キムラヨウヘイの重賞アナライズ

2024年皐月賞

高速決着ならノーザンファーム勢⇔低速決着なら非ノーザンファーム勢

先週の牝馬クラシック初戦の桜花賞では1分32秒2という近10年の中で3番目の高速決着となり、ノーザンファーム勢のワンツーという決着でした。また、2番目の高速決着(1分32秒1)だった昨年は、ノーザンファーム勢が掲示板を独占という決着でした。さらには最も高速決着(1分31秒1)だった3年前は、ノーザンファーム勢が掲示板独占どころか上位7頭まで独占という決着でした。

それらの決着パターンが物語っている通り、G1レース本番で極限のスピードを競うシチュエーションにおいては、ノーザンファーム勢がそれ以外の勢力に対して明確に優位な立場を得られるということが言えます。


■データ1  勝ち時計が2分0秒以上の低速決着時の生産者別成績(過去10年)

生産者 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単勝回収値 複勝回収値
ノーザンファーム 1- 2- 1-23/27 3.70% 11.10% 14.80% 13 36
社台ファーム 1- 0- 0- 4/ 5 20.00% 20.00% 20.00% 104 44
ノースヒルズ 1- 0- 0- 2/ 3 33.30% 33.30% 33.30% 90 46
田上徹 1- 0- 0- 0/ 1 100.00% 100.00% 100.00% 1450 430
岡田スタツド 0- 1- 0- 1/ 2 0.00% 50.00% 50.00% 0 245
斉藤安行 0- 1- 0- 0/ 1 0.00% 100.00% 100.00% 0 580
谷川牧場 0- 0- 1- 0/ 1 0.00% 0.00% 100.00% 0 160
新生ファーム 0- 0- 1- 0/ 1 0.00% 0.00% 100.00% 0 530
笠松牧場 0- 0- 1- 0/ 1 0.00% 0.00% 100.00% 0 690

■データ2  勝ち時計が2分0秒未満の高速決着時の生産者別成績(過去10年)

生産者 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単勝回収値 複勝回収値
ノーザンファーム 4- 6- 4-34/48 8.30% 20.80% 29.20% 78 82
社台ファーム 1- 0- 0-11/12 8.30% 8.30% 8.30% 30 11
社台コーポレーション白老ファーム 1- 0- 0- 5/ 6 16.70% 16.70% 16.70% 85 31
服部牧場 1- 0- 0- 0/ 1 100.00% 100.00% 100.00% 3090 530
追分ファーム 0- 1- 0- 0/ 1 0.00% 100.00% 100.00% 0 320
三嶋牧場 0- 0- 1- 1/ 2 0.00% 0.00% 50.00% 0 80
ヤナガワ牧場 0- 0- 1- 1/ 2 0.00% 0.00% 50.00% 0 145
ビッグレッドファーム 0- 0- 1- 0/ 1 0.00% 0.00% 100.00% 0 470

それはクラシック三冠初戦の皐月賞においても全く同様となっています。上の表を見ての通りですが、近10年の中で最も時計が遅かった18年と2番目に遅かった20年の低速決着時には、馬券内好走馬6頭中5頭を非ノーザンファーム勢が占めていました。もしも高速決着が見込まれる場合にはノーザンファーム勢を中心視、低速決着が見込まれる場合には非ノーザンファーム勢を中心視するのが正解と言えます。

高速決着なら2000m以下向きのタイプ⇔低速決着ならダービー(2400m)向きのタイプ

意外にも皐月賞は高速決着となった年よりも低速決着となった年の方がダービーに繋がりやすいということから、高速決着が見込まれる場合にはダービー(2400m)で走らなさそうな馬を、低速決着が見込まれる場合にはむしろダービー(2400m)で走りそうな馬を重視すべきと考えます。

実際に近10年の皐月賞で2分0秒台以上の低速決着だった年の勝ち馬は、ダービーでも「2着・1着・2着・2着」というオール連対の好成績を残しています。逆に2分0秒未満の高速決着だった年の勝ち馬は、ダービーで「2着・1着・3着・5着・4着・7着」という何とも言えない成績となっています。ある程度時計が掛かる決着の皐月賞の方が、総合力が問われて本格的に強いタイプの馬が選別されるのに対して、時計が速い決着の皐月賞の方がスピード過多のタイプの馬が選別されているということが言えます。

新種牡馬の初年度産駒に注目

つい2年前までの皐月賞は、種牡馬リーディングで長年に渡ってTOP3争いを繰り広げていたディープインパクト産駒vsハーツクライ産駒vsキングカメハメハ産駒という、3大種牡馬による覇権争いの様相たる一戦となっていました。しかし、それらの産駒が消滅もしくは大きく減少した昨年は久方ぶりに3大種牡馬が不在の皐月賞となり、今年も同様となります。そこで重視すべき種牡馬としては、ある特定の有力種牡馬の産駒というよりも、不特定の最新の種牡馬の産駒(初年度産駒もしくは2年目産駒)と見ています。


■データ3  ディープ・ハーツ・キンカメ以外の種牡馬の連対馬一覧(18年以降)

年/着順 馬名 父名 種牡馬年数
18年1着 エポカドーロ オルフェーヴル 初年度
18年2着 サンリヴァル ルーラーシップ 2年目
19年1着 サートゥルナーリア ロードカナロア 初年度
19年2着 ヴェロックス ジャスタウェイ 初年度
21年1着 エフフォーリア エピファネイア 2年目
21年2着 タイトルホルダー ドゥラメンテ 初年度
22年1着 ジオグリフ ドレフォン 初年度
22年2着 イクイノックス キタサンブラック 初年度
23年1着 ソールオリエンス キタサンブラック 2年目
23年2着 タスティエーラ サトノクラウン 初年度

近年のディープ・ハーツ・キンカメ以外の種牡馬の皐月賞連対馬のほとんどは、新種牡馬の初年度産駒から輩出されています。それは新種牡馬をアピールしたい生産者サイドの思惑から早めに仕上げているのが「最も速い(早い)馬が勝つ」と言われる皐月賞に適うという側面もあるでしょうし、より根本的にはディープ・ハーツ・キンカメ以降を除く種牡馬の勢力図は常に塗り替えられ続けているという所であると考えています。

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ライタープロフィール

キムラヨウヘイ

1990年生まれ、東京都出身。2009年にmixiコミュニティで予想活動をスタート。11年にブログを始めるとライブドア競馬ブログでアクセス数トップを記録した。15年に「競馬王」でメディアデビューし、18年からは「競馬予想TV!」に10年振りの新人予想家として出演中。
予想スタイルは各馬&各レース固有の独自の取捨ポイント設定(通称プロファイリングポイント)に基づいた狙い馬の発掘。

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