先週のNHKマイルCのコラムでは『2020年秋を境にして東京芝コースでは内有利の馬場バイアスがほぼ消滅して、なおかつ一にも二にも末脚こそがモノを言う馬場、端的に言えば差し有利傾向へと化しているのが最新トレンドという現状』・『G1レースではことさら顕著な差し有利傾向が生まれているのが実情』と指摘しましたが、実際道中二桁通過順位の追い込み馬によるワンツースリー決着という傾向通りの結果となりました。
そのNHKマイルCと同一コースで行われるヴィクトリアマイルでも同様の決着パターンを見込みたくなるところだと思いますが、実はこのレースに限ってはまた別の背景から「スローペースだと差し有利⇔平均ペースだと先行有利」というレース傾向が鉄板となっています。
■データ1 ヴィクトリアマイルの脚質別成績(過去10年)脚質上り | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収値 | 複勝回収値 |
---|---|---|---|---|---|---|
平地・逃げ | 1- 0- 1- 8/ 10 | 10.00% | 10.00% | 20.00% | 283 | 926 |
平地・先行 | 3- 2- 3- 30/ 38 | 7.90% | 13.20% | 21.10% | 26 | 73 |
平地・中団 | 6- 7- 5- 61/ 79 | 7.60% | 16.50% | 22.80% | 95 | 108 |
平地・後方 | 0- 1- 1- 48/ 50 | 0.00% | 2.00% | 4.00% | 0 | 6 |
近10年においてスローペースで流れたのは17年、18年、21年の3年ですが、17年は1着アドマイヤリード(道中7番手追走)・2着デンコウアンジュ(同11番手)・3着ジュールポレール(同7番手)、18年は1着ジュールポレール(道中8番手)・2着リスグラシュー(同13番手)・3着レッドアヴァンセ(同4番手)、21年は1着グランアレグリア(道中10番手)・2着ランブリングアレー(同10番手)・3着マジックキャッスル(同7番手)の通り、軒並み差し決着となっていました。
逆に平均ペースで流れた年では「13年1番人気1着ヴィルシーナ(2番手追走)&5番人気3着マイネイサベル (2番手追走)」・「14年ヴィルシーナ11番人気1着(逃げ)」・「15年12番人気2着ケイアイエレガント(2番手追走)&18番人気3着ミナレット(逃げ)」・「20年12番人気4着トロワゼトワル(逃げ)」・「22年18番人気4着ローザノワール(逃げ)」の通り、該当年のほとんどで「逃げ馬もしくはそれに準ずる2番手追走馬」が激走または激走未遂を果たしています。
「スローペースだから先行有利⇔非スローペースだから差し有利」という一般論が必ずしも当てはまらずに、このヴィクトリアマイルというレースにおいては、「スローペースは瞬発力を生かしたいクチの差し馬にとって都合が良いペース」であり、「平均ペースはペース耐性に乏しいタイプが少なくない牝馬の差し馬にとっては不歓迎で、スピードと持続力を生かしたいクチの逃げ先行馬にとって都合が良いペース」という側面の方が強く出るというワケです。
前走平地距離 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
---|---|---|---|---|
1200m | 1- 0- 3- 16/ 20 | 5.00% | 5.00% | 20.00% |
1400m | 1- 1- 0- 19/ 21 | 4.80% | 9.50% | 9.50% |
1600m | 4- 6- 4- 61/ 75 | 5.30% | 13.30% | 18.70% |
1800m | 1- 2- 2- 37/ 42 | 2.40% | 7.10% | 11.90% |
1900m | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.00% | 0.00% | 0.00% |
2000m | 2- 1- 1- 9/ 13 | 15.40% | 23.10% | 30.80% |
2200m | 0- 0- 0- 2/ 2 | 0.00% | 0.00% | 0.00% |
2500m | 1- 0- 0- 0/ 1 | 100.00% | 100.00% | 100.00% |
それと同様の理屈から、スローペースで流れるか平均ペースで流れるか次第で、問われる距離適性(前走出走レース距離)の面も大きく左右されることになります。
スローペースで流れた3年の馬券内好走馬9頭は全て前走で距離1600m以上のレースに出走していた馬で、特に二桁人気の超人気薄ながらも激走を果たした17年11番人気2着デンコウアンジュと21年10番人気2着ランブリングアレーは共に前走で距離1800mの長めのレースに出走していた馬でした。逆に前走で距離1400m以下のレースに出走していた馬は17年3番人気11着レッツゴードンキや21年2番人気6着レシステンシアなど振るわない結果となっていました。
それに対して平均ペースで流れた年の馬券内好走馬21頭中6頭は前走で距離1400m以下のレースに出走していた馬で、しかもその全てが5番人気以下の人気薄激走馬でした。逆に前走で距離1800m以上のレースに出走していた馬は22年1番人気12着レイパパレや20年3番人気7着ラヴズオンリーユーなど人気を裏切るケースが散見される結果となっていました。
つまり、スローペースだと前走中距離組が安定して走って前走短距離組は危険パターンに、平均ペースだと前走短距離組が穴パターンで前走中距離が危険パターンとなるというわけです。
レース自信度(5段階評価):3
キムラヨウヘイの
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ライタープロフィール
1990年生まれ、東京都出身。2009年にmixiコミュニティで予想活動をスタート。11年にブログを始めるとライブドア競馬ブログでアクセス数トップを記録した。15年に「競馬王」でメディアデビューし、18年からは「競馬予想TV!」に10年振りの新人予想家として出演中。
予想スタイルは各馬&各レース固有の独自の取捨ポイント設定(通称プロファイリングポイント)に基づいた狙い馬の発掘。
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