特別編 中央競馬騎手 武豊騎手

要約

1969年生まれ、京都府出身。デビュー以来、史上初・史上最年少・史上最速の名がついた数々の輝かしい記録を打ち立て、自らの記録さえも塗り替え続ける武豊は世界の舞台で戦い続ける。
JRA通算3800勝、重賞300勝など数々の記録を打ち立て、日本競馬界を牽引してきた天才はデビュー30周年を迎えた。

JRA所属馬で4000勝達成!そしてデビュー30周年

武豊騎手インタビュー画像1

市丸氏画像 もう2カ月くらい経ってしまいましたけれど、JRA所属馬による4000勝達成、おめでとうございます。
武豊騎手画像 ありがとうございます。
市丸氏画像 JRA通算4000勝へも残り147勝(対談時)となっていまして、これはものすごい記録なんですけれども、その4000勝への意気込みを聞かせていただけますか。
武豊騎手画像 やっぱり近づいてくると、当然、達成したいなと思うようになりますけれど、かといって一気に決められることでもありませんからね。ひとつひとつ、頑張っていこうという気持ちです。
市丸氏画像 わたくし、競馬歴38年くらいなんですけれど、そのほとんどで武豊さんがトップジョッキーとして活躍されてまして、今年でデビュー30周年となりました。
武豊騎手画像 正直なところ、その年数はあまりピンとは来ないです。どちらかといえばあっという間でしたから、「ああ、30年か」というくらいに思っていました。ただ、改めてデビュー30周年記念の展覧会(武豊展)を見ると、歴史を感じますね。デビューしたときや、2年目、3年目の写真を見ると、長くやってきたなという実感は沸きます。
市丸氏画像 デビューされたころに、長くジョッキーを続けたいとか、30年後にどうなっているかなどを考えたことなどはありますか?
武豊騎手画像 まったく想像していませんでした。特に無理とも思っていませんでしたけれど、子どものころから騎手になりたかったですし、デビューしたころは騎手以外のことは考えていませんでしたね。
市丸氏画像 では、来年3月でデビュー30年に到達したら「これをやってやろう!」というようなことは?(笑)
武豊騎手画像 いや、ないですね(笑)。「気がつけば」という感じですから。ただ、デビュー30周年を迎えて年齢も47歳になり、先輩も数少なくなりましたし、アスリートとしては一般的に考えても年齢的にはかなり上ですので、当然ですが「いつまで続けるんですか?」「騎手のあとはなにをするんですか?」といった質問というか、気にしているなという雰囲気は肌で感じています。しかしこれがですね、本人がまったく感じていないという(笑)。言われてみると「いつまでするんだろうなあ」「終わってからのことは、まだなにも考えてないなあ」と思うくらいですね。
市丸氏画像 本当にお若くて、とても47歳には見えませんからね。
武豊騎手画像 騎手が好きでやらせていただいているので、騎手じゃなくなる自分が嫌なんですね。そういう意味では、長く続けたいですし、そのための努力というか、今からやれることはどんどんやっていきたいと思います。

初めてのGIは2年目。スーパークリークの菊花賞

武豊騎手インタビュー画像2

市丸氏画像 その30年の間に、本当に数え切れないくらいのG1を勝たれていて、現在、地方、海外も含めて109勝を挙げています。その中でいくつか、できればお聞きしたいのですが…どれかに決めるのも難しいと思いますけれど(笑)。
武豊騎手画像 本当に決めにくいです(笑)。ただ自分の考えではなく、外から見た感じでは、やっぱりオグリキャップの有馬記念(90年)は入ると思いますし、ディープインパクトでの勝利はすべて印象深いですし…。あとはスペシャルウィークのダービー(98年、自身日本ダービー初制覇)とか、キズナのダービー(13年)とか…、どれとは決められないですね。
市丸氏画像 私たちオールドファンとしては、G1初制覇となったスーパークリークの菊花賞(88年)が思い出されます。
武豊騎手画像 あの菊花賞は「G1を勝ったらどういう感じか」とか「どういうふうに乗れば勝つ」とかいったことがまだわかっていないですし、どちらかと言えば「勝ってしまった」というレースでした。まだ19歳でしたから。
市丸氏画像 スーパークリークは、出走できない可能性もありましたね。
武豊騎手画像 抽選の予定でしたね(他馬の回避により出走)。すごく走る馬でしたけれど、まだ2年目ですから、そんなに自分もわかっていなくて「走ると思うんだけどなあ」くらいでした。ただ、調教師の伊藤修司先生がすごく自信を持っておられたので、「それなら走るな」と、それに賭けてみようと思っていました。そうしたら出走できて、そして「本当に勝ってしまった」というレースでした。
市丸氏画像 ファンとしては「まだ2年目なのに、天才・武豊が選んだ馬が勝った!」と、色めき立つという感じもありましたけれど……。
武豊騎手画像 当時、自分自身はそんなに実感はなかったですね。周囲からはそういうもったいない言葉も聞こえてきましたけれど、自分は子どものころからのあこがれだったジョッキーになり、無我夢中でやっていただけでした。ただ最近になって、デビューしたての若いジョッキーを見て「この子の歳で菊花賞を勝ったんだ」と思うと実感が沸いてきますね。19歳で菊花賞を勝ってたんだ、20歳のときには天皇賞春・秋(イナリワン、スーパークリーク)勝ったなあ、と思うと「俺すごかったんだ!」と(笑)。
市丸氏画像 デビュー1年目から69勝を挙げて、すぐ一流ジョッキーの仲間入りをされましたね。
武豊騎手画像 長らくあこがれだった人たちと一緒にレースに乗って「勝ち星が近づいていってる!」とか「え、自分のほうが勝ってるなんて考えられない!」といった感覚はハッキリ覚えています。

(取材・文:市丸博司/パソコン競馬ライター)
(写真:倉元一浩)

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