スタート直後のホームストレッチの距離がやや短いコース形態で、前半の隊列がすぐに決まってペースが落ち着きやすい中京芝2000mは、少し前まで屈指の逃げ先行有利コースとなっていました。
実際に2017年1月から22年3月までの同コースで行われた牡馬牝馬混合の重賞では、ほとんどが非上位人気馬だった逃げ馬の好走率が6割超という超好成績をマークしており、21年金鯱賞からの丸々1年間では5レース全てで逃げ馬が好走した程でした。
ただし、そういう目に見えて顕著な傾向というものに対しては、レース戦略を組み立てる騎手サイドも把握&研究して臨むことになりますので、それを抗おうとする方向性の乗り方の工夫がされることになります。
21年の中京芝2000mの1勝クラス以上の脚質別成績(複勝率)は「逃げ馬41.9%/先行馬36%/差し馬19.9%」で、22年の同成績は「逃げ馬43.2%/先行馬36.9%/差し馬25%」だったのが、24年は「逃げ馬25%/先行馬43.1%/差し馬35.3%」で、逃げ馬の好走比率が大きく下がり差し馬の好走比率が上がっているのが最新傾向で、重賞においても年々逃げ馬が残りづらくなっています。
年・年月 | 着別度数 | 複勝率 | 単勝回収値 | 複勝回収値 | 前半3F35秒以下のレース数 |
---|---|---|---|---|---|
2024年 | 0- 0- 0- 2/ 2 | 0.00% | 0 | 0 | 2 |
2023年 | 0- 1- 0- 4/ 5 | 20.00% | 0 | 38 | 1 |
2022年 | 1- 0- 1- 4/ 6 | 33.30% | 33 | 98 | 0 |
2021年 | 3- 1- 0- 2/ 6 | 66.70% | 4460 | 655 | 1 |
2020年 | 0- 0- 1- 2/ 3 | 33.30% | 0 | 106 | 0 |
2019年 | 0- 0- 1- 2/ 3 | 33.30% | 0 | 76 | 0 |
2018年 | 0- 1- 0- 3/ 4 | 25.00% | 0 | 130 | 0 |
2017年 | 0- 1- 1- 1/ 3 | 66.70% | 0 | 310 | 0 |
それらの背景については、騎手の乗り方の工夫から逃げ馬を甘やかさずに容易には残させないで、その結果として差し馬でも何とか届くレースになる率が高まっているということに他なりません。
具体的には明らかに前半のペースが速いレースが増えており、コース改修後の12年から23年3月までに中京芝2000mで重賞は42レース行われましたが、その中で前半3Fが35秒以下だったのはわずか1レースだけでした。それが23年12月以降に行われた3レースは全て35秒台以下となっていますので、明らかな騎手の乗り方(ペースメイク)の違いが読み取れます。
秋華賞への出走権利獲得を目指して前掛かりのレース展開もあり得る今回のローズSでも、差し有利の決着が起こり得る下地は整っていると言えます。
ローズSは「春の実績馬vs夏の上がり馬」という構図になりがちですが、春の実績馬については順当に力を発揮できる状況で夏を越して3歳秋を迎えているかどうかが重要なポイントとなります。例えばオークス馬でも10年サンテミリオンや11年エリンコートなどがそうだった様に、3歳秋以降に全く走らなくなる馬は決して珍しくありません。
3歳春までで終わる馬と、3歳秋以降も終わらない馬を峻別する方法としては、ノーザンファーム勢か否かというだけでかなりの精度で判断することができます。17年以降のローズSで実質的に春の実績馬と見なせる前走オークス組は計30頭いましたが、その中でローズS3着内に好走した8頭中6頭はノーザンF生産馬でした。逆にローズSで4着以下に凡走した22頭中20頭は非ノーザンF生産馬で、その半数ほどが上位人気に推されていたにもかかわらずのこの惨状だけに典型的な危険人気パターンだと言えます。
生産者 | 着別度数 | 複勝率 |
---|---|---|
ノーザンファーム | 3- 3- 3- 7/16 | 56.30% |
三嶋牧場 | 2- 0- 0- 0/ 2 | 100.00% |
社台ファーム | 0- 0- 1- 5/ 6 | 16.70% |
天羽牧場 | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.00% |
下河辺牧場 | 0- 0- 0- 2/ 2 | 0.00% |
目黒牧場 | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.00% |
追分ファーム | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.00% |
谷川牧場 | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.00% |
新冠タガノファーム | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.00% |
レイクヴィラファーム | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.00% |
フジワラフアーム | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.00% |
ノースヒルズ | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.00% |
ケイアイファーム | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.00% |
3歳春という馬が未完成の段階でのオークス出走は馬へのダメージが大きく残り、その上で酷暑の時季を経ながらも改めて万全の出走態勢を整えるという難易度の高い調整をクリアできるのは、得てして日本の競馬界(育成界)でトップに立つノーザンF勢ばかりというのが現実となっています。
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ライタープロフィール
1990年生まれ、東京都出身。2009年にmixiコミュニティで予想活動をスタート。11年にブログを始めるとライブドア競馬ブログでアクセス数トップを記録した。15年に「競馬王」でメディアデビューし、18年からは「競馬予想TV!」に10年振りの新人予想家として出演中。
予想スタイルは各馬&各レース固有の独自の取捨ポイント設定(通称プロファイリングポイント)に基づいた狙い馬の発掘。
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