データde出〜た
第1515回 過去2年、3歳初戦の馬が連覇した皐月賞をデータから占う
2021/4/15(木)
ソダシが白毛馬初のクラシック制覇を飾った桜花賞に続き、今週は皐月賞が行なわれる。その桜花賞では暮れの阪神JF以来の出走となった2頭がワンツーを決めているが、こちら皐月賞もサートゥルナーリア、コントレイルと3歳初戦の馬が連覇中。こうしたローテーションの移り変わりにも注目しつつ、今年のレースをデータから占ってみたい。集計期間は、東京で行なわれた11年を対象から外し、中山開催の12〜20年の9年間とする。データ分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
■表1 人気別成績
人気 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
1番人気 | 3- 1- 1- 4/ 9 | 33.3% | 44.4% | 55.6% | 90% | 76% |
2番人気 | 1- 3- 0- 5/ 9 | 11.1% | 44.4% | 44.4% | 56% | 72% |
3番人気 | 1- 2- 3- 3/ 9 | 11.1% | 33.3% | 66.7% | 51% | 113% |
4番人気 | 1- 2- 1- 5/ 9 | 11.1% | 33.3% | 44.4% | 78% | 113% |
5番人気 | 0- 0- 0- 9/ 9 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
6番人気 | 0- 0- 0- 9/ 9 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
7番人気 | 1- 0- 0- 8/ 9 | 11.1% | 11.1% | 11.1% | 161% | 47% |
8番人気 | 1- 0- 3- 5/ 9 | 11.1% | 11.1% | 44.4% | 343% | 246% |
9番人気 | 1- 1- 0- 7/ 9 | 11.1% | 22.2% | 22.2% | 248% | 136% |
10番人気〜 | 0- 0- 1- 75/ 76 | 0.0% | 0.0% | 1.3% | 0% | 17% |
表1は人気別成績。1着馬の内訳から見ていくと、1番人気が3勝と頭ひとつ抜け出してはいるものの、2〜4番人気および7〜9番人気も綺麗に1勝ずつと幅広い人気から勝ち馬が出ている。ただし、10番人気以下は17年3着のダンビュライト(12番人気)が唯一の好走例で、人気薄の激走はなかなか見られない。また、ひとケタ人気のなかでも1〜4番人気もしくは7〜9番人気に好走馬が集中し、その間の5、6番人気から1〜3着に入った馬はゼロという結果も興味深い。
■表2 デビュー月別成績
デビュー月 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
2歳6月 | 3- 1- 0-18/22 | 13.6% | 18.2% | 18.2% | 47% | 27% |
7月 | 1- 0- 2-23/26 | 3.8% | 3.8% | 11.5% | 27% | 80% |
8月 | 0- 2- 2-17/21 | 0.0% | 9.5% | 19.0% | 0% | 53% |
9月 | 2- 2- 0-13/17 | 11.8% | 23.5% | 23.5% | 197% | 82% |
10月 | 3- 2- 2-28/35 | 8.6% | 14.3% | 20.0% | 118% | 55% |
11月 | 0- 0- 2-14/16 | 0.0% | 0.0% | 12.5% | 0% | 52% |
12月 | 0- 2- 0-11/13 | 0.0% | 15.4% | 15.4% | 0% | 23% |
3歳1月 | 0- 0- 1- 3/ 4 | 0.0% | 0.0% | 25.0% | 0% | 72% |
※中央デビュー馬のみ
表2はデビュー月別の成績(中央デビュー馬のみ)。1着馬9頭は2歳の10月までにはデビューしており、11月以降にデビューした馬が勝った例はない。皐月賞制覇を目指すのであれば、遅くとも2歳10月までにはデビューを済ませるのが現在の定石と言えそうだ。
■表3 キャリア別成績
キャリア | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
〜2戦 | 0- 0- 0- 5/ 5 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
3戦 | 2- 3- 3- 15/ 23 | 8.7% | 21.7% | 34.8% | 19% | 57% |
4戦 | 3- 3- 3- 30/ 39 | 7.7% | 15.4% | 23.1% | 106% | 91% |
5戦 | 3- 3- 2- 32/ 40 | 7.5% | 15.0% | 20.0% | 107% | 77% |
6戦 | 0- 0- 1- 26/ 27 | 0.0% | 0.0% | 3.7% | 0% | 17% |
7戦 | 1- 0- 0- 12/ 13 | 7.7% | 7.7% | 7.7% | 28% | 10% |
8戦〜 | 0- 0- 0-7/7 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
※中央デビュー馬のみ
表3はキャリア別成績(中央デビュー馬のみ)。好走例の大半はキャリア3〜5戦に集中し、そのなかではキャリア3戦の好走率がもっとも高い。しかし、6戦以上のキャリアを重ねた馬の好走率はかなり下がってしまい、最後の好走例も14年3着のウインフルブルームまで遡らなければならない。この通り、さほど経験を必要としない現在の皐月賞だが、キャリア2戦以下で臨んだ5頭は好走に至らず、さすがに経験不足ということか。
■表4 前走距離別成績
前走距離 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
1400m | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
1600m | 0- 2- 0- 2/ 4 | 0.0% | 50.0% | 50.0% | 0% | 122% |
1800m | 7- 1- 5- 55/ 68 | 10.3% | 11.8% | 19.1% | 129% | 58% |
2000m | 2- 6- 4- 55/ 67 | 3.0% | 11.9% | 17.9% | 6% | 61% |
2200m | 0- 0- 0- 14/ 14 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
2400m | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
※芝のみ
表4は前走距離別成績(芝のみ)。好走例の多くは前走で1800mか2000mのどちらかを走っており、1着馬に限ると9頭中7頭は前走1800mとけっこう偏っている。とはいえ、近2年の1着馬であるサートゥルナーリアとコントレイルはともに前走2000mで、これをどう考えるかがポイントになりそうだ。また、前走1600mは出走例が少ないものの、4頭中2頭が2着(17年ペルシアンナイト、20年サリオス)と侮れない。そのほか、前走で2200m以上を使っていた馬の出走例もそれなりにあるのだが、いまだ好走には至っていない。
■表5 前走着順別成績
前走着順 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
1着 | 7- 6- 5-45/63 | 11.1% | 20.6% | 28.6% | 116% | 78% |
2着 | 2- 1- 2-25/30 | 6.7% | 10.0% | 16.7% | 63% | 48% |
3着 | 0- 0- 2-18/20 | 0.0% | 0.0% | 10.0% | 0% | 74% |
4着 | 0- 2- 0-12/14 | 0.0% | 14.3% | 14.3% | 0% | 52% |
5着〜 | 0- 0- 0-30/30 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
表5は前走着順別成績。なかなかシビアな傾向が出ており、皐月賞1〜3着馬の3分の2にあたる18頭を前走1着馬が占める。前走2〜4着でも好走例はあるが、好走率はダウン。そして、前走5着以下だった30頭はすべて馬券圏外と厳しい結果に終わっている。
■表6 4角通過順別成績
4角 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 | |
今走 | 1番手 | 0- 0- 1- 8/ 9 | 0.0% | 0.0% | 11.1% | 0% | 52% |
2番手 | 0- 0- 2- 8/ 10 | 0.0% | 0.0% | 20.0% | 0% | 82% | |
3〜4番手 | 2- 5- 2- 12/ 21 | 9.5% | 33.3% | 42.9% | 93% | 141% | |
5〜6番手 | 3- 2- 3- 14/ 22 | 13.6% | 22.7% | 36.4% | 150% | 106% | |
7〜9番手 | 3- 0- 1- 24/ 28 | 10.7% | 10.7% | 14.3% | 32% | 40% | |
10番手以下 | 1- 2- 0- 64/ 67 | 1.5% | 4.5% | 4.5% | 46% | 12% | |
前走 | 1番手 | 0- 1- 1- 15/ 17 | 0.0% | 5.9% | 11.8% | 0% | 51% |
2番手 | 4- 1- 1- 24/ 30 | 13.3% | 16.7% | 20.0% | 144% | 68% | |
3〜4番手 | 3- 3- 5- 32/ 43 | 7.0% | 14.0% | 25.6% | 32% | 62% | |
5〜6番手 | 0- 0- 1- 24/ 25 | 0.0% | 0.0% | 4.0% | 0% | 53% | |
7〜9番手 | 2- 3- 1- 18/ 24 | 8.3% | 20.8% | 25.0% | 147% | 62% | |
10番手以下 | 0- 1- 0- 17/ 18 | 0.0% | 5.6% | 5.6% | 0% | 8% |
表6は4角通過順別成績で、上半分が今走(皐月賞)、下半分が前走のものを表している。今走から見ていくと、好走率が高いのは4角3〜4番手や5〜6番手。いっぽう4角1番手や2番手の連対例はなく、積極的な競馬はなかなか結果に結びつかないようだ。かといって4角を10番手以下で回ると、好走率はさらに下がってしまう。このデータを見る限り、皐月賞では逃げ・先行馬を伺うようなポジションにつけるのが理想で、少なくとも4角を9番手以内で回って最後の直線に挑みたい。
予想をするうえでは、前走における4角通過順も参考になりそうだ。順に見ていくと、前走4角1番手の成績があまりよくなく、これは先に見た今走4角1〜2番手の不振という傾向にもリンクする部分。同様に、前走4角10番手以下も18頭で2着1回だけと苦しい。好走例が多く、好走率も高いのは、前走4角2番手、3〜4番手、7〜9番手といったところだ。
■表7 12〜19年の皐月賞1〜3着馬とその前走
年 | 1着馬 | 2着馬 | 3着馬 |
前走 | 前走 | 前走 | |
12年 | ゴールドシップ | ワールドエース | ディープブリランテ |
共同通信杯 | 若葉S | スプリングS | |
13年 | ロゴタイプ | エピファネイア | コディーノ |
スプリングS | 弥生賞 | 弥生賞 | |
14年 | イスラボニータ | トゥザワールド | ウインフルブルーム |
共同通信杯 | 弥生賞 | 若葉S | |
15年 | ドゥラメンテ | リアルスティール | キタサンブラック |
共同通信杯 | スプリングS | スプリングS | |
16年 | ディーマジェスティ | マカヒキ | サトノダイヤモンド |
共同通信杯 | 弥生賞 | きさらぎ賞 | |
17年 | アルアイン | ペルシアンナイト | ダンビュライト |
毎日杯 | アーリンG3 | 弥生賞 | |
18年 | エポカドーロ | サンリヴァル | ジェネラーレウーノ |
スプリングS | 弥生賞 | 京成杯 | |
19年 | サートゥルナーリア | ヴェロックス | ダノンキングリー |
ホープフルS | 若葉S | 共同通信杯 | |
20年 | コントレイル | サリオス | ガロアクリーク |
ホープフルS | 朝日杯FS | スプリングS |
※色分け【同年1800m=黄色】【同年2000m=青】【前年=赤】
表7は、12〜20年の皐月賞1〜3着馬と、その前走を一覧にしたもの。表6までの項で述べたことと重複する部分もあるが、総まとめとしてご覧いただければと思う。なお、色分けは「前走が同年1800m=黄色」「前走が同年2000m=青」「前走が前年=赤」を表す。
まず、18年までは前走が同年1800m(共同通信杯、スプリングS、毎日杯など)の馬が7連勝。そして、前走が同年2000m(弥生賞、若葉Sなど)の馬が2着に入るケースが多かった。この傾向に変化が見られたのは19年のことで、前年末のホープフルS以来となったサートゥルナーリアが史上初めて3歳初戦で皐月賞を勝利。翌20年にもコントレイルが同じローテーションで三冠への第一関門を突破し、2着にも朝日杯FS以来のサリオスが入った。年明け初戦で好走した3頭はいずれも2歳G1を制していることで共通する。ただ、今年は休み明けで出走する2歳G1馬はおらず、むしろ18年までの様相に近いとも考えられる。このあたりを踏まえて、今回のデータ分析の結論を述べたい。
【結論】
今年の皐月賞登録馬はフルゲートちょうどの18頭。ただし、オーソクレース、ボーデンの2頭が回避を表明済みで、3年ぶりにフルゲート割れで行なわれる見込みとなっている。
まず焦点となりそうなのが、3歳初戦で出走する馬の3連覇はなるか、ということ。前述したオーソクレースの回避により、今年該当するのは朝日杯FS以来のレッドベルオーブだけとなる。表4の項目で述べた通り、前走1600mは4頭で2着2回と悪くない臨戦。惜しむらくは前走3着という勝ち切れない条件に合致する点だが、好走の資格は持ち合わせているのではないか。
もし3歳初戦馬による3連覇がないとみれば、18年までのように前走1800m出走馬を重視する手は考えられる。そこで浮かび上がってくるのが、共同通信杯1着のエフフォーリアとスプリングS1着のヴィクティファルス。特にエフフォーリアは10月までにデビューを済ませ、キャリア3戦、前走4角3番手と好条件が揃う。
前走2000m出走馬で注目度が高いのは、やはりホープフルS1着のダノンザキッドだろう。今年は弥生賞ディープインパクト記念を使って3着。タラレバでいえば直行したほうが各種データで好材料が揃っていた感はあるのだが、とはいえ致命的なデータに抵触するわけではなく、巻き返しの可能性はあるだろう。むしろ、このレースを4角1番手から制したタイトルホルダーのほうが脚質面で不安かもしれない。ほかに、今年は2000mで行なわれたきさらぎ賞で1着のラーゴムと同2着のヨーホーレイク、若葉S1着のアドマイヤハダルの3頭も、明らかな弱点がない馬として名前を挙げておきたい。
一方、京成杯1着のグラティアスはキャリア2戦、昨年の朝日杯2着のステラヴェローチェは前走5着、すみれS1着のディープモンスターは前走2200mと、それぞれ好走例がない条件に合致。今回の分析結果からは推しづらいものの、いずれ劣らぬ実力の持ち主だけにデータを覆す走りを期待したい。
ライタープロフィール
出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。