データde出〜た
第1625回 勢いが凄い! オルフェーヴル産駒がダートで躍動!
2022/5/9(月)
今回はオルフェーヴル産駒のダート成績にスポットを当てた。最近、JRAの特別戦で勝利した馬が続々と出ていて、非常に気になった。2018年以降のレースを対象に、勝利した馬を調べることにした。データの分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
■表1 JRAのダート特別戦を勝ったオルフェーヴル産駒(2018年以降、22年5月1日まで)
日付 | 開催 | レース名 | 馬名 | 性別 | 年齢 | 人気 | 距離 | 馬場 | 走破タイム | 着差 | 上り3F |
220501 | 2東4 | ブリリH(L) | アルドーレ | 牡 | 7 | 1 | 2100 | 不 | 2071 | -0.3 | 36.1 |
220501 | 1福6 | 吾妻小富 | ラーゴム | 牡 | 4 | 5 | 1700 | 重 | 1433 | 0 | 36.6 |
220430 | 2東3 | 横浜S・3勝 | ウシュバテソーロ | 牡 | 5 | 7 | 2100 | 重 | 2081 | -0.7 | 34.0 |
220430 | 1福5 | 東北S・3勝 | キムケンドリーム | 牝 | 5 | 13 | 1700 | 重 | 1442 | 0 | 36.4 |
220220 | 1阪4 | 大和SH | ジャスティン | 牡 | 6 | 2 | 1200 | 稍 | 1116 | 0 | 37.7 |
220122 | 1中7 | 初茜賞・2勝 | コーラスケイト | 牝 | 4 | 3 | 1800 | 良 | 1538 | -0.2 | 38.0 |
211128 | 5阪8 | カノープH | ショウナンナデシコ | 牝 | 4 | 2 | 2000 | 良 | 2050 | -0.3 | 36.7 |
211121 | 5東6 | 霜月SH | ヘリオス | セ | 5 | 1 | 1400 | 良 | 1237 | -0.2 | 36.1 |
211114 | 2福4 | 相馬特別・2勝 | パワポケプリメーロ | 牡 | 4 | 11 | 1700 | 良 | 1459 | -0.2 | 37.3 |
211030 | 4阪7 | 西脇S・3勝 | ショウナンナデシコ | 牝 | 4 | 3 | 1800 | 良 | 1524 | -0.1 | 36.8 |
211023 | 5新5 | 新津特別・2勝 | レジェモー | 牝 | 4 | 10 | 1200 | 重 | 1106 | -0.1 | 36.4 |
211010 | 4東2 | グリーン(L) | ヘリオス | セ | 5 | 2 | 1400 | 良 | 1223 | -0.6 | 35.8 |
210724 | 3新1 | 越後SH・3勝 | クーファピーカブー | 牝 | 5 | 6 | 1200 | 良 | 1109 | -0.2 | 36.9 |
210717 | 1函5 | 湯浜特別・1勝 | オセアダイナスティ | 牡 | 3 | 1 | 1700 | 良 | 1454 | -1.1 | 36.6 |
210704 | 1福2 | 鶴ヶ城特・2勝 | カウンターエア | セ | 5 | 3 | 1700 | 稍 | 1460 | -0.1 | 37.9 |
210221 | 2小4 | 伊万里特・2勝 | ジャスパーイーグル | 牡 | 4 | 2 | 1000 | 稍 | 579 | 0 | 35.0 |
201220 | 3名6 | 三河SH・3勝 | ベルダーイメル | 牡 | 3 | 1 | 1400 | 良 | 1237 | -0.2 | 37.4 |
201213 | 5中4 | カペラSG3 | ジャスティン | 牡 | 4 | 4 | 1200 | 良 | 1098 | 0 | 36.3 |
201122 | 5東6 | 霜月SH | ヘリオス | セ | 4 | 9 | 1400 | 良 | 1228 | -0.2 | 36.1 |
201025 | 4新6 | 鳥屋野H・2勝 | ベルダーイメル | 牡 | 3 | 1 | 1800 | 重 | 1508 | -0.4 | 36.6 |
200927 | 2名7 | 桶狭間H・3勝 | エイシンポジション | 牝 | 4 | 1 | 1400 | 稍 | 1230 | -0.6 | 36.5 |
200905 | 2小7 | 桜島S・3勝 | マルシュロレーヌ | 牝 | 4 | 2 | 1700 | 良 | 1437 | -0.2 | 35.0 |
200815 | 2小1 | 阿蘇S | アルドーレ | 牡 | 5 | 3 | 1700 | 良 | 1437 | -0.1 | 36.8 |
200418 | 2阪7 | 陽春SH・3勝 | ヘリオス | セ | 4 | 1 | 1200 | 不 | 1106 | 0 | 36.0 |
200321 | 2中8 | 千葉SH | ジャスティン | 牡 | 4 | 2 | 1200 | 良 | 1097 | -0.6 | 35.5 |
200126 | 1中9 | 初霞賞・2勝 | エクリリストワール | 牡 | 4 | 1 | 1800 | 稍 | 1534 | -0.4 | 37.6 |
200105 | 1京1 | 門松S・3勝 | ジャスティン | 牡 | 4 | 3 | 1200 | 稍 | 1101 | 0 | 35.7 |
191208 | 5阪4 | 妙見山特・2勝 | ジャスティン | 牡 | 3 | 1 | 1400 | 良 | 1242 | -0.1 | 37.3 |
190623 | 1函4 | 津軽海峡・2勝 | ボードウォーク | 牝 | 4 | 3 | 1700 | 稍 | 1445 | -0.2 | 38.2 |
190203 | 1名6 | 納屋橋H1600 | アルドーレ | 牡 | 4 | 1 | 1900 | 稍 | 1587 | 0 | 37.2 |
181117 | 5東5 | 伊勢佐H1000 | アルドーレ | 牡 | 3 | 6 | 2100 | 良 | 2109 | -0.2 | 37.1 |
180623 | 3阪7 | 豊中特別500 | ストーミーバローズ | 牡 | 3 | 2 | 1800 | 不 | 1506 | -0.2 | 36.9 |
表1は2018年以降(2022年5月1日開催終了時点まで)にJRAのダート特別戦を勝ったオルフェーヴル産駒の一覧。2018年の勝利数はわずか2つ、19年も3つだったが、20年は11と大幅にアップした。そうなった理由を一つ挙げるとすれば、芝を使っていた馬がダートに矛先を転じるようになったことだろうか。現在、交流重賞で活躍しているヘリオスが本格的にダート短距離戦線に進んだのはこの年からだった。また、ジャスティンは20年、年明けすぐに門松Sを勝ってオープンクラス入りを果たすと本格化。千葉S、東京スプリント(大井)、東京盃(大井)、カペラSとJRAのレース3勝+交流重賞2勝と大暴れした。
また、デビューからずっと芝を使っていたマルシュロレーヌが、9月に小倉ダート1700mの桜島Sに出走。鋭い瞬発力で差し切り勝ちを飾り、初めてのダートとは思えないような鮮烈なパフォーマンスをみせた。同馬はその後、レディスプレリュード(大井)、TCK女王盃(大井)、エンプレス杯(川崎)、ブリーダーズゴールドカップ(門別)と交流重賞を4勝し、昨年アメリカのG1・ブリーダーズカップディスタフを制するという快挙を成し遂げた。
オルフェーヴル産駒は21年もJRAのダート特別戦を10勝。前年よりも勝ち星は1つ減らしたが、オープンクラスを勝った馬が2頭いた。ヘリオスが東京ダート1400mのグリーンチャンネルカップと霜月Sを勝利。ショウナンナデシコはカノープスSを勝利した。ショウナンナデシコのその後の活躍については、後述したい。
そして今年に入り、オルフェーヴル産駒はすでにダート特別戦で6勝をマーク。これは5月1日開催終了時点の数字なので、このペースで勝ち星が増えれば20年や21年を上回ることになる。勝ったレースを個別に見ていくと、4月30日、5月1日の2日間で4勝を挙げた。東北Sでは牝馬のキムケンドリームが13番人気で勝利。ウシュバテソーロは横浜Sを7番人気で勝利した。ウシュバテソーロは初めてのダートだったが、レースの上がり3ハロンが34秒0という凄い末脚で追い込み、4馬身突き抜けた。速い時計が出やすい東京のダートとはいえ、なかなかお目にかかれないような凄い瞬発力だった。次走はかなり注目される存在になるだろう。
2022/5/1 福島11R 吾妻小富士ステークス
1着 8番 ラーゴム
吾妻小富士Sを5番人気で勝ったラーゴムは、3歳時にきさらぎ賞を勝利している芝実績馬だった。ダート初挑戦となった2走前の仁川Sでは4番人気で6着と敗れたが、ダート2戦目で大きな変わり身をみせた。芝・ダート両方の重賞制覇という目標も十分視野に入ってきた。
ブリリアントSを1番人気で勝利したアルドーレはデビュー戦だけ芝だったが、その後はずっとダートを使われている。今年7歳となり、今回の勝利でダート6勝目を挙げた。このように1番人気、中穴、大穴と人気面でも多彩なタイプが勝ち星を挙げている。
■表2 表1の前走着順別成績
前入線順位 | 着別度数 |
前走1着 | 9- 0- 0- 0/ 9 |
前走2着 | 4- 0- 0- 0/ 4 |
前走3着 | 4- 0- 0- 0/ 4 |
前走4着 | 5- 0- 0- 0/ 5 |
前走5着 | 3- 0- 0- 0/ 3 |
前走6〜9着 | 7- 0- 0- 0/ 7 |
前走10着〜 | 0- 0- 0- 0/ 0 |
表1に記した馬の前走着順をチェック(表2参照)したところ、前走1着の馬が9頭いた。前走2着・3着はそれぞれ4頭。前走6〜9着の馬も7頭いた。しかし、前走10着以下に敗れていた馬は1頭もいなかった。前走が芝であれダートであれ、そこで大きく敗れていた馬は厳しい。6〜9着ぐらいであれば十分巻き返してくる可能性があり、馬券的にも穴になりやすいようだ。
2022/5/5 船橋11R かしわ記念(Jpn1)
1着 1番 ショウナンナデシコ
先ほど名前が挙がったショウナンナデシコは、今年に入ってからはJRAのレースを走っていないが、地方で4戦3勝(5月5日まで)の好成績を収めている。同馬のキャリアをあらためて振り返ると、マルシュロレーヌのように芝→ダート替わりで頭角を現したわけではなかった。2歳新馬で阪神ダート1800mを圧勝したものの、その後の成績は目立つものではなかったし、古馬の2勝クラスを勝つのに苦労した。下級条件のダート戦で揉まれることで力をつけたように感じる。
オープンクラスに上がってからも、ベテルギウスS2着、重賞初挑戦のTCK女王盃も2着に敗れた。しかし、今年3月のエンプレス杯で重賞初制覇を飾ると、続くマリーンC(船橋)も勝利。この勢いは止まらず、先日行われたかしわ記念(船橋)も勝利して3連勝。交流のJpn1となったかしわ記念を牝馬が制するのは、史上初の快挙だった。
JRAのダートG1にはフェブラリーSとチャンピオンズCがあるが、牝馬が勝つのはかなり大変だ。フェブラリーSがG1に昇格した1997年以降は、牝馬の勝利が1度もない。チャンピオンズCは2014年にサンビスタが勝利を飾ったが、これが同レースにおける牝馬の初勝利。同レースの前身にあたるジャパンカップダート(00年〜13年)でも例がなかったので、22年間で牝馬の勝利はわずか1回ということになる。
こうした現状のなか、海外・地方のダートで新たな歴史を作ったオルフェーヴル産駒が、JRAのダートG1を勝利することができるか、という点にも注目しながら今後の活躍をみていきたい。
ライタープロフィール
小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。