牝馬限定の中長距離(距離2000m以上)の重賞では「ステイゴールド系・キングカメハメハ産駒・ハービンジャー産駒・キズナ産駒」が特注血統であるということを、このコラム内でもこれまでに何度か取り扱ってきました。
それは牡馬のレースでは距離2000mというのは何の変哲もないごく一般的な距離設定でも、基本的に牡馬よりもスタミナ面で劣り距離適性が短めに出る牝馬にとっては、距離2000mというのはあまり走る機会がない非主流のイレギュラーな距離になります。
そこでは通常とは異なる適性が問われるということで血統の勢力図も他とはガラリと入れ替わるので、その条件に特化して強い血統を徹底して狙うべきということでした。
実際に24年以降の牝馬限定の中長距離の重賞・オープンレースにおいても、複数回連対した7種牡馬の内4種牡馬はその特注血統の該当馬から輩出されています。
| 種牡馬 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
|---|---|---|---|---|
| ステイゴールド | 1- 5- 1- 11/ 18 | 5.60% | 33.30% | 38.90% |
| キングカメハメハ | 8- 3- 3- 35/ 49 | 16.30% | 22.40% | 28.60% |
| ハービンジャー | 8- 8- 5- 53/ 74 | 10.80% | 21.60% | 28.40% |
| エピファネイア | 3- 5- 5- 36/ 49 | 6.10% | 16.30% | 26.50% |
| ゴールドシップ | 4- 1- 3- 23/ 31 | 12.90% | 16.10% | 25.80% |
| スクリーンヒーロー | 4- 2- 0- 18/ 24 | 16.70% | 25.00% | 25.00% |
ただし、この距離1800mのアイルランドトロフィー(旧アイルランドT府中牝馬ステークス)においては、牝馬にとって主流のレギュラーな距離設定になるということで、その距離2000mのレースとは血統の勢力図が本来あるべき姿に一気に揺り戻しがされます。
実際に牝馬限定の距離1800mの重賞レースにおける好成績種牡馬に、中長距離重賞の特注血統は一頭もランク入りしていません。その代わりに、晩年の中長距離志向が強まっているキングカメハメハ産駒ではなく、主流路線で強いキングカメハメハの孫世代となるロードカナロア産駒やルーラーシップ産駒、言わずもがなの主流トップ種牡馬のディープインパクト産駒が名を連ねています。
| 種牡馬 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
|---|---|---|---|---|
| メイショウサムソン | 3- 4- 2- 13/ 22 | 13.60% | 31.80% | 40.90% |
| ルーラーシップ | 5- 4- 2- 23/ 34 | 14.70% | 26.50% | 32.40% |
| ロードカナロア | 2- 3- 2- 16/ 23 | 8.70% | 21.70% | 30.40% |
| キタサンブラック | 1- 2- 1- 12/ 16 | 6.30% | 18.80% | 25.00% |
| マンハッタンカフェ | 0- 0- 4- 13/ 17 | 0.00% | 0.00% | 23.50% |
| ディープインパクト | 11- 9- 6- 89/115 | 9.60% | 17.40% | 22.60% |
20年秋を境にして、東京芝コース(特に秋開催と春開催)では、内有利の馬場バイアスがほとんど消滅して、一にも二にも末脚がモノを言う馬場、すなわち差し有利馬場へと変貌を遂げました。
それを表す顕著なデータとしては、20年秋以降の東京芝コースの古馬重賞レース(全70レース)で、逃げて勝利したのはわずか2頭のみ(内1頭は冬開催)であるというのと、同条件で二桁人気の人気薄ながらも馬券内好走を果たした17頭中11頭が道中二桁通過順位の追い込み馬だったということです。
また、その中でさらに牝馬限定戦に限定すると、逃げた馬は11頭中1頭しか好走しておらず、また、二桁人気で好走した5頭中4頭が道中二桁通過順位の追い込み馬でした。
基本的には牡馬牝馬混合戦よりも牝馬限定戦の方がメンバー同士の能力が拮抗しますので、そこでは微々たる能力差よりも、いかにレースや展開などの条件にマッチする競馬ができるか、という部分で着順が大きく左右することがあります。
そのため東京芝コースの牝馬限定重賞では、結果的に追い込みがハマり、人気薄の馬が穴をあける典型的な激走パターンとなっているのが実情となっています。
| 脚質上り | 着別度数 | 複勝率 | 単勝回収値 | 複勝回収値 |
|---|---|---|---|---|
| 平地・逃げ | 0- 0- 0- 5/ 5 | 0.00% | 0 | 0 |
| 平地・先行 | 2- 2- 0-18/22 | 18.20% | 54 | 55 |
| 平地・中団 | 2- 3- 1-29/35 | 17.10% | 82 | 42 |
| 平地・後方 | 1- 0- 4-14/19 | 26.30% | 13 | 303 |
実際に最近の東京芝コースの牝馬限定重賞を振り返っても、フローラSでは道中16番手追走の18番人気タイセイプランセスが3着に激走、ヴィクトリアマイルでは4角17番手追走の7番人気シランケドが3着に激走、オークスでは道中18番手追走の10番人気タガノアビーが3着に激走したことが挙げられます。
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ライタープロフィール
1990年生まれ、東京都出身。2009年にmixiコミュニティで予想活動をスタート。11年にブログを始めるとライブドア競馬ブログでアクセス数トップを記録した。15年に「競馬王」でメディアデビューし、18年からは「競馬予想TV!」に10年振りの新人予想家として出演中。
予想スタイルは各馬&各レース固有の独自の取捨ポイント設定(通称プロファイリングポイント)に基づいた狙い馬の発掘。

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