セレクトセール2020

丹下日出夫のセレクトセール日記 7月14日(火)

7月13日(月)|7月14日(火)

ディープインパクトもキングカメハメハもいなくなってしまう世代は、どのような戦いになるのだろう。

オープニングの301番はドゥラメンテの息子。「ポスト・ディープ」を高らかに宣言。
母のスクールミストレスは、アルゼンチンで4勝。芝2000mのG1、そしてダート1500mのG1を優勝。アルゼンチーナの子供たちは、どこかサトノダイヤモンドなど連想させる、よく肥えた肉体派が多い。せりの開幕にはぴったり、健やかさにあふれている。

ドゥラメンテは、2020年生まれが3クロップ目。初年度と2年目は、胸に幅がなく、身体が薄かったり、短い脚の仔もいて、バラつきが多く悩みもあったが、当歳はドゥラメンテのコピーのような鹿毛、黒鹿毛馬がずらりと勢ぞろい。337番のソーメニーウェイズの2020、371番のポジティブマインド、436番のクイーンビー2など、あれもこれもいいと、目移りしてしまう。

いえ、2020年からの競馬シーンは、ロードカナロアが主役でしょう。316番のファイナルスコアの2020が、2億円という高値で存在をアピール。近親にシーオブクラス(凱旋門賞2着)、チェリーコレクト、チャリティーラインなどが連なるこの牝系は、わずか数年で日本に根付き、すくすくと大きな幹に育ちつつある。

343番のスターアイルの2020は、兄にミッキーアイル(NHKマイルカップ、マイルチャンピオンシップを優勝)。395番のウィーミスフランキー、422番のモルガナイト、445番のクリスプなど、今年の産駒は、過去の世代よりみんな一回り大きく、どの牧場もメイン繁殖を用意している。いわゆる「駒がそろった」年なんだろうなぁ。

セレクトセール2020

牝馬は、オークスはともかく、桜花賞まではスピードで楽々通過できる。ロードカナロアの代表産駒であるアーモンドアイが、牡馬を相手に、古馬となっても勝ち負けできることを証明した。
ただ、区分的にはスプリンターおよびマイラー。牡馬の皐月賞、日本ダービーは、カナロア産駒では難しいかもしれない。

ならばハーツクライ――365番ヒルダズパッションの2020の兄は、世界のヨシダ(米G1ウッドワードS、米G1ターフクラシックSを制覇)。また、現3歳の姉サンクテュエールはシンザン記念を制覇。本馬は馬体のラインがくっきりと映る、輝くような皮膚をした栗毛。本年の当歳の目玉でもあり、色々な場所にいっぱい引っ張り出されたのだろうが、いつも元気いっぱい。まっすぐ速く、とにかくよく歩く馬だなぁ。

いや、ワタシの好みは、383番シーヴの2020ですよ。昨日のディープ産駒の1歳(シーヴの2019)とは少し体つきが違うけれど、ハーツのしなやかさを存分に堪能できるのではないか。

セレクトセール2020

407番シーズアタイガーの2020は、母が米国2歳牝馬チャンピオン。その母の力と繁殖牝馬としての可能性を、5番仔の当歳で改めて問いたい。

379番ダイワパッションの2020は、皐月賞馬エポカドーロの半弟。433番セレスタの2020は、母がアルゼンチンの2歳牝馬チャンピオン。現3歳の全兄ダノンセレスタは、ダービートライアルの青葉賞に出走した。ディープのいない今は、ハーツクライは貴重種だ。

いえいえ。2400mのダービーで求められる持久力と底力なら、キタサンブラックですね。334番マラコスタムブラダの2020の姉は、レシステンシア(阪神ジュベナイルフィリーズ優勝)。2018年生まれの兄、2019年生まれの兄は、共に昨年のセレクトセールで高額取引されたが、484番フリーティングスピリットの2020など、キタサンブラックの息子は、父同様2000〜3200mまで、色々な距離のGIで戦えるだろう。

ハービンジャーも、同じ距離帯でファイト。516番ガラアフェアーの2020は、馬っぷりが悠々。ブラストワンピースをイメージする人が多いかもしれない。

エピファネイアの子供たちも、年を重ねるごとに産駒の精度がアップしていますね(340番カデナダムールの2020、380番ガールオンファイアの2020など)。

いや、キズナを忘れちゃ困る。310番のスカイフの2020、374番のザキア、461番のエルーセラ、470番のエセンテペなど、出てくれば確実に、手堅く、みんなしっかりとした値が付いた。

セレクトセール2020

新種牡馬サトノダイヤモンドは、開始3番目(303番)のコンヴィクション2の2020で、存在を猛アピール。母はアルゼンチンで5勝(芝2200mのG1を勝利)。太い首、長い背中、むっちりとした臀部、父と母と、どこを切り取ってもアルゼンチンの血統が出てきます。

309番のレインボーダリアの2020、349番のサマーハは、父の力を借りなくても、母系力だけで走るかもしれない。398番のウォークロニクルも母系はタフ。考えた配合なんだなぁ……。

ちょっとマニアックに、海外でも戦えるタフなステイヤーが欲しいと思えば、サトノクラウンはいかがですか。360番シェリールの2020の兄ムスカテールは、目黒記念など長丁場を中心に7勝。409番のベネフィット、430番のアソルータもいいね。

持ち込み馬で目を引いたのは、ジャスティファイ産駒の397番ノットナウキャロラインの2020。472番アーキテクチャーの2020(父ロペデヴェガ)、333番オールフラッグズフライングの2020(父ブレイム)も、ハッとしてグー(古いね)。
当歳せりは、父親も母親も、日本ではまだなじみはないが、そのぶんフレッシュな、新味のある血統も多い。

「可能性」という言葉で、みんな考える。プランを描く。当歳セールは、だから楽しい。
アレやコレや。馬に酔って、酔われて(笑)。大トリは539番、ロードカナロア×キラモサが、1億4000万円でフィニッシュ。

来年も再来年も、またセレクトで会いたいね。

注記:金額は全て税抜き

ライタープロフィール

丹下日出夫(競馬評論家)

「ホースニュース馬」を経て現在は毎日新聞本紙予想。POG大魔王の通称も定着している。

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