スプリンターズSは後半勝負型の前傾度の弱いレース(スローペース)となった年と、前半突進型の前傾度の強いレース(ハイペース)となった年とでは、好走馬の顔触れが全く異なる、というのが大きなポイントです。
前者ではスプリンターの追走力がスポイルされてマイラーの後半力が幅を利かすことになり、後者ではマイラーは追走力不足に陥ることでスプリンターが幅を利かすことになるのです。
実際に09年以降で前傾度1.0秒未満(後半勝負型)だった5回(10年、15年、16年、17年、21年)の好走馬15頭中13頭は、それ以前に距離1600m以上のレースで好走歴がある馬でした。
それに対して前傾度1.0秒以上(前半突進型)だった10回(09年、11年、12、年13年、18年、19年、20年、22年、23年、24年)の好走馬30頭中延べ19頭は、それ以前に新馬と地方を除く距離1600m以上のレースで好走歴がない馬でした。
今回どちらペースのレースになるかについては、その年の芝スプリント界の時流が強く反映されるという歴史となっています。つまりは、その年の芝スプリント競走で前半突進型の騎乗(ハイペース)が流行っている年は、その延長線上にあるスプリンターズSでもハイペースになりやすく、そしてその逆もまた然りということです(下記のデータの通り見事にリンクしています)。
| ※年間平均 | スプリンターズS | |
|---|---|---|
| 13年 | 33.6 | 32.9(1.4前傾) |
| 15年 | 34.0 | 34.1(0.1後傾) |
| 16年 | 34.0 | 33.4(0.8後傾) |
| 17年 | 34.0 | 33.9(0.2後傾) |
| 18年 | 33.7 | 33(2.3前傾) |
| 19年 | 33.7 | 32.8(1.5前傾) |
| 20年 | 33.7 | 32.8(2.7前傾) |
| 21年 | 33.9 | 33.9(0.5前傾) |
| 22年 | 33.4 | 32.7(2.4前傾) |
| 23年 | 33.9 | 33.3(1.4前傾) |
| 24年 | 33.6 | 32.1(2.8前傾) |
| 25年 | 33.7 |
(※スプリンターズSの前週までに行われた[中山芝1200m][良馬場][1勝クラス以上]の年間平均前半3Fラップ)
今年はこれまでの中山芝1200mの平均前半3Fは33.7秒で、近10年では22年と24年に次いで3番目タイのやや速いペースを刻む傾向となっています。
その22年のスプリンターズSでは、前傾度2.4秒という近10年では3番目の超ハイペース競馬となり、マイル好走実績無し馬が2頭好走して、マイル実績上位の人気3頭が馬券外に飛ぶという決着でした。
24年のスプリンターズSでも、前傾度2.8秒という近年では最も速い超ハイペース競馬となり、新馬を除くマイル好走実績無し馬のワンツーという決着でした。
それらと同様に騎手の中で前半から飛ばす前半突進型の騎乗が定着している今年のスプリンターズSではハイペースが見込まれますので、そこではマイルを守備範囲としていない様な“生粋のスプリンター”こそ買うべき存在となります。
世界競馬におけるトレンドとして、中国本土が馬券発売解禁へ歩み出している関連で、経営資源が投入されている香港競馬のレベルが近年急上昇の一途にあるという点があります。実際に23年下半期以降の国内芝G1~G2レースにおける前走海外出走馬の成績では、前走香港“以外”組は水準をやや上回る程度の成績なのに対して、前走香港組だけ抜き出すと[8-4-2-28](複勝率50%/単勝回収率164%/複勝回収率121%)にまで成績が跳ね上がります。
| 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収値 | 複勝回収値 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 前走中央 | 114- 118- 122-1435/1789 | 6.40% | 13.00% | 19.80% | 73 | 71 |
| 前走海外 | 10- 8- 3-46/67 | 14.90% | 26.90% | 31.30% | 89 | 84 |
| →香港のみ | 8- 4- 2-14/28 | 28.60% | 42.90% | 50% | 164 | 121 |
最近だと一昨年の札幌記念で前走香港G1好走組のノースブリッジが5番人気と舐められた人気ながら勝利したことや、今年の安田記念で前走香港G1組のジャンタルマンタルとガイアフォースのワンツー決着だったことや、そして今月のコリアスプリントで香港の非重賞級馬(重賞初挑戦)のセルフインプルーブメントが日本の重賞馬チカッパなどを下す勝利を挙げたことも衝撃でしたが、レベルの高い香港のレースを経てきた馬が日本のレースや日本馬に対して猛威を振るうという事象が頻発しています。
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ライタープロフィール
1990年生まれ、東京都出身。2009年にmixiコミュニティで予想活動をスタート。11年にブログを始めるとライブドア競馬ブログでアクセス数トップを記録した。15年に「競馬王」でメディアデビューし、18年からは「競馬予想TV!」に10年振りの新人予想家として出演中。
予想スタイルは各馬&各レース固有の独自の取捨ポイント設定(通称プロファイリングポイント)に基づいた狙い馬の発掘。

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