データde出〜た
第1707回 夏の小倉の開幕週を彩る小倉記念を分析する
2023/8/10(木)
2021/5/1 東京 11R 青葉賞
1着 2番 ワンダフルタウン(Photo by JRA)
今週末から小倉がスタートし、夏競馬は再び3場開催に。その開幕週にいきなり組まれているのが、夏の小倉で最大のレースと言える小倉記念だ。ハンデG3とあって穴馬の台頭も多い芝2000m戦を、過去10年のデータから読み解いていこう。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
■表1 年齢別成績
年齢 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
3歳 | 0- 2- 0- 1/ 3 | 0.0% | 66.7% | 66.7% | 0% | 170% |
4歳 | 6- 2- 1-19/28 | 21.4% | 28.6% | 32.1% | 122% | 63% |
5歳 | 3- 5- 3-24/35 | 8.6% | 22.9% | 31.4% | 115% | 99% |
6歳 | 0- 1- 5-32/38 | 0.0% | 2.6% | 15.8% | 0% | 77% |
7歳 | 1- 0- 1-19/21 | 4.8% | 4.8% | 9.5% | 174% | 55% |
8歳〜 | 0- 0- 0- 9/ 9 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
表1は年齢別成績。出走数、好走数がともに多い4歳と5歳が主力となっている。特に4歳は過去10年で6勝を挙げ、勝率21.4%と勝ち切りが多い。この4歳と5歳で計9勝と、大半の勝ち馬を送り出していることも押さえておきたい。
年齢別で最多出走の6歳からは1着馬が出ておらず、2着も1回だけ。好走率でいっても4歳や5歳と比べて見劣る。7歳の好走は16年に1、3着馬が出ただけで、8歳以上の1〜3着はない。この通り、高齢馬には苦戦の傾向が見て取れる。なお、3歳は3頭出走して2着2回と油断ならないが、今年は登録がなかった。
■表2 出走間隔別成績
出走間隔 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
連闘 | 0- 0- 0- 0/ 0 | |||||
中1週 | 1- 0- 0- 8/ 9 | 11.1% | 11.1% | 11.1% | 106% | 32% |
中2週 | 2- 0- 0-14/16 | 12.5% | 12.5% | 12.5% | 98% | 31% |
中3週 | 1- 0- 4-37/42 | 2.4% | 2.4% | 11.9% | 16% | 32% |
中4〜8週 | 5- 3- 4-25/37 | 13.5% | 21.6% | 32.4% | 199% | 135% |
中9週〜 | 1- 7- 2-20/30 | 3.3% | 26.7% | 33.3% | 16% | 89% |
表2は出走間隔別成績。複勝率ベースの数値を見ると、中1週、中2週、中3週はいずれも10%台にとどまる一方、中4〜8週や中9週以上は30%台を記録。ただし、中1〜3週からも計4頭の1着馬が出ており、無視するわけにもいかない。基本的には中4週以上が有利と考えつつ、柔軟に対応していきたい。
■表3 前走クラス別成績
前走クラス | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
2勝 | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
3勝 | 4- 1- 2-16/23 | 17.4% | 21.7% | 30.4% | 224% | 105% |
オープン特別 | 0- 1- 0-15/16 | 0.0% | 6.3% | 6.3% | 0% | 25% |
リステッド競走 | 0- 0- 0- 5/ 5 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
G3 | 5- 5- 7-57/74 | 6.8% | 13.5% | 23.0% | 73% | 79% |
G2 | 0- 0- 0- 3/ 3 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
G1 | 1- 3- 1- 6/11 | 9.1% | 36.4% | 45.5% | 44% | 108% |
ハンデG3 | 2- 3- 5-51/61 | 3.3% | 8.2% | 16.4% | 19% | 57% |
非ハンデG3 | 3- 2- 2- 6/13 | 23.1% | 38.5% | 53.8% | 326% | 181% |
※障害戦は集計から除外
表3は前走クラス別成績。最多出走は前走G3組で、このケースではそのG3がハンデ戦か否かを必ずチェックしたい。というのも、表3の下部に付記したデータの通り、ハンデ戦か否かで大差がついているからだ。成績がいいのは前走で非ハンデG3に出走していた馬で、具体的には【3.0.1.3】の鳴尾記念や【0.2.1.3】のエプソムCから臨む馬がいれば注目したい。
対して前走がハンデG3の場合、その好走率はお世辞にも高いとは言えない。特に前走七夕賞は【1.0.4.34】と、凡走に終わることが非常に多い。なかには【1.1.0.2】のマーメイドS、【0.2.0.0】の中日新聞杯など軽視できない前走ハンデG3もあるが、そうしたレース以外では慎重な取り扱いが求められる。
前走3勝クラスは要注目で、過去10年で4勝、勝率17.4%、単勝回収率224%と優秀な数字が並ぶ。格下だからと甘く見ると痛い目に遭いかねない。一方、3勝クラスより格上のはずの前走オープン特別およびリステッド競走は、合算して【0.1.0.20】と意外なほどの不振に陥っている。なお、前走G1はさすがの好成績だが、今年は該当する登録馬がいない。
■表4 前走G3出走馬に関する注目データ
前走 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 | ||
前走非ハンデG3 | 前走着順 | 前走1着 | 1- 0- 0- 0/ 1 | 100.0% | 100.0% | 100.0% | 260% | 140% |
前走2着 | 1- 0- 1- 0/ 2 | 50.0% | 50.0% | 100.0% | 165% | 135% | ||
前走3着 | 0- 0- 0- 2/ 2 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | ||
前走4着 | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | ||
前走5着 | 0- 0- 0- 0/ 0 | |||||||
前走6〜9着 | 0- 2- 0- 2/ 4 | 0.0% | 50.0% | 50.0% | 0% | 195% | ||
前走10着〜 | 1- 0- 1- 1/ 3 | 33.3% | 33.3% | 66.7% | 1220% | 390% | ||
斤量 | 今回減 | 1- 1- 1- 2/ 5 | 20.0% | 40.0% | 60.0% | 732% | 294% | |
増減なし | 0- 0- 1- 3/ 4 | 0.0% | 0.0% | 25.0% | 0% | 35% | ||
今回増 | 2- 1- 0- 1/ 4 | 50.0% | 75.0% | 75.0% | 147% | 187% | ||
前走ハンデG3 | 前走着順 | 前走1着 | 0- 1- 2- 2/ 5 | 0.0% | 20.0% | 60.0% | 0% | 124% |
前走2着 | 1- 0- 0- 4/ 5 | 20.0% | 20.0% | 20.0% | 100% | 34% | ||
前走3着 | 0- 0- 0- 2/ 2 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | ||
前走4着 | 0- 0- 1- 3/ 4 | 0.0% | 0.0% | 25.0% | 0% | 57% | ||
前走5着 | 0- 0- 1- 6/ 7 | 0.0% | 0.0% | 14.3% | 0% | 42% | ||
前走6〜9着 | 1- 2- 0-17/20 | 5.0% | 15.0% | 15.0% | 35% | 61% | ||
前走10着〜 | 0- 0- 1-17/18 | 0.0% | 0.0% | 5.6% | 0% | 53% | ||
斤量 | 今回減 | 1- 0- 1- 2/ 4 | 25.0% | 25.0% | 50.0% | 125% | 100% | |
増減なし | 1- 2- 2-46/51 | 2.0% | 5.9% | 9.8% | 13% | 48% | ||
今回増 | 0- 1- 2- 3/ 6 | 0.0% | 16.7% | 50.0% | 0% | 103% |
表4は、前走G3出走馬に関する注目データをまとめたもの。前項で確認した傾向を踏まえて、ハンデG3と非ハンデG3に分けて集計している。
まずは好成績の前走非ハンデG3から。この場合、前走1、2着なら【2.0.1.0】と鉄板なのだが、今年は該当馬がいない。もっとも、前走6〜9着や10着以下でも十分に高い好走率を記録しており、前走着順はあまり気にしなくていいだろう。それ以上に注意したいのが斤量で、「今回減」「今回増」のどちらに合致してもかなり優秀だ。このうち「今回減」の好成績は納得しやすいだろうが、斤量が「増減なし」より「今回増」のほうが狙えるという点には注意を要する。
この斤量の増減に関しては、前走ハンデG3においても同様の傾向であることを表4でご確認いただきたい。ただし、この場合は前走10着以下だと【0.0.1.17】と巻き返しは難しく、前走ハンデG3で9着以内をひとつの基準と考えたい。
■表5 前走3勝クラス出走馬に関する注目データ
前走 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 | |
前走着順 | 前走1着 | 0- 1- 1-10/12 | 0.0% | 8.3% | 16.7% | 0% | 37% |
前走2着 | 1- 0- 0- 3/ 4 | 25.0% | 25.0% | 25.0% | 172% | 55% | |
前走3着 | 1- 0- 1- 0/ 2 | 50.0% | 50.0% | 100.0% | 480% | 385% | |
前走4着 | 1- 0- 0- 0/ 1 | 100.0% | 100.0% | 100.0% | 880% | 280% | |
前走5着 | 0- 0- 0- 0/ 0 | ||||||
前走6〜9着 | 1- 0- 0- 2/ 3 | 33.3% | 33.3% | 33.3% | 876% | 236% | |
前走10着〜 | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | |
前走4角 | 1〜2番手 | 0- 0- 0- 7/ 7 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
3〜9番手 | 4- 1- 2- 6/13 | 30.8% | 38.5% | 53.8% | 396% | 186% | |
10番手〜 | 0- 0- 0- 3/ 3 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
表5は、前走3勝クラス出走馬に関する注目データをまとめたもの。前走着順の傾向は要注意で、前走1着が【0.1.1.10】と振るわず、前走2着以下が【4.0.1.6】とむしろ好成績を収めている。3勝クラスでも勝てなかった馬だからと軽視すると、思わぬ逆襲を食らいかねないので気をつけたい。また、前走4角通過順も注目で、前走4角3〜9番手だった馬に好走が集中している。言い換えると、前走の3勝クラスで前に行っていた馬(4角1〜2番手)でも、後ろから行っていた馬(4角10番手以降)でも、小倉記念では苦戦の傾向が見られる。ちなみに「前走3勝クラスで4角3〜9番手から2〜9着」という馬は【4.0.1.1】となり、ここが狙い目となりそうだ。
【結論】
2021/11/14 阪神 8R 3歳以上2勝クラス
1着 3番 レヴェッツァ(Photo by JRA)
以上のデータ分析に基づく有力馬を紹介したい。
まずは前走が非ハンデG3だった馬から。過去10年で好走例がない前走ダートを除くと、前走鳴尾記念のワンダフルタウンとマリアエレーナの2頭が当てはまる。どちらも前走より斤量増だが、このケースではむしろ好材料であることは表4の項で述べた通り。また、ともに好走例が多い5歳馬で、年齢的にも問題ない。中9週のローテとなり、2着が多いパターンには合致するものの、好走は十分に期待できるだろう。
一方、前走がハンデG3の場合、前走で9着以内には収まっておきたい。この条件を満たすのはククナ(前走七夕賞2着)、エヒト(同8着)、カレンルシェルブル(同9着)、ゴールドエクリプス(前走マーメイドS4着)の4頭。出走間隔は前走七夕賞が中4週、前走マーメイドSが中7週で、いずれもローテは問題なし。年齢的には4歳のゴールドエクリプス、5歳のククナ、カレンルシェルブルがいい。ただし、4頭とも前走から斤量が増減なしでの出走となり、その点では割り引かざるをえない。
前走が3勝クラスだったのは、4歳のアップデートと5歳のレヴェッツァの2頭。ともに前走の関ケ原Sで敗れているが、このケースでは2着以下のほうがプラスであることを表5の項で述べた。より重要なのは前走の4角通過順が3〜9番手であることだが、両馬ともに関ケ原Sの4角を9番手で回っており、この条件をクリア。中3週での出走という点は惜しまれるが、致命傷ではなく、マークはしておきたい存在だ。
ライタープロフィール
出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。