キムラヨウヘイの重賞アナライズ

2025年エリザベス女王杯

牝馬の中長距離重賞は「ステゴ系・キンカメ産駒・ハービン産駒・キズナ産駒」が特注血統

牝馬限定戦ではオークスに次いで2番目に長い距離設定である2200mで行われるエリザベス女王杯。基本的に牡馬よりもスタミナ面で劣り、距離適性が短めに出る牝馬にとって、この2200mというのはイレギュラーな距離設定になります。そんな牝馬同士による中長距離の上級クラスのレースでは、多数の走り切れない馬と、一部の走り切れる馬という距離適性の面での差がダイレクトに競走結果に反映されることになります。

まず考えるべきは、この距離でも力を出せるのかという点になりますが、そこで大きな手掛かりとなるのは「血統」です。


■データ1 牝馬限定の距離2000m以上の重賞レースの種牡馬別成績(17年以降/機会数10以上)

種牡馬 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単勝回収値 複勝回収値
ステイゴールド 1-  5-  1- 11/ 18 5.60% 33.30% 38.90% 176 169
エピファネイア 3-  6-  5- 37/ 51 5.90% 17.60% 27.50% 18 109
オルフェーヴル 3-  3-  2- 30/ 38 7.90% 15.80% 21.10% 60 106
キズナ 6-  2-  6- 68/ 82 7.30% 9.80% 17.10% 138 103
ハービンジャー 8-  8-  5- 53/ 74 10.80% 21.60% 28.40% 107 95
ゴールドシップ 4-  1-  3- 23/ 31 12.90% 16.10% 25.80% 151 95
キングカメハメハ 8-  3-  3- 35/ 49 16.30% 22.40% 28.60% 124 84
ダイワメジャー 0-  1-  4- 19/ 24 0.00% 4.20% 20.80% 0 72
スクリーンヒーロー 4-  2-  0- 18/ 24 16.70% 25.00% 25.00% 124 71
ディープインパクト 6- 12- 11-130/159 3.80% 11.30% 18.20% 27 67

通常とは異なるイレギュラーな適性が問われるという意味で、牝馬の中長距離のレースの種牡馬別成績の序列は、全体リーディングとはまるで様相が異なってきます。端的に言えば、通常評価すべきリーディング上位種牡馬の産駒は軽視して、逆にこの条件に特化して強さを見せる曲者種牡馬の産駒を狙い撃つことこそが、高配当への最短ルートとなり得るというわけです。

そんな牝馬の中長距離のレースでは、かねてから「ステイゴールド系・キングカメハメハ産駒・ハービンジャー産駒・キズナ産駒」が特注血統であると紹介してきました。実際に24年以降の牝馬限定・距離2000m以上の重賞・オープン競走で3回以上好走したのは、外国産馬を除いて「キズナ産駒7回・エピファネイア産駒6回・ハービンジャー産駒5回・キタサンブラック産駒3回・ゴールドシップ産駒3回」の5種牡馬だけです。産駒数が大幅に減少しているキングカメハメハ産駒が抜けて、今をときめくエピファネイア産駒とキタサンブラック産駒が食い込んだ以外は数年前も直近年も同一の血統勢力図となっていました。やはり特殊な適性が求められる条件だけに、そこで輝きを見せるという際立つ個性はそう簡単には埋没することはないということでしょう。

非ハイレベル3歳世代牝馬

現3歳世代については、昨年の2歳牝馬G1の阪神ジュベナイルフィリーズの回で「牡高・牝低(牡馬が強くて牝馬が弱い世代)」であると取り上げました。

実際に当時の阪神ジュベナイルFでは、ほんの一握りしかいなかった相対的にレベルの高い牡馬相手のレースを経てきた馬によるワンツースリー決着で、逆に前走牝馬限定重賞レース組(海外除く)は7頭全滅に終わり、この世代の「牡高・牝低」が裏付けられるレース結果となりました。

また、先々週の天皇賞秋では現3歳世代牡馬のレベルの高さについて取り上げて、実際にそのマスカレードボールとミュージアムマイルの3歳馬ワンツーという、この世代の牡馬のレベルの高さが裏付けられるレース結果となりました。

直近の現3歳世代馬の大活躍のイメージから、このエリザベス女王杯でも3歳馬が必要以上に人気を集めそうですが、レベルが高くて大活躍しているのは牡馬であって、牝馬については必ずしもそうではない、という点に注意が必要です。


■データ2  今年の芝中長距離重賞(芝2200m以上)の年齢別成績

年齢 着別度数 勝率 連対率 複勝率
4歳 7-  5-  4- 25/ 41 17.10% 29.30% 39.00%
5歳 2-  3-  4- 41/ 50 4.00% 10.00% 18.00%
6歳 0-  2-  3- 46/ 51 0.00% 3.90% 9.80%
7歳 3-  2-  1- 17/ 23 13.00% 21.70% 26.10%
8歳 0-  0-  0- 13/ 13 0.00% 0.00% 0.00%

その一方で国内でも国外でも芝中長距離路線で活躍が顕著な4歳世代馬は、同距離条件のエリザベス女王杯でも優位が見込まれます。

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ライタープロフィール

キムラヨウヘイ

1990年生まれ、東京都出身。2009年にmixiコミュニティで予想活動をスタート。11年にブログを始めるとライブドア競馬ブログでアクセス数トップを記録した。15年に「競馬王」でメディアデビューし、18年からは「競馬予想TV!」に10年振りの新人予想家として出演中。
予想スタイルは各馬&各レース固有の独自の取捨ポイント設定(通称プロファイリングポイント)に基づいた狙い馬の発掘。

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