特別編 中央競馬騎手 武豊騎手

要約

1969年生まれ、京都府出身。デビュー以来、史上初・史上最年少・史上最速の名がついた数々の輝かしい記録を打ち立て、自らの記録さえも塗り替え続ける武豊は世界の舞台で戦い続ける。
JRA通算3800勝、重賞300勝など数々の記録を打ち立て、日本競馬界を牽引してきた天才はデビュー30周年を迎えた。

極限の上がり勝負でも一瞬の切れ味キタサンブラック

注:このインタビューはジャパンカップの前の週に行われました。

武豊騎手インタビュー画像5

市丸氏画像 お話が尽きなくて、もし私1人だったら明日の朝まででも聞きたいくらいなんですが…。
武豊騎手画像 おじさん2人で朝までというのはちょっと(笑)。
市丸氏画像 失礼しました(笑)。では切り替えて。今週、ジャパンCではキタサンブラックに騎乗されます。枠順が出まして、また1番枠を引きました(今年は天皇賞・春、京都大賞典に続く3度目)。
武豊騎手画像 ぼくもこの秋は1番が多くて(G1では天皇賞・秋、マイルCSに続く3度目)不思議ですね。
市丸氏画像 キタサンブラックについては、春の天皇賞の映像を見ながらお話しいただきたいんですが、京都大賞典のときには、「極限の上がり勝負でもすっと出られるのがすごい」とおっしゃっていました。天皇賞ではいかがでしたか。
武豊騎手画像 手応えはいつも決して良くはないんですけれど、1回すぐに前に出られるというところがありますね。
市丸氏画像 そして残り200mを切って、カレンミロティック(2着)にクビくらい前に出られてしまいました。
武豊騎手画像 まだバテてはいない感じでした。クビくらい出られると普通は厳しいんですけれど、今までの馬でのこのパターンとは違って「まだある」と。あの形で抜かされると「なんとか2着」と思ったりもするものですが、あのときは「いや、勝てる」とまだ思いましたね。
市丸氏画像 差し返してハナ差で勝ちました!
武豊騎手画像 ゴールのときは、ちょっと出たと思いました、タイミングが良かったので。
市丸氏画像 カレンミロティックの池添騎手とはなにか話はされたのですか?
武豊騎手画像 たぶん僕が勝ったと思いながらも「どっちだ?」って聞いたら、「知らん」みたいなことを言われて、それで「ああ、勝ったな」と思いました(笑)。
市丸氏画像 一度はカレンミロティックが前に出てましたし、ハナ差ですから池添騎手も悔しいですよね。このキタサンブラックは、今年の大阪杯から手綱を取られていますね。
武豊騎手画像 今年はこの馬の主戦を務めさせていただいたのは大きかったです。今年、誰が乗るのかな、ひょっとして話が来ないかな、乗れたらいいなと思っていたら、本当に話をいただいたので「よし!」と思いました。
市丸氏画像 ジャパンCに向けて、中間の状態などはいかがですか。
武豊騎手画像 調教ではいつも安定していて、そんなに波がないですね。レースの結果を見てもそうですし。
市丸氏画像 大敗というのは日本ダービー(14着)くらいですからね。
武豊騎手画像 ちぎって勝つこともないですけれど、安定して必ず上位争いには加わってくれますね。

東京2400mも問題なし。有馬記念後に歌声が聴ける?

注:このインタビューはジャパンカップの前の週に行われました。

武豊騎手インタビュー画像6

市丸氏画像 ジャパンCは、ダービーと同じ舞台になります。
武豊騎手画像 ダービーでは乗っていないのでなんとも言えないですが、東京ではデビューから2連勝していてダメとは思えないですし、2400mもベストくらいじゃないかと思うので…。ダービーの結果が「東京の2400mだから」ということでなければ、むしろいい舞台ではないでしょうか。この馬は本当にオールマイティで、距離もコースも展開も、どんなレースでも安定していますね。
市丸氏画像 今の府中はちょっとインが伸びなくて、荒れてきている感じはあるのと、あと雨が降るんじゃないかという予報もありますが……。
武豊騎手画像 あまり悪くなるとどうかとは思いますが、宝塚記念(3着)が相当重い馬場とキツいペースの中で、内容的には強い競馬をするくらいのパワーを持っているので、少々の道悪ならこなして欲しいと思っています。
市丸氏画像 そのあとの有馬記念についてもお話しいただけますか?
武豊騎手画像 オーナーはいつも「調教師の先生と相談してください」という形ですので、宝塚記念が終わったときに秋の路線について相談しました。秋は京都大賞典か毎日王冠、天皇賞(秋)、ジャパンC、有馬記念と4戦ありますが、清水久詞調教師は「4つは避けたい」「有馬記念には使いたい」と。自分はジャパンCと有馬記念がいいと思っていましたので、そこへ向けてのローテーションを考えて、京都大賞典からになりました。一番最初に決まっていたのが有馬記念で、そのレースということになりますね。
市丸氏画像 有馬記念へ向けてレースが決まっていったのですね。去年はかなり惜しい競馬(0.1秒差)で3着でした。今年は「本当に強いなあ」というレースが続いていますから、期待が膨らみますね。
武豊騎手画像 デビューから安定して走っていましたけれど、どこか「本当に強いのかな?」とか「うまくいって勝ってるんじゃないか?」とか思われていた面もあると思います。ぼくも乗るまでは、対戦していて「成績のほうが上回っているのかな」というところが少しありましたけれど、実際に乗ってみて「強いですよ、この馬」って思いました。しかも、春の天皇賞から宝塚記念までの間、ちょっとした間なんですけれど、ここで一気にパワーアップした感もありました。
市丸氏画像 有馬記念へ向けても期待は大きいですね。勝たれたらオーナーと一緒に歌われるというお話しが……。
武豊騎手画像 ラジオでそう宣言してしまったので……、でも有馬記念を勝ったらもうなんでもいいですよ(笑)。相手も強いですけれど、みんな勝ちたいレースですからね。

(取材・文:市丸博司/パソコン競馬ライター)
(写真:倉元一浩)

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