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第1214回 波乱傾向が強いヴィクトリアマイルを分析する
2018/5/10(木)
今週は東京競馬場で春のマイル女王決定戦、ヴィクトリアマイルが行われる。15年には最低人気だったミナレットが逃げて激走し、3連単2000万円超の大波乱となった。昨年は6番人気アドマイヤリードが勝利。1番人気ミッキークイーンは7着に敗れるなど、波乱の結末となっている。このように波乱傾向が強い一戦を過去10年のデータから分析し、馬券で狙える馬を探っていきたい。なお、データ分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
■表1 ヴィクトリアMの人気別成績(過去10年)
人気 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
1番人気 | 3- 3- 0- 4/ 10 | 30.0% | 60.0% | 60.0% | 63% | 76% |
2番人気 | 1- 0- 1- 8/ 10 | 10.0% | 10.0% | 20.0% | 41% | 29% |
3番人気 | 0- 1- 2- 7/ 10 | 0.0% | 10.0% | 30.0% | 0% | 72% |
4番人気 | 1- 0- 1- 8/ 10 | 10.0% | 10.0% | 20.0% | 72% | 43% |
5番人気 | 2- 0- 1- 7/ 10 | 20.0% | 20.0% | 30.0% | 275% | 115% |
6番人気 | 1- 0- 1- 8/ 10 | 10.0% | 10.0% | 20.0% | 135% | 93% |
7番人気 | 1- 1- 2- 6/ 10 | 10.0% | 20.0% | 40.0% | 177% | 184% |
8番人気 | 0- 1- 0- 9/ 10 | 0.0% | 10.0% | 10.0% | 0% | 85% |
9番人気 | 0- 0- 0- 10/ 10 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
10番人気以下 | 1- 4- 2- 81/ 88 | 1.1% | 5.7% | 8.0% | 32% | 168% |
まず表1は過去10年の人気別成績。1番人気馬は13年ヴィルシーナら3勝で、連対率・複勝率60%とまずまず。対して、2番人気馬は11年アパパネの1勝のみで、複勝率20%と低い。以下、5番人気馬が2勝、4・6・7・11番人気馬が1勝ずつ。昨年は6番人気のアドマイヤリードが勝つなど、中位人気馬による勝利が多い。
また、2・3着馬は下位人気馬で幅広く分布している。昨年は11番人気デンコウアンジュが2着に激走するなど、黄色で強調したように10番人気以下の激走が目立っている。15年には5番人気ストレイトガールが勝利し、2着に12番人気ケイアイエレガント、3着に18番人気ミナレットが激走。3連単2070万5810円の超高配当も飛び出している。昨年も人気順で6→11→7番人気で3連単91万8700円の波乱。近5年中4年で3連単10万円以上の配当となるなど波乱傾向が強い一戦だ。
■表2 ヴィクトリアM出走馬の所属別成績(過去10年)
調教師分類 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
美浦 | 2- 2- 3- 60/ 67 | 3.0% | 6.0% | 10.4% | 16% | 181% |
栗東 | 8- 8- 7- 88/111 | 7.2% | 14.4% | 20.7% | 84% | 86% |
続いて表2は出走馬の所属別成績。出走数が多い栗東所属の関西馬が昨年のアドマイヤリードら過半数の8勝をあげ、連対率・複勝率でも関東馬を大きく上回っている。近2年連続で1〜3着を独占しており、毎年1頭は3着以内に入っている。
ただし、美浦所属の関東馬は複勝率こそ低いものの、複勝回収率では100%を大きく超えている。というのも、関東馬の3着以内馬7頭中4頭が10番人気以下の人気薄での激走だったため。15年最低人気で3着に逃げ粘ったミナレットも該当しており、関東馬の人気薄での激走には注意しておきたい。
■表3 ヴィクトリアMの前走レース別成績(過去10年)
前走レース名 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
阪神牝馬S | 4- 3- 3-53/63 | 6.3% | 11.1% | 15.9% | 115% | 76% |
中山牝馬S | 1- 1- 2-10/14 | 7.1% | 14.3% | 28.6% | 51% | 124% |
大阪杯 | 1- 1- 1- 2/ 5 | 20.0% | 40.0% | 60.0% | 62% | 120% |
ドバイDF | 1- 1- 0- 0/ 2 | 50.0% | 100.0% | 100.0% | 85% | 125% |
高松宮記念 | 1- 0- 1- 8/10 | 10.0% | 10.0% | 20.0% | 141% | 98% |
マイラーズC | 1- 0- 0- 6/ 7 | 14.3% | 14.3% | 14.3% | 58% | 17% |
ドバイSC | 1- 0- 0- 1/ 2 | 50.0% | 50.0% | 50.0% | 75% | 55% |
福島牝馬G3 | 0- 2- 2-35/39 | 0.0% | 5.1% | 10.3% | 0% | 293% |
ドバイWC | 0- 1- 0- 1/ 2 | 0.0% | 50.0% | 50.0% | 0% | 55% |
京都牝馬S | 0- 1- 0- 2/ 3 | 0.0% | 33.3% | 33.3% | 0% | 340% |
卯月S(1600万下) | 0- 0- 1- 0/ 1 | 0.0% | 0.0% | 100.0% | 0% | 550% |
その他のレース | 0- 0- 0-30/30 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
表3は前走レース別成績。出走数が多いのが阪神牝馬S組と福島牝馬S組。阪神牝馬S組は昨年のアドマイヤリードら最多の4勝をあげている。連対率・複勝率はそれほど高くないものの、一昨年は1・2着馬、昨年は1・3着馬が該当している。また、福島牝馬S組は勝ち星こそないものの、2・3着馬が2回ずつ。この組の3着以内馬4頭中3頭が10番人気以下の人気薄で、複勝回収率は非常に高い。複勝率こそ低いものの、レベルが低い前哨戦と見られており、その分人気薄での好走が目立っている。
その他では中山牝馬Sから12年ホエールキャプチャが勝利。大阪杯・ドバイDF・高松宮記念・マイラーズC・ドバイSCといった前走牡馬混合重賞からも半数の5勝をあげている。これら前走牡馬混合重賞組にも注目しておきたい。
■表4 阪神牝馬S組の好走馬の前走成績(過去10年)
年度 | 着順 | 人気 | 馬名 | 前走着順 | 前走人気 |
2017 | 1 | 6 | アドマイヤリード | 2 | 3 |
3 | 7 | ジュールポレール | 3 | 4 | |
2016 | 1 | 7 | ストレイトガール | 9 | 3 |
2 | 1 | ミッキークイーン | 2 | 1 | |
2014 | 1 | 11 | ヴィルシーナ | 11 | 5 |
2013 | 2 | 12 | ホエールキャプチャ | 14 | 6 |
2012 | 3 | 3 | マルセリーナ | 2 | 2 |
2010 | 2 | 8 | ヒカルアマランサス | 13 | 3 |
2008 | 1 | 5 | エイジアンウインズ | 1 | 5 |
3 | 4 | ブルーメンブラット | 2 | 1 |
表4は出走数最多の阪神牝馬S組の3着以内馬の前走成績。まずこれら10頭のヴィクトリアMでの着順と人気を見ると、大半の8頭が人気以上に走っている。また、前走での人気を見ると、13年ホエールキャプチャ以外の9頭は5番人気以内に推されていた。
つまり、前走阪神牝馬Sで5番人気以内に推されていて、本番で人気を落とした馬の好走が目立っている。この中には前年に優勝していた13年ホエールキャプチャ、14年ヴィルシーナも該当している。
■表5 福島牝馬S組の好走馬と前走成績(過去10年)
年度 | 着順 | 人気 | 馬名 | 前走着順 |
2017 | 2 | 11 | デンコウアンジュ | 4着 |
2015 | 3 | 18 | ミナレット | 5着 |
2013 | 3 | 5 | マイネイサベル | 2着 |
2009 | 2 | 11 | ブラボーテイジー | 1着 |
表5は福島牝馬S組の3着以内馬と前走成績。昨年のデンコウアンジュをはじめ4頭いずれも前走で5着以内には入っていた。表4の阪神牝馬S組とは違って、前走で掲示板を確保しているのが必須条件といえる。
なお、デンコウアンジュ以外の3頭はヴィクトリアMで逃げもしくは先行して馬券圏内に入っていた。
■表6 ヴィクトリアMの種牡馬別成績(過去10年)
種牡馬 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
フジキセキ | 3- 0- 1- 2/ 6 | 50.0% | 50.0% | 66.7% | 753% | 281% |
ディープインパクト | 2- 2- 3-16/23 | 8.7% | 17.4% | 30.4% | 136% | 101% |
クロフネ | 1- 2- 0- 9/12 | 8.3% | 25.0% | 25.0% | 60% | 186% |
キングカメハメハ | 1- 1- 1-15/18 | 5.6% | 11.1% | 16.7% | 22% | 74% |
タニノギムレット | 1- 1- 1- 2/ 5 | 20.0% | 40.0% | 60.0% | 34% | 234% |
スペシャルウィーク | 1- 1- 0- 1/ 3 | 33.3% | 66.7% | 66.7% | 50% | 73% |
ステイゴールド | 1- 0- 0- 8/ 9 | 11.1% | 11.1% | 11.1% | 150% | 48% |
スズカマンボ | 0- 1- 1- 2/ 4 | 0.0% | 25.0% | 50.0% | 0% | 2195% |
アグネスタキオン | 0- 1- 0- 7/ 8 | 0.0% | 12.5% | 12.5% | 0% | 106% |
メイショウサムソン | 0- 1- 0- 1/ 2 | 0.0% | 50.0% | 50.0% | 0% | 790% |
フレンチデピュティ | 0- 0- 1- 3/ 4 | 0.0% | 0.0% | 25.0% | 0% | 137% |
テレグノシス | 0- 0- 1- 1/ 2 | 0.0% | 0.0% | 50.0% | 0% | 180% |
アドマイヤベガ | 0- 0- 1- 0/ 1 | 0.0% | 0.0% | 100.0% | 0% | 210% |
マンハッタンカフェ | 0- 0- 0-11/11 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
ハーツクライ | 0- 0- 0- 4/ 4 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
ダイワメジャー | 0- 0- 0- 4/ 4 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
その他の種牡馬 | 0- 0- 0-62/62 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
表6はヴィクトリアMの種牡馬別成績。フジキセキ産駒が最多の3勝をあげており、15年・16年ストレイトガールによる連覇がある。ディープインパクト産駒は13年・14年にヴィルシーナが連覇し、昨年もジュールポレールが3着と好走している。同じ産駒でも多くの馬が好走している方がレースとの相性が良く、その点でディープインパクト産駒は好相性といえるだろう。
その他ではクロフネ、キングカメハメハ、タニノギムレットなどNHKマイルCで上位に入った馬の産駒から勝ち馬が出ている。なお、マンハッタンカフェ産駒はレッドディザイアやルージュバックといった上位人気馬がいながら馬券圏内はなし。ハーツクライ、ダイワメジャー産駒からも3着以内馬が出ていないが、サンプル数が少ないだけにあまり気にすることはないだろう。
■表7 ヴィクトリアMのリピーター好走馬一覧(過去10年)
馬名 | 好走した年の成績と人気 |
ストレイトガール | 14年3着(6番人気),15年1着(5番人気),16年1着(7番人気) |
ヴィルシーナ | 13年1着(1番人気),14年1着(11番人気) |
ホエールキャプチャ | 12年1着(4番人気),13年2着(12番人気) |
ブエナビスタ | 10年1着(1番人気),11年2着(1番人気) |
ウオッカ | 08年2着(1番人気),09年1着(1番人気) |
最後に表7は過去10年で複数年好走したリピーター馬の一覧。ウオッカやブエナビスタといった名牝は2年連続で1番人気に推されていたが、ホエールキャプチャ、ヴィルシーナ、ストレイトガールの3頭は前年に優勝しながら、2年目では人気を落としていた。
それだけ前走を含めて中間のレースで負けていたので人気を落としていたわけだが、それら3頭もヴィクトリアMに合わせて復活している。また、これらリピーター馬はすべて前年に1着だった。中間の成績が悪くても、前年の勝ち馬には注目しておきたい。
【結論】
■表8 今年のヴィクトリアMの出走予定馬(5/9現在)
馬名 | 所属 | 前走成績 |
アエロリット | 美浦 | 中山記念 2着 |
アドマイヤリード | 栗東 | 阪神牝馬S 4着 |
エテルナミノル | 栗東 | 阪神牝馬S 8着 |
カワキタエンカ | 栗東 | 福島牝馬S 2着 |
クインズミラーグロ | 栗東 | 阪神牝馬S 13着 |
ジュールポレール | 栗東 | 阪神牝馬S 5着 |
ソウルスターリング | 美浦 | 阪神牝馬S 10着 |
デアレガーロ | 美浦 | 京都牝馬S 2着 |
デンコウアンジュ | 栗東 | 福島牝馬S 3着 |
ミスパンテール | 栗東 | 阪神牝馬S 1着 |
メイズオブオナー | 栗東 | うずしおS(1600万下) 1着 |
ラビットラン | 栗東 | 阪神牝馬S 9着 |
リエノテソーロ | 美浦 | 高松宮記念 14着 |
リスグラシュー | 栗東 | 阪神牝馬S 3着 |
レッツゴードンキ | 栗東 | 高松宮記念 2着 |
レッドアヴァンセ | 栗東 | 阪神牝馬S 2着 |
レーヌミノル | 栗東 | 高松宮記念 7着 |
ワントゥワン | 栗東 | 阪神牝馬S 12着 |
今年の出走予定馬は表8のとおり。
過去10年でウオッカやブエナビスタといった名牝でも敗れることがあり、特に近5年は波乱傾向が強くなっている。それだけ各馬の実力差が接近しており、ペースや展開によって結果が大きく変わる可能性が高いことを表している。
これまでのデータから推奨したいのがカワキタエンカ。前走福島牝馬Sは2着に敗れたものの、逃げ馬には厳しい流れだった。昨秋にはローズSでリスグラシューやミスパンテールに先着しているように、地力は高い。前走福島牝馬Sの好走パターンにも合致し、血統的にもディープインパクト産駒で母父クロフネと東京マイルの適性は高いだろう。人気薄で逃げての粘り込みに期待したい。
リピーター馬に注目ということでアドマイヤリードも狙いたい一頭だ。昨年はやや重で馬場が味方したと思われているが、速い時計にも対応できる。近2走は12着、4着と敗れているが、この一戦に照準を合わせてきている。昨年の覇者の巻き返しにも注意だ。
他ではクロフネ産駒で昨年のNHKマイルCを勝っているアエロリット、ディープインパクト産駒で先週半弟のレッドヴェイロンが好走したレッドアヴァンセ、昨年の桜花賞馬で今回かなり人気を落としそうなレーヌミノルあたりも上位評価しておきたい。
ライタープロフィール
ケンタロウ(けんたろう)
1978年6月、鹿児島県生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。初めて買った馬券が大当たりし、それから競馬にのめり込むように。データでは、開催日の馬場やコース適性に注目している。好きなタイプは逃げか追い込み。馬券は1着にこだわった単勝、馬単派。料理研究家ではない。