データde出〜た
第1191回 阪神芝1400mの重賞における脚質傾向の違いとは?
2018/2/19(月)
今週は日曜日に阪神競馬場で阪急杯が行われる。高松宮記念へ向けての前哨戦で、阪神芝1400mが舞台となっている。同じコースでは古馬G2の阪神C、そして桜花賞トライアルのフィリーズレビューが重賞として組まれている。それぞれのレースにおける脚質傾向を調べると、興味深い結果が出た。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用。過去10年のデータを対象に分析した。
■表1 阪急杯の脚質別成績(過去10年)
脚質 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収率 | 複回収率 |
逃げ | 3- 1- 0- 6/ 10 | 30.0% | 40.0% | 40.0% | 132 | 75 |
先行 | 2- 2- 3- 31/ 38 | 5.3% | 10.5% | 18.4% | 56 | 64 |
差し | 4- 6- 4- 44/ 58 | 6.9% | 17.2% | 24.1% | 69 | 96 |
追い込み | 1- 1- 3- 47/ 52 | 1.9% | 3.8% | 9.6% | 12 | 75 |
まずは阪急杯の脚質別成績(過去10年)を見ていくことにする。勝ち馬の数は追い込み以外にバラけている。ただ、勝率としては逃げ馬が30.0%と最も高い。それに伴い連対率と複勝率が40%という成績。これは阪神芝1400mの一般的な傾向に近い印象を受ける。比較的人気サイドが強く、16年にはミッキーアイルが1番人気で逃げ切っている。
■表2 阪神Cの脚質別成績(過去10年)
脚質 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収率 | 複回収率 |
逃げ | 1- 1- 0- 8/ 10 | 10.0% | 20.0% | 20.0% | 154 | 101 |
先行 | 2- 5- 1- 31/ 39 | 5.1% | 17.9% | 20.5% | 31 | 73 |
差し | 6- 3- 6- 59/ 74 | 8.1% | 12.2% | 20.3% | 96 | 90 |
追い込み | 1- 2- 2- 47/ 52 | 1.9% | 5.8% | 9.6% | 15 | 56 |
ところが阪神Cでの脚質傾向は違う。表2を見ると逃げ馬の成績は【1.1.0.8】。勝率はわずか10%。一応トップではあるが、阪急杯に比べるとかなり落ち込む。連対率もトップではあるが20.0%という成績が出た。両レースの施行時期は比較的近く、出走馬の質も似通っている面もあるのだが、脚質傾向は違った。阪神Cでは差し馬の成績が【6.3.6.59】で、勝ち馬の数としては最も多い。連対率では阪急杯が17.2%で、阪神Cが12.2%。複勝率の成績も比較すると、差し馬が優勢とは言えないのだが、勝ち切るシーンは阪急杯よりも阪神Cが多いということになる。
先行馬を比較すると勝率はほぼ互角。連対率と複勝率では若干阪神Cの方が高い。逃げ馬の成績は落ちるものの、好位から粘り込む形が功を奏しそうな印象だ。
■表3 フィリーズレビューの脚質別成績(過去10年)
脚質 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収率 | 複回収率 |
逃げ | 0- 1- 2- 7/ 10 | 0.0% | 10.0% | 30.0% | 0 | 660 |
先行 | 4- 2- 4- 29/ 39 | 10.3% | 15.4% | 25.6% | 140 | 131 |
差し | 0- 5- 1- 56/ 62 | 0.0% | 8.1% | 9.7% | 0 | 28 |
追い込み | 6- 2- 3- 44/ 55 | 10.9% | 14.5% | 20.0% | 179 | 75 |
表3は過去10年のフィリーズレビューにおける脚質別成績。こちらは3歳牝馬の限定戦。施行時期は阪急杯とかなり近い。しかし、同レースにおける差し馬の成績は【0.5.1.56】。不思議と勝ち馬が出ていない。その分、追い込み馬が大活躍。成績は【6.2.3.44】で勝率は最も高い。短距離のレースでこれほど追い込み馬が活躍するのはめずらしいと言えるだろう。対照的に逃げ馬は【0.1.2.7】という成績。勝ち馬は出ていない。しかし、複勝の回収率がかなり高い。14年に13番人気のニホンピロアンバーが2着、13年には11番人気のティズトレメンダスが3着に激走。一概に軽視はできないと言えるだろう。
■表4 阪急杯出走馬の前走着順別成績(過去10年)
前入線順位 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収率 | 複回収率 |
前走1着 | 2- 1- 2- 20/ 25 | 8.0% | 12.0% | 20.0% | 24 | 30 |
前走2着 | 0- 1- 1- 5/ 7 | 0.0% | 14.3% | 28.6% | 0 | 98 |
前走3着 | 2- 0- 0- 8/ 10 | 20.0% | 20.0% | 20.0% | 110 | 42 |
前走4着 | 1- 4- 0- 7/ 12 | 8.3% | 41.7% | 41.7% | 214 | 215 |
前走5着 | 0- 0- 3- 11/ 14 | 0.0% | 0.0% | 21.4% | 0 | 256 |
前走6〜9着 | 4- 1- 1- 25/ 31 | 12.9% | 16.1% | 19.4% | 108 | 56 |
前走10着〜 | 1- 3- 3- 52/ 59 | 1.7% | 6.8% | 11.9% | 8 | 49 |
続いて表4は阪急杯出走馬の前走着順別成績(過去10年)を調べてみた。勝率は前走3着、連対率と複勝率は前走4着馬の成績がいい。前走連対馬にこだわらず、掲示板以内に善戦している馬ならばチャンスは十分といったところだろうか。ただ、その一方で前走6〜9着馬の巻き返しも多い。【4.1.1.25】で勝ち馬を多く輩出している。前走10着以下から一変も十分あり、配当妙味がある。
■表5 阪神C出走馬の前走着順別成績(過去10年)
前入線順位 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収率 | 複回収率 |
前走1着 | 2- 1- 0- 18/ 21 | 9.5% | 14.3% | 14.3% | 61 | 49 |
前走2着 | 0- 3- 1- 9/ 13 | 0.0% | 23.1% | 30.8% | 0 | 57 |
前走3着 | 0- 0- 1- 6/ 7 | 0.0% | 0.0% | 14.3% | 0 | 22 |
前走4着 | 2- 0- 0- 12/ 14 | 14.3% | 14.3% | 14.3% | 184 | 52 |
前走5着 | 2- 0- 1- 7/ 10 | 20.0% | 20.0% | 30.0% | 262 | 90 |
前走6〜9着 | 2- 1- 1- 25/ 29 | 6.9% | 10.3% | 13.8% | 76 | 52 |
前走10着〜 | 2- 6- 5- 68/ 81 | 2.5% | 9.9% | 16.0% | 23 | 103 |
同じように阪神C出走馬の傾向(表5参照)も調べてみた。勝率は前走5着、連対率と複勝率は前走2着馬が優秀だった。このあたりの傾向は阪急杯と同じ。配当妙味を考えると前走4〜5着が1着になるケースを想定すると面白そうだ。
前走6着以下からの巻き返しも、阪急杯同様に多い。前走クラスやレース名を問わず、前走着順はあまり気にせずに予想を組み立てる必要がありそうだ。
■表6 阪急杯や阪神Cで複数回好走した主な馬
馬名 | 着別度数 | 主な重賞実績 | 他の重賞実績 |
サンカルロ | 3- 2- 2- 4/11 | 阪神C1着2回、阪急杯1着 | NZT1着 |
キンシャサノキセキ | 2- 0- 0- 1/ 3 | 阪神C1着2回 | 高松宮記念1着 |
リアルインパクト | 2- 0- 0- 1/ 3 | 阪神C1着2回 | 安田記念1着 |
ワンカラット | 1- 1- 0- 3/ 5 | FR1着 | キーンランドC1着 |
マジンプロスパー | 1- 1- 0- 3/ 5 | 阪急杯1着 | CBC賞1着2回 |
ミッキーアイル | 1- 1- 0- 2/ 4 | 阪急杯1着 | マイルCS1着 |
コパノリチャード | 1- 1- 0- 2/ 4 | 阪急杯1着 | 高松宮記念1着 |
ローレルゲレイロ | 1- 1- 0- 0/ 2 | 阪急杯1着 | スプリンターズS1着 |
イスラボニータ | 1- 1- 0- 0/ 2 | 阪神C1着 | 皐月賞1着 |
ダイワマッジョーレ | 1- 0- 1- 3/ 5 | 阪急杯1着 | 京王杯SC1着 |
ガルボ | 0- 3- 0- 4/ 7 | 阪神C2着2回 | 函館スプリント1着 |
ダンスディレクター | 0- 2- 0- 1/ 3 | 阪神C2着2回 | シルクロードS連覇 |
最後に過去10年の阪急杯や阪神Cで複数回好走した馬についておさらいしておこう(表6参照)。阪神芝1400mの重賞といえばサンカルロ。この間、実に11回も出走している。そして阪神Cで2回の優勝、阪急杯で1回の優勝という実績を挙げた。G1には手が届かなかったが、このコースの鬼というべき存在だった。さらにはキンシャサノキセキやリアルインパクト、ミッキーアイルといったG1馬が名を連ねている。
これらの馬に対し、他場の重賞実績を調べると、また興味深いことがわかる。結論から言うと、芝1200mでも実績を残しているケースが多い。キンシャサノキセキやミッキーアイルはスプリンターズSでも好走。ワンカラットは10年のサマースプリントシリーズのチャンピオン。コパノリチャードやローレルゲレイロも芝のスプリントの王者。ガルボはマイルの実績もあるが、芝1200mでも対応。14年の函館スプリントSでは8番人気で勝利を果たした。最近ではダンスディレクターの存在が光る。昨年末の阪神Cでは7番人気ながら2着と好走した。
1400mのレースは、一般的にスプリンターでもマイラーでもこなせる距離だ。ただ、阪神芝1400mではスプリント能力の高さが大きな武器となりやすい傾向にあるようだ。
ライタープロフィール
小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。