皐月賞へ向けた一戦・弥生賞を分析する
2024/2/29(木)
皐月賞へ向けたトライアル競走・報知杯弥生賞ディープインパクト記念(以下弥生賞)。そのディープインパクト(2005年)をはじめ多くの名馬が、このレースを足がかりとして3歳クラシックで活躍してきた。ただ、本競走出走馬による皐月賞制覇は2010年のヴィクトワールピサを最後に途絶えており、近年はアスクビクターモア(2022年菊花賞)やタスティエーラ(2023年日本ダービー)など、クラシック二冠目以降を制する馬が多く出ている。いずれにせよ、今後のG1へ向けて注目の欠かせないこの一戦。今年はどんな結果が待っているのか、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用して過去の傾向を分析したい。
近年は人気サイド中心の傾向が鮮明に
人気 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 過去4年 |
1 | 3-4-1-2/10 | 30.0% | 70.0% | 80.0% | 0-3-1-0/4 |
2 | 3-2-2-3/10 | 30.0% | 50.0% | 70.0% | 1-1-1-1/4 |
3 | 2-0-2-6/10 | 20.0% | 20.0% | 40.0% | 2-0-1-1/4 |
4 | 1-2-2-5/10 | 10.0% | 30.0% | 50.0% | 1-0-0-3/4 |
5 | 0-0-1-9/10 | 0.0% | 0.0% | 10.0% | 0-0-0-4/4 |
6 | 0-1-0-9/10 | 0.0% | 10.0% | 10.0% | 0-0-0-4/4 |
7 | 0-0-0-10/10 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0-0-0-4/4 |
8 | 1-1-0-8/10 | 10.0% | 20.0% | 20.0% | 0-0-0-4/4 |
9 | 0-0-1-9/10 | 0.0% | 0.0% | 10.0% | 0-0-1-3/4 |
10 | 0-0-1-9/10 | 0.0% | 0.0% | 10.0% | 0-0-0-4/4 |
11〜 | 0-0-0-10/10 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0-0-0-2/2 |
(表1 人気別成績)
過去10年、1番人気は連対率70.0%・複勝率80.0%と優秀で、2番人気も複勝率70.0%の好成績。3〜4番人気も計【3.2.4.11】複勝率45.0%と上々の結果を残している。特に2020年以降は3着以内の好走馬12頭中11頭がこの4番人気以内と、近年は人気サイド中心の傾向に拍車がかかっている。
穴なら4着以下1回の馬
年 | 馬名 | 人気 | 着順 | 前走 | 2〜5走前着順 | |||
2015 | タガノエスプレッソ | 10 | 3 | 朝日杯FS6着 | 1 | 1 | 2 | 3 |
2017 | マイスタイル | 8 | 2 | こぶし賞1着 | 5 | 1 | 3 | … |
ダンビュライト | 5 | 3 | きさらぎ賞3着 | 13 | 2 | 1 | … | |
2019 | メイショウテンゲン | 8 | 1 | きさらぎ賞5着 | 1 | 3 | 2 | 2 |
シュヴァルツリーゼ | 6 | 2 | 新馬1着 | … | ||||
2022 | ボーンディスウェイ | 9 | 3 | ホープフルS5着 | 1 | 1 | 3 | 2 |
(表2 5番人気以下からの3着以内好走馬(背景緑:重賞))
5番人気以下の好走馬は過去10年で表2の6頭。このうち5頭はキャリアで1回のみ4着以下があり、その1回を重賞(前走または前々走)で記録していた。残る1頭・シュヴァルツリーゼは1戦1勝馬。もし穴馬を買うとすれば、いずれかのタイプを狙いたい。
キャリアは2〜4戦
キャリア | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 |
初出走 | 0-0-0-1/1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
1戦 | 0-1-0-6/7 | 0.0% | 14.3% | 14.3% | 0% | 85% |
2戦 | 3-2-2-10/17 | 17.6% | 29.4% | 41.2% | 77% | 59% |
3戦 | 3-4-4-21/32 | 9.4% | 21.9% | 34.4% | 70% | 48% |
4戦 | 3-1-2-14/20 | 15.0% | 20.0% | 30.0% | 58% | 73% |
5戦 | 1-0-2-13/16 | 6.3% | 6.3% | 18.8% | 244% | 126% |
6戦 | 0-1-0-9/10 | 0.0% | 10.0% | 10.0% | 0% | 22% |
7戦 | 0-1-0-4/5 | 0.0% | 20.0% | 20.0% | 0% | 24% |
※除外も1戦にカウント
(表3 キャリア別成績)
表3はキャリア別の成績。キャリア2〜4戦の馬が計【9.7.8.45】。10年で9勝を挙げ、複勝率も34.8%と高い。対してキャリア1戦以下と5戦以上は合計で【1.3.2.35】同14.6%とかなりの差がついているため、2〜4戦の馬が主軸になる。
前走G1出走馬が高複勝率
前走 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 |
新馬 | 0-1-0-6/7 | 0.0% | 14.3% | 14.3% | 0% | 85% |
未勝利 | 0-0-0-11/11 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
1勝クラス | 2-2-0-24/28 | 7.1% | 14.3% | 14.3% | 33% | 32% |
OPEN | 2-0-1-7/10 | 20.0% | 20.0% | 30.0% | 42% | 35% |
G3 | 4-2-2-20/28 | 14.3% | 21.4% | 28.6% | 188% | 73% |
G2 | 0-0-0-3/3 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
G1 | 2-5-7-6/20 | 10.0% | 35.0% | 70.0% | 98% | 152% |
地方 | 0-0-0-2/2 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 22% |
(表4 前走クラス別成績)
前走クラス別では、G1に出走していた馬が複勝率70.0%をマーク。今年は前走朝日杯FS出走馬(複勝率85.7%)が不在だが、G1昇格後のホープフルS組も【1.2.5.5】で複勝率は61.5%と高い。これらオープン・重賞組が合計【8.7.10.36】複勝率41.0%と好走馬の大半を占めている。ただ、オープン特別組の好走馬3頭はいずれも連対率100%で弥生賞を迎えていた。今年はこれに該当する馬がいないため、重賞組中心という考え方でいいだろう。表3のデータと合わせ、キャリア2〜4戦の前走重賞出走馬は【5.5.7.19】複勝率47.2%を記録している。
前走が芝1800〜2000m重賞なら5着以内
年 | 馬名 | 弥生賞 | 前走 | |||
人気 | 着順 | レース | 人気 | 着順 | ||
2015 | サトノクラウン | 2 | 1 | 東スポ杯 | 4 | 1 |
2017 | ダンビュライト | 5 | 3 | きさらぎ賞 | 2 | 3 |
2018 | ワグネリアン | 2 | 2 | 東スポ杯 | 1 | 1 |
2019 | メイショウテンゲン | 8 | 1 | きさらぎ賞 | 5 | 5 |
2023 | タスティエーラ | 3 | 1 | 共同通信杯 | 2 | 4 |
2014 | ワンアンドオンリー | 4 | 2 | ラNIKKEI杯 | 7 | 1 |
アデイインザライフ | 2 | 3 | 京成杯 | 4 | 3 | |
2017 | カデナ | 1 | 1 | 京都2歳S | 3 | 1 |
2018 | ジャンダルム | 4 | 3 | ホープフルS | 4 | 2 |
2019 | ブレイキングドーン | 4 | 3 | ホープフルS | 4 | 5 |
2020 | ワーケア | 1 | 2 | ホープフルS | 2 | 3 |
オーソリティ | 3 | 3 | ホープフルS | 4 | 5 | |
2021 | タイトルホルダー | 4 | 1 | ホープフルS | 7 | 4 |
ダノンザキッド | 1 | 3 | ホープフルS | 1 | 1 | |
2022 | ボーンディスウェイ | 9 | 3 | ホープフルS | 10 | 5 |
2023 | トップナイフ | 1 | 2 | ホープフルS | 7 | 2 |
(表5 前走芝1800〜2000m重賞からの好走馬)
今年は、前走で朝日杯FSをはじめとした芝1600mの重賞に出走していた馬の登録はなかった。そのため表5では、前走で芝1800mまたは芝2000mの重賞に出走していた好走馬をまとめてみた。この16頭すべて前走では5着以内に入っていた。
このうち、前走で芝1800mの重賞に出走していた5頭中4頭は前走が重賞初出走で、前走が重賞3戦目だったダンビュライトは表2で挙げた5番人気以下のデータに該当していた。一方、前走芝2000m重賞組はこのところホープフルS出走馬しか好走していない。このホープフルS組は昨年のトップナイフを除き、2走前以前に4着以下がなかったことで共通している(芝2000m重賞組全体では11頭9頭が該当)。
【結論】
前走ホープフルS2着のシンエンペラーが最有力
前走G1出走馬が高複勝率を記録している弥生賞。今年はシリウスコルトとシンエンペラーが登録しており、この2頭ではシンエンペラーが上位になる。新馬、京都2歳Sと2連勝を飾り、前走のホープフルSでは2着。キャリア2〜4戦、前走5着以内、2走前以前に4着以下なしと各条件に問題なく(表3、表5)、今年のメンバーでは最有力候補だ。一方のシリウスコルトは前走6着、3走前5着と減点材料があり強くは推しづらい。
他のメンバーは一長一短。前走芝1800m重賞組のシュバルツクーゲルは4番人気以内(表2)の支持を得られるかどうか。1勝クラス組のトロヴァトーレとファビュラススターも4番人気以内が条件になり、加えて1勝クラス組のキャリア2戦馬は【0.1.0.3】(2000年以降で【0.1.0.9】)と、あまり良い結果が残っていない点も気にかかる。
ならば5番人気以下の穴候補として、ニシノフィアンスとレッドテリオスに注目したい。ニシノフィアンスは新馬戦1着、京成杯5着で表2の「4着以下1回を前走または前々走の重賞で記録」と表5の「前走5着以内」を同時にクリア。レッドテリオスは表2本文で挙げたシュヴァルツリーゼと同じ1戦1勝馬だ。近年は穴馬の出番が減っているレースだが(表1)、今年はヒモ荒れの可能性もあるとみたい。
ライタープロフィール
浅田知広(あさだ ともひろ)
1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。