データde出〜た
第1262回 少頭数でスローペース必至!? 秋の天皇賞を分析する
2018/10/25(木)
今週日曜に東京競馬場で秋の天皇賞が行われる。芝2000mを舞台に秋の中距離王者を決める伝統の一戦だ。昨年は雨で不良馬場の中、キタサンブラックが優勝。今年は昨年の上位3着以内馬が出ておらず、新たなチャンピオンを決める一戦となる。天皇賞・秋の過去10年のデータならびに今開催の東京競馬場・芝コースの傾向から馬券に絡みそうな有力馬を探っていきたい。なお、データ分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
■表1 天皇賞・秋の人気別成績(過去10年)
人気 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収値 | 複勝回収値 |
1番人気 | 5- 2- 2- 1/ 10 | 50.0% | 70.0% | 90.0% | 150% | 120% |
2番人気 | 0- 4- 2- 4/ 10 | 0.0% | 40.0% | 60.0% | 0% | 108% |
3番人気 | 0- 0- 2- 8/ 10 | 0.0% | 0.0% | 20.0% | 0% | 30% |
4番人気 | 0- 1- 0- 9/ 10 | 0.0% | 10.0% | 10.0% | 0% | 24% |
5番人気 | 4- 0- 0- 6/ 10 | 40.0% | 40.0% | 40.0% | 546% | 112% |
6番人気 | 0- 0- 3- 7/ 10 | 0.0% | 0.0% | 30.0% | 0% | 89% |
7番人気 | 1- 2- 0- 7/ 10 | 10.0% | 30.0% | 30.0% | 333% | 190% |
8番人気 | 0- 0- 0- 10/ 10 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
9番人気 | 0- 0- 0- 10/ 10 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
10番人気以下 | 0- 1- 1- 83/ 85 | 0.0% | 1.2% | 2.4% | 0% | 14% |
まずは天皇賞・秋の過去10年のデータから分析していく。人気別成績では、1番人気馬が【5.2.2.1】で昨年のキタサンブラックら近3年続けて勝利しており、最多の5勝をあげている。連対率70%・複勝率90%と高く、10頭すべて4着以内と安定しているのが特徴だ。馬券の軸としての信頼度が高い。2番人気馬は勝ち星こそないものの、複勝率60%と1番人気馬に次いで高い。3番人気馬は連対馬がおらず、複勝率20%と低い。
以下、5番人気馬が14年スピルバーグら4勝と一発があり、7番人気馬は11年トーセンジョーダンの1勝。2・3着馬もほぼ7番人気以内におさまっており、8番人気以下で好走したのは10番人気以下の2・3着1回ずつ。昨年は3着に13番人気レインボーラインが激走したが、不良馬場で非常に時計がかかる特殊な馬場だった。
人気面からは1番人気の信頼度が高く、好走馬はほぼ7番人気以内。8番人気以下の伏兵の激走は見込み薄といえる。
■表2 天皇賞・秋の年齢別成績(過去10年)
年齢 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
3歳 | 0- 2- 2- 11/ 15 | 0.0% | 13.3% | 26.7% | 0% | 44% |
4歳 | 3- 5- 3- 32/ 43 | 7.0% | 18.6% | 25.6% | 47% | 73% |
5歳 | 6- 3- 4- 31/ 44 | 13.6% | 20.5% | 29.5% | 161% | 84% |
6歳 | 0- 0- 1- 30/ 31 | 0.0% | 0.0% | 3.2% | 0% | 4% |
7歳以上 | 1- 0- 0- 41/ 42 | 2.4% | 2.4% | 2.4% | 27% | 5% |
表2は年齢別成績。表に黄色で強調したように4、5歳馬中心のレースといえる。特に5歳馬は昨年のキタサンブラックら過半数の6勝をあげ、勝率・連対率・複勝率いずれもトップだ。また、4歳馬は13年ジャスタウェイら3勝をあげ、連対率ではトップの5歳馬に迫っている。これら4、5歳馬で大半の9勝をあげている。
3歳馬は勝ち星こそないものの、複勝率では5歳馬に次いで高い。なお、6歳馬は3着1回のみ、7歳以上の馬も09年カンパニー(当時8歳)の1勝のみと、6歳以上では好走確率がガクンと下がっているのが大きな特徴だ。
■表3 天皇賞・秋の脚質別成績と上がり順位別成績(過去10年)
脚質上り | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
逃げ | 0- 1- 0- 9/ 10 | 0.0% | 10.0% | 10.0% | 0% | 13% |
先行 | 3- 5- 2- 28/ 38 | 7.9% | 21.1% | 26.3% | 26% | 53% |
中団 | 7- 3- 4- 66/ 80 | 8.8% | 12.5% | 17.5% | 116% | 57% |
後方 | 0- 1- 4- 40/ 45 | 0.0% | 2.2% | 11.1% | 0% | 25% |
マクリ | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
3F 1位 | 5- 3- 4- 3/ 15 | 33.3% | 53.3% | 80.0% | 384% | 224% |
3F 2位 | 2- 1- 1- 3/ 7 | 28.6% | 42.9% | 57.1% | 507% | 182% |
3F 3位 | 0- 2- 0- 7/ 9 | 0.0% | 22.2% | 22.2% | 0% | 41% |
3F〜5位 | 2- 1- 2- 16/ 21 | 9.5% | 14.3% | 23.8% | 30% | 89% |
3F6位〜 | 1- 3- 3-115/122 | 0.8% | 3.3% | 5.7% | 2% | 8% |
表3は脚質別成績と上がり順位別成績。まず脚質別成績では中団からの差し切りが過半数の7勝を占めているが、該当数が多いのもあって連対率・複勝率はそれほど高くない。また、先行馬は近3年続けて勝利しており、連対率・複勝率トップだ。勝ち馬はすべて先行馬か、中団からの差し馬だった。なお、逃げ馬は勝ち星がなく、08年ダイワスカーレットの2着1回。後方からの追い込み馬も連対1回のみで、3着が4回と多かった。
上がり順位別成績では、上がり1位の馬が昨年のキタサンブラックら5勝をあげ、連対率53.3%・複勝率80.0%と非常に高い。08年を除いて、毎年1頭は3着以内に入っている。 上がり2位の馬も11年トーセンジョーダンら2勝をあげ、連対率・複勝率が高い。
つまり、道中で先行もしくは中団につけて、メンバー中2位以内の速い上がりを使えるタイプの馬が好走しやすいレースといえる。
■表4 天皇賞・秋の前走レース別成績(過去10年)
前走レース名 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
毎日王冠 | 5- 3- 4-48/60 | 8.3% | 13.3% | 20.0% | 95% | 52% |
宝塚記念 | 2- 4- 2-13/21 | 9.5% | 28.6% | 38.1% | 25% | 105% |
札幌記念 | 2- 0- 1-14/17 | 11.8% | 11.8% | 17.6% | 217% | 67% |
京都大賞典 | 1- 0- 0-14/15 | 6.7% | 6.7% | 6.7% | 22% | 10% |
セントライト記念 | 0- 1- 1- 0/ 2 | 0.0% | 50.0% | 100.0% | 0% | 135% |
安田記念 | 0- 1- 0- 2/ 3 | 0.0% | 33.3% | 33.3% | 0% | 116% |
大阪杯 | 0- 1- 0- 0/ 1 | 0.0% | 100.0% | 100.0% | 0% | 130% |
天皇賞・春 | 0- 0- 1- 5/ 6 | 0.0% | 0.0% | 16.7% | 0% | 58% |
神戸新聞杯 | 0- 0- 1- 1/ 2 | 0.0% | 0.0% | 50.0% | 0% | 75% |
オールカマー | 0- 0- 0-27/27 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
その他のレース | 0- 0- 0-21/21 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
表4は前走レース別成績。出走数が抜けて多い毎日王冠組が14年スピルバーグら最多の5勝をあげており、昨年を除いて毎年1頭は3着以内に入っている。宝塚記念組は昨年のキタサンブラックら2勝をあげ、連対率・複勝率が高い。昨年はこの組が上位3着まで独占している。他では札幌記念組が一昨年のモーリスら2勝、京都大賞典組が15年ラブリーデイの1勝。勝ち馬の前走は以上4レースに絞られている。
なお、毎日王冠に次いで出走数が多いオールカマー組は3着以内馬なし。この組から天皇賞で上位人気になる馬が少ないのは確かだが、今年はオールカマー上位3着以内馬が揃って出走を予定しており、これまでのデータを覆すか注目したい。
■表5 天皇賞・秋の前走人気別成績(過去10年)
前走人気 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
前走1人気 | 6- 5- 4- 20/ 35 | 17.1% | 31.4% | 42.9% | 138% | 85% |
前走2人気 | 1- 1- 2- 14/ 18 | 5.6% | 11.1% | 22.2% | 92% | 63% |
前走3人気 | 0- 2- 0- 21/ 23 | 0.0% | 8.7% | 8.7% | 0% | 15% |
前走4人気 | 1- 0- 2- 17/ 20 | 5.0% | 5.0% | 15.0% | 57% | 37% |
前走5人気 | 1- 0- 0- 16/ 17 | 5.9% | 5.9% | 5.9% | 64% | 15% |
前走6〜9人 | 1- 2- 2- 39/ 44 | 2.3% | 6.8% | 11.4% | 35% | 55% |
前走10番人気以下 | 0- 0- 0- 15/ 15 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
表5は前走人気別成績。黄色で強調した前走1番人気馬が昨年のキタサンブラックら近3年続けて勝利しており、過半数の6勝をあげている。毎年1頭は3着以内に入っており、連対率・複勝率ともに高い。特に前走1番人気馬で今回も上位2番人気以内に支持された馬はのべ【5.4.3.2】で勝率35.7%・連対率64.3%・複勝率85.7%と非常に優秀だ。
なお、前走10番人気以下だった馬は3着以内馬がおらず、苦戦傾向にある。
■表6 今秋の東京開催の脚質別成績と上がり順位別成績(芝1600〜2000m)
着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 | |
逃げ | 2- 0- 0- 7/ 9 | 22.2% | 22.2% | 22.2% | 87% | 36% |
先行 | 5- 4- 2-19/30 | 16.7% | 30.0% | 36.7% | 46% | 68% |
中団 | 1- 3- 6-21/31 | 3.2% | 12.9% | 32.3% | 17% | 72% |
後方 | 1- 2- 1-23/27 | 3.7% | 11.1% | 14.8% | 8% | 26% |
3F 1位 | 1- 3- 4- 1/ 9 | 11.1% | 44.4% | 88.9% | 25% | 171% |
3F 2位 | 4- 2- 0- 5/11 | 36.4% | 54.5% | 54.5% | 115% | 101% |
3F 3位 | 1- 1- 1- 5/ 8 | 12.5% | 25.0% | 37.5% | 23% | 53% |
3F〜5位 | 0- 3- 2-14/19 | 0.0% | 15.8% | 26.3% | 0% | 63% |
3F6位〜 | 3- 0- 2-45/50 | 6.0% | 6.0% | 10.0% | 24% | 20% |
ここから表6と表7は今秋の東京開催の芝中距離の傾向を見ていく。表6は脚質別成績と上がり順位別成績。脚質別成績では先行馬が過半数の5勝をあげ、連対率・複勝率が高い。中団からの差し馬は3着が多く、複勝率で先行馬に迫っている。
また、上がり順位別成績では上がり最速の馬は府中牝馬Sのディアドラの1勝のみだが、複勝率88.9%と非常に高い。また、上がり2位の馬が4勝をあげ、連対率ではトップ。やはり中団より前の位置で、速い上がりを使えるタイプの馬が好走している。
■表7 今秋の東京開催の種牡馬別成績(芝1600〜2000m)
種牡馬 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
ハーツクライ | 2- 1- 0- 6/ 9 | 22.2% | 33.3% | 33.3% | 108% | 56% |
ローエングリン | 2- 0- 0- 1/ 3 | 66.7% | 66.7% | 66.7% | 206% | 86% |
ステイゴールド | 1- 2- 2- 8/13 | 7.7% | 23.1% | 38.5% | 43% | 91% |
キングカメハメハ | 1- 0- 1- 5/ 7 | 14.3% | 14.3% | 28.6% | 20% | 67% |
ルーラーシップ | 1- 0- 1- 0/ 2 | 50.0% | 50.0% | 100.0% | 85% | 235% |
ハービンジャー | 1- 0- 0- 5/ 6 | 16.7% | 16.7% | 16.7% | 38% | 18% |
クロフネ | 1- 0- 0- 0/ 1 | 100.0% | 100.0% | 100.0% | 230% | 130% |
ディープインパクト | 0- 1- 2-14/17 | 0.0% | 5.9% | 17.6% | 0% | 29% |
ダイワメジャー | 0- 1- 0- 3/ 4 | 0.0% | 25.0% | 25.0% | 0% | 40% |
マツリダゴッホ | 0- 1- 0- 1/ 2 | 0.0% | 50.0% | 50.0% | 0% | 225% |
キンシャサノキセキ | 0- 1- 0- 1/ 2 | 0.0% | 50.0% | 50.0% | 0% | 50% |
ロードカナロア | 0- 1- 0- 0/ 1 | 0.0% | 100.0% | 100.0% | 0% | 180% |
Archarcharch | 0- 1- 0- 0/ 1 | 0.0% | 100.0% | 100.0% | 0% | 150% |
アドマイヤムーン | 0- 0- 1- 3/ 4 | 0.0% | 0.0% | 25.0% | 0% | 42% |
メイショウサムソン | 0- 0- 1- 1/ 2 | 0.0% | 0.0% | 50.0% | 0% | 120% |
ヴィクトワールピサ | 0- 0- 1- 0/ 1 | 0.0% | 0.0% | 100.0% | 0% | 240% |
その他の種牡馬 | 0- 0- 0-22/22 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
表7は今秋の東京芝中距離の種牡馬別成績。ハーツクライ産駒とローエングリン産駒が最多タイの2勝ずつで並んでいる。ハーツクライ産駒は府中牝馬Sでリスグラシューが2着、先週の富士Sでロジクライが1着と重賞での好走が目立っている。ローエングリン、ステイゴールド産駒は今回の天皇賞出走予定馬にはいなかった。
また、キングカメハメハ産駒とその子のルーラーシップ産駒が1勝ずつをあげている。なお、出走数が最も多いディープインパクト産駒は意外にも勝ち星なし。富士Sでは2・3着には入っているが、全体的な率は高くない。
<結論>
■表8 今年の天皇賞・秋の出走予定馬
馬名 | 性齢 | 前走成績 |
アクションスター | 牡8 | 毎日王冠 11着 |
アルアイン | 牡4 | オールカマー 2着 |
ヴィブロス | 牝5 | 宝塚記念 4着 |
キセキ | 牡4 | 毎日王冠 3着 |
サクラアンプルール | 牡7 | 札幌記念 6着 |
サングレーザー | 牡4 | 札幌記念 1着 |
ステファノス | 牡7 | 毎日王冠 4着 |
スワーヴリチャード | 牡4 | 安田記念 3着 |
ダンビュライト | 牡4 | オールカマー 3着 |
ブラックムーン | 牡6 | 中京記念 13着 |
マカヒキ | 牡5 | 札幌記念 2着 |
ミッキーロケット | 牡5 | 宝塚記念 1着 |
レイデオロ | 牡4 | オールカマー 1着 |
今年の出走予定馬は表8のとおり。
ワグネリアンとディアドラが回避を発表し、最大13頭と例年に比べて少頭数の一戦となりそうだ。また、前走でハナを切った馬が1頭もおらず、スローペース必至と予想される。ある程度前に行って、速い上がりでまとめられるタイプが狙い目だろう。
1番人気に支持されそうなスワーヴリチャードは3走前の金鯱賞、2走前の大阪杯で先行押し切りのレースを見せている。大阪杯は前半は後方にいたものの、向正面で一気に仕掛けて残り1000m57秒1の脚で押し切り勝ち。前走の安田記念から距離を延ばすのは歓迎で、今回も好勝負必至だろう。
レイデオロは東京コースで3戦2勝、2着1回。その2着もジャパンCで、上がり最速タイの脚を使っている。過去のオールカマー組は苦戦傾向だが、一叩きされてここは勝負がかりの一戦だろう。後方一気のタイプでもなく、中団から脚を使えるのも現在の東京芝の傾向に合っている。これら上位2頭は安定感があり、好走確率が高いだろう。
複勝圏内で狙ってみたいのがキセキとミッキーロケット。キセキは昨秋の菊花賞後にスランプに陥ったが、前走の毎日王冠で3着と復活の気配を見せた。平均ペースを先行して好走するキャラチェンジに成功しつつあり、今回も粘り込む可能性は十分にある。ミッキーロケットは前走宝塚記念1着が過小評価されている。同レースでは3着以下を3馬身離しており、今回もレースの流れに乗れれば好走しておかしくない。
ディープインパクト産駒も上位人気を占めるだろうが、表7で示した今開催勝ち星なしのデータからやや軽視して馬券を組み立ててみたい。
ライタープロフィール
ケンタロウ(けんたろう)
1978年6月、鹿児島県生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。初めて買った馬券が大当たりし、それから競馬にのめり込むように。データでは、開催日の馬場やコース適性に注目している。好きなタイプは逃げか追い込み。馬券は1着にこだわった単勝、馬単派。料理研究家ではない。