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第1220回 今年の穴候補は? 波乱含みの安田記念を分析する

2018/5/31(木)

今週の春の古馬マイル王決定戦・安田記念が行われる。過去10年、人気馬の上位独占は一度もなく波乱の続くこのレース。今年は信頼できる人気馬はいるのか、そしてどの馬が穴候補になるのか、過去の傾向をみてみたい。データの分析には、JRA-VAN DataLab.TARGET frontier JV馬天楼 for データde出〜た を利用した。

■表1 人気別成績

人気 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収
1 4-1-0-5/10 40.0% 50.0% 50.0% 112% 76%
2 2-1-0-7/10 20.0% 30.0% 30.0% 108% 57%
3 0-2-2-6/10 0.0% 20.0% 40.0% 0% 113%
4 0-0-0-10/10 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
5 0-2-1-7/10 0.0% 20.0% 30.0% 0% 125%
6 0-1-1-8/10 0.0% 10.0% 20.0% 0% 94%
7 1-0-0-9/10 10.0% 10.0% 10.0% 124% 38%
8 2-1-0-7/10 20.0% 30.0% 30.0% 508% 143%
9 1-0-1-8/10 10.0% 10.0% 20.0% 293% 143%
10〜 0-2-5-75/82 0.0% 2.4% 8.5% 0% 78%

2017/6/4 東京11R 安田記念(G1) 1着 14番サトノアラジン(7番人気)

過去10年、1、2番人気の連対率はそれぞれ50.0%、30.0%とさほど悪くはないが、3着がないため複勝率としては今ひとつ。この1〜2番人気(6勝)が勝てなければ、残る優勝馬4頭は7〜9番人気。さらに2桁人気馬も7頭が好走と、荒れ模様の一戦だ。また、3番人気以内のワンツー決着は10年で3回あり、09年が1→2→10番人気、13年は1→3→12番人気、そして15年も1→3→12番人気と、これらの年も3着には穴馬が食い込んでいる。馬連や馬単ならまだしも、3連単、3連複では平穏な決着はまず望めないレースと考えたい。

■表2 年齢別成績

年齢 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収 6番人気以下
3歳 1-0-0-2/3 33.3% 33.3% 33.3% 976% 236% 1-0-0-1/2
4歳 2-2-1-25/30 6.7% 13.3% 16.7% 26% 62% 0-1-1-16/18
5歳 3-3-3-45/54 5.6% 11.1% 16.7% 13% 57% 0-0-2-30/32
6歳 4-2-5-38/49 8.2% 12.2% 22.4% 142% 138% 3-1-3-30/37
7歳 0-3-1-20/24 0.0% 12.5% 16.7% 0% 77% 0-2-1-19/22
8歳以上 0-0-0-12/12 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0% 0-0-0-11/11

年齢別では、4歳から7歳まで連対率はほぼ互角。ただ、3着5回の6歳が複勝率では一歩リードする22.4%をマーク。好走11頭中7頭が7番人気以下で、単複の回収率は100%を超えている。穴の6歳馬なら、少々の減点には目をつむって狙う価値はありそうだ。また、6番人気以下の連対7頭中6頭は6〜7歳と、特に連対馬はベテランが多くなる。なお、今年は3歳馬や8歳以上馬の登録はない。

■表3 枠番別成績

枠番 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収 1〜3番人気
1枠 0-2-1-16/19 0.0% 10.5% 15.8% 0% 52% 4-2-2-1/9
2枠 2-1-3-13/19 10.5% 15.8% 31.6% 44% 145%
3枠 2-1-1-15/19 10.5% 15.8% 21.1% 41% 45%
4枠 0-0-1-18/19 0.0% 0.0% 5.3% 0% 45% 2-2-0-17/21
5枠 3-1-0-16/20 15.0% 20.0% 20.0% 213% 66%
6枠 0-2-2-16/20 0.0% 10.0% 20.0% 0% 183%
7枠 2-1-1-23/27 7.4% 11.1% 14.8% 154% 65%
8枠 1-2-1-25/29 3.4% 10.3% 13.8% 47% 71%

枠番別の成績を見ると、まず4枠が連対なしの3着1回と不振。11年のアパパネ6着、12年のサダムパテック9着と1番人気2頭を含む、3番人気以内計7頭がすべて馬券圏外と、人気馬もこの枠では苦戦している。一方、その3番人気以内の好成績が目立つのが1〜3枠で【4.2.2.1】。10年の1番人気・リーチザクラウン14着以外はすべて馬券に絡んで複勝率は88.9%を記録する。

■表4 前走クラス・レース別成績(レースは好走馬輩出レース)

前走 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収
1600万下 0-0-0-1/1 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
OPEN特別 1-0-0-13/14 7.1% 7.1% 7.1% 99% 33%
G3 2-0-0-9/11 18.2% 18.2% 18.2% 369% 66%
G2 2-7-10-74/93 2.2% 9.7% 20.4% 20% 96%
G1 4-1-0-24/29 13.8% 17.2% 17.2% 135% 117%
海外(日本馬) 1-1-0-3/5 20.0% 40.0% 40.0% 34% 48%
海外(外国馬) 0-1-0-17/18 0.0% 5.6% 5.6% 0% 26%
京王杯SC 2-3-2-32/39 5.1% 12.8% 17.9% 48% 76%
ヴィクトリアM 2-0-0-12/14 14.3% 14.3% 14.3% 42% 21%
ダービー卿CT 2-0-0-4/6 33.3% 33.3% 33.3% 676% 121%
高松宮記念 1-0-0-5/6 16.7% 16.7% 16.7% 66% 33%
NHKマイルC 1-0-0-2/3 33.3% 33.3% 33.3% 976% 236%
メイS 1-0-0-0/1 100.0% 100.0% 100.0% 1390% 470%
ドバイターフ 1-0-0-1/2 50.0% 50.0% 50.0% 85% 55%
大阪杯 0-2-1-6/9 0.0% 22.2% 33.3% 0% 104%
チャンピオンズM 0-2-0-17/19 0.0% 10.5% 10.5% 0% 31%
マイラーズC 0-1-7-34/42 0.0% 2.4% 19.0% 0% 110%
中山記念 0-1-0-3/4 0.0% 25.0% 25.0% 0% 110%
マイルCS 0-1-0-0/1 0.0% 100.0% 100.0% 0% 2200%

前走クラス別では、G2組の好走が多いものの、勝率はわずか2.2%。特にマイラーズC組は【0.1.7.34】と、3着7頭を数えながら、連対は10年のスーパーホーネット1頭のみに終わっているのは気に掛かるデータだ。

■表5 前走マイラーズC組の成績

チェック項目 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収
前走タイム差 0-0-0-7/7 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
負0.0 0-0-0-4/4 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
負0.1〜0.2 0-0-2-9/11 0.0% 0.0% 18.2% 0% 127%
負0.3〜0.5 0-0-4-5/9 0.0% 0.0% 44.4% 0% 224%
負0.6〜0.9 0-1-1-3/5 0.0% 20.0% 40.0% 0% 246%
負1.0〜 0-0-0-6/6 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
今回人気 1〜2人気 0-0-0-7/7 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
3人気以下 0-1-7-27/35 0.0% 2.9% 22.9% 0% 132%
年齢 4歳 0-0-0-7/7 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
5歳以上 0-1-7-27/35 0.0% 2.9% 22.9% 0% 132%

そのマイラーズC組の成績を調べると、馬券に絡めないタイプがはっきりと傾向として出ている。まず同レースの内容では、優勝馬か、タイム差なしの接戦をした馬(そして1秒以上の大敗馬)。そして今回1〜2番人気に推された馬。さらに4歳馬もすべて凡走しており、これらの馬は3着候補としても苦しくなる。

■表6 前走京王杯スプリングC組の成績(脚質はTarget frontier JVによる分類)

前走脚質・上がり 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収
逃げ 0-0-0-1/1 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
先行 0-0-0-10/10 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
中団 0-1-0-14/15 0.0% 6.7% 6.7% 0% 28%
後方 2-2-2-7/13 15.4% 30.8% 46.2% 146% 196%
3F 1位 0-2-1-2/5 0.0% 40.0% 60.0% 0% 200%
3F 2位 2-1-1-5/9 22.2% 33.3% 44.4% 212% 220%
3F 3位〜 0-0-0-25/25 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%

同じくG2・京王杯スプリングC組は、昨年の本コーナーでケンタロウ氏が大いに参考になるデータを紹介していたので、それをお借りする。この組は、好走7頭すべてが前走の上がり3ハロン1〜2位馬で、7頭中6頭が前走「後方」からの追い込み馬。前々から速い脚を使った馬ではなく、末脚勝負で3ハロン1〜2位を記録した馬が狙いだ。

■表7 前走G1からの好走馬(日本馬)

馬名 人気 着順 前走 人気 着順 G1実績 主なマイルG1
08 ウオッカ 2 1 ヴィクトリアM 1 2 2勝 阪神JF
09 ウオッカ 1 1 ヴィクトリアM 1 1 5勝 安田記念
11 リアルインパクト(3歳) 9 1 NHKマイルC 4 3 未勝利 朝日杯2着
13 ロードカナロア 1 1 高松宮記念 1 1 3勝 未経験
14 ジャスタウェイ 1 1 ドバイDF(現ドバイターフ) 1 2勝 NHK6着
グランプリボス 16 2 マイルCS 7 9 2勝 NHKマイルC
16 モーリス 1 2 チャンピオンズM 1 4勝 安田記念

続いて表7は、前走海外を含むG1からの好走馬(日本馬)。キャリアの浅かった3歳馬・リアルインパクトを除けばG1実績がポイントとなり、G1・3勝以上なら文句なし。G1・2勝馬なら、その2勝にマイルG1か海外G1が含まれることが条件だ。加えて、前走で馬券に絡んでいることが望ましい。 なお、外国馬のべ18頭はすべて前走G1のチャンピオンズマイル(香港)で、計【0.1.0.17】と苦戦している。2着になった08年のアルマダは同レース2着だが、同レースで連対した外国馬にかぎっても【0.1.0.8】に終わっており狙いづらい。

■表8 前走G3、オープン特別からの好走馬

馬名 人気 着順 前走 人気 着順 G1実績 近走内容
10 ショウワモダン 8 1 メイS 6 1 未経験 2連勝中
15 モーリス 1 1 ダービー卿CT 1 1 未経験 3連勝中
16 ロゴタイプ 8 1 ダービー卿CT 4 2 朝日杯・皐月賞

最後に、前走G3以下からの好走馬3頭が表8である。ロゴタイプはG1・2勝の実績馬ながらG3のハンデ戦・ダービー卿チャレンジTに出走し、58キロで2着と結果を出して参戦したパターンだった。残る2頭は連勝中で、10年のショウワモダンは前々走がダービー卿チャレンジT1着。つまりG1実績のない馬なら、ダービー卿チャレンジTを含む連勝中であることが好走条件だ。いずれにしても、同レース連対が最低条件になるのがこの組だ。

【結論】

2016/12/18 阪神11R 朝日杯FS(G1) 1着 17番 サトノアレス

人気馬の上位独占は過去10年1度もない安田記念。人気馬で信頼性が高いのは1〜3枠を引いた馬。6番人気以下の穴馬は連対7頭中6頭を6〜7歳馬が占める。マイラーズC組は好走しても3着までが多く、前走好走馬や今回の人気馬は不振。京王杯スプリングCは脚質がカギになる。前走G1なら、一定のG1実績が必要だ。

今年は一長一短のメンバー構成だが、まず好走の多いG2組から挙げれば、一昨年の2歳王者・サトノアレス。4頭の登録があった藤沢和雄厩舎は、京王杯スプリングCを制したムーンクエイクなど3頭が回避とのことだが(本稿執筆時点)、本馬は京王杯スプリングCで後方から上がり32秒7(メンバー中2位)で追い込んで3着と、表6の好走条件をクリアするこの馬だけが残った形だ。G2組の勝率が低いこと(表4)に加え、優勝馬は1〜2番人気以外なら7〜9番人気(表1)という条件に当たるかも微妙だが、馬連や3連複の軸としては十分に推せる存在だ。

また、表は掲載しなかったが、ここ4年(14年以降)の6番人気以下の好走馬7頭はすべて6歳以上、かつマイルG1で4着以内の実績馬。そこで狙ってみたいのは、昨年本競走3着の7歳馬・レッドファルクス。他の前走G1組はG1・1勝以下の馬ばかりの中、本馬はG1・2勝に本競走3着と、表7で記したG1実績に準ずる成績は残しているだけに楽しみはある。

ほかに穴の期待がかかるのは、「ダービー卿チャレンジTを含む連勝」(表8)を飾ってきたヒーズインラブ。また、マイラーズC組(表5)ではタイム差こそ1秒以上だが、今回人気薄で5歳以上と2つの条件はクリアするダッシングブレイズブラックムーンもおもしろい。両馬とも、穴馬の好走が多い6歳馬だ(表2)。

なお、レッドファルクス以外の前走G1組は前述の通り表7からはやや苦しいが、前走G1組は高回収率(表4)を記録する上、1〜3枠の人気馬がほとんど好走していることから(表3)、枠順も踏まえて最終的な取捨は判断したい。

ライタープロフィール

浅田知広(あさだ ともひろ)

1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。


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