昨年、史上最高の売却率を記録し、史上初めて税込みの売却総額が40億円を超えた“日高軽種馬農業協同組合が行う選抜市場”セレクションセールが、さらなる高みを目指してその姿をバージョンアップさせた。2011年以来の2日間開催。しかし、市場スタイルを変化させるに至った背景は、2011年当時とは大きく異なるものがある。当時は、その前年まで当歳市場を併設させており、販売者側の希望に沿うような形で2日間となったのだが、今回は違う。86.32%という驚異的な売却率だけではなく、平均価格、中間価格も2年連続で過去最高を記録した昨年の市場結果を受けて決定した開催の延長。いわば、購買者側の選択肢を広げるための2日間開催だ。
その取引馬たちは、2018年から4年連続でJRAにて100勝以上を記録している。2022年も6月19日終了時点で58勝と、5年連続はほぼ確定的な状況だ。この58勝の中には、2018年取引馬ディープボンドの阪神大賞典のほか、2019年取引馬ジャックドールの金鯱賞、同じく2019年取引馬ノースブリッジのエプソムカップが含まれている。また、これら取引馬の活躍は国内にとどまることなく、昨年は前述のディープボンドが凱旋門賞(仏G1)の重要な前哨戦であるフォワ賞(仏G2)に優勝するなど、活躍の場を広げている。
ノースブリッジ
(2019年セレクションセール取引馬)
セレクションセールへの追い風は他にもある。先日、南関東の大井競馬場を舞台とする「3歳ダート三冠競走」の創設が発表された(今回のセール取引馬が3歳となる2024年に開始予定)。自身セレクションセールの取引馬で、次代のNARリーディングサイヤーを担うホッコータルマエ産駒をはじめとする砂の猛者たちには、さらにスポットライトが当てられることだろう。
今年ラインナップされた、海外繋養の6頭の種牡馬を含む59頭の種牡馬の産駒311頭は、上記の先輩たちに負けず劣らずの精鋭たちだ。具体的に言えば、311頭中、アメリカ年度代表馬を父に持つ産駒は27頭。JRA賞年度代表馬の産駒は17頭。日米ダービー馬の産駒は実に60頭。選抜市場だから、当たり前といえば当たり前の話なのかもしれないが、セレクションセールの選定委員会の悲鳴が聞こえてくるようなラインナップなのだ。
またブラックタイプに目を向ければ、桜花賞馬レーヌミノルの第2仔(牡、父ブリックスアンドモルタル)や関東オークス優勝馬ハービンマオの初仔(牝、父ニューイヤーズデイ)、ラブレアS(米G1)勝ちのディアレストトリックスキ産駒(牡、父シニスターミニスター)、同じくラブレアS(米G1)勝ちのエヴィータアルゼンティーナ産駒(牡、父ドゥラメンテ)、ATCオーストラリアンオークス(豪G1)優勝馬アブソルートリー産駒(牝、父スワーヴリチャード)など、国内外の重賞勝ち馬産駒がズラリ。他では、全日本2歳優駿優勝馬ノーヴァレンダの半弟(父リオンディーズ)や、地方競馬所属馬として初めてJBCクラシックに勝ったミューチャリーの半弟(父アジアエクスプレス)のほか、重賞2勝のエイティーンガールの半弟(父デクラレーションオブウォー)や、同じく重賞2勝のフェアリーポルカの全弟(父ルーラーシップ)など、兄姉にグレードレース優勝馬を持つ垂涎の血統馬が惜しげもなくラインナップされている。
日本軽種馬協会の発表によれば、2021年に日本全国で血統登録された現1歳馬は7,730頭。その中からセレクションセールに選ばれた311頭に、ぜひご期待いただきたい。
注記:当コンテンツは、2022年6月22日時点での情報を基に制作しています。
ライタープロフィール
1963年東京生まれ。
道新スポーツ馬事通信部記者。北海道新聞中央競馬本紙予想担当でもある。