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第1539回 巻き返しのパターンが見えた!? 波乱も多い七夕賞を展望する

2021/7/8(木)

夏の福島の代名詞的存在と言えるG3・七夕賞。ハンデ戦ということもあって荒れるレースとしてもおなじみだが、今年はどのような決着が待っているのだろうか。データの集計期間は過去10年分としたいところだが、2011年が中山開催となったため、福島で行なわれた2012〜2020年の9年分を対象とする。データの分析には、JRA-VAN DataLab.TARGET frontier JVを利用した。

■表1 牡牝および所属別成績

項目 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
性別 牡馬・セン馬 9- 9- 9-99/126 7.1% 14.3% 21.4% 159% 141%
牝馬 0- 0- 0-10/ 10 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
所属 関東馬 4- 4- 4-56/ 68 5.9% 11.8% 17.6% 33% 88%
関西馬 5- 5- 5-53/ 68 7.4% 14.7% 22.1% 261% 174%

※表1は牡牝別と東西の所属別の成績を示したもの。まず、過去9年の好走はすべて牡馬(セン馬を含む)が記録。牝馬は出走自体が少ないとはいえ、偏った結果が出ている。また、出走回数が68走で並ぶ関東馬と関西馬の比較は、前者が1〜3着を4回ずつ、後者は1〜3着を5回ずつ記録しており、関西馬が若干優勢となっている。

■表2 ハンデ別成績(牡馬・セン馬のみ)

ハンデ 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
48kg 0-  0-  0-  1/  1 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
49kg 0-  0-  0-  0/  0          
50kg 0-  0-  1-  0/  1 0.0% 0.0% 100.0% 0% 2660%
51kg 0-  0-  0-  3/  3 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
52kg 0-  0-  1-  3/  4 0.0% 0.0% 25.0% 0% 1000%
53kg 0-  0-  2- 12/ 14 0.0% 0.0% 14.3% 0% 78%
54kg 1-  0-  1- 17/ 19 5.3% 5.3% 10.5% 530% 87%
55kg 1-  4-  3- 20/ 28 3.6% 17.9% 28.6% 194% 170%
56kg 1-  1-  0- 20/ 22 4.5% 9.1% 9.1% 54% 38%
56.5kg 0-  0-  0-  2/  2 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
57kg 5-  2-  0- 15/ 22 22.7% 31.8% 31.8% 114% 67%
57.5kg 1-  0-  0-  3/  4 25.0% 25.0% 25.0% 205% 75%
58kg 0-  2-  1-  3/  6 0.0% 33.3% 50.0% 0% 170%

表2はハンデ別成績。今回の集計期間では牝馬の好走がなかったため、牡馬・セン馬のみのデータを掲載している。1着馬の傾向から見ていくと、9勝中6勝を57キロ以上の馬が挙げており、重めのハンデを背負った馬が勝つケースが多いようだ。残りの1着馬は54、55、56キロから1頭ずつ。そして、軽ハンデの53キロ以下で連対した馬はいないものの、3着に入った4頭の内訳は7、11、12、16番人気で、人気薄が多いことに注意したい。

■表3 人気別成績(牡馬・セン馬)

ハンデ 人気 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
57kg〜 1番人気 2- 1- 1- 0/ 4 50.0% 75.0% 100.0% 185% 172%
2番人気 1- 0- 0- 2/ 3 33.3% 33.3% 33.3% 150% 70%
3番人気 3- 0- 0- 2/ 5 60.0% 60.0% 60.0% 430% 160%
4番人気 0- 0- 0- 2/ 2 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
5番人気 0- 2- 0- 2/ 4 0.0% 50.0% 50.0% 0% 117%
6番人気 0- 0- 0- 3/ 3 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
7番人気 0- 1- 0- 1/ 2 0.0% 50.0% 50.0% 0% 320%
8番人気 0- 0- 0- 2/ 2 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
9番人気 0- 0- 0- 2/ 2 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
10番人気〜 0- 0- 0- 5/ 5 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
〜56.5kg 1番人気 0- 0- 0- 5/ 5 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
2番人気 0- 1- 0- 4/ 5 0.0% 20.0% 20.0% 0% 44%
3番人気 0- 0- 0- 4/ 4 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
4番人気 0- 1- 0- 6/ 7 0.0% 14.3% 14.3% 0% 37%
5番人気 1- 0- 0- 2/ 3 33.3% 33.3% 33.3% 400% 130%
6番人気 0- 0- 1- 5/ 6 0.0% 0.0% 16.7% 0% 61%
7番人気 0- 1- 2- 3/ 6 0.0% 16.7% 50.0% 0% 230%
8番人気 0- 1- 0- 5/ 6 0.0% 16.7% 16.7% 0% 76%
9番人気 0- 0- 0- 6/ 6 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
10番人気〜 2- 1- 5-38/46 4.3% 6.5% 17.4% 337% 260%

表3は牡馬・セン馬に限った人気別成績で、「ハンデ57キロ以上」と「ハンデ56.5キロ以下」に分けて示している。

ハンデ57キロ以上で好走した馬は延べ11頭おり、うち8頭は1〜3番人気に推されていた。ここに限ると【6.1.1.4】、勝率50.0%、複勝率66.7%、単勝回収率278%、複勝回収率141%と有望な数字が残っており、57キロ以上を背負った1着馬6頭もすべて含まれている。

ところが、ハンデが56.5キロ以下になると傾向が激変する。1〜3番人気は【0.1.0.13】と大苦戦で、続く4〜6番人気も【1.1.1.13】と振るわない。この1〜6番人気を合算した成績を出しておくと、【1.2.1.26】、勝率3.3%、複勝率13.3%、単勝回収率40%、複勝回収率41%。対して7番人気以下でも【2.3.7.52】、勝率3.1%、複勝率18.8%、単勝回収率242%、複勝回収率215%と好走率は変わらず、回収率は明らかに有利だ。ハンデ56.5キロ以下の馬に関しては、穴馬の激走に気をつけたい

■表4 前走クラス別成績

前走クラス 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
2勝 0-  0-  1-  0/  1 0.0% 0.0% 100.0% 0% 380%
3勝 0-  0-  2-  7/  9 0.0% 0.0% 22.2% 0% 336%
オープン特別 2-  2-  4- 17/ 25 8.0% 16.0% 32.0% 419% 348%
リステッド競走 0-  1-  0-  5/  6 0.0% 16.7% 16.7% 0% 36%
G3 6-  4-  1- 55/ 66 9.1% 15.2% 16.7% 140% 54%
G2 1-  1-  0- 19/ 21 4.8% 9.5% 9.5% 16% 29%
G1 0-  0-  1-  5/  6 0.0% 0.0% 16.7% 0% 113%

表4は前走クラス別成績。2勝クラスからG1まで多彩な臨戦となっているが、前走の格は必ずしも好走率に直結していない様子が見て取れる。複勝率ベースで比較すると、重賞よりオープン特別、3勝クラスのほうが数値は高く、2勝クラスから臨んだ1頭も3着に好走。回収率も非常に高い。もちろん、前走重賞出走馬も1着7回、1〜3着計14回と無視はできないが、妙味という点ではオープン特別組や条件戦組が一枚上とみていいだろう。

■表5 前走着順別成績

前走着順 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
1着 0-  1-  3-  7/ 11 0.0% 9.1% 36.4% 0% 147%
2着 2-  1-  1-  8/ 12 16.7% 25.0% 33.3% 61% 59%
3着 0-  2-  0-  9/ 11 0.0% 18.2% 18.2% 0% 40%
4着 0-  2-  1-  5/  8 0.0% 25.0% 37.5% 0% 167%
5着 1-  0-  0-  5/  6 16.7% 16.7% 16.7% 75% 35%
6〜9着 2-  0-  2- 34/ 38 5.3% 5.3% 10.5% 35% 109%
10着〜 4-  3-  2- 41/ 50 8.0% 14.0% 18.0% 350% 187%

表5は前走着順別成績。前走1着、2着、4着が複勝率30%以上を記録しているように、全体的な傾向としては前走着順がよい馬が好走しやすい。ただ、1着が獲れるかという点では当てはまらず、1着馬9頭中6頭は前走で6着以下に敗れていた馬だった。言い換えると、軸馬探しには前走着順を参考にしやすいが、勝ち馬探しにはより広い視野が必要になりそうだ。

■表6 前走競馬場別成績

前走 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
着順 競馬場
1〜3着 福島 0- 2- 2- 5/ 9 0.0% 22.2% 44.4% 0% 162%
新潟 0- 0- 0- 4/ 4 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
東京 0- 0- 2- 7/ 9 0.0% 0.0% 22.2% 0% 58%
中山 1- 0- 0- 0/ 1 100.0% 100.0% 100.0% 340% 150%
京都 1- 0- 0- 2/ 3 33.3% 33.3% 33.3% 133% 63%
阪神 0- 2- 0- 6/ 8 0.0% 25.0% 25.0% 0% 55%
4着〜 福島 0- 0- 1- 3/ 4 0.0% 0.0% 25.0% 0% 1000%
新潟 0- 2- 0- 5/ 7 0.0% 28.6% 28.6% 0% 88%
東京 3- 1- 2-37/43 7.0% 9.3% 14.0% 159% 124%
中山 1- 0- 0- 9/10 10.0% 10.0% 10.0% 74% 26%
京都 0- 0- 1- 7/ 8 0.0% 0.0% 12.5% 0% 85%
阪神 3- 1- 1-21/26 11.5% 15.4% 19.2% 451% 135%
小倉 0- 0- 0- 2/ 2 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
地方 0- 0- 0- 1/ 1 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
海外 0- 1- 0- 0/ 1 0.0% 100.0% 100.0% 0% 640%

表6は前走競馬場別成績で、「前走1〜3着馬」と「前走4着以下馬」に分けて示している。

まず前走1〜3着馬から。前走でも同じ福島で好走していた馬は複勝率44.4%で、やはりさすがに好成績を収めている。また、中山の当該例は1頭のみだが、そのゼーヴィントが17年に1着。福島と中山はどちらも最後の直線が短い競馬場で、好走が直結しやすい様子が見て取れる。逆に直線の長い競馬場はどうかといえば、前走東京は【0.0.2.7】と連対例なし。また、前走新潟の4頭はすべて日本最長の直線を有する外回りを走り、4頭とも七夕賞では1〜3番人気に推されていたのだが、【0.0.0.4】と期待を裏切る結果に終わっている。

一方、前走4着以下からの巻き返しが多い競馬場として挙げられるのは、勝ち馬を3頭ずつ送り出している東京と阪神。出走例も多く、好走率自体が高いわけではないが、どちらも回収率は非常に高い。また、4頭に1頭以上の確率で巻き返している新潟や福島も軽視はできない。

■表7 前走距離別成績

前走距離 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
芝1600m 2- 0- 1- 7/10 20.0% 20.0% 30.0% 1552% 327%
芝1800m 3- 0- 2-32/37 8.1% 8.1% 13.5% 48% 40%
芝2000m 3- 6- 2-42/53 5.7% 17.0% 20.8% 45% 127%
芝2200m 1- 0- 0- 1/ 2 50.0% 50.0% 50.0% 170% 75%
芝2400m〜 0- 1- 2-25/28 0.0% 3.6% 10.7% 0% 54%
ダート 0- 1- 2- 2/ 5 0.0% 20.0% 60.0% 0% 802%

表7は前走距離別成績。なお、距離を問わず前走ダートは別途、一番下にまとめて掲載した。注目は400m延長となる1600mで、12年に14番人気1着のアスカクリチャン、13年に14番人気3着のタガノエルシコ、18年に11番人気1着のメドウラークと大穴馬ばかりが3頭激走を果たしている。なお、前走ダートは複勝率60.0%と驚きの好成績。今年の出走登録馬に該当馬はいないが、来年以降は気をつけたいところだ。

【結論】

2021/3/14 中山10R 東風ステークス 1着 3番 トーラスジェミニ 2019/10/19 東京9R アイビーステークス 1着 7番 ワーケア  

以上の分析をもとに、今年の七夕賞の出走登録馬17頭から有望なデータに合致する馬を紹介していきたい。ただ、17頭のうち前走1〜3着馬は3頭と少なめ。その3頭の前走競馬場を確認すると中京が2頭、阪神が1頭で、好走が直結しやすい福島・中山ではなかった。

そこで前走4着以下馬に目をつけると、まず浮かび上がってくるのが前走東京かつ1600mのトーラスジェミニ。ハンデは57キロだから、3番人気以内に支持されると有力であることをデータは示す。同じくワーケアも前走東京かつ1600m。近3走は案外な結果に終わっているものの、昨年の日本ダービーでも人気の一角を占めた素質馬としては、そろそろ復活の狼煙をあげたいところだろう。

前走阪神も巻き返しの例が多い。昨年の勝ち馬クレッシェンドラヴは近3走G1に挑戦して結果にはつながらなかったものの、ここはコース適性を活かして挽回を目指したい。トップハンデ58キロは楽ではないように見えるが、データとしては複勝率50.0%で決して悪くない。また、前走阪神ではスカーフェイスも侮れない。2勝クラスを勝っての重賞挑戦で巻き返しのパターンではないが、前走1600m、前走条件戦と好走率の高い条件に該当する。

前走新潟も巻き返しが期待できるコース。今年登録がある3頭中2頭は過去9年で好走がない牝馬なので、必然的に残るのはヴァンケドミンゴということになる。【4.1.1.0】と大得意の福島に戻る昨年の3着馬にも注目したい。

ライタープロフィール

出川塁(でがわ るい)

1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。


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