キムラヨウヘイの重賞アナライズ

2023年天皇賞秋

今の東京芝のトップクラス戦は末脚が全て

今の東京芝は20年秋開催を境にして内有利の馬場バイアスがほぼ消滅して、なおかつ一にも二にも末脚がモノを言う差し有利馬場へと変貌しています。例外的に冬開催については、厳冬期で生育状況が良いとは言えない芝の状況と、幅員が狭くコーナー部分が拡大されるDコース使用という背景から、瞬発力の要求度が落ちることでその傾向が多少は薄れることになりますが、春&秋開催においては差し有利傾向でほぼ鉄板です。

また、下級クラスのレースよりも上級クラスのレースの方が、最後の直線での末脚の重要度が高まるので差しが決まりやすくなりますので、その上級クラスの最高峰に位置する重賞レースではことさら顕著な差し有利傾向が生まれています。


■データ1  20年秋以降の東京芝重賞(3歳上&4歳上)の9番人気以下馬の位置取り別成績

脚質上り 着別度数 勝率 連対率 複勝率
平地・逃げ 0-  0-  0- 22/ 22 0.00% 0.00% 0.00%
平地・先行 0-  0-  1- 58/ 59 0.00% 0.00% 1.70%
平地・中団 0-  3-  2- 99/104 0.00% 2.90% 4.80%
平地・後方 1-  3-  1-115/120 0.80% 3.30% 4.20%
平地・マクリ 0-  0-  0-  1/  1 0.00% 0.00% 0.00%

実際に20年秋以降の3歳上&4歳上の芝重賞レースで、9番人気以下の人気薄ながらも3着内好走を果たした11頭中8頭は、道中二桁通過順位または道中最後方追走の追い込み馬から輩出されており、逆に他のコース条件では最も好成績をマークしていてもおかしくない逃げた馬は43頭中5頭しか好走できていません。

昨年の天皇賞(秋)こそ、後続が全く追いかけてこない中で大逃げを打ったパンサラッサが2着に残るという決着でしたが、あくまでもイレギュラーな結果として見るべきです。今の東京芝のトップクラスのレースでは、高い位置取りは不要で、純粋に末脚に秀でている馬を重視するのが正解と見ます。

かつては秋古馬三冠レース完走かつ三連続好走が当たり前だったのが…

かつては秋古馬三冠レースの「天皇賞(秋)→ジャパンC→有馬記念」を3連戦して完走するのが王道ローテとされており、実際に1999年から2012年までの天皇賞(秋)勝ち馬は14頭中10頭が同ローテを歩んでいました。

ただし、1990年代後半から2000年代前半までは、秋古馬三冠レースの完走ローテは100%成功(3戦連続好走)していたのに対して、2000年代後半からは成功率が急降下し始めました。

それもあってか、2013年以降だと天皇賞勝ち馬は10頭中2頭しか同ローテを歩んでいません。それどころか秋古馬三冠レースの内の2連戦ですらも成功率はかつてほど高いとは言えず、特に天皇賞秋からジャパンCへのローテでパフォーマンスを維持できた馬は近年ほとんどいません。

逆に言えば、ジャパンCで走る馬は天皇賞(秋)で走った馬ではないということで、実際に近10年のジャパンCの3着内好走馬は天皇賞(秋)の好走馬よりも凡走馬から多く輩出されているという意外な事実もあります。


■データ2 近10年のジャパンカップ連対馬で前走天皇賞(秋)出走馬

22年2着 シャフリヤール 5着
21年1着 コントレイル 2着
20年1着 アーモンドアイ 1着
19年1着 スワーヴリチャード 7着
18年2着 キセキ 3着
15年1着 ショウナンパンドラ 4着
15年2着 ラストインパクト 12着
14年1着 エピファネイア 6着
13年1着 ジェンティルドンナ 2着

やはり現代競馬においては連続でG1を激走するという、二兎を得るのには非常に高いハードルがあるという見方をすべきですので、天皇賞(秋)で走る馬(買う馬)とジャパンCで走る馬(買う馬)は分けて考える必要性があります。

今年の天皇賞(秋)の出走馬の中には、この後にジャパンCや有馬記念の出走を視野に入れている馬が少なからずいますが、どのレースに軸足を置いているのかを読むことが能力比較と同等に重要なポイントとなります。

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ライタープロフィール

キムラヨウヘイ

1990年生まれ、東京都出身。2009年にmixiコミュニティで予想活動をスタート。11年にブログを始めるとライブドア競馬ブログでアクセス数トップを記録した。15年に「競馬王」でメディアデビューし、18年からは「競馬予想TV!」に10年振りの新人予想家として出演中。
予想スタイルは各馬&各レース固有の独自の取捨ポイント設定(通称プロファイリングポイント)に基づいた狙い馬の発掘。

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