データde出〜た
第1468回 牝馬2強の一騎打ちか? 天皇賞(秋)を分析する
2020/10/29(木)
今週は東京競馬場で、天皇賞(秋)が行われる。ここからジャパンC、そして有馬記念へと続く、俗に言う「秋の古馬三冠」の第一関門となる一戦だ。今年は昨年の1、2着馬・アーモンドアイ、ダノンプレミアムや、春の天皇賞連覇を果たしたフィエールマン、そして宝塚記念を圧勝したクロノジェネシスなどが参戦予定。中でも牝馬2頭、アーモンドアイとクロノジェネシスが注目を集めそうだが、データから有力なのはどの馬か。JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用して、過去10年の傾向を中心に分析したい。
■表1 人気別成績
人気 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 | 過去5年 |
1 | 5-2-1-2/10 | 50.0% | 70.0% | 80.0% | 139% | 107% | 4-0-0-1 |
2 | 1-3-2-4/10 | 10.0% | 40.0% | 60.0% | 31% | 110% | 1-1-0-3 |
3 | 0-1-1-8/10 | 0.0% | 10.0% | 20.0% | 0% | 41% | 0-1-0-4 |
4 | 0-2-0-8/10 | 0.0% | 20.0% | 20.0% | 0% | 55% | 0-1-0-4 |
5 | 3-0-0-7/10 | 30.0% | 30.0% | 30.0% | 431% | 87% | 0-0-0-5 |
6 | 0-0-5-5/10 | 0.0% | 0.0% | 50.0% | 0% | 146% | 0-0-4-1 |
7 | 1-1-0-8/10 | 10.0% | 20.0% | 20.0% | 333% | 120% | 0-1-0-4 |
8 | 0-0-0-10/10 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | 0-0-0-5 |
9 | 0-0-0-10/10 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | 0-0-0-5 |
10 | 0-1-0-9/10 | 0.0% | 10.0% | 10.0% | 0% | 59% | 0-1-0-4 |
11〜 | 0-0-1-67/68 | 0.0% | 0.0% | 1.5% | 0% | 8% | 0-0-1-28 |
過去10年、1番人気が【5.2.1.2】複勝率80.0%と安定しており、特に近5年では4勝と高確率で勝利を手にしている。次いで5番人気が過去10年で3勝を挙げているが、ここ5年は3着以内の好走なし。6番人気が近5年で3着4回と健闘を見せている。連対馬20頭中19頭、3着以内馬30頭中28頭が7番人気以内と、穴馬には大きな期待をかけづらいレースだ。
■表2 性齢別成績
性別 | 年齢 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 |
牡・セン馬 | 全 | 8-8-9-130/155 | 5.2% | 10.3% | 16.1% | 57% | 45% |
3歳 | 0-2-1-11/14 | 0.0% | 14.3% | 21.4% | 0% | 36% | |
4歳 | 2-5-4-27/38 | 5.3% | 18.4% | 28.9% | 48% | 97% | |
5歳 | 6-1-3-34/44 | 13.6% | 15.9% | 22.7% | 161% | 61% | |
6歳 | 0-0-1-26/27 | 0.0% | 0.0% | 3.7% | 0% | 5% | |
7歳以上 | 0-0-0-32/32 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | |
牝馬 | 全 | 2-2-1-8/13 | 15.4% | 30.8% | 38.5% | 29% | 60% |
3歳 | 0-0-0-2/2 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | |
4歳 | 2-1-0-3/6 | 33.3% | 50.0% | 50.0% | 63% | 55% | |
5歳 | 0-1-1-2/4 | 0.0% | 25.0% | 50.0% | 0% | 112% | |
6歳 | 0-0-0-1/1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
性別では牡・セン馬の複勝率16.1%に対し、牝馬は同38.5%と牝馬優勢だ。優勝した牝馬2頭、ブエナビスタ(2010年)とアーモンドアイ(昨年)はともに4歳馬。牝馬の年齢別成績は過去10年ではデータ不足の感もあるが、JRA-VAN Data Lab.でデータが提供されている1986年以降で調べると、4歳牝馬【4.2.2.10】勝率22.2%、5歳牝馬【1.1.2.15】同5.3%と、やはり4歳牝馬が好成績を残していた。
一方、牡・セン馬は5歳馬が6勝を挙げ、勝率13.6%。4歳馬は2勝で勝率5.3%にとどまるが、連対率と複勝率は5歳馬を上回っている。牡・セン馬は1着候補ならまず5歳馬、2〜3着候補なら4歳馬に注目したい。なお、6歳以上の馬は牝馬も含め全体で【0.0.1.59】と苦戦している。
■表3 馬番別成績
馬番 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 |
1 | 0-1-0-9/10 | 0.0% | 10.0% | 10.0% | 0% | 18% |
2 | 2-1-0-7/10 | 20.0% | 30.0% | 30.0% | 38% | 39% |
3 | 0-0-0-10/10 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
4 | 2-1-0-7/10 | 20.0% | 30.0% | 30.0% | 141% | 55% |
5 | 0-0-1-9/10 | 0.0% | 0.0% | 10.0% | 0% | 27% |
6 | 0-0-2-8/10 | 0.0% | 0.0% | 20.0% | 0% | 34% |
7 | 2-2-0-6/10 | 20.0% | 40.0% | 40.0% | 186% | 90% |
8 | 2-0-2-5/9 | 22.2% | 22.2% | 44.4% | 77% | 140% |
9 | 0-3-0-7/10 | 0.0% | 30.0% | 30.0% | 0% | 68% |
10 | 0-0-1-9/10 | 0.0% | 0.0% | 10.0% | 0% | 30% |
11 | 0-0-0-10/10 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
12 | 2-1-1-6/10 | 20.0% | 30.0% | 40.0% | 499% | 172% |
13〜 | 0-1-3-45/49 | 0.0% | 2.0% | 8.2% | 0% | 25% |
枠番別の成績は7〜8枠が計【0.2.4.47】と、東京芝2000mでは不利と言われる外枠からは優勝馬が出ていない。ただ今年は、特別登録の段階でも12頭と落ち着いた頭数でのレースになる。そこで馬番別の成績を調べると、12頭立てなら7〜8枠に該当する馬番9〜12番(除外などがない場合)は合計で【2.4.2.32】複勝率20.0%と、決して悪い成績ではない。今年は外枠だからといって割り引く必要はなさそうだ。
全体を見渡すと7〜9番の馬が計【4.5.2.18】連対率31.0%、複勝率37.9%の好成績。12頭立て(13頭から1頭除外)で行われた一昨年も、9番サングレーザーが2着に入っている(1着は4番レイデオロ、3着は10番キセキ)。
■表4 前走レース別成績(3着以内馬を出したレース)
前走 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 |
毎日王冠 | 3-3-5-42/53 | 5.7% | 11.3% | 20.8% | 81% | 60% |
宝塚記念 | 2-3-2-16/23 | 8.7% | 21.7% | 30.4% | 23% | 66% |
札幌記念 | 2-1-1-15/19 | 10.5% | 15.8% | 21.1% | 194% | 76% |
安田記念 | 1-2-0-3/6 | 16.7% | 50.0% | 50.0% | 26% | 120% |
オールカマー | 1-0-0-25/26 | 3.8% | 3.8% | 3.8% | 11% | 5% |
京都大賞典 | 1-0-0-12/13 | 7.7% | 7.7% | 7.7% | 26% | 12% |
セントライト記念 | 0-1-1-0/2 | 0.0% | 50.0% | 100.0% | 0% | 135% |
天皇賞(春) | 0-0-1-4/5 | 0.0% | 0.0% | 20.0% | 0% | 70% |
※背景灰は本年の該当馬不在
3着以内馬30頭はすべて、前走で中央競馬のG1またはG2に出走していた。この30頭中11頭は毎日王冠組だが、出走数が多いため好走確率はやや低め。宝塚記念組が好走馬7頭で続き、こちらは複勝率30.4%をマークする。また該当馬こそ少ないものの、安田記念組が【1.2.0.3】で連対率50.0%の高率を記録しているのも見逃せない。
なお、京都大賞典組の好走馬1頭は2015年のラブリーデイで、鳴尾記念、宝塚記念、京都大賞典と、G1を含む重賞3連勝中。天皇賞(春)以来の出走で3着に食い込んだ2011年のペルーサは、前年秋の天皇賞で2着に好走した実績があった。
■表5 前走毎日王冠組の前走着順、休養明け消化レース数別成績
項目 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 | |
前走着順 | 1〜3着 | 2-1-4-14/21 | 9.5% | 14.3% | 33.3% | 126% | 84% |
4着以下 | 1-2-1-28/32 | 3.1% | 9.4% | 12.5% | 51% | 45% | |
休養明け消化レース数 | 1戦(今回2戦目) | 2-3-5-35/45 | 4.4% | 11.1% | 22.2% | 61% | 66% |
2戦(今回3戦目)以上 | 1-0-0-7/8 | 12.5% | 12.5% | 12.5% | 193% | 30% |
好走馬の多い毎日王冠組を調べると、同レース3着以内だった馬は【2.1.4.14】複勝率33.3%、4着以下は【1.2.1.28】同12.5%と、毎日王冠で馬券圏内を確保した馬のほうが好走確率はかなり高い。毎日王冠4着以下から天皇賞(秋)で3着以内に巻き返した4頭のうち、3頭は芝2000mのG1(海外含む)で3着以内の好走実績があり、残る1頭・2010年のペルーサは芝2000m3戦全勝(同距離G1未経験)だった。
また、毎日王冠組の好走馬11頭中10頭は同レースが休養明けで、残る1頭・2013年のジャスタウェイは関屋記念から中7週。毎日王冠から天皇賞(秋)は中2週になるが、その前にゆったりと間隔をとっている馬が好走馬の中心になる。
■表6 前走宝塚記念組の3着以内好走馬
年 | 馬名 | 天皇賞(秋) | 宝塚記念 | 主なG1実績 | |||
人気 | 着順 | 人気 | 着順 | 過去1年 | 左記以外 | ||
2010 | ブエナビスタ | 1 | 1 | 1 | 2 | ヴィクトリアM1着 | オークス1着 |
2012 | ルーラーシップ | 2 | 3 | 2 | 2 | QE2世C1着 | 宝塚記念2着 |
2013 | ジェンティルドンナ | 1 | 2 | 1 | 3 | ジャパンC1着 | オークス1着 |
2014 | ジェンティルドンナ | 2 | 2 | 3 | 9 | ドバイシーマC1着 | ジャパンC1着 |
2017 | キタサンブラック | 1 | 1 | 1 | 9 | ジャパンC1着 | 天皇賞(春)1着 |
サトノクラウン | 2 | 2 | 3 | 1 | 香港ヴァーズ1着 | 宝塚記念1着 | |
レインボーライン | 13 | 3 | 7 | 5 | 宝塚記念5着 | 菊花賞2着 |
宝塚記念組の好走馬は表6の7頭で、レインボーラインを除く6頭は宝塚記念、天皇賞(秋)ともに上位人気に推された馬が占めている。また、その6頭はすべて過去1年以内のG1優勝を含む、G1・2連対以上の実績馬だった。唯一例外となるレインボーラインは、上記の2条件をクリアしていたキタサンブラック、サトノクラウンに続く3着止まり。まずはこの2条件を満たす馬を上位に考えたい。
■表7 前走安田記念組の出走馬
年 | 馬名 | 天皇賞(秋) | 安田記念 | 主なG1実績 | 芝2000m成績 | ||
人気 | 着順 | 人気 | 着順 | ||||
2010 | スーパーホーネット | 8 | 11 | 6 | 2 | マイルCS2着 | 0-0-0-2 |
2012 | サダムパテック | 10 | 8 | 1 | 9 | 皐月賞2着 | 1-1-0-0 |
2016 | リアルスティール | 7 | 2 | 2 | 11 | ドバイターフ1着 | 0-1-0-0 |
2018 | スワーヴリチャード | 1 | 10 | 1 | 3 | 大阪杯1着 | 3-1-0-1 |
2019 | アーモンドアイ | 1 | 1 | 1 | 3 | ジャパンC1着 | 1-0-0-0 |
ダノンプレミアム | 3 | 2 | 2 | 16 | 朝日杯FS1着 | 2-0-0-0 |
最後に表7は安田記念組。該当馬が少ないため出走全馬を見てみたい。この組で連対した3頭、リアルスティール、アーモンドアイ、そしてダノンプレミアムはいずれもG1優勝実績馬かつ芝2000mの連対率100%。そのどちらか一方でも満たせなかったスーパーホーネット、サダムパテック、そしてスワーヴリチャードは8着以下と明暗が分かれている。安田記念組なら「芝2000m連対率100%」の「G1馬」が狙いだ。
【結論】
アーモンドアイ、クロノジェネシスの牝馬2頭が特に有力視されている今年の天皇賞(秋)。過去の傾向をみても、安田記念組のアーモンドアイ、宝塚記念組のクロノジェネシスそれぞれ、表7、6の好走条件を満たしている。2頭に差が出るのは馬番(表3、本稿執筆時は未確定)のほか、当日の人気(表1)と年齢(表2)になる。
人気面ではアーモンドアイが1番人気に推されそうだが、その1番人気馬は過去10年で5勝、特に近5年では4勝の好成績。対して2番人気は過去10年【1.3.2.4】と勝ち切れず、人気からはアーモンドアイのほうが優勝に近そうだ。ただ、アーモンドアイは昨年からひとつ年齢を重ね5歳(過去10年勝利なし)になったのに対し、クロノジェネシスは過去10年で2勝を挙げている4歳牝馬。表2本文でも触れたように、1986年以降でみても牝馬は5歳より4歳のほうが好成績を残しており、年齢からはクロノジェネシスが上位になる。最終的には枠順抽選の結果までみて、どちらに重きを置くか決めたい印象だ。
もしこの2頭をまとめて破る馬がいるとすれば、過去10年で最多の6勝を挙げる5歳牡馬・ダノンプレミアム。4歳時の昨年はアーモンドアイに独走を許す2着だったが、5歳になった今年は、馬券に絡むところまで食い込めれば勝利のチャンスも十分にある(表2)。2走前に豪G1で3着に敗れ、表7の「芝2000m連対率100%」は満たせなくなったものの、海外G1を含む3着内率100%ならこれに準ずる成績と考えていいだろう。その他では、休養明けの毎日王冠で2着(表5)に好走したダイワキャグニーが穴候補だ。
ライタープロフィール
浅田知広(あさだ ともひろ)
1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。