キムラヨウヘイの重賞アナライズ

2023年皐月賞

時計勝負になると強いノーザンファーム生産馬


現3歳世代のノーザンファーム生産馬(特に牡馬)については巷でも不振が囁かれていますが、実際に今年の3歳重賞レースでは全15レース中5勝止まりという例年よりも見劣る成績となっています。ただし、その背景としてこれまでに行われたレースが、ノーザンファーム生産馬向きのレースに中々なっていなかったという、外的要因も考慮しなければなりません。

ノーザンファーム生産馬向きのレースというのは、シンプルに言えば時計勝負(スピード勝負)です。これまでに行われた3歳重賞レースの中で、高速決着にカテゴライズできる「きさらぎ賞・クイーンC・フィリーズレビュー・毎日杯・桜花賞」の5レースにおいては、馬券内好走馬15頭中11頭をノーザンファーム生産馬が占めていました。逆にそれ以外の非高速決着だった10レースにおいては、馬券内好走馬30頭中21頭を非ノーザンファーム生産馬が占めていました。

その最たる好例が先週の桜花賞で、1分32秒1という近10年の中で2番目の超高速決着となりノーザンファーム生産馬による掲示板独占という決着になりました。


■データ1 決着時計が1分59秒台以下だった年の好走馬の生産牧場(13年以降)

  1着 2着 3着
22年 ノーザンファーム ノーザンファーム ノーザンファーム
19年 ノーザンファーム ノーザンファーム 三嶋牧場
17年 ノーザンファーム 追分ファーム ノーザンファーム
16年 服部牧場 ノーザンファーム ノーザンファーム
15年 ノーザンファーム ノーザンファーム ヤナガワ牧場
14年 白老ファーム ノーザンファーム ビックレッドファーム
13年 社台ファーム ノーザンファーム ノーザンファーム

■データ2 決着時計が2分0秒台以上だった年の好走馬の生産牧場(13年以降)

  1着 2着 3着
21年 ノーザンファーム 岡田スタッド ノーザンファーム
20年 ノースヒルズ ノーザンファーム 笠松牧場
18年 田上徹 斉藤安行 新生ファーム

この皐月賞も近10年の中で時計が1~3番目に遅かった年は馬券内好走馬9頭中6頭が非ノーザンファーム生産馬だった一方、逆に時計が1~7番目に早かった年だと馬券内好走馬21頭中14頭はノーザンファーム生産馬でした。

今年の皐月賞の各ステップレースは時計レベルが低いレースが多く、そのせいでノーザンファーム生産馬の活躍度度合いが目立っていませんが、その中でも良馬場でさえあれば各馬にとってこれまで経験したことがないレベルの時計勝負が想定される皐月賞で、パフォーマンスを上げる可能性が高いのはノーザンファーム生産馬で、パフォーマンスを下げる可能性が高いのは非ノーザンファーム生産馬という見方ができます。逆に道悪で非時計勝負となった場合にはそれとは真逆の見方をすべきです。

ディープ産駒&ハーツ産駒不在の皐月賞で注目すべきは新種牡馬の産駒


■データ3 ディープ産駒とハーツ産駒を除く連対馬の種牡馬のキャリア(16年以降)

  1着 2着
22年 初年度(ドレフォン) 初年度(キタサンブラック)
21年 2年目(エピファネイア) 初年度(ドゥラメンテ)
20年 ディープ産駒 ハーツ産駒
19年 初年度(ロードカナロア) 初年度(ジャスタウェイ)
18年 初年度(オルフェーヴル) 2年目(ルーラーシップ)
17年 ディープ産駒 3年目(ハービンジャー)
16年 ディープ産駒 ディープ産駒

つい昨年までの皐月賞は、種牡馬リーディングでTOP3に君臨し続けるディープインパクト産駒とハーツクライ産駒による、現代の二大種牡馬決戦の様相たる一戦となっていました。

実際に一昨年は出走馬の半数弱の16頭中7頭を両種牡馬の産駒が占めていました。昨年は実質的に種牡馬としてラストイヤーだったディープインパクトが種付け頭数を多少抑制されていたこともあって一昨年よりは比率を下げましたが、それでも出走馬の半数弱の18頭中7頭を両種牡馬の産駒が占めていました。

しかし、今年の皐月賞からは“ディープインパクト産駒とハーツクライ産駒が不在”という、両者が主役を張っていた昨年までとは様相がまるで異なるレースになっていますが、そこで両種牡馬の産駒の穴を埋めるのは特定の種牡馬というよりも「新興種牡馬の初年度産駒もしくは2~3年目までの産駒」ではないかと考えます。

実際に16年以降の皐月賞におけるディープインパクト産駒とハーツクライ産駒以外の連対馬を振り返ると、新種牡馬をアピールしたい生産者サイドの思惑から早めに仕上げているのが「最も速い(早い)馬が勝つ」と言われる皐月賞にハマるのか、全9頭全てが3年目以内の産駒で、内6頭は初年度産駒という極端な偏り方となっています。

レース自信度(5段階評価):3

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ライタープロフィール

キムラヨウヘイ

1990年生まれ、東京都出身。2009年にmixiコミュニティで予想活動をスタート。11年にブログを始めるとライブドア競馬ブログでアクセス数トップを記録した。15年に「競馬王」でメディアデビューし、18年からは「競馬予想TV!」に10年振りの新人予想家として出演中。
予想スタイルは各馬&各レース固有の独自の取捨ポイント設定(通称プロファイリングポイント)に基づいた狙い馬の発掘。

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