キムラヨウヘイの重賞アナライズ

2024年ジャパンカップ

再び牝馬に流れが傾きつつある今のジャパンC

ジャパンCは「世界に通用する強い馬づくり」をスローガンに1981年に創設されたレースです。創設当初は海外馬が圧倒的優勢でしたが、98年からは形勢一変して日本馬が断然優勢となりました。そして09年にウオッカが日本馬の牝馬として初優勝して以降は日本馬の中でも5年連続1位入線など牝馬の活躍が顕著となり、2014年にエピファネイアが6年振りに牡馬として1位入線を収めて以降は日本馬の牡馬がやや優勢に揺り戻しがあり、そして20年以降は日本馬の牡馬と牝馬がほぼ互角になり今に至る…というのが大まかな歴史的な流れです。

牝馬が09年から5年連続で1位入線していた時期のジャパンCは、総じて道中でペースが緩む形での上がり特化勝負になりがちで、上がり3F33秒台→上がり1F11秒台の決め手比べで“牝馬のキレ”が物を言う決着になっていました。

その風向きが変わったのが2014年で、牝馬時代の2009〜13年と牡馬時代の2014〜19年を比較すると、総じて道中でペースが緩みづらい形での持続力勝負になりがちで、レースの上がり3Fタイムと勝ち馬の上がり3Fタイムは1秒ほど遅くなり、また上がり1Fタイムもほぼ毎年12秒台掛かるようになったことが、体力と馬力で勝る牡馬の巻き返しに繋がっているものと考えられます。

20年秋開催からの東京芝コースの変貌(一にも二にも末脚がモノを言う馬場に転化)を背景として、同年以降のジャパンCでは再び上がり3Fタイムも、上がり1Fタイムもコンマ5秒ほど速くなり、再び牝馬が巻き返しつつあるものと考えられます。


■データ1  東京芝1800m以上の牡馬牝馬混合の特別戦での牝馬成績(19年以降)

  着別度数 勝率 連対率 複勝率 単勝回収値 複勝回収値
ラスト1F12.5秒以上 0-  3-  2- 29/ 34 0.00% 8.80% 14.70% 0 32
ラスト1F11.6~12.4秒 22-  31-  25- 237/ 315 7.00% 16.80% 24.80% 51 61
ラスト1F11.5秒以下 11- 18- 17-104/150 7.30% 19.30% 30.70% 126 86

実際にジャパンC以外の東京芝の中距離以上の特別戦でも、上がりが遅いレースでは牡馬が圧倒的優勢で、速いレースでは牝馬が優勢となっています。昨今の流れと今年の先行馬ほぼ不在のメンバー構成を踏まえると、今年は牝馬に向くレースになることが想定されます。

海外馬は香港orドバイorアメリカでの実績を重視

98年から海外馬(主に欧州馬)が一貫して不振となっている背景としては、特に欧州競馬とこの日本競馬では馬場を筆頭に様々な面で“別物”であるという実情が大きいです。欧州競馬を主戦場にしている馬にとっては、ギャップが著しい遠国の日本競馬においても、本国の実績と同様の走りを求めるのは中々無理な注文であると言えます。

その中にあって今のジャパンCでも買うことができる一握りの海外馬としては、対極に位置している欧州競馬での実績馬ではなく、欧州競馬以外の日本競馬と比較的近いシチュエーション(ドバイ・アメリカ・香港などの中立地)での実績を有している馬です。そういう馬であれば、乗り越えるべきハードルは比較的小さくなりますので、実績通りの走りを見せることができる可能性が見出せるというわけです。


■データ2  米or香港orドバイでのG1連対実績有りの欧州産馬のJC成績(05年以降)

  馬名 着順 生産国
2021 ジャパン 8 イギリス
2021 ブルーム 11 アイルランド
2013 ドゥーナデン 5 フランス
2009 コンデュイット 4 アイルランド
2007 アルティストロワイ 8 アイルランド
2006 ウィジャボード 3 イギリス
2006 フリードニア 7 イギリス
2005 ウィジャボード 5 イギリス
2005 キングスドラマ 16 アイルランド

実際に2005年以降のジャパンカップでの海外馬の出走は合わせて66頭いましたが、その中で「日本競馬適性を示す中立地でのG1連対実績」を有する「芝馬のレベルが高い欧州生産馬(=芝馬のレベルが低い米国産馬などを除く)」は9頭中4頭が掲示板内善戦を果たしています(好走パターン)。逆にそれに該当しない馬は57頭中3頭しか掲示板内善戦を果たせていません(凡走パターン)。

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ライタープロフィール

キムラヨウヘイ

1990年生まれ、東京都出身。2009年にmixiコミュニティで予想活動をスタート。11年にブログを始めるとライブドア競馬ブログでアクセス数トップを記録した。15年に「競馬王」でメディアデビューし、18年からは「競馬予想TV!」に10年振りの新人予想家として出演中。
予想スタイルは各馬&各レース固有の独自の取捨ポイント設定(通称プロファイリングポイント)に基づいた狙い馬の発掘。

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