データde出〜た
第1298回 豪華なメンバーが揃って楽しみな金鯱賞を展望する
2019/3/7(木)
2017年から3月開催となり、G1に昇格した大阪杯の前哨戦となった金鯱賞。17年のヤマカツエース、18年のスワーヴリチャードと過去2年の勝ち馬がいずれも本番で好走し、その役割を見事に果たしている。日曜に開催が移った今年は、ますます豪華なメンバーがスタンバイ。注目の一戦に向けて、過去2年の1〜3着馬の共通点から有力と思われる馬を探してみたい。データの集計・分析はJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
■表1 金鯱賞1〜3着馬一覧
年 | 着順 | 人気 | 馬名 | 性齢 | 4角通過 | 前走 | |
レース名 | 着順 | ||||||
17年 | 1 | 1 | ヤマカツエース | 牡5 | 6番手 | 有馬記念・G1 | 4 |
2 | 7 | ロードヴァンドール | 牡4 | 1番手 | 小倉大賞典・G3 | 4 | |
3 | 13 | スズカデヴィアス | 牡6 | 10番手 | 白富士S・OP特別 | 1 | |
18年 | 1 | 1 | スワーヴリチャード | 牡4 | 2番手 | 有馬記念・G1 | 4 |
2 | 8 | サトノノブレス | 牡8 | 1番手 | 凱旋門賞・G1 | 16 | |
3 | 2 | サトノダイヤモンド | 牡5 | 6番手 | 凱旋門賞・G1 | 15 |
表1は、3月開催になってからの金鯱賞で1〜3着に入った馬の一覧。人気から見ていくと、過去2年はいずれも1番人気が勝利も、2着には7、8番人気と2年連続で穴馬が入り、17年は3着にも13番人気と、決して堅いレースとはいえない。
4角通過順にも特徴が出ており、過去2年とも4角1番手だったダークホースが2着に入っている。17年のロードヴァンドールは近走でも逃げていたが、明確な逃げ馬が不在だった18年はサトノノブレスが粘り込み。同馬は14年の日経新春杯を逃げて勝った実績があり、メンバーを見渡してこれといった逃げ馬がいないようなら、過去の戦績までしっかりとチェックしたほうがよさそうだ。
■表2 芝2000m実績
年 | 着順 | 馬名 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 主な戦績 |
17年 | 1 | ヤマカツエース | 3- 0- 1- 4/ 8 | 37.5% | 37.5% | 50.0% | 16年金鯱賞など重賞3勝 |
2 | ロードヴァンドール | 3- 2- 2- 1/ 8 | 37.5% | 62.5% | 87.5% | 寿S(1600万下)1着 | |
3 | スズカデヴィアス | 2- 0- 0- 3/ 5 | 40.0% | 40.0% | 40.0% | 白富士S(OP特別)1着 | |
18年 | 1 | スワーヴリチャード | 1- 1- 0- 1/ 3 | 33.3% | 66.7% | 66.7% | 17年皐月賞6着 |
2 | サトノノブレス | 3- 2- 3- 3/11 | 27.3% | 45.5% | 72.7% | 16年鳴尾記念など重賞3勝 | |
3 | サトノダイヤモンド | 2- 0- 1- 0/ 3 | 66.7% | 66.7% | 100.0% | 16年皐月賞3着 |
表2〜5では、過去2年の好走馬が金鯱賞と同様の条件において、どのぐらいの実績を残していたのかを調べてみたい。
まず表2は、金鯱賞と同じ芝2000mの実績を示したもの。いずれも高い好走率を残しており、オープン・重賞の芝2000mで好走した実績もあった。ロードヴァンクールは2走前に1600万下を勝ち上がったばかりということもあり、オープン実績はなかったが、複勝率87.5%という高い距離適性を見せていた。
■表3 急坂コース実績(芝のみ)
年 | 着順 | 馬名 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 主な戦績 |
17年 | 1 | ヤマカツエース | 3- 0- 1- 5/ 9 | 33.3% | 33.3% | 44.4% | 16年金鯱賞など重賞3勝 |
2 | ロードヴァンドール | 1- 1- 1- 1/ 4 | 25.0% | 50.0% | 75.0% | ||
3 | スズカデヴィアス | 1- 0- 0- 8/ 9 | 11.1% | 11.1% | 11.1% | すみれS(OP特別)1着 | |
18年 | 1 | スワーヴリチャード | 1- 1- 0- 2/ 4 | 25.0% | 50.0% | 50.0% | |
2 | サトノノブレス | 2- 2- 4- 6/14 | 14.3% | 28.6% | 57.1% | 16年鳴尾記念など重賞2勝 | |
3 | サトノダイヤモンド | 4- 0- 1- 0/ 5 | 80.0% | 80.0% | 100.0% | 16年有馬記念など重賞3勝 |
中京は、最後の直線に急坂が設けられているのがひとつの特徴といえる。そこで、急坂がある芝コース(ほかに阪神、中山)における実績を調べてみたところ、表3の通り、6頭中4頭が複勝率50.0%以上を記録。複勝率44.4%のヤマカツエースも重賞3勝だから、好走した6頭中5頭は急坂を苦にしない馬だったことがわかる。唯一、17年3着のスズカデヴィアスは複勝率11.1%と急坂を得意とするタイプではなく、3着までにとどまった一因とも考えられそうだ。
■表4 左回り実績(芝のみ)
年 | 着順 | 馬名 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 主な戦績 |
17年 | 1 | ヤマカツエース | 1- 0- 1- 3/ 5 | 20.0% | 20.0% | 40.0% | 16年金鯱賞1着 |
2 | ロードヴァンドール | (初出走) | |||||
3 | スズカデヴィアス | 1- 0- 0- 3/ 4 | 25.0% | 25.0% | 25.0% | 白富士S(OP特別)1着 | |
18年 | 1 | スワーヴリチャード | 2- 2- 0- 0/ 4 | 50.0% | 100.0% | 100.0% | 17年アルゼンチン共和国杯など重賞2勝 |
2 | サトノノブレス | 2- 3- 2- 7/14 | 14.3% | 35.7% | 50.0% | 16年中日新聞杯1着 | |
3 | サトノダイヤモンド | 0- 1- 0- 0/ 1 | 0.0% | 100.0% | 100.0% | 16年ダービー2着 |
また、中央競馬では少数派の左回りであることも中京の特徴のひとつ。そこで、左回りの芝コース(ほかに東京、新潟)の成績も調べてみた。ここでの注目はスワーヴリチャードで、芝2000mと急坂の実績は及第点程度ながら、左回りは連対率100.0%、重賞2勝と非常に得意としていたことがわかる。左回りでの勝ち鞍がなかったサトノダイヤモンドにしても、ハナ差のダービー2着なら適性十分と考えるべきだろう。初出走の場合は仕方ないが、左回りの実績も必須といえる。
■表5 2〜4月成績
年 | 着順 | 馬名 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 主な戦績 |
17年 | 1 | ヤマカツエース | 2- 0- 1- 2/ 5 | 40.0% | 40.0% | 60.0% | 15年ニュージーランドT1着 |
2 | ロードヴァンドール | 0- 1- 0- 1/ 2 | 0.0% | 50.0% | 50.0% | ||
3 | スズカデヴィアス | 2- 1- 0- 3/ 6 | 33.3% | 50.0% | 50.0% | 15年京都記念2着 | |
18年 | 1 | スワーヴリチャード | 1- 0- 0- 1/ 2 | 50.0% | 50.0% | 50.0% | 17年共同通信杯1着 |
2 | サトノノブレス | 2- 0- 1- 3/ 6 | 33.3% | 33.3% | 50.0% | 16年中日新聞杯1着 | |
3 | サトノダイヤモンド | 2- 0- 2- 0/ 4 | 50.0% | 50.0% | 100.0% | 17年阪神大賞典など重賞2勝 |
表5は、3月を中心とする前後3カ月間の成績を示したもの。好走した6頭すべてが複勝率50.0%以上を記録し、うち4頭は重賞でも勝利と、この時期を得意としていたことがわかる。特に3〜4月は寒暖差が激しく、人間でも体調を崩しやすい時期。2〜4月に安定した走りを見せていることは思った以上に重要なのかもしれない。
【結論】
■表6 2019年金鯱賞登録馬
馬名 | 複勝率 | |||
芝2000m | 急坂 | 左回り | 2〜4月 | |
アルアイン | 66.7% | 100.0% | 0.0% | 100.0% |
エアウィンザー | 100.0% | 100.0% | 50.0% | 0.0% |
ギベオン | 100.0% | 75.0% | 100.0% | 100.0% |
クリノヤマトノオー | 40.0% | 60.0% | 0.0% | 50.0% |
サトノワルキューレ | 100.0% | 50.0% | 50.0% | 100.0% |
ショウナンバッハ | 29.4% | 11.8% | 31.6% | 8.3% |
スズカデヴィアス | 43.8% | 15.4% | 50.0% | 55.6% |
タニノフランケル | 66.7% | 66.7% | 100.0% | 75.0% |
ダノンプレミアム | 100.0% | 100.0% | 50.0% | 100.0% |
ペルシアンナイト | 100.0% | 80.0% | 33.3% | 75.0% |
ムイトオブリガード | (初出走) | 0.0% | 100.0% | 75.0% |
メートルダール | 70.0% | 50.0% | 69.2% | 40.0% |
モズカッチャン | 100.0% | 25.0% | 100.0% | 75.0% |
リスグラシュー | 100.0% | 100.0% | 71.4% | 100.0% |
表6は今年の金鯱賞登録馬だ(クリノヤマトオーとショウナンバッハは回避の見込みとなっている)。金鯱賞で重視したい「芝2000m」「急坂」「左回り」「2〜4月」の複勝率も付記した。
ご覧の通り、今年はG1馬5頭を含む豪華なメンバーが出走を予定。そこで今回は厳しめに「4項目すべてで複勝率50.0%以上」を記録している馬をデータからの有力馬として紹介したい。
結果、もっとも隙のない実績を持つのは5頭いるG1馬ではなく、ギベオンとなった。急坂のみ複勝率75.0%で、残る3項目は複勝率100.0%。キャリアは6戦と少ないが、4項目とも最低2走以上しての数値ということは記しておきたい。
これに続くのが、左回り以外で複勝率100.0%のリスグラシューとダノンプレミアム。両馬とも左回りで重賞勝利を挙げているから、実質的にはほとんど気にしなくていいだろう。ただし、昨年のダービー以来の出走となるダノンプレミアムに関しては、それ以上に体調の見極めが大事になりそうだ。
サトノワルキューレとタニノフランケルも4項目すべてをクリアした。過去2年、4角1番手の馬が2着に入っていることを考慮すると、逃げての好走実績も多いタニノフランケルは脚質から侮れない1頭といえる。
ここまでに名前が挙がらなかったG1馬では、アルアインとペルシアンナイトは左回りの実績に乏しく、モズカッチャンは急坂をやや苦手としているのがネックとなった。また、4連勝中で注目のエアウィンザーは2〜4月の好走歴がない。とはいえ、この時期の出走自体が1回のみ、それも本格化前の3歳2月のことなので、現在は別という考え方もできなくはないだろう。
ライタープロフィール
出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。