馬が【0.0.3.4】と連対なし。皐月賞出走全馬でみても、中9週以上は【0.0.4.16】に終わっている。「別路線組」が4連勝した2014〜17年の間でも、16年には1番人気・サトノダイヤモンドが中9週で3着に敗退。翌17年には、順調さを欠いていたとはいえ、後のダービー馬・レイデオロがホープフルS以来の休養明けで5着に敗れた。ここ2年の桜花賞の結果を受ければ、このデータは今後覆される可能性もありそうだが、一方で牝馬と牡馬では違うという考え方もできる。いずれにせよ、現時点の「皐月賞過去10年」では、連対まで届いていないのが中9週以上の馬だ。

■表6 前走1〜2番人気で3着以下→皐月賞で3着以内に好走

馬名 人気 着順 前走 人気 着順 年明け 主な勝ち鞍
2009 セイウンワンダー 4 3 弥生賞 2 8 1戦 朝日杯FS、新潟2歳S
2011 ダノンバラード 8 3 共同通信杯 1 9 1戦 ラジオNIKKEI杯2歳S
2013 エピファネイア 2 2 弥生賞 1 4 1戦 ラジオNIKKEI杯2歳S
コディーノ 3 3 弥生賞 2 3 1戦 札幌2歳S、東京スポーツ杯2歳S

表5に該当しなかった皐月賞3着以内馬も見ておこう。まず表6は、前走で1〜2番人気に推されながら3着以下に敗れていた馬である。4頭すべてに共通するのは、2歳時に重賞勝ちがあり、前走が年明け初戦だったことだ。賞金面で皐月賞出走をほぼ確定させており、前走では人気を裏切ったものの、本番ではしっかり馬券に絡んできたというパターンだ。

■表7 前走3番人気以下で連対→皐月賞で3着以内に好走

馬名 人気 着順 前走 人気 着順 キャリア
2009 トライアンフマーチ 8 2 若葉S 4 2 4戦
2015 キタサンブラック 4 3 スプリングS 5 1 3戦
2016 ディーマジェスティ 8 1 共同通信杯 6 1 ※4戦
2018 エポカドーロ 7 1 スプリングS 3 2 4戦

※ディーマジェスティは出走を取り消したホープフルSを除く

続いて表7は、前走3番人気以下で連対し、皐月賞で好走した馬。表5以外から優勝馬を出しているのはこの組だけで、過去3年で2勝を挙げている。この4頭に共通するのは、キャリア3〜4戦だったこと。また、表には記していないが、4頭すべて前走がオープン・重賞初出走だった。キャリアが浅く、前走の段階では秘めた実力に人気や実績が追いついていなかった形だ。なお皐月賞全体では、キャリア5戦以上の馬も2010年や14年に1〜3着を独占するなど、3着以内馬の半数近くを占めている。

■表8 前走3番人気以下で3着以下→皐月賞で3着以内に好走

馬名 人気 着順 前走 人気 着順 皐月賞前までの着順推移
2017 ダンビュライト 12 3 弥生賞 5 3 1→2→13→3→3着
2018 サンリヴァル 9 2 5 4 1→1→4→4着

最後に表8は、前走3番人気以下かつ3着以下に敗れながら、皐月賞で馬券に絡んだ2頭。こちらは近2年連続で好走しており、侮れない存在だ。この2頭は、ともに前走が弥生賞5番人気で3〜4着。該当馬が少ないため、少し広めに「弥生賞3〜5番人気で掲示板を確保」くらいに考えればいいだろうか。また、2頭とも新馬勝ちを収め、2戦目は重賞・オープン特別で2、1着。その後は重賞で連対までは届かずとも、ダンビュライトの朝日杯FS(13着)以外は大きく崩れていなかった。

【結論】

2018/12/16 阪神11R 朝日杯FS(G1) 1着 6番アドマイヤマーズ

表3〜4にあったように、皐月賞は「前走1〜2番人気で1〜2着」だった馬が好成績を残している。今年の登録馬では6頭が該当するが、このうち、前走で芝2200mのすみれSに出走していたサトノルークスとアドマイヤジャスタは、表1や表5から推奨しづらい。残る4頭は、アドマイヤマーズ、ヴェロックス、サートゥルナーリア、そしてファンタジスト。いずれも表4本文で触れた「単勝オッズ40倍以下」には該当しそうで、有力な馬券候補になる。
ただ、1着の候補となると「前走1800m戦」かつ「中8週以内」(表5)。ヴェロックスは前走が2000m戦、サートゥルナーリアはそれに加えて休養明けという点で、やや評価が下がる。また、優勝馬10頭はすべて「前走1着」または「複勝率100%」で駒を進めてきており(表3本文)、ファンタジスト(2走前・朝日杯FS4着、前走・スプリングS2着)はこれを満たしていない。よって、4頭の中で優勝にもっとも近いのはアドマイヤマーズだ。

ほかに優勝馬を輩出しているのは、表7の「前走3番人気以下で連対」した馬。今年の登録馬のうち、表7の好走条件「キャリア3〜4戦」「前走がオープン・重賞初出走」に該当するのはダノンキングリーだ。前走の共同通信杯では、本馬の斤量が1キロ軽かったとはいえアドマイヤマーズに1馬身1/4の差をつけて優勝。同斤量になっても、連勝を伸ばす可能性は十分にある。

その他の組は2〜3着候補。表6の「前走1〜2番人気で3着以下」からは、2歳重賞2勝で弥生賞(4着)が年明け初戦だったニシノデイジー。そして表8「前走3番人気以下で3着以下」の組では、デビュー勝ちを飾り、続く京都2歳Sで2着に好走したブレイキングドーンが、前走・弥生賞を4番人気で3着にまとめて好走条件をクリアする。ここ3年は馬連6000円以上、そして3連単は一昨年が106万馬券、昨年が37万馬券と波乱が続いているだけに、穴を狙うならこの2頭や、前記各馬の中では人気を落としそうなファンタジストを絡めた馬券がおもしろそうだ。

ライタープロフィール

浅田知広(あさだ ともひろ)

1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。


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