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第1202回 G1昇格2年目の大阪杯を展望する

2018/3/29(木)

今週から春のG1シリーズが開幕する。その初戦は大阪杯。キタサンブラックが貫禄を見せた昨年に続き、今年もJCホースのシュヴァルグランや復活を期すサトノダイヤモンドなど、かなりのメンバーが揃った。ただし、集計対象を過去10年にすると、データの大半がG2時代のものとなってしまう。G1となって重みを増した現在、G2時代のデータがそのまま使えるかといえば疑問も残る。そこで今回は、G1となった昨年の結果だけを参考にして、データからの有力馬を探してみたい。キーワードは「芝2000m重賞実績」と「阪神芝実績」のふたつだ。データの分析には、JRA-VAN DataLab.TARGET frontier JVを利用した。

■表1 2017年大阪杯の結果

着順 人気 馬名 性齢 芝2000m重賞実績 阪神芝実績
着別度数 複勝率 主な実績 着別度数 複勝率
1 1 キタサンブラック 牡5 【0.1.1.0】 100.0% 15年皐月賞3着、16年産経大阪杯2着 【0.1.1.0】 100.0%
2 7 ステファノス 牡6 【0.2.1.2】 60.0% 15年天皇賞・秋2着、16年天皇賞・秋3着 【1.1.1.1】 75.0%
3 4 ヤマカツエース 牡5 【4.0.1.4】 55.6% 16年金鯱賞1着、17年金鯱賞1着など 【0.0.0.4】 0.0%
4 2 マカヒキ 牡4 【1.1.0.0】 100.0% 16年弥生賞1着、16年皐月賞2着 (初出走)
5 5 アンビシャス 牡5 【1.0.0.2】 33.3% 16年産経大阪杯1着 【2.0.1.1】 75.0%
6 3 サトノクラウン 牡5 【1.0.0.3】 25.0% 15年弥生賞1着 【0.0.0.1】 0.0%
7 6 ミッキーロケット 牡4 【0.0.0.1】 0.0%   【0.2.0.0】 100.0%
8 11 モンドインテロ 牡5 (初出走) (初出走)
9 14 アングライフェン 牡5 【0.0.0.4】 0.0%   【0.1.0.2】 33.3%
10 13 ディサイファ 牡8 【2.1.1.3】 57.1% 15年札幌記念1着、15年中日新聞杯1着 【0.1.0.1】 50.0%
11 12 スズカデヴィアス 牡6 【0.0.1.2】 33.3% 17年金鯱賞3着 【1.0.0.3】 25.0%
12 8 マルターズアポジー 牡5 【1.0.0.0】 100.0% 16年福島記念1着 (初出走)
13 9 サクラアンプルール 牡6 (初出走) (初出走)
14 10 ロードヴァンドール 牡4 【0.1.0.0】 100.0% 17年金鯱賞2着 【1.1.1.1】 75.0%
※16年産経大阪杯はG2の格付け

表1は、昨年の大阪杯の全着順に加えて、出走全馬の「芝2000m重賞実績」と「阪神芝実績」を示したものだ。

まずは「芝2000m重賞実績」から見ていこう。最初に注目すべきは、昨年は「芝2000mG1で3着以内」か「芝2000mG2で1着」の実績を持っていた馬が1〜6着を占めたこと。勝ったキタサンブラックには対しては、レース前は距離が短いのではないかと不安視する声も聞かれたが、皐月賞3着と芝2000mG1でもちゃんと実績を持っていた。7番人気ながら2着に入ったステファノスも、天皇賞・秋で2年連続好走を果たしていた馬。やはり、大阪杯と同じ芝2000mG1の天皇賞・秋や皐月賞で好走したことのある馬は、その実績を軽んじないほうがよさそうだ。また、3着のヤマカツエースにはG1の好走歴こそなかったものの、金鯱賞連覇を含む芝2000m重賞4勝と、この距離ではかなりの実績を持っていた。

また、芝2000m重賞における複勝率にも注目したい。昨年1着のキタサンブラックから4着のマカヒキまでは複勝率50%を超えていたのに対して、5着のアンビシャスは複勝率33.3%、6着のサトノクラウンも同25.0%と、1〜4着馬に比べて数字が若干見劣っていた。

次に「阪神芝実績」に目を移すと、1着のキタサンブラックは複勝率100.0%、2着のステファノスも同75.0%と、いずれも阪神芝でハイレベルな成績を残していたことがわかる。つまり、昨年の大阪杯では、芝2000m重賞実績、阪神芝実績ともに申し分ない2頭が連対を果たしたということになる。

対して3着のヤマカツエースは、阪神では4戦して好走したことがなく、1、2着馬とは阪神適性の差があった。また、前述したアンビシャスのほか、ミッキーロケットやロードヴァンドールは、阪神芝実績は十分あったものの、芝2000m重賞実績で見劣ったぶん好走には至らなかったと考えてよさそうだ。

【結論】

■表2 2018年大阪杯の登録馬

馬名 性齢 芝2000m重賞実績 阪神芝実績
着別度数 複勝率 主な実績 着別度数 複勝率
アルアイン 牡4 【1.0.0.0】 100.0% 17年皐月賞1着 【2.0.0.0】 100.0%
ウインブライト 牡4 【1.1.0.1】 66.7% 17年福島記念1着、18年中山金杯2着 (初出走)
ゴールドアクター 牡7 (初出走) 【0.1.0.0】 100.0%
サトノダイヤモンド 牡5 【0.0.2.0】 100.0% 16年皐月賞3着、18年金鯱賞3着 【3.0.0.0】 100.0%
サトノノブレス 牡8 【3.2.2.3】 70.0% 16年鳴尾記念1着、16年中日新聞杯1着など 【1.0.2.2】 60.0%
シュヴァルグラン 牡6 【0.0.1.0】 100.0% 14年京都2歳S3着 【3.2.1.3】 66.7%
スマートレイアー 牝8 【0.2.0.1】 66.7% 13年秋華賞2着、17年鳴尾記念2着 【6.1.0.2】 77.8%
スワーヴリチャード 牡4 【1.0.0.1】 50.0% 18年金鯱賞1着 【1.1.0.0】 100.0%
ダンビュライト 牡4 【0.0.2.0】 100.0% 17年皐月賞3着、17年弥生賞3着 【1.0.0.2】 33.3%
トリオンフ セ4 (初出走) 【0.1.0.1】 50.0%
ペルシアンナイト 牡4 【0.1.0.0】 100.0% 17年皐月賞2着 【1.0.0.0】 100.0%
マサハヤドリーム 牡6 【0.0.0.3】 0.0%   【1.1.0.4】 33.3%
マルターズアポジー 牡6 【1.0.0.2】 33.3% 16年福島記念 【0.0.0.1】 0.0%
ミッキースワロー 牡4 (初出走) (初出走)
メートルダール 牡5 【1.0.2.1】 75.0% 17年中日新聞杯1着 (初出走)
ヤマカツエース 牡6 【4.0.3.6】 53.8% 17年大阪杯3着、17年金鯱賞1着など 【0.0.1.4】 20.0%
ヤマカツライデン 牡6 【0.0.1.0】 100.0% 17年函館記念3着 【1.3.0.2】 66.7%

2017/4/16 中山11R 皐月賞(G1) 1着 11番 アルアイン

表2は、今年の大阪杯登録馬の「芝2000m重賞実績」と「阪神芝実績」を表したもの。両方にしっかりとした実績を残している馬を挙げていきたい。

注目は、4頭出しとなりそうな池江泰寿厩舎。登録があった17頭中、唯一の芝2000mG1勝ち馬となったのがアルアインで、毎日杯を含む2戦2勝と阪神適性も高い。そのアルアインが勝った昨年の皐月賞で2着だったペルシアンナイトも、阪神は1戦のみながらアーリントンCを快勝している。前走の金鯱賞3着で復調の兆しを見せたサトノダイヤモンドにも皐月賞3着があり、阪神は重賞2勝を含む3戦3勝の得意コース。8歳馬のサトノノブレスにしても、芝2000m重賞で3勝、複勝率70.0%と実績があり、うち1勝は大阪杯と同コースの鳴尾記念で阪神適性も十分。この池江厩舎勢4頭は、どの馬にもチャンスがありそうだ。

2018/3/11 中京11R 金鯱賞(G2) 1着 9番 スワーヴリチャード

G1初勝利を目指すスワーヴリチャードは、前走の金鯱賞で芝2000mG2勝ちを決め、条件を整えた。阪神でも新馬戦と未勝利戦ではあるものの、【1.1.0.0】と最低限の適性は見せている。ご存知の通り、これまでの重賞実績は左回りに集中おり、右回りの克服がカギとなるが、ここでG1制覇を飾っても誰も驚かないだろう。

もちろん、JC勝ち馬のシュヴァルグランが現役トップクラスの実力の持ち主であることは疑いようがない。ただし、芝2000m戦は出走自体が3歳8月以来。昨年、同じように距離への不安が囁かれたキタサンブラックには芝2000mG1実績があったが、こちらは京都2歳S3着があるのみで、今回のデータからは強気にはなれないところだ。逆に、昨年3着のヤマカツエースは芝2000mには自信も、阪神芝の実績がひと息。今年は芝2000m重賞実績と阪神芝実績を兼ね備えた馬が多く、昨年より厳しい戦いになるかもしれない。昨年の皐月賞で3着のダンビュライトも、阪神芝では複勝率33.3%にとどまっている。

最後に触れておきたいのがスマートレイアー。芝2000mG1の秋華賞で2着の実績があり、阪神でもメンバー最多の6勝を挙げている。常識的には苦しい8歳牝馬だが、一応マークはしておきたい。

ライタープロフィール

出川塁(でがわ るい)

1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。


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