キムラヨウヘイの重賞アナライズ

2024年エルムS

逃げ馬不利・外枠有利傾向が進行中の札幌ダート1700m

かつてのエルムSは全般的なローカル・ダート1700mのイメージ通り、先行有利傾向が顕著なレースとなっていました。2009〜18年までの9年間(函館開催年除く)では勝ち馬9頭中7頭が先行馬で、3着内好走馬27頭中23頭が逃げ先行馬、4角5番手以降から差して好走した馬はわずか4頭しかいませんでした。

しかし、19年以降の4年間(函館開催年除く)では逃げ馬は全滅で、勝ち馬は先行馬と差し馬で2頭ずつ分け合うなど、決して先行有利とは言えないレースとなっています。その要因としては年々拡大している札幌ダートコースの「逃げ馬不利傾向」と「外枠有利傾向」に他なりません。


■データ1  札幌ダート1700mの枠順別成績(14〜18年)

枠番 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単勝回収値 複勝回収値
1枠 19- 12- 22-157/210 9.00% 14.80% 25.20% 119 91
2枠 16- 14- 18-161/209 7.70% 14.40% 23.00% 81 65
3枠 27- 24- 23-198/272 9.90% 18.80% 27.20% 60 74
4枠 29- 31- 33-289/382 7.60% 15.70% 24.30% 95 92
5枠 29- 43- 32-295/399 7.30% 18.00% 26.10% 76 71
6枠 40- 25- 27-316/408 9.80% 15.90% 22.50% 78 71
7枠 23- 35- 26-329/413 5.60% 14.00% 20.30% 43 66
8枠 27- 26- 31-334/418 6.50% 12.70% 20.10% 75 74

■データ2  札幌ダート1700mの枠順別成績(19〜23年)

枠番 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単勝回収値 複勝回収値
1枠 15- 11- 23-184/233 6.40% 11.20% 21.00% 28 53
2枠 14- 17- 21-181/233 6.00% 13.30% 22.30% 42 89
3枠 25- 30- 21-324/400 6.30% 13.80% 19.00% 68 68
4枠 35- 25- 30-322/412 8.50% 14.60% 21.80% 95 80
5枠 28- 41- 34-334/437 6.40% 15.80% 23.60% 51 80
6枠 37- 48- 34-325/444 8.30% 19.10% 26.80% 77 98
7枠 38- 35- 31-350/454 8.40% 16.10% 22.90% 85 68
8枠 42- 27- 41-347/457 9.20% 15.10% 24.10% 72 80

まず「逃げ馬不利傾向」について。札幌ダート1700mにおける逃げ馬の成績は、競馬場の改修工事明けの14年は複勝率58.9%という超好成績をマークした後、15年から18年までも毎年複勝率40%台前半という好成績をキープしましたが、2019年から急激に落ち込みました。19年は23.3%→20年は31.5%→21年は29.1%→22年は23.7%→23年は22.4%となっており、本来最も優位なはずのダートの逃げ馬としては考えられないレベルの低調な成績が並んでいます。

次に「外枠有利傾向」について。14年から18年の札幌ダート1700mにおける枠順別成績(複勝率)を見ると最上位は3枠で下位は7枠→8枠→6枠の順という歴然とした内枠有利⇔外枠不利傾向だったのに対して、19年から23年は上位が6枠→8枠の順で、下位は3枠→1枠という外枠有利⇔内枠不利傾向に翻っています。

2024年もここまで札幌ダート1700mの全14レースで逃げ馬は1勝のみで、大外8枠の馬が最多の4勝を挙げるなど、その傾向は継続しています。

今が4歳ダート馬の上昇タイミング

ダート馬の場合には年長世代相手の重賞オープン競走で「3歳時は振るわず→4歳冬も振るわず→4歳春以降から上昇」という成績の推移を歩みがちです。


■データ3  ダート重賞・オープン競走における4歳馬の時期別成績(2019年以降)

年齢 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単勝回収値 複勝回収値
4歳・1-3月 16- 19- 11-155/201 8.00% 17.40% 22.90% 29 48
4歳・4-6月 27- 30- 24-181/262 10.30% 21.80% 30.90% 49 71
4歳・7-9月 20- 24-  9-121/174 11.50% 25.30% 30.50% 73 78
4歳・10-12 32- 35- 28-263/358 8.90% 18.70% 26.50% 72 78

というのも、ダート競走のトップ戦線は、若駒よりも体力面で上回る歴戦の古馬の方が絶対的に有利という下地がありますので、3歳馬が古馬相手に好結果を残すことは至難の業でありレアケースとなっている現実があります。

そして、本来ならば3歳よりも時期が後ろで成長力により差を詰められるはずの4歳1〜3月の方が成績は上向いてもおかしくなさそうですが、実際にはそうはなっていないのは斤量面によるところだと考えられます。

JRAでは馬の年齢とレースの距離別に細かく斤量の設定がなされていますが、3歳夏から4歳春にかけて段階的に古馬との斤量差が縮小されますので、若駒にとっては成長して力量差を埋めていく分だけ斤量差は縮小されていき、結果的にそれらが相殺される格好で、その期間内は古馬との成績の差を中々詰められないということになります。そして、通常期待できる成長によって力量は上がる一方で、斤量差は変わらないという4歳春以降から本格的に活躍が拡大していくというのが毎年不変の流れとなっているというわけです。

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ライタープロフィール

キムラヨウヘイ

1990年生まれ、東京都出身。2009年にmixiコミュニティで予想活動をスタート。11年にブログを始めるとライブドア競馬ブログでアクセス数トップを記録した。15年に「競馬王」でメディアデビューし、18年からは「競馬予想TV!」に10年振りの新人予想家として出演中。
予想スタイルは各馬&各レース固有の独自の取捨ポイント設定(通称プロファイリングポイント)に基づいた狙い馬の発掘。

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