先月のNHKマイルCのコラムで『2020年秋を境にして東京芝コースでは内有利の馬場バイアスがほぼ消滅して、なおかつ一にも二にも末脚こそがモノを言う馬場、端的に言えば差し有利傾向へと化しているのが最新トレンドという現状』・『G1レースではことさら顕著な差し有利傾向が生まれているのが実情』として、今の東京芝の差し有利傾向をピックアップしました。
実際にそのNHKマイルCも道中二桁通過順位の追い込み馬によるワンツースリー決着となりました。その後の東京芝の重賞レースでは、日本ダービーこそ極端なスローペース展開を利して道中4番手追走のタスティエーラが押し切るという決着でしたが、それ以外の5レースは全て道中6番手以下追走の差し馬が勝利を収めるなど、依然として差し有利傾向が継続しています。
脚質 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収値 | 複勝回収値 |
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平地・逃げ | 1- 1- 3- 5/ 10 | 10.00% | 20.00% | 50.00% | 30 | 456 |
平地・先行 | 5- 4- 0- 29/ 38 | 13.20% | 23.70% | 23.70% | 147 | 70 |
平地・中団 | 4- 3- 7- 57/ 71 | 5.60% | 9.90% | 19.70% | 27 | 51 |
平地・後方 | 0- 2- 0- 36/ 38 | 0.00% | 5.30% | 5.30% | 0 | 13 |
前週まで5週連続で芝GIレースが行われた後の開催終盤で荒れた馬場状態になっているのと、梅雨時期で馬場悪化を助長する降雨に見舞われやすいこともあり、例年だと特に外の方が伸びやすい馬場状態でのレース施行となるのが恒例となっています。しかしエプソムCは“逆に”前が残るという決着が頻繁に起こっているというのが大きなポイントです。
目に見えづらい“ステルスバイアス”については結果にダイレクトに反映されるものですが、逆に誰しもが一目で分かるほどの極端なバイアスにかんしては“揺り戻し”という現象が往々にして起きるというわけです。
例えば一昨年のダービーは当日の差し有利馬場がダイレクトに反映された差し決着となりましたが、その次レースの目黒記念では差し有利馬場が極端に意識されて超が付くスローペースを生んで前残り決着となりました。具体的には、ダービーで一頭だけ離れた最後方を追走していたレッドジェネシスが刻んだ前半3F通過タイム(38.2秒)が、目黒記念で逃げていたトップウイナーの前半3F通過タイム(37.9秒)とほとんど同一だったのです。
それは馬をコントロールする騎手サイドの意識と戦略によるもので、差し有利の馬場だと分かっていれば先行馬に乗る騎手はペースをできる限り落とす騎乗の方向性となりますし、差し馬に乗る騎手は先行馬への警戒度を下げて焦らずに構えた騎乗の方向性となります。
そして、それらが度を超えて過剰な対応をされた騎乗が繰り広げられた場合には、上述の目黒記念の例のように “揺り戻し”と言うべき馬場傾向とは真逆の決着を生み出し得るというワケです。
年 | 着順 | 馬名 | 2角通過順位 | 3角通過順位 | 4角通過順位 |
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2022年 | 1着 | ノースブリッジ | 3 | 3 | 3 |
2着 | ガロアクリーク | 7 | 7 | 5 | |
3着 | ダーリトンホール | 4 | 5 | 5 | |
2021年 | 1着 | ザダル | 10 | 9 | 8 |
2着 | サトノフラッグ | 14 | 15 | 12 | |
3着 | ファルコニア | 13 | 10 | 7 | |
2020年 | 1着 | ダイワキャグニー | 3 | 2 | 2 |
2着 | ソーグリッタリング | 6 | 5 | 4 | |
3着 | トーラスジェミニ | 1 | 1 | 1 | |
2019年 | 1着 | レイエンダ | 2 | 2 | 2 |
2着 | サラキア | 1 | 1 | 1 | |
3着 | ソーグリッタリング | 4 | 5 | 5 | |
2018年 | 1着 | サトノアーサー | 3 | 6 | 6 |
2着 | ハクサンルドルフ | 12 | 13 | 13 | |
3着 | グリュイエール | 10 | 8 | 8 | |
2017年 | 1着 | ダッシングブレイズ | 5 | 2 | 3 |
2着 | アストラエンブレム | 2 | 2 | 3 | |
3着 | マイネルハニー | 1 | 1 | 1 | |
2016年 | 1着 | ルージュバック | 8 | 9 | 9 |
2着 | フルーキー | 14 | 12 | 11 | |
3着 | マイネルミラノ | 1 | 1 | 1 |
開催終盤でなおかつ荒天にも見舞われやすく、見るからに差し有利&外有利馬場で行われるエプソムカップにおいては、正にその“揺り戻し”の現象が頻発して起こるレースとなっており、実際に近7年中4年(2016年・2017年・2019年・2020年)で逃げた馬が人気薄で好走するなど、総じて前有利の決着傾向が読み取れます。
週末に雨予報が出ている今年も“見え見え”の荒れ馬場が想定されますが、だからこそ“揺り戻し”の前残り決着を狙い撃つのも一手です。
先週の安田記念のコラムで雨の日(道悪時)に注目すべき属性として「非ノーザンファーム生産馬」と「キングカメハメハ系種牡馬の産駒」を取り上げました。
その安田記念は結局、完全に乾いた馬場状態でレースが行われたことで両属性に当てはまる馬は不発に終わってしまいましたが、このエプソムカップにおいても同様の導きは有効となります。
実際に重or不良馬場でレースが行われた昨年と3年前は非ノーザンファーム生産馬によるワンツースリー決着でした。また3年前はキングカメハメハ直仔のダイワキャグニーが9番人気で勝利し、シンガリ人気ながらも3着に食い込んだトーラスジェミニはキングカメハメハも属するキングマンボ系の馬でした。
レース自信度(5段階評価):3
キムラヨウヘイの
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ライタープロフィール
1990年生まれ、東京都出身。2009年にmixiコミュニティで予想活動をスタート。11年にブログを始めるとライブドア競馬ブログでアクセス数トップを記録した。15年に「競馬王」でメディアデビューし、18年からは「競馬予想TV!」に10年振りの新人予想家として出演中。
予想スタイルは各馬&各レース固有の独自の取捨ポイント設定(通称プロファイリングポイント)に基づいた狙い馬の発掘。
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