キムラヨウヘイの重賞アナライズ

2024年天皇賞秋

馬場変貌後、20年以降の天皇賞秋は毎年差し決着

秋古馬三冠レースは10月の天皇賞秋・11月のジャパンカップ・12月の有馬記念という並びで、レースの“格”自体はどれもほとんど同一と言って差し支えないですが、その一方で“賞金”については天皇賞秋が1着・2億2千万円なのに対し、ジャパンカップと有馬記念は1着・5億円という大きな差があります。

それもあって天皇賞秋はレースの格の割には大目標とされづらい一戦となっており、この一戦だけで消耗し切りたくないという意識も働いてか、前半からペースが落ち着きやすく、以前まではやや前残りの決着傾向も見受けられました。

実際に天皇賞秋の14年から19年までの6年中4年では道中5番手以内の逃げ〜先行馬が複数頭好走していました。しかし、その潮目が変わったのが20年秋で、東京芝コースでは内有利の馬場バイアスがほぼ消滅し、一にも二にも末脚がモノを言う馬場(端的に表せば差し有利傾向)へと変貌しました。こうして、この天皇賞秋を含む冬開催を除く古馬重賞では前残りが見込みづらい差し追い込み有利傾向へと様変わりしています。


■データ1  20年秋以降の東京芝の古馬重賞の脚質別成績(冬開催除く)

脚質 着別度数 勝率 連対率 複勝率
逃げ 2-  3-  2- 46/ 53 3.80% 9.40% 13.20%
先行 19- 13- 16-140/188 10.10% 17.00% 25.50%
中団 24- 25- 26-256/331 7.30% 14.80% 22.70%
後方 7- 11-  9-199/226 3.10% 8.00% 11.90%

天皇賞秋では20年以降の4年全てで道中6番手以下の差し〜追い込み馬が必ず複数頭好走するという決着が続いています。今年も数年前までの前残りもあり得るという考えは捨て、差し有利傾向に乗ずることができそうな、純粋に末脚が秀でている馬と位置取り的にハマる馬を重視するのが正解と見ます。

一見嫌われがちな中長距離馬が妙味

前述のとおり、賞金が比較的低く抑えられている天皇賞秋は、トップホースにとって大目標というよりは、この先の高額賞金レースを目指すための始動戦として使い勝手の良い一戦となっています。そこでは特にその色が濃い様に見える中長距離馬が、距離適性の面でも本気度の面でも競馬ファンから軽視されて人気になりづらい存在となっています。

ただし、20年秋開催を境に東京芝の馬場特性が変貌をしたのを背景に、この天皇賞秋も含めて上級クラスの中距離のレースでは末脚だけあれば間に合うということで距離不足による敗戦というケースがめっきりと減っている実情があり、逆に距離不足と目される馬が波乱の立役者となるケースが目立っています。


■データ2  22年以降の東京芝2000mの前走距離別成績

前走平離 着別度数 勝率 連対率 複勝率
同距離 48-  53-  43- 344/ 488 9.80% 20.70% 29.50%
今回延長 37-  37-  39- 389/ 502 7.40% 14.70% 22.50%
今回短縮 18-  14-  19- 118/ 169 10.70% 18.90% 30.20%

クラスを問わずに距離短縮馬の活躍が目立つ最近の東京芝2000mにおいて、特に古馬オープン競走だと今年は1月の白富士Sと10月のオクトーバーSの2競走がありましたが、前者で9番人気3着と穴をあけたのはフライライクバード(友道厩舎所属の2500m重賞好走実績馬)で、後者で14番人気3着と大穴をあけたのはサトノエルドール(近況2600m実績馬)でした。

そしてこの天皇賞秋においても、馬場変貌前の14〜19年(極悪馬場の17年除く)に非上位人気で好走したのはスピルバーグ・ステファノス・イスラボニータ・リアルスティール・アエロリット・キセキで、キセキ以外は距離2000m以下がベストというタイプの馬でした。しかし、20年以降だと長距離馬のフィエールマン・中長距離馬のジャスティンパレス・距離2000m特化型のパンサラッサという前者とは毛色が違うタイプの馬となっています。

また本気度の面でも、レースを使って馬を仕上げる時代ではない今は前哨戦や叩き台だからと言ってあからさまに走らないというケースは減っており、仮に目標が先だとしても初戦からそれなりに走れるというケースが大半となっています。

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ライタープロフィール

キムラヨウヘイ

1990年生まれ、東京都出身。2009年にmixiコミュニティで予想活動をスタート。11年にブログを始めるとライブドア競馬ブログでアクセス数トップを記録した。15年に「競馬王」でメディアデビューし、18年からは「競馬予想TV!」に10年振りの新人予想家として出演中。
予想スタイルは各馬&各レース固有の独自の取捨ポイント設定(通称プロファイリングポイント)に基づいた狙い馬の発掘。

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