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第1270回 アーモンドアイはジェンティルドンナ級か!? ジャパンCを分析する

2018/11/22(木)

東京競馬場で第38回ジャパンカップが行われる。創設当初は海外馬が力の差を見せていたが、近年では日本馬が12連勝中と圧倒している。今年は秋華賞で牝馬三冠を達成したアーモンドアイが出走予定。2012年のジェンティルドンナ以来となる3歳牝馬による制覇なるかに注目が集まる。今回はジャパンカップ過去10年のデータから好走期待馬を探っていきたい。なお、データ分析にはJRA-VAN DataLab.TARGET frontier JVを利用した。

■表1 ジャパンカップの人気別成績(過去10年)

人気 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単勝回収率 複勝回収率
1番人気 3-  3-  2-  2/ 10 30.0% 60.0% 80.0% 95% 102%
2番人気 1-  2-  2-  5/ 10 10.0% 30.0% 50.0% 34% 72%
3番人気 1-  1-  0-  8/ 10 10.0% 20.0% 20.0% 66% 49%
4番人気 3-  0-  0-  7/ 10 30.0% 30.0% 30.0% 269% 74%
5番人気 1-  1-  0-  8/ 10 10.0% 20.0% 20.0% 133% 48%
6番人気 0-  1-  3-  6/ 10 0.0% 10.0% 40.0% 0% 143%
7番人気 0-  2-  0-  8/ 10 0.0% 20.0% 20.0% 0% 89%
8番人気 0-  0-  1-  9/ 10 0.0% 0.0% 10.0% 0% 53%
9番人気 1-  0-  0-  9/ 10 10.0% 10.0% 10.0% 410% 71%
10人気以下 0-  0-  2- 81/ 83 0.0% 0.0% 2.4% 0% 34%

まず表1は過去10年の人気別成績。1番人気馬は一昨年のキタサンブラックら3勝をあげ、連対率60%・複勝率80%と高い。1番人気に推された日本馬はすべて4着以内と上位で安定している。以下、4番人気馬が最多タイの3勝、2・3・5・9番人気馬が1勝ずつ。9番人気馬の勝利は08年スクリーンヒーローで、近9年は上位5番人気以内の馬が勝利している。

2着馬も7番人気以内におさまっているが、3着馬は下位人気まで幅広く分布。馬連での万馬券は1着ショウナンパンドラ(4番人気)、2着ラストインパクト(7番人気)で決まった15年のみで、比較的堅い決着が多い一戦だ。

■表2 ジャパンカップの枠番別成績(過去10年)

枠番 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単勝回収率 複勝回収率
1枠 3- 2- 3-12/20 15.0% 25.0% 40.0% 102% 163%
2枠 1- 0- 2-17/20 5.0% 5.0% 15.0% 44% 29%
3枠 2- 1- 2-15/20 10.0% 15.0% 25.0% 62% 110%
4枠 1- 0- 0-19/20 5.0% 5.0% 5.0% 10% 6%
5枠 0- 3- 0-17/20 0.0% 15.0% 15.0% 0% 40%
6枠 0- 1- 0-18/19 0.0% 5.3% 5.3% 0% 15%
7枠 1- 0- 2-22/25 4.0% 4.0% 12.0% 36% 30%
8枠 2- 3- 1-23/29 6.9% 17.2% 20.7% 164% 64%

表2は枠番別成績。最内の1枠に入った馬が昨年のシュヴァルグランら最多の3勝をあげ、勝率・連対率・複勝率いずれもトップだ。昨年は1・2着馬が該当しており、近4年で毎年1頭は3着以内に入っている。東京芝2400mのコース形態上、内の好位置を取りやすい1枠の優位性があらわれている。今年も1枠に入った馬は要注目だ。全体的には内枠と8枠の好走馬が目立っており、4〜7枠はやや不振傾向にある。

■表3 ジャパンカップの年齢別成績と性別成績(過去10年)

年齢 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単勝回収率 複勝回収率
3歳 2-  3-  2- 21/ 28 7.1% 17.9% 25.0% 55% 69%
4歳 5-  3-  2- 41/ 51 9.8% 15.7% 19.6% 127% 46%
5歳 3-  4-  4- 36/ 47 6.4% 14.9% 23.4% 43% 57%
6歳 0-  0-  0- 24/ 24 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
7歳以上 0-  0-  2- 21/ 23 0.0% 0.0% 8.7% 0% 125%
牡・セン馬 5-  8-  8-128/149 3.4% 8.7% 14.1% 50% 54%
牝馬 5-  2-  2- 15/ 24 20.8% 29.2% 37.5% 103% 75%

表3は年齢別成績と性別成績。まず年齢別では出走数が最も多い4歳馬が一昨年のキタサンブラックら最多の5勝をあげ、勝率トップ。連対率・複勝率トップは3歳馬で、12年ジェンティルドンナら2勝をあげている。また、5歳馬は昨年のシュヴァルグランら3勝で、複勝率は3歳馬に迫っている。なお、6歳馬は3着以内馬がおらず、不振傾向。ただ、上位人気に推された馬はほとんどいなかった点に注意したい。7歳以上も連対なしだが、3着馬2頭はともに10番人気以下の伏兵だった。

性別成績では、牝馬が15年ショウナンパンドラら5勝をあげ、勝率・連対率・複勝率いずれも牡馬・セン馬を圧倒している。なお、3歳牝馬は【1.1.1.7】で13年デニムアンドルビーが2着に好走して以来、近4年は3着以内馬が出ていない。

■表4 ジャパンカップの前走レース別成績(過去10年)

前走レース名 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単勝回収率 複勝回収率
天皇賞・秋 5- 5- 7-48/65 7.7% 15.4% 26.2% 41% 91%
京都大賞典 2- 1- 0-12/15 13.3% 20.0% 20.0% 114% 42%
アルゼンチン共和国杯 1- 0- 1-11/13 7.7% 7.7% 15.4% 315% 80%
秋華賞 1- 0- 1- 2/ 4 25.0% 25.0% 50.0% 165% 107%
菊花賞 1- 0- 0- 7/ 8 12.5% 12.5% 12.5% 110% 25%
凱旋門賞 0- 2- 1- 9/12 0.0% 16.7% 25.0% 0% 80%
エリザベス女王杯 0- 1- 0- 2/ 3 0.0% 33.3% 33.3% 0% 170%
神戸新聞杯 0- 1- 0- 1/ 2 0.0% 50.0% 50.0% 0% 70%
その他のレース 0- 0- 0-51/51 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%

表4は前走レース別成績。出走数が抜けて多い天皇賞・秋組が15年ショウナンパンドラら最多の5勝をあげ、一昨年を除いて毎年1頭は3着以内に入っている。この組の3着以内馬17頭中13頭は前走の天皇賞・秋で4着以内に入っていた。前走6着以下から巻き返した4頭は過去に菊花賞もしくは天皇賞・春で4着以内に入った経験があった。

京都大賞典組は一昨年キタサンブラック、昨年シュヴァルグランと近2年続けて勝利。昨年のシュヴァルグランは京都大賞典3着(M.デムーロ騎手)からボウマン騎手に乗り替わって勝利をおさめた。また、アルゼンチン共和国杯組と秋華賞組は前走1着馬だけが好走している。ちなみに前走海外レース組の好走は凱旋門賞組に限られており、凱旋門賞組の3着以内馬はすべて日本馬だった。

■表5 ジャパンカップの種牡馬別成績(過去10年)

種牡馬 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単勝回収率 複勝回収率
ディープインパクト 3- 2- 1-13/19 15.8% 26.3% 31.6% 94% 95%
キングカメハメハ 1- 1- 2- 8/12 8.3% 16.7% 33.3% 73% 50%
ハーツクライ 1- 1- 1- 8/11 9.1% 18.2% 27.3% 120% 76%
スペシャルウィーク 1- 1- 0- 2/ 4 25.0% 50.0% 50.0% 85% 62%
ブラックタイド 1- 0- 1- 0/ 2 50.0% 50.0% 100.0% 190% 135%
タニノギムレット 1- 0- 1- 0/ 2 50.0% 50.0% 100.0% 180% 140%
グラスワンダー 1- 0- 0- 3/ 4 25.0% 25.0% 25.0% 1025% 177%
シンボリクリスエス 1- 0- 0- 0/ 1 100.0% 100.0% 100.0% 890% 320%
ジャングルポケット 0- 2- 2-11/15 0.0% 13.3% 26.7% 0% 231%
ネオユニヴァース 0- 1- 1- 3/ 5 0.0% 20.0% 40.0% 0% 164%
ステイゴールド 0- 1- 0-10/11 0.0% 9.1% 9.1% 0% 10%
アグネスタキオン 0- 1- 0- 2/ 3 0.0% 33.3% 33.3% 0% 43%
マンハッタンカフェ 0- 0- 1- 2/ 3 0.0% 0.0% 33.3% 0% 86%
その他の種牡馬 0- 0- 0-81/81 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%

表5は種牡馬別成績。出走数最多のディープインパクト産駒が最多の3勝をあげているが、その3勝は12・13年連覇のジェンティルドンナ、15年ショウナンパンドラとすべて牝馬による勝利だった。キングカメハメハ産駒は10年ローズキングダムが勝利。今回はルーラーシップ産駒キセキ、ロードカナロア産駒アーモンドアイが、祖父にキングカメハメハを持つ馬として出走する。ハーツクライ産駒は14年2着ジャスタウェイ、一昨年3着・昨年1着シュヴァルグランが好走。この2頭はともに3歳クラシックでの好走がなく、古馬になって高い能力を発揮するようになったタイプだ。

■表6 3歳時のジェンティルドンナとアーモンドアイの比較

馬名 JCまでの戦績 オークス勝ち時計(上がり3F)
ジェンティルドンナ 8戦6勝(秋3戦目) 2分23秒6(34秒2)
アーモンドアイ 6戦5勝(秋2戦目) 2分23秒8(33秒2)

表6は3歳時にオルフェーヴルを破って勝利したジェンティルドンナと今回のアーモンドアイの戦績をまとめたもの。ジェンティルドンナとアーモンドアイの共通点は、新馬戦で敗れて2戦目で初勝利。シンザン記念で重賞初制覇を飾り、目下重賞4連勝中、という点が挙げられる。

また、両者ともオークスを2分23秒台の速い時計で勝利している。勝ち時計ではジェンティルドンナが0秒2速いものの、アーモンドアイは上がり3ハロンで1秒上回っていた。どちらも桜花賞からの距離延長が不安視されていたが、まったく問題なく快勝している。ジェンティルドンナは近年でも最強レベルのオルフェーヴルを破っており、同じレベルと見ればアーモンドアイは初の古馬相手でも当然勝ち負けになる公算が高い

■表7 日本ダービー連対馬の古馬になってからのJC成績(過去10年)

年度 ダービー連対馬の古馬でのJC成績/()内は出走時の年齢
2017 マカヒキ4着(4歳)、ワンアンドオンリー16着(6歳)
2016 ワンアンドオンリー8着(5歳)
2015 ワンアンドオンリー7着(4歳)
2014 エピファネイア1着(4歳)、フェノーメノ8着(5歳)
2013 エイシンフラッシュ10着(6歳)
2012 オルフェーヴル2着(4歳)、エイシンフラッシュ9着(5歳)、ローズキングダム16着(5歳)
2011 エイシンフラッシュ8着(4歳)、ローズキングダム9着(4歳)
2010 出走なし
2009 インティライミ14着(7歳)、アサクサキングス16着(5歳)
2008 ウオッカ3着(4歳)、メイショウサムソン6着(5歳)、アサクサキングス8着(4歳)

表7は過去10年の日本ダービー連対馬の古馬になってからのジャパンカップでの成績一覧。勝利したのは14年エピファネイアのみで、勝ち切るのが難しいことを示している。また12年2着オルフェーヴル、08年3着ウオッカも4歳時だった。日本ダービー時に高いパフォーマンスを見せていた馬が古馬になって成長もしくは能力を維持するのは難しいといえそうだ。

■表8 ジャパンカップの騎手所属別成績(過去10年/日本馬のみ)

騎手分類 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単勝回収率 複勝回収率
美浦 0-  1-  1- 45/ 47 0.0% 2.1% 4.3% 0% 12%
栗東 7-  6-  6- 43/ 62 11.3% 21.0% 30.6% 123% 94%
地方 0-  0-  0-  1/  1 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
外国 3-  3-  3- 12/ 21 14.3% 28.6% 42.9% 115% 163%

最後に表8は日本馬に騎乗した騎手の所属別成績。M.デムーロ騎手・ルメール騎手を含む栗東所属の騎手が一昨年キタサンブラックの武豊騎手ら過半数の7勝をあげており、連対率・複勝率ともに高い。対して、美浦所属の騎手は勝ち星がなく、連対率・複勝率ともに低い。

ただし、栗東所属の騎手を上回るのが外国人騎手。昨年のシュヴァルグランに騎乗したボウマン騎手ら3勝をあげ、複勝率42.9%と非常に高い。近5年でも一昨年を除いた4年で3着以内に入っており、外国人騎手が騎乗する日本馬は今年も注目だ。

<結論>

■表9 今年のジャパンカップの出走予定馬(11/21現在)

馬名 年齢 前走成績
アーモンドアイ 牝3 秋華賞 1着
ウインテンダネス 牡5 アルゼンチン共和国杯 4着
カプリ 牡4 英チャンピオンS 4着
ガンコ 牡5 アルゼンチン共和国杯 6着
キセキ 牡4 天皇賞・秋 3着
サウンズオブアース 牡7 毎日王冠 9着
サトノクラウン 牡6 宝塚記念 12着
サトノダイヤモンド 牡5 京都大賞典 1着
サンダリングブルー セン5 カナディアン国際 2着
シュヴァルグラン 牡6 京都大賞典 4着
スワーヴリチャード 牡4 天皇賞・秋 10着
ノーブルマーズ 牡5 アルゼンチン共和国杯 9着
ハッピーグリン 牡3 富士S 11着
ミッキースワロー 牡4 札幌記念 13着
※フルゲート18頭。マカヒキ、ミッキーロケットは回避。

2018/5/20 東京11R 優駿牝馬(G1) 1着 13番 アーモンドアイ

今年の出走予定馬は表9のとおり。

1番人気が想定されるのはアーモンドアイ。表6で示したジェンティルドンナとの比較でも見劣るところはなく、同レベルの能力ならば完勝できるだろう。53キロの斤量も有利で、状態さえまともならば古馬相手でもまったく問題ない。勝利に最も近い存在といえる。

人気で続くのが京都大賞典で久々の勝利を飾ったサトノダイヤモンド、天皇賞・秋大敗からの巻き返しを狙うスワーヴリチャードの2頭だろう。ただし、表7で示したように日本ダービー連対馬の古馬での成績が芳しくなく、特に好走がない5歳サトノダイヤモンドには厳しいと見る。スワーヴリチャードは前走スタートでの不利が大きかったが、近2走は東京コースで勝ち切れていない。常にスタートでの不安があり、巻き返しは微妙なところだ。

2017/11/26 東京11R ジャパンカップ(G1) 1着 1番 シュヴァルグラン

上記以外ではシュヴァルグランを推奨しておきたい。昨年の覇者ながら前走の京都大賞典4着で人気を落としそうだ。休み明けは走らない傾向にあり、今年の春も大阪杯13着から天皇賞・春で2着と好走している。日本人騎手から外国人騎手への乗り替わりで好走する傾向がある馬で、今年もここが勝負どころと見る。他では前走天皇賞・秋上位のキセキを連下候補に挙げておきたい。

サトノクラウンは休み明けで状態に不安が残り、2走前の凱旋門賞5着のカプリも日本の速い芝への対応が未知数で近年の傾向どおり軽視したい。

ライタープロフィール

ケンタロウ(けんたろう)

1978年6月、鹿児島県生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。初めて買った馬券が大当たりし、それから競馬にのめり込むように。データでは、開催日の馬場やコース適性に注目している。好きなタイプは逃げか追い込み。馬券は1着にこだわった単勝、馬単派。料理研究家ではない。


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