セレクトセール2019
丹下日出夫のセレクトセール日記
7月8日(月)|7月9日(火)
初日の1歳セールは、セレクトに通いなれた人たちなら、背格好や骨の太さなど、現時点の体重から、一年後の像や走りなど、だいたい描くことができる。
しかし、二日目の当歳セールの結果は、単純に二年も時間を要する。再来年、おお。こんなに立派になったのか。ええ、こんなに小さい馬だったの?――当歳セールは、「可能性」を買うセリ。成功もリスクも、1歳セールよりは難題、前日とは構え方のようなものが少し違う。
その挑み方の姿勢みたいなものを、まずは301番・ハーツクライ×マラコスタムブラダが、1億6000万で示す(1歳の全兄は、初日のシンガリに登場、246番で2億3000万でしたね)。
さて、今年の当歳セリのテーマは、ディープインパクトの後継種牡馬を探すための、本格的な最初のセリ。
ポスト・ディープの本命は、たぶんあの馬。ロードカナロアじゃないかなぁと思っていたら、309番・キャリコが1億5000万。320番のアゲヒバリは、ムッチムチの芦毛、2億1000万円に沸騰だ。382番のアドマイヤテンバは、2億7000万にさらに上昇。
昨日も触れましたが、ドゥラメンテ攻勢も活発。379番のセレスタで殴り込みをかける。1億円超えはそう多くはないが、最後のほう522番のウォッチハーは、1憶3000万だった。
何言ってんだよ〜。種牡馬として5年にも満たないキミたちが、次代の競馬シーンを語るのはちょっと早い。
つい昨日、引退表明をしたばかりですが、キングカメハメハが、326番のラスティングソングで存在を主張(1億9000万)。少し目つきはキツいが、黒鹿毛のスラリとした、あのラインや肌合いが、キンカメ産駒の理想像だよなぁ(ドゥラメンテっぽいね)。
411番のソーメニーウェイズは、サイボーグみたいな、筋肉のメリハリが目をひく造りでした。
いいや、キンカメ君。産駒数は少なくなったが、ディープインパクトも上場馬は粒ぞろい。壇上に登壇すると、ダイヤモンドのごとく煌めきを放つ。
どうだといわんばかりに、358番のタイタンクイーンが、4億7000万で、どうだ。まいったか。373番のヤンキーローズは、牝馬ながら2億1000万。400番のベネンシアドールの、スカッとしたシルエットは、なんともいえないよなぁ。404番のバディーラに、全兄ダノンプラチナム(朝日杯FS)の姿を重ね合わせる人も多かった。
新味のある血統では、423番のタミーザトルピードは楽しみ。460番のウィラビーオーサムも、今年が一番いい馬ではないかという人もいた。
過去と未来への思いが交錯する中で、本年の当歳がファーストクロップとなる新種牡馬の動きも活発です。
まずはドレフォン。302番のヴェルザンディは4000万で落札。ここらあたりがサンプルになりそうだが、344番のアドマイヤセプターは、ダイナカール一族という超良質な母系が背景にあり、父のドレフォンよりは、お母さんのアドマイヤセプターに似ている。
いきなり結論付けるのも乱暴だが、もしかしたらドレフォンは、母系の力を上手く導き出す種牡馬になるのかもしれない。
イスラボニータは、ダイワメジャーの後継種牡馬だと思う。完璧なフォルム、手先も首使いも素軽い仔が多い。
サトノアラジン産駒も、想定価格の2〜3倍で推移。ワタクシも、POGなどでお世話になった馬ですが、あちこちから指名のお声がかかり、アラジン・マニアというか。ディープの後継種牡馬のダークホースは、アラジンじゃないかと力説する人などいた。
大団円はハービンジャー×ライフフォーセール。2019年の締めくくりは2億2000万円でハンマープライス。
振り返れば、一頭あたりの平均価格は、前日を上回る5043万円。1歳以上に活気と活力とエネルギーに満ちた一日となった。
二日間の売り上げは、セレクト史上最高となる205億1600万円で幕を閉じた。
※金額はすべて税抜き
ライタープロフィール
丹下日出夫(競馬評論家)
「ホースニュース馬」を経て現在は毎日新聞本紙予想。POG大魔王の通称も定着している。