データde出〜た
第1665回 今年も阪神芝3000mで行われる菊花賞を展望する
2022/10/20(木)
2022/3/6 中山11R 弥生賞(G2)
1着 10番 アスクビクターモア(Photo by JRA)
今週日曜は阪神競馬場の芝3000mを舞台に菊花賞が行われる。今年と同じ阪神開催だった昨年の菊花賞ではタイトルホルダーが5馬身差の逃げ切り勝ちを決めた。また昨年同様、今年も皐月賞、日本ダービーの優勝馬が出走せず、初のG1タイトルをかけた戦いとなる。今回は昨年の菊花賞ならびに前哨戦の結果分析、そして阪神芝3000m戦の特徴から今年の菊花賞を展望していきたい。なお、データ分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
■表1 阪神で行われた昨年の菊花賞における3着以内馬
年(馬場/頭数) | 着順 | 馬名 | 勝ちタイム | 人気 | 4角通過順 | 上がり3F | 前半1000m通過 |
2021 (良/18頭) |
1 | タイトルホルダー | 3分4秒6 | 4 | 1 | 35秒1 | 60秒0 |
2 | オーソクレース | 5馬身 | 3 | 9 | 34秒8 | ||
3 | ディヴァインラヴ | アタマ | 6 | 6 | 35秒2 |
表1は昨年の菊花賞の上位3着以内馬。タイトルホルダーがスタートから追っつけながら先頭に立ち、直線でも突き放して5馬身差の快勝だった。同馬は今年の天皇賞(春)でも7馬身差をつけて圧勝しており、長距離適性が抜群に高かったといえる。
2着には中団から伸びたオーソクレース、3着には道中6番手を進んだ牝馬のディヴァインラヴが入った。ハナ差の4着に皐月賞、日本ダービーで連続3着だったステラヴェローチェが入ったが、直線半ばで2着に上がるかという末脚がゴール前で鈍ってしまった。内回りコースで直線が356.5mと短く、4コーナー後方からの追い込みは厳しい。
1着タイトルホルダーはドゥラメンテ産駒だったが、2着オーソクレース、3着ディヴァインラヴはともにエピファネイア産駒で母父ディープインパクトという共通点があった。
■表2 昨年の菊花賞3着以内馬の前走成績
着順 | 馬名 | 前走成績 |
1 | タイトルホルダー | セントライト記念 13着 |
2 | オーソクレース | セントライト記念 3着 |
3 | ディヴァインラヴ | 木曽川特別(芝2200m/2勝クラス) 1着 |
表2は昨年の上位3着以内馬の前走成績。1・2着は前走セントライト記念組で、タイトルホルダーは前走馬群の中で動くに動けず、13着と大敗していた。それでもタイトルホルダーは弥生賞ディープインパクト記念で勝利しており、オーソクレースも前年のホープフルSでは2着と好走していた。直線が短く、ゴール前に急坂がある中山コースは阪神内回りとコース形態上似ており、中山芝重賞実績は重要な要素なのではないか。
また、ディヴァインラヴは前走2勝クラス1着と実績では劣るものの、菊花賞では実績上位のステラヴェローチェにハナ差競り勝っている。
■表3 菊花賞における前走2勝クラス組の前走距離別成績(過去10年)
前走距離 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収値 | 複勝回収値 |
1800m | 0- 0- 0- 7/ 7 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
2000m | 0- 0- 0-10/10 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
2200m | 0- 1- 3- 3/ 7 | 0.0% | 14.3% | 57.1% | 0 | 362 |
2400m | 0- 0- 1- 5/ 6 | 0.0% | 0.0% | 16.7% | 0 | 51 |
2500m | 0- 0- 0- 6/ 6 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
2600m | 0- 0- 1- 4/ 5 | 0.0% | 0.0% | 20.0% | 0 | 104 |
表3は京都開催を含めた過去10年の菊花賞における前走2勝クラス組【0-1-5-35】の前走距離別成績。黄色で強調したように前走2200m組が、昨年のディヴァインラヴも好走しているように、複勝率57.1%は群を抜いて高い。好走した4頭はすべて4番人気以下で、複勝回収率も高い。他では前走2400m組、前走2600m組から3着1回ずつ。前走2500m組、前走2000m以下からは3着以内馬が出ていない。
■表4 今年のセントライト記念とオールカマーの比較
レース名(馬場/頭数) | 着順 | 馬名 | 勝ちタイム | 人気 | 4角通過順 | 上がり3F | 前半1000m通過 |
セントライト記念 (稍重/13頭) |
1 | ガイアフォース | 2分11秒8 | 3 | 4 | 34秒7 | 60秒3 |
2 | アスクビクターモア | アタマ | 1 | 2 | 35秒0 | ||
3 | ローシャムパーク | 3馬身 | 2 | 7 | 35秒0 | ||
オールカマー (良/13頭) |
1 | ジェラルディーナ | 2分12秒7 | 5 | 6 | 35秒1 | 61秒1 |
2 | ロバートソンキー | 1馬身1/2 | 6 | 8 | 35秒1 | ||
3 | ウインキートス | 1馬身1/4 | 7 | 3 | 35秒7 |
表4は今年のセントライト記念とその翌週のオールカマーとの比較。ともに13頭立てで行われ、稍重だったセントライト記念の方が0秒9勝ちタイムが速かった。セントライト記念はガイアフォース、アスクビクターモアの2頭がアタマ差の接戦で、3着を3馬身離していた。
前半1000m通過、上位馬の上がりタイムともにセントライト記念組が上回っており、タイム的な価値はかなり高いといえる。
■表5 今年の神戸新聞杯とムーンライトH(3勝クラス)の比較
レース名(馬場/頭数) | 着順 | 馬名 | 勝ちタイム | 人気 | 4角通過順 | 上がり3F | 前半1000m通過 |
神戸新聞杯 (良/17頭) |
1 | ジャスティンパレス | 2分11秒1 | 5 | 3 | 34秒4 | 60秒0 |
2 | ヤマニンゼスト | 3馬身1/2 | 12 | 11 | 34秒5 | ||
3 | ボルドグフーシュ | 1/2馬身 | 4 | 16 | 34秒3 | ||
ムーンライトH (稍重/11頭) |
1 | レインカルナティオ | 2分11秒9 | 2 | 7 | 34秒5 | 58秒4 |
2 | オールザワールド | クビ | 6 | 4 | 34秒7 | ||
3 | ヒシゲッコウ | 1/2馬身 | 9 | 9 | 34秒4 |
表5は神戸新聞杯と同開催の開幕週に行われた3勝クラス・ムーンライトHの比較。こちらは神戸新聞杯組が0秒8勝ちタイムで上回るが、神戸新聞杯は良馬場でムーンライトHは稍重だった。中京芝2200m戦は今春の京都新聞杯で2分9秒5という非常に速いタイムが出ており、比較が難しい面はあるが、それでも2着に3馬身半差をつけて勝利したジャスティンパレスの勝ちタイム2分11秒1は優秀といえる。
■表6 阪神芝3000m戦の前走競馬場別成績(2017年以降)
前走場所 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収値 | 複勝回収値 |
札幌 | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
福島 | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
東京 | 1- 1- 4-17/23 | 4.3% | 8.7% | 26.1% | 25 | 166 |
中山 | 6- 5- 0-17/28 | 21.4% | 39.3% | 39.3% | 101 | 108 |
中京 | 0- 0- 2-13/15 | 0.0% | 0.0% | 13.3% | 0 | 44 |
京都 | 0- 1- 2- 8/11 | 0.0% | 9.1% | 27.3% | 0 | 123 |
阪神 | 1- 1- 0- 8/10 | 10.0% | 20.0% | 20.0% | 53 | 59 |
小倉 | 0- 0- 0- 7/ 7 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
地方 | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
最後に表6は2017年以降に行われた阪神芝3000m戦(昨年の菊花賞と古都S、2017〜22年の阪神大賞典)計8レースにおける前走競馬場別成績。黄色で示した前走中山組が6勝、2着5回で、勝率・連対率が抜けて高い。阪神大賞典での前走有馬記念組などが含まれており、連対した11頭はすべて上位5番人気以内に支持されていた。それでも単勝回収率・複勝回収率ともに100%を超えている。複勝率で前走中山組に続くのが、前走京都組、前走東京組だが、今回の菊花賞ではともに該当馬なし。なお、前走中京組は連対がなく、3着2回となっている。
<結論>
■表7 今年の菊花賞の主な有力馬(10/19現在)
馬名 | 前走成績 |
アスクビクターモア | セントライト記念 2着 |
ヴェローナシチー | 神戸新聞杯 5着 |
ガイアフォース | セントライト記念 1着 |
ジャスティンパレス | 神戸新聞杯 1着 |
セレシオン | 阿賀野川特別(芝2200m/2勝クラス)1着 |
ドゥラドーレス | 藻岩山特別(芝2000m/2勝クラス)1着 |
フェーングロッテン | 新潟記念 3着 |
プラダリア | 神戸新聞杯 8着 |
ボルドグフーシュ | 神戸新聞杯 3着 |
ヤマニンゼスト | 神戸新聞杯 2着 |
2022/8/21 新潟10R 阿賀野川特別
1着 5番 セレシオン(Photo by JRA)
今年の菊花賞の主な有力馬は表7のとおり。
前哨戦のセントライト記念1着ガイアフォース、2着アスクビクターモア、神戸新聞杯1着ジャスティンパレスの3頭が上位人気になりそうだ。
この3頭の中ではアスクビクターモアを最上位としたい。前走のセントライト記念ではガイアフォースにアタマ差敗れたものの、日本ダービー以来の休み明けとしては合格点の内容だった。日本ダービーでは上位4着までの中で唯一先行して3着と好走しており、スピードの持続力、スタミナともに十分。春の弥生賞ディープインパクト記念ではドウデュースを破って勝利しており、すんなり先行できれば勝ち切る可能性も大いにある。
セントライト記念でアスクビクターモアを破ったガイアフォース、神戸新聞杯を快勝したジャスティンパレスももちろん有力だ。
上記3頭以外ではセレシオン、プラダリアの2頭を推奨したい。セレシオンは表3で好相性を示した前走2勝クラス組の前走2200m勝ち馬。前走先行して3馬身半差の快勝と本格化を見せており、重賞初挑戦ながら激走してもおかしくない。プラダリアは前走の神戸新聞杯で8着。ただし、2走前の日本ダービーでは5着で、能力は非常に高い。叩き良化型のタイプで、状態が上がっていれば、上位に食い込む力はある。
ライタープロフィール
ケンタロウ(けんたろう)
1978年6月、鹿児島県生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。初めて買った馬券が大当たりし、それから競馬にのめり込むように。データでは、開催日の馬場やコース適性に注目している。好きなタイプは逃げか追い込み。馬券は1着にこだわった単勝、馬単派。料理研究家ではない。