データde出〜た
第1272回 ペースの読みが大事!? チャンピオンズCを占う
2018/11/29(木)
今週日曜日に中京競馬場でチャンピオンズCが行われる。先に京都で行われたJBCクラシック・レディスクラシックの勝ち馬に加え、南部杯を勝利したルヴァンスレーヴが出走を予定。さらに今年はダートの本場アメリカからG1馬が参戦する。チャンピオンズCに名称を変えて行われるようになった2014年以降のレースを分析し、今年の展望を考えていくことにする。データの分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
■表1 過去4年のチャンピオンズC結果
年 | 着順 | 馬名 | 人気 | 性 | 齢 | 単勝 | 複勝 | 馬連 | 馬単 | 3連複 | 3連単 |
17年 | 1 | ゴールドドリーム | 8 | 牡 | 4 | 1300 | 500 | 4140 | 9400 | 27350 | 158490 |
2 | テイエムジンソク | 1 | 牡 | 5 | 230 | ||||||
3 | コパノリッキー | 9 | 牡 | 7 | 560 | ||||||
16年 | 1 | サウンドトゥルー | 6 | セ | 6 | 1590 | 250 | 1390 | 4800 | 11180 | 85980 |
2 | アウォーディー | 1 | 牡 | 6 | 130 | ||||||
3 | アスカノロマン | 10 | 牡 | 5 | 650 | ||||||
15年 | 1 | サンビスタ | 12 | 牝 | 6 | 6640 | 1180 | 11040 | 36260 | 27320 | 318430 |
2 | ノンコノユメ | 3 | 牡 | 3 | 200 | ||||||
3 | サウンドトゥルー | 5 | セ | 5 | 370 | ||||||
14年 | 1 | ホッコータルマエ | 2 | 牡 | 5 | 590 | 190 | 5470 | 9020 | 11730 | 70890 |
2 | ナムラビクター | 8 | 牡 | 5 | 440 | ||||||
3 | ローマンレジェンド | 3 | 牡 | 6 | 270 |
まずは過去4年のチャンピオンズC好走馬と人気などについて見ていくことにする(表1参照)。まだ4回分のデータしかないが、馬券的には波乱傾向だ。昨年ゴールドドリームは8番人気で優勝しており、単勝は1300円の配当だった。3着のコパノリッキーも実績的にはかなり上位だったが、9番人気の伏兵扱いだった。16年は10番人気のアスカノロマンが3着。15年は12番人気のサンビスタが優勝を飾り、単勝は6640円、馬連は万馬券の大波乱だった。牝馬がJRAのダートG1を制するケースはこれが初めてで、その後そのような馬は出ていない(牝馬限定のJBCレディスクラシック勝ち馬アンジュデジールを除く)。
上位人気馬を見てみると、1番人気は【0.2.0.2】という成績。近2年は好走しているが、2着止まりだ。2番人気の好走は1回、3番人気の好走は2回と、上位人気は軒並み苦しんでいる印象だ。
■表2 過去4年のチャンピオンズCタイムとRPCI
年 | 着順 | 馬名 | タイム | 2角 | 3角 | 4角 | 上り3F | RPCI |
17年 | 1 | ゴールドドリーム | 1501 | 10 | 11 | 11 | 35.2 | 50.1 |
2 | テイエムジンソク | 1501 | 2 | 2 | 2 | 36.1 | ||
3 | コパノリッキー | 1502 | 1 | 1 | 1 | 36.3 | ||
16年 | 1 | サウンドトゥルー | 1501 | 14 | 14 | 13 | 35.8 | 40.0 |
2 | アウォーディー | 1501 | 6 | 6 | 5 | 37.0 | ||
3 | アスカノロマン | 1502 | 2 | 3 | 2 | 37.4 | ||
15年 | 1 | サンビスタ | 1504 | 6 | 8 | 6 | 37.4 | 39.4 |
2 | ノンコノユメ | 1506 | 14 | 15 | 15 | 36.7 | ||
3 | サウンドトゥルー | 1507 | 15 | 16 | 16 | 36.6 | ||
14年 | 1 | ホッコータルマエ | 1510 | 2 | 2 | 2 | 36.4 | 50.1 |
2 | ナムラビクター | 1511 | 5 | 4 | 4 | 36.3 | ||
3 | ローマンレジェンド | 1512 | 5 | 2 | 2 | 36.6 |
続いてタイム面や脚質、ペースについて振り返ってみよう。結論から言うと、ペースに関してはかなり重要で、レース結果に相当影響を及ぼしていると感じる。勝ち時計そのものは1分50秒から51秒台で、あまり大きな開きはない(すべて良馬場)。ただ、ペースは年によってかなり異なる。表2で示したRPCI(距離による補正あり。以前の計算方法)を見ると、14年と17年が50.1だ。これはG1に限らずダートの重賞としてはかなり遅いペースであることを示している。昨年のレースを振り返ると、前々でレースを運んだコパノリッキーとテイエムジンソクが残ったわけだが、展開的には納得と言える。差し・追い込み馬には非常に苦しい展開で、勝ったゴールドドリームはかなり強い内容だった。
14年も結果的にはほぼ前残り。勝ったホッコータルマエは地力的に上位ではあったが、差し・追い込み馬の出番はペース的にもなかった。同年4着だったサンビスタは、そんな展開にもかかわらず中団から脚を伸ばした。「負けて強し」の内容であり、これが翌年につながることになる。
15年のRPCIは39.4とかなり厳しいペースだった。このレベルとしては平均的な流れではあるが、前年に比べると道中の流れは締まったものだった。その結果、サンビスタが優勝。当時は驚きの結果だったが、後から振り返ってみると前年の頑張りがあったゆえ、十分想定できるものだった。2着ノンコノユメ、3着サウンドトゥルーは4コーナー15、16番手で好走しており、前の馬が完全に潰れる展開となった。16年はサウンドトゥルーが一気の追い込みを見せて優勝。RPCIは40で、前年同様ペースが流れたことが大きな勝因だと考えられる。
■表3 過去4年のチャンピオンズC好走馬の前走成績
年 | 着順 | 馬名 | 前走レース名 | 開催 | 前距離 | 前着 | 前人 | 前2角 | 前3角 | 前4角 |
17年 | 1 | ゴールドドリーム | マイルG1 | 盛岡 | 1600 | 5 | 2 | 10 | 8 | |
2 | テイエムジンソク | みやこSG3 | 5京2 | 1800 | 1 | 2 | 4 | 3 | 1 | |
3 | コパノリッキー | JBC・スプG1 | 大井 | 1200 | 2 | 1 | 5 | 3 | ||
16年 | 1 | サウンドトゥルー | JBC・クラG1 | 川崎 | 2100 | 3 | 5 | 9 | 4 | 5 |
2 | アウォーディー | JBC・クラG1 | 川崎 | 2100 | 1 | 2 | 6 | 1 | 2 | |
3 | アスカノロマン | みやこSG3 | 5京2 | 1800 | 14 | 2 | 3 | 2 | 2 | |
15年 | 1 | サンビスタ | JBC・LクG1 | 大井 | 1800 | 2 | 1 | 4 | 4 | 4 |
2 | ノンコノユメ | 武蔵野SG3 | 5東3 | 1600 | 1 | 2 | 10 | 11 | ||
3 | サウンドトゥルー | JBC・クラG1 | 大井 | 2000 | 2 | 4 | 9 | 7 | 6 | |
14年 | 1 | ホッコータルマエ | JBC・クラG1 | 盛岡 | 2000 | 4 | 4 | 3 | 3 | 3 |
2 | ナムラビクター | みやこSG3 | 5京2 | 1800 | 3 | 4 | 7 | 3 | 2 | |
3 | ローマンレジェンド | エルムSG3 | 1札2 | 1700 | 1 | 3 | 4 | 2 | 2 |
続いてチャンピオンズC好走馬の前走成績について見ていく。基本的には前走JBC組が中心。競馬場や距離は年によって異なるが、多くの馬が馬券になっている。一応クラシック組がメインだが、スプリントやレディスクラシックからも好走馬が出ている。それらのレースで3着以内であることが望ましい。脚質も重要で、今回のペースを想定する上で参考になる。よほどのことがなければ、前走の脚質に近い感じになると想定したい。
JBC以外ではみやこS組が有力。ただ、今年はみやこSがお休みで、その代わりとして京都でJBCが行われた。今年は例年以上にJBC組が有力と言える。あとは盛岡の南部杯や武蔵野S、エルムSからも好走馬が出ている。
【結論】
それでは今年のレースを占ってみよう。出走予定馬は表4の通りだ。
■表4 今年のチャンピオンズC出走予定馬
馬名 | 前走レース名 | 開催 | 前距離 | 前着 | 前人 | 前2角 | 前3角 | 前4角 | 前RPCI |
サンライズソア | JBCクG1 | 京都 | 1900 | 3 | 1 | 1 | 2 | 1 | 38.7 |
アンジュデジール | JBCレG1 | 京都 | 1800 | 1 | 6 | 5 | 4 | 2 | 40.0 |
ヒラボクラターシュ | 福島民友 | 福島 | 1700 | 1 | 1 | 4 | 2 | 2 | 43.2 |
アポロケンタッキー | 浦和記G2 | 浦和 | 2000 | 4 | 2 | 4 | 5 | 4 | ― |
ケイティブレイブ | JBCクG1 | 京都 | 1900 | 1 | 3 | 8 | 6 | 4 | 38.7 |
ルヴァンスレーヴ | マイルG1 | 盛岡 | 1600 | 1 | 2 | 6 | 5 | ― | |
センチュリオン | JBCクG1 | 京都 | 1900 | 11 | 8 | 7 | 6 | 6 | 38.7 |
インカンテーション | 武蔵野SG3 | 東京 | 1600 | 6 | 4 | 5 | 7 | 42.3 | |
ウェスタールンド | 武蔵野SG3 | 東京 | 1600 | 7 | 3 | 10 | 7 | 42.3 | |
アスカノロマン | JBCクG1 | 京都 | 1900 | 6 | 14 | 9 | 8 | 8 | 38.7 |
オメガパフューム | JBCクG1 | 京都 | 1900 | 2 | 2 | 9 | 10 | 8 | 38.7 |
ミツバ | 白山大G3 | 金沢 | 2100 | 11 | 1 | 8 | 11 | 11 | ― |
サンライズノヴァ | 武蔵野SG3 | 東京 | 1600 | 1 | 1 | 14 | 12 | 42.3 | |
ノンコノユメ | JBCクG1 | 京都 | 1900 | 4 | 5 | 16 | 16 | 15 | 38.7 |
パヴェル | ブリーG1 | アメリカ | 2000 | 10 | -- | - | - | - | ― |
昨年、不向きの展開で勝ち切ったゴールドドリームが回避となったのは残念だ。同馬を前走南部杯で下したルヴァンスレーヴにとっては好材料で、人気も集中する可能性が出てきた。果たして勝算はどれぐらいあるのか。そのカギは「ペース・展開にある」というのが、今回のコラムでの主張だ。
出走予定馬の前走レースの位置取りを見ると、サンライズソアがJBCクラシックに続きハナへ行く可能性が高いと考えられる。アスカノロマンやインカンテーションも前へ行こうと思えば行ける馬だが、競ってまでハナへ行くかは微妙だ。外国馬のパヴェルは早めに動いてきそうな雰囲気もあるが、逃げ馬ではない。実際のペースは蓋を開けてみないとわからないが、あまり速いペースにはなりそうにはない。前走JBCクラシックのRPCIは38.7と淀みない流れだったが、テイエムジンソクのように突っついてくる馬がいないと、今回は緩いペースになる可能性がある。
もしそのような流れになると、差し・追い込み馬にとっては苦しい展開になるだろう。有力どころではオメガパフュームやノンコノユメ、サンライズノヴァ。ウェスタールンドあたりも後ろから脚を使うイメージだ。ルヴァンスレーヴは果たしてどのあたりからレースをするのか。できれば前走のように先団を見ながら競馬をしたいところだ。
ケイティブレイブは前走JBCクラシックでは中団からの競馬になったが、どんな位置からでも競馬はできる。本来は好位から抜け出すタイプであり、ペースが厳しくなければ前々でレースをするだろう。今回は展開に恵まれるかもしれない。逃げる展開になれば、サンライズソアの残り目もかなり有力と予想する。果たして結果はどうなるか。
ライタープロフィール
小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。