データde出〜た
第1669回 混戦模様のマイルCSを分析する!
2022/11/17(木)
2022/5/8 東京11R NHKマイルカップ(G1)
1着 18番 ダノンスコーピオン(Photo by JRA)
今週日曜に秋のマイル王決定戦、マイルCSが行われる。今年も近2年同様に阪神開催となる同レース。一昨年、昨年と連覇を達成したグランアレグリアが抜け、今春の安田記念を制したソングラインも不在で、混戦が予想される。今回のデータde出〜たでは、阪神開催の近2年を中心としたマイルCS過去10年のレース傾向ならびに2017年以降の阪神芝1600m戦の傾向から今年の有力馬を探っていきたい。なお、データ分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
■表1 阪神で行われた近2年のマイルCSでの3着以内馬
年(馬場/頭数) | 着順 | 馬名 | 性齢 | 勝ちタイム | 人気 | 4角通過順 | 上がり3F | 前半800m通過 |
2021 (良/16頭) |
1 | グランアレグリア | 牝5 | 1分32秒6 | 1 | 8 | 32秒7 | 47秒6 |
2 | シュネルマイスター | 牡3 | 3/4馬身 | 2 | 8 | 32秒9 | ||
3 | ダノンザキッド | 牡3 | 1/2馬身 | 5 | 8 | 33秒0 | ||
2020 (良/17頭) |
1 | グランアレグリア | 牝4 | 1分32秒0 | 1 | 5 | 33秒2 | 46秒9 |
2 | インディチャンプ | 牡5 | 3/4馬身 | 3 | 5 | 33秒2 | ||
3 | アドマイヤマーズ | 牡4 | クビ | 5 | 2 | 33秒6 |
表1は阪神で行われた近2年のマイルCSでの3着以内馬。一昨年、昨年ともに1番人気に推されたグランアレグリアが連覇を達成している。昨年は前半800m47秒6とスローペースになったものの、メンバー中上がり最速となる32秒7の脚で差し切り勝ちを決めた。2着シュネルマイスターは上がり2位、3着のダノンザキッドは上がり3位と上がりの速さが求められるレースとなった。
一昨年も前半800m46秒9とやや遅めの流れで、中団より前で追走していた馬が上位を独占。近2年ともに上位馬は上がり32秒台後半から33秒6と速い上がりを使っていた。前走で逃げた馬がいない今年も同じように、前半スローペース、直線での瞬発力勝負になる公算が大きいのではないか。
■表2 近2年のマイルCS3着以内馬の前走成績とG1実績
開催年 | 着順 | 馬名 | 前走成績 | G1での実績 |
2021 | 1 | グランアレグリア | 天皇賞(秋)3着 | ヴィクトリアMなど5勝 |
2 | シュネルマイスター | 毎日王冠 1着 | NHKマイルC 1着 | |
3 | ダノンザキッド | 富士S 4着 | ホープフルS 1着 | |
2020 | 1 | グランアレグリア | スプリンターズS 1着 | 安田記念など3勝 |
2 | インディチャンプ | 安田記念 3着 | 安田記念など2勝 | |
3 | アドマイヤマーズ | スワンS 3着 | 香港マイルなど3勝 |
表2は近2年のマイルCS3着以内馬の前走成績と過去のG1実績。前走成績ではグランアレグリアだけやや特殊で、一昨年はスプリンターズSから400mの距離延長、昨年は天皇賞(秋)から400mの距離短縮でともに勝利している。2・3着馬は同距離もしくはプラスマイナス200mの重賞を使われていた。3着以内馬6頭はすべて前走4着以内だった。
また、6頭すべてが過去にG1を優勝しており、しかも過去1年以内(前年のマイルCSを含む)に全馬がG1勝利を成し遂げていた。
■表3 マイルCS近10年の前走着順別成績
前走着順 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収値 | 複勝回収値 |
前走1着 | 2- 3- 3- 20/ 28 | 7.1% | 17.9% | 28.6% | 26 | 65 |
前走2着 | 2- 4- 0- 15/ 21 | 9.5% | 28.6% | 28.6% | 69 | 57 |
前走3着 | 3- 2- 3- 13/ 21 | 14.3% | 23.8% | 38.1% | 60 | 72 |
前走4着 | 0- 0- 3- 15/ 18 | 0.0% | 0.0% | 16.7% | 0 | 46 |
前走5着 | 1- 1- 1- 14/ 17 | 5.9% | 11.8% | 17.6% | 51 | 65 |
前走6〜9着 | 2- 0- 0- 27/ 29 | 6.9% | 6.9% | 6.9% | 98 | 26 |
前走10着以下 | 0- 0- 0- 41/ 41 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
表3は京都開催を含めた過去10年の前走着順別成績。3着以内馬はほぼ前走5着以内の馬が占めており、前走6着以下は1着2回のみ。前走6〜9着から勝利したのは12年サダムパテック(前走天皇賞秋8着)、14年ダノンシャーク(前走富士S7着)の2頭で、15年以降・近7年の3着以内馬はすべて前走で5着以内には入っていた。
■表4 阪神芝1600m戦の前走着順別成績
前走着順 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収値 | 複勝回収値 |
前走1着 | 8- 4- 5- 24/ 41 | 19.5% | 29.3% | 41.5% | 63 | 114 |
前走2着 | 3- 3- 3- 22/ 31 | 9.7% | 19.4% | 29.0% | 63 | 60 |
前走3着 | 1- 2- 3- 18/ 24 | 4.2% | 12.5% | 25.0% | 7 | 46 |
前走4着 | 3- 2- 6- 17/ 28 | 10.7% | 17.9% | 39.3% | 147 | 100 |
前走5着 | 3- 2- 0- 13/ 18 | 16.7% | 27.8% | 27.8% | 211 | 101 |
前走6〜9着 | 5- 6- 2- 82/ 95 | 5.3% | 11.6% | 13.7% | 24 | 47 |
前走10着以下 | 3- 7- 6-106/122 | 2.5% | 8.2% | 13.1% | 168 | 88 |
※2017年以降の3歳以上3勝クラス・OP・重賞 全26鞍を対象。
表4は近2年のマイルCSを含む2017年以降の阪神芝1600m戦における前走着順別成績。前走1着馬が最多の8勝をあげており、勝率・連対率・複勝率いずれも最も高い。この組で前走1番人気だった馬は【6.3.1.3】で勝率46.2%・連対率69.2%・複勝率76.9%と非常に高い。前走1番人気に応えて勝利している馬はぜひチェックしておきたい。
他では前走4着馬、前走5着馬が単勝回収率・複勝回収率ともに100%以上だった。
■表5 阪神芝1600m戦における前走からの騎手継続or乗り替わり成績比較
前走騎手 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収値 | 複勝回収値 |
同騎手 | 14- 13- 13- 86/126 | 11.1% | 21.4% | 31.7% | 46 | 88 |
乗替り | 12- 13- 13-197/235 | 5.1% | 10.6% | 16.2% | 126 | 70 |
※2017年以降の3歳以上3勝クラス・OP・重賞 全26鞍を対象。
表5は阪神芝1600m戦における、前走から同じ騎手が継続して騎乗する場合と乗り替わりでの成績比較。継続騎乗の馬の方が勝率・連対率・複勝率ともに2倍近く高い率を残している。継続騎乗の騎手では福永騎手【3.1.0.1】、ルメール騎手【3.1.0.0】、川田騎手【1.1.2.3】が好成績をおさめている。
乗り替わりは一昨年の中京記念における18番人気メイケイダイハードの勝利で単勝回収率が高くなっている。JRA所属の騎手から外国人騎手への乗り替わりは【0.1.1.6】で勝ち星がなく、複勝率も25.0%とそれほど高くない。
<結論>
■表6 マイルCSの主な有力馬(11/16時点)
馬名 | 性齢 | 前走成績 |
ウインカーネリアン | 牡5 | 関屋記念 1着 |
サリオス | 牡5 | 毎日王冠 1着 |
シュネルマイスター | 牡4 | スプリンターズS 9着 |
ジャスティンカフェ | 牡4 | 毎日王冠 2着 |
セリフォス | 牡3 | 富士S 1着 |
ソウルラッシュ | 牡4 | 富士S 2着 |
ソダシ | 牝4 | 府中牝馬S 2着 |
ダノンザキッド | 牡4 | 毎日王冠 3着 |
ダノンスコーピオン | 牡3 | 富士S 3着 |
ファルコニア | 牡5 | 京成杯AH 1着 |
※フルゲート18頭。除外対象馬なし。
2022/5/15 東京11R ヴィクトリアマイル(G1)
1着 5番 ソダシ(Photo by JRA)
今年の主な有力馬は表6のとおり。
近2年におけるグランアレグリアのように主軸となる馬がおらず、混戦模様の今年のマイルCS。これまで挙げたデータからダノンスコーピオンを第一に推奨したい。今春のNHKマイルCを制しており、表2で示した近2年の好走馬の特徴に当てはまる。今春も共同通信杯7着→アーリントンC1着と東京から阪神替わりで勝利をおさめており、前走富士Sを叩かれた今回は勝負気配が強い。川田騎手の継続騎乗も強調材料だ。
前走の府中牝馬Sで2着に敗れたソダシも勝利する可能性は十分。今春のヴィクトリアMを制しており、吉田隼人騎手がデビュー以来継続して騎乗している。同馬は前走から距離延長の時は凡走し、逆に距離短縮の場合は崩れないという特徴を持つ。距離短縮の今回は走り頃だろう。
昨年2着のシュネルマイスターももちろん有力だが、前走スプリンターズSで不利があったとはいえ9着に敗れた点は気にかかる。他では先行有利の馬場状態なら前走1番人気1着のウインカーネリアンとファルコニア、差し有利の馬場なら福永騎手が継続して騎乗予定のジャスティンカフェを穴で狙っていきたい。
ライタープロフィール
ケンタロウ(けんたろう)
1978年6月、鹿児島県生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。初めて買った馬券が大当たりし、それから競馬にのめり込むように。データでは、開催日の馬場やコース適性に注目している。好きなタイプは逃げか追い込み。馬券は1着にこだわった単勝、馬単派。料理研究家ではない。