データde出〜た
第1239回 夏場に1600万クラスを勝つ3歳馬を考える
2018/8/6(月)
全国的に厳しい暑さが続く日々だが、中央競馬は毎週続いている。夏場はローカル開催がメインで、春や秋のG1シーズンとはまた一味違う競馬が繰り広げられる。今回は「上がり馬」というキーワードに基づき、夏場のレースを見ていきたい。具体的には7〜8月に行われた1600万クラスのレースを対象とし、同レースを3歳馬が勝ち上がった場合を注目してみた。最も将来性が見込めそうなパターンではあるのだが、実際にはどれぐらいの馬が勝ち、その後どのように出世しているのか。その点に注目し、データを分析したい。データの集計・分析はJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
■表1 夏場(7〜8月)の1600万を勝ち上がった3歳馬(2000年以降)
日付 | 開催 | レース名 | 芝・ダ | 距離 | 馬名 | 性別 | その後の主な成績 |
180728 | 2新1 | 佐渡SH1600 | 芝 | 2000 | グローリーヴェイズ | 牡 | ??? |
180721 | 2函5 | 函館日刊1600 | 芝 | 1200 | ダノンスマッシュ | 牡 | ??? |
160827 | 2新9 | 稲妻S1600 | 芝 | 1000 | レッドラウダ | 牡 | 韋駄天S3着 |
150718 | 3名5 | マレーシ1600 | 芝 | 2000 | リアファル | 牡 | 神戸新聞杯1着 |
140823 | 2札1 | TVh賞1600 | 芝 | 2000 | アズマシャトル | 牡 | 小倉記念1着 |
140809 | 2新3 | 越後S1600 | ダ | 1200 | エイシンゴージャス | 牝 | 栗東S1着 |
130831 | 2新B | 長岡S1600 | 芝 | 1600 | スイートサルサ | 牝 | 福島牝馬S1着 |
130706 | 3名3 | 豊明SH1600 | 芝 | 1400 | プリムラブルガリス | 牡 | |
110820 | 4新3 | 長岡SH1600 | 芝 | 1400 | ニシノステディー | 牝 | 信越S2着 |
110820 | 1札3 | ポプラH1600 | 芝 | 2000 | ショウナンマイティ | 牡 | 大阪杯1着、安田記念2着 |
110730 | 2函5 | 漁火S1600 | 芝 | 1800 | アヴェンチュラ | 牝 | 秋華賞1着 |
100814 | 3新1 | 越後SH1600 | ダ | 1200 | アースサウンド | 牝 | BSN賞1着 |
表1は夏場(7〜8月)の1600万クラスを勝ち上がった3歳馬をすべて表記した。レースの対象期間は2000年から今年7月末までのものだ。同クラスのレース数そのものがあまり多くないが、3歳馬が勝ち上がるケースはあまり多くない。3歳馬が勝利したレース数は12に対し、4歳馬は66で5歳馬は66、6歳馬は20となっている。総合的な好走率でみると4歳馬がトップで、続くのが3歳と5歳といったところだ。
最も古くは2010年に越後Sを勝ったアースサウンド。その後はアヴェンチュラ、ショウナンマイティなどが続く。それらの馬の、その後の成績を調べると興味深いことがわかる。大半の馬がその後、OPクラスでも通用する走りを見せているが、特に芝中距離を勝った馬の飛躍が目立つ。アヴェンチュラは同年の夏にクイーンSを制し、秋に秋華賞を優勝。ショウナンマイティは後に大阪杯を制し、G1の安田記念で2着。14年に札幌芝2000mのTVh賞を勝ったアズマシャトルは小倉記念、15年にマレーシアCを勝ったリアファルは次走神戸新聞杯を勝ち、菊花賞では3着に好走した。
マイル戦の長岡Sを勝ったスイートサルサも後に福島牝馬Sを勝っている。よって、一概に中距離を勝った馬だけが注目とは言えないが、夏場にこの条件を勝つような3歳馬はやはり強い。地力と将来性があり、後に重賞はもちろん、G1でも通用してくるような可能性も秘めている。
実は今年、すでに1600万クラスを勝っている3歳馬が2頭いる。函館日刊スポーツ杯を制したダノンスマッシュと、佐渡Sを勝ったグローリーヴェイズだ。前者は函館芝1200mの条件だが、すでに2歳時にOP特別のもみじSを勝利。今春マイルの重賞でも善戦している。1200mに距離を短縮したことがプラスに出た可能性も十分あり、次走以降も注目される馬だろう。
後者のグローリーヴェイズは新潟芝2000mの佐渡Sを快勝。こちらは1勝馬でありながらきさらぎ賞2着、京都新聞杯4着の実績があった。今春はクラシックで戦うことができなかったが、今後力を伸ばしてくる期待が高まる。成長度合いと、重賞挑戦の際には注目してみたい。
■表2 夏場(7〜8月)のOP特別を勝ち上がった3歳馬(2000年以降)
日付 | 開催 | レース名 | 芝・ダ | 距離 | 馬名 | 性別 | その後の主な成績 |
170702 | 1函6 | 巴賞 | 芝 | 1800 | サトノアレス | 牡 | 東京新聞杯2着 |
150829 | 2新9 | BSN賞H | ダ | 1800 | ダノンリバティ | 牡 | シリウスS2着、関屋記念2着 |
130714 | 2福6 | バーデンH | 芝 | 1200 | マイネルエテルネル | 牡 | |
120826 | 2小A | 小倉日経 | 芝 | 1800 | ダローネガ | 牡 | 中京記念3着 |
120825 | 3新5 | 朱鷺S | 芝 | 1400 | レオアクティブ | 牡 | 京成杯AH1着 |
100807 | 2函7 | みなみ北H | 芝 | 2600 | トウカイメロディ | 牡 |
ちなみにOP特別を勝っている場合はどうか。集計期間が同じで、夏場に同レースを勝ち上がった3歳馬は表2の通りだ。1600万クラスよりもレース数が少ないため、おのずと該当馬もかなり減る。2000年以降ではわずか6例にとどまる。同じように各馬のその後の成績を調べてみた。
12年に朱鷺Sを勝ったレオアクティブは次走京成杯AHを優勝したが、重賞を勝ったのはこの1頭。その他はやや物足りない成績という印象がある。ただ、サトノアレスはまだ4歳馬であり、すでに朝日杯FSのG1タイトルを持っている馬。今年の東京新聞杯は2着で、前走安田記念はかなりきつい競馬で4着に入線した。重賞2勝目は時間の問題という感じもするので、同馬の動向にも注目したいところだ。
ライタープロフィール
小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。