セレクトセール2021

丹下日出夫のセレクトセール日記 7月13日(火)

7月12日(月)|7月13日(火)

2年後のアレコレなど思う、夢のような時間

セレクトセール2021

1歳セッションから一夜明け、改めて初日の結果を見直してみた。

あれま。平均価格は5000万円超え、1億円以上は28頭ゾロゾロ。総額110億円を超える、セレクトセール史上最高額のセッションだったんだぁ。どうりで長い一日だと思ったよ(笑)。

2日目は当歳セッション。親子が並んでいる約230頭の展示会場を探索。顔などを眺めているだけで、あっという間に2時間が過ぎる。2年後のアレコレなど思う、夢のような時間とも言える。

スターターの301番は、新種牡馬レイデオロ産駒、母はアメリカ牝馬チャンピオンスプリンターのファイネストシティだ。昨日の1歳セッションにロードカナロア産駒の兄がいたが(3億円)、本馬はレイデオロのファーストクロップで1億5000万円。ディープインパクトやハーツクライだって、最初の年はみんな恐る恐る値付けをしていたし、初年度でこの価格はかなりの高評価。

302番のエピファネイア×ガラアフェアーは6200万円で落札、303番のモーリス×ピュクシスは3300万円。304番のスワーヴリチャード×パシオンルージュは5800万円。あれ。なんだかオレでも買えるかも(笑)。昨日の1歳セッションの値段の推移があまりにも強烈だったので、そんな気になるから不思議。でも、これが本来のというか。普段のセレクトのペースです。

1億円超えの2番目は、307番のキズナ×カヴァートラブ(愛オークス、オペラ賞に優勝)。1億5000万円で藤田晋氏が落札した。キズナには、ディープインパクトやキングカメハメハの配合相手だった優良繁殖牝馬が多く用意されていた。父譲りのガツンとした骨格、立ち姿にも威圧感があるなぁ。

ドゥラメンテも、年々配合牝馬の質がアップ。316番の母ヴァシリカは、現役時にアメリカで18勝(ゲイムリーS、ロデオドライヴSなど)。母の毛色を受け継いだ、カチリとした骨格の栗毛(1億500万円)。億には届かなかったが、326番のイスパニダの2021は9000万円。半兄のコリエンテス(父ディープインパクト)は、今週の福島でデビュー予定(たぶん勝ち負け)。コリエンテスが1週早くデビューして新馬勝ちを果たしていたら、本馬は、もっとドカンと値が上がったかもしれない。

「ポスト・ディープ」は、必ずしも内国産種牡馬だけではなく、外国産馬や持込馬たちにも可能性は大。329番のフランケル×コールバック(ラスヴィルへネスSに優勝、近親にケンタッキーダービー馬もいます)は2億4000万円。337番のアメリカンファラオ×スウィッチインタイム(祖母スウィッチはアメリカでG1を2勝、重賞入着多数)は1億5000万円。344番のジャスティファイ×カレドニアロード(BCジュヴェナイルフィリーズに優勝、アメリカ2歳牝馬チャンピオン)は1億3500万円でハンマーが落ちたが、フェブラリーSやチャンピオンズCはもちろんのこと、3歳春にアメリカのケンタッキーダービーへ出走したとしても、まったく違和感などない、世界レベルの良血です。

レイデオロ産駒は、334番のモルガナイトの2021が1億8000万円で落札。この一族特有のスケール感が買われた。403番のリンフォルツァンドの2021(1億8000万円)は、祖母がリッスン。母の姉はタッチングスピーチ(ローズS)、母の兄はサトノルークス(菊花賞2着)。四肢と背筋がスカッと伸び、エネルギーあふれる男の子です。

ハーツクライ産駒は、本当に頭数がギリギリ。342番のシーズアタイガーの2021(母はアメリカの2歳牝馬チャンピオン)は2億円。そして、みんなが大好き、361番のラヴズオンリーミーの2021は2億8000万円。今年のセレクトにおけるハーツクライ産駒最後の上場となった391番のラブリーベルナデットの2021(母はアメリカで8勝)のお値段は2億円。さよならハーツ、ロンググッドバイ(来年の1歳セッションにも出てくるだろうけど)。

366番のエピファネイア×アルテリテは、本日のエピファネイア産駒の中ではワタクシの一番のお気に入り。2億2000万円は当たり前だよと、自分の馬でもないのに鼻息バフバフ(笑)。372番のエピファネイア×デアリングエッジは、母の名前からもわかる通り、当セール出身のシンデレラ・デアリングタクトの近親。1億1500万円のガラスのシューズを履いた?

349番のキズナ×ライフフォーセールは、ダノンファンタジー(阪神ジュベナイルフィリーズに優勝、JRA賞最優秀2歳牝馬)の半弟、1億1500万円で落札。371番のキズナ×ピクシーホロウは、シンザン記念勝ちのピクシーナイトの半弟、値段は1億円。運動会ではきっとヒーロー、すばしっこそう。

サトノダイヤモンド産駒は、好馬体がウリ。374番のレディイヴァンカの2021は、母がアメリカG1・スピナウェイS勝ち。1億3000万円となった。390番のポジティブマインドの2021は、母がアルゼンチンの2歳牝馬チャンピオン。馬体の精度は高く、1億8000万円の値がついた。

377番のエスケイプクローズの2021は1億500万円。母はカナダの古馬牝馬チャンピオン。そのうえ、北米で20勝というのはタダモノではない。

388番のモーリス×フォトコールは、セレクトセールの紹介番組で見てひとめぼれ。毛色は鹿毛だが、皮膚は薄く、血液はサラサラ、赤茶けて栗毛に見えるほど(笑)。なんともかわええ、1億3000万円のモーリス産駒。

セレクトセール2021

スター誕生

せりも中盤。あれ、なんか忘れ物をしたような気がする。なんだろう? そうだ、ロードカナロアだ。398番のヤンキーローズの2021は、お値段も相当だろうとは思っていたが、ひと声、ふた声で3億円。早(笑)。わずか1分少々、3億7000万円でハンマーが落ちた。ちなみに、母はオーストラリアの2歳牝馬チャンピオン、3歳になっても牝馬チャンピオン。カナロア産駒にしては滑らかな四肢と背中を持つ息子は、クラシックを狙いつつ、古馬になったらマイルから中距離の重賞を荒らし回るスターになるかもしれない。

さて、キラ星とは何だろう。才能、そして可能性とは何か。なんて感慨にふけっていたら、428番のキズナ×セルキスが登場。半兄はヴェロックス(若葉S勝ち、皐月賞2着)。ジャスタウェイ産駒のお兄ちゃんとは毛色も違い、硬質で伸びやかな黒鹿毛。1億円かな。2億円かな?――ありゃりゃ。どんどこ値段が上がって、4億1000万円とは……。馬が壇上から降りた後、思わずハアハア、記念撮影の場所に小走りで追っかけちゃったりして(実際はしていませんよ)。

400番台の後半に差しかかれば、ドキドキもソロソロ終わりかな。まとめに入ろうかなというところで、459番のレイデオロ×ルールブリタニアに1億4500万円の高値がついた。現2歳のエピファネイア産駒のお兄ちゃん(馬名エピファニー)も、ずっしりとした重量感のあるクラシック候補だが(たぶん)、父が替わっても高評価を得たということは、ワタクシの血統や馬の見方も、案外間違っていないんじゃないかなぁと思ったりして(笑)。

見立てといえば、当歳世代がファーストクロップとなるブリックスアンドモルタルの評価でしょうか。押したり引いたり、なかなか億を超える馬は現れなかったけれど、464番のランズエッジの2021は1億500万円で、億のハードルをクリア。半姉のロカ(父ハービンジャー)は、クイーンC3着、忘れな草賞2着。祖母がウインドインハーヘアでディープインパクト一族の本流に近く、この価格も納得。

ちなみに、379番のブリックスアンドモルタル×マンハッタンセレブは9000万円。1年後、2年後、ブリックスアンドモルタルの子供たちは、どのような成長曲線を描くのか。競走馬のアレコレは、因数分解では解けないから、難しいけどファイトがわく。


とんでもないセレクトになっちゃった

チョー高額の数字は動かないけれど、500番台に入ってもまだまだ競り合いは続き、小さく振動しながら、せりが動く。

そうして迎えた大団円。541番のレイデオロ×アイムユアーズは、1億5000万円でハンマーが落ちた。

2日目の当歳セッションの1頭平均価格は約5128万円。落札総額は109億2300万円。2日間を合わせての落札総額は225億5600万円という、とんでもないセレクトになっちゃった。

今年も面白かったが、来年が怖い。でも、また来年。


注記:金額は全て税抜き
注記:画像はせり当日に撮影した写真ではございません

ライタープロフィール

丹下日出夫(競馬評論家)

「ホースニュース馬」を経て現在は毎日新聞本紙予想。POG大魔王の通称も定着している。

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