キムラヨウヘイの重賞アナライズ

2023年阪神大賞典

スタミナ要求度が高い一戦で、如何に道中で脚を温存できるかがポイント

JRAで唯一の古馬長距離GIレースである天皇賞春に向けて、それと近似距離で行われるレースとして最も重要なステップレースに位置付けられるのがこの阪神大賞典です。

例年は京都芝3200mの舞台条件で施行される天皇賞春と、阪神芝3000mの舞台条件で施行される阪神大賞典とでは、同じ格式の高い長距離レースだとしてもレースの性格はまるで異なるというのが大きなポイントです。


■データ1 阪神大賞典の2角通過順位別の成績(過去10年)

2角位置 着別度数 勝率 連対率 複勝率
1番手 0-  0-  2-  8/ 10 0.00% 0.00% 20.00%
2番手 1-  0-  1-  9/ 11 9.10% 9.10% 18.20%
3番手 0-  1-  1-  8/ 10 0.00% 10.00% 20.00%
4番手 1- 0- 1- 8/ 10 10.00% 10.00% 20.00%
5番手 1- 2- 1- 8/ 12 8.30% 25.00% 33.30%
6番手 0- 2- 0- 7/ 9 0.00% 22.20% 22.20%
7番手以下 7-  5-  4- 29/ 45 15.60% 26.70% 35.60%

2012年以降、京都競馬場で行われた天皇賞春で、二桁人気の人気薄ながらも好走したのは「20年2着スティッフェリオ(4角通過順3番手)・16年2着カレンミロティック(同3番手)・15年3着カレンミロティック(同1番手)・14年3着ホッコーブレーヴ(同10番手)・12年1着ビートブラック(同1番手)」の延べ5頭ですが、その内4頭は“前残り”のパターンでした。その背景としては、長距離レースだとしても開催2週目の高速馬場・内有利馬場で施行される為にスピードと立ち回り性能が問われて、総じて内目の進路取り&前目の位置取りで上手く立ち回った馬が恵まれるということが考えられます。

それに対してこの阪神大賞典では、例年二桁頭数が揃うのがやっとという少頭数で行われる為に同じ形での比較はできませんが、例えば20年は10頭立てで「道中通過順9番手(ブービー追走)→10番手(最後方追走)→7番手」という極端な追い込み有利決着に、21年も13頭立てで「道中通過順4番手→12番手(ブービー追走)→13番手(最後方追走)」という同様の極端な追い込み有利決着など、多くの年で“前崩れ”のパターンとなっています。その背景としては、阪神大賞典は天皇賞春と比較してもスタミナ要素が極めて強く要求されるレースになる為に、一般的にはメリットになる位置取りの高さも、むしろ追走によりスタミナを削ぐデメリットとして作用する側面の方が大きくなるということが考えられます。

また、その前崩れのパターンだった2年前の同レースで、道中通過順位4番手の先行競馬ながら勝利したディープボンドは、次走天皇賞春でも2着と好走。年末には有馬記念でも2着好走を果たすなどその後躍進を遂げましたが、それだけ抜きんでた地力が備わっていないと阪神大賞典を不利な先行競馬で好走するのは至難ということの表れとして捉えられます。逆に追い込み競馬で好走した2着ユーキャンスマイルと3着ナムラドノヴァンは次走天皇賞春では掲示板外に沈みましたが、地力で見劣る馬でも阪神大賞典を有利な差し競馬で好走するのは可能ということの表れとして捉えられます。

阪神の芝長距離レースではステゴ系よりもディープ系とキンカメ系


■データ2 阪神芝3000m以上の種牡馬別成績(21年以降)

種牡馬 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単勝回収値 複勝回収値
ディープインパクト 4- 1- 2-13/20 20.00% 25.00% 35.00% 389 122
キズナ 2- 2- 1- 4/ 9 22.20% 44.40% 55.60% 127 190
ドゥラメンテ 2- 0- 0- 3/ 5 40.00% 40.00% 40.00% 258 94
ルーラーシップ 1- 2- 0- 9/12 8.30% 25.00% 25.00% 61 145
オルフェーヴル 1- 1- 2-12/16 6.30% 12.50% 25.00% 33 61
ゴールドシップ 1- 0- 1- 8/10 10.00% 10.00% 20.00% 49 48

ご存じの通り、ここ最近の芝長距離レースで猛威を振っているのがステイゴールド系種牡馬の産駒です。昨年末のステイヤーズSはそのオルフェーヴル産駒とゴールドシップ産駒のワンツー決着、年始の万葉Sはオルフェーヴル産駒の勝利、そしてダイヤモンドSでもオルフェーヴル産駒同士によるワンツー決着でした。

ただし、そのステイゴールド系については、総じて下り坂の走りが得意という特徴も持つ為に、この阪神競馬場においてはそこまで強調できる血統ではありません。実際に京都競馬場ではなく阪神競馬場で代替施行された近2年の天皇賞春では、例年ならば激走血統とされるステイゴールド系は大挙10頭出走も全て5着以下に沈んでいました(逆に急坂が得意なキングカメハメハ系が目立った活躍を見せていました)。

よって、阪神の芝長距離レースでは、世間の注目を集めているステイゴールド系よりも、コース不問で強さを発揮するディープインパクト系と、阪神でこそ強さを発揮するキングカメハメハ系の方を重視すべきと見ます。

レース自信度(5段階評価):3

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ライタープロフィール

キムラヨウヘイ

1990年生まれ、東京都出身。2009年にmixiコミュニティで予想活動をスタート。11年にブログを始めるとライブドア競馬ブログでアクセス数トップを記録した。15年に「競馬王」でメディアデビューし、18年からは「競馬予想TV!」に10年振りの新人予想家として出演中。
予想スタイルは各馬&各レース固有の独自の取捨ポイント設定(通称プロファイリングポイント)に基づいた狙い馬の発掘。

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