データde出〜た
第1423回 無敗の皐月賞馬の日本ダービー挑戦を考える
2020/5/25(月)
今週日曜日はいよいよ日本ダービー(東京優駿)が行われる。中央競馬を代表するビッグレースで、「競馬の祭典」とも呼ばれる大一番だ。依然として無観客でのレースを余儀なくされており、生で観戦できないのは本当に残念だが、今年も見どころはたくさんある。まずは無敗の皐月賞馬・コントレイルがどのようなレースをするかに注目が集まることだろう。おそらく今回も1番人気に支持される可能性が高い。日本ダービーも制し、春のクラシック2冠達成なるか。無敗での2冠達成となれば、競馬史に名を残す偉業となる。
今回はかつてコントレイルと同じように無敗で皐月賞を制し、日本ダービーに挑戦した馬たちを振り返ってみたい。その上で、コントレイルの春のクラシック2冠達成の可能性について考えてみることにする。データ分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
■表1 グレード制導入(1984年)以降の無敗の皐月賞馬
年 | 馬名 | 日本ダービー成績 |
1984年 | シンボリルドルフ | 優勝 |
1985年 | ミホシンザン | 不出走 |
1991年 | トウカイテイオー | 優勝 |
1992年 | ミホノブルボン | 優勝 |
2001年 | アグネスタキオン | 不出走 |
2005年 | ディープインパクト | 優勝 |
2019年 | サートゥルナーリア | 4着 |
2020年 | コントレイル | ??? |
まずはコントレイルと同じように、過去に無敗で皐月賞を制した馬を調べた。ただし、調査対象年はグレード制が導入された1984年以降とした。表1は無敗の皐月賞馬と、彼らの日本ダービーでの成績だ。
グレード制が導入された1984年にいきなりシンボリルドルフがデビューから6連勝で春のクラシック2冠を達成した。同馬を皮切りにミホシンザン(85年)、トウカイテイオー(91年)、ミホノブルボン(92年)、アグネスタキオン(01年)、ディープインパクト(05年)、サートゥルナーリア(19年)、そしてコントレイル(20年)と、8頭の馬が無敗で皐月賞を制した。1984〜2020年までの37年間で8頭誕生しているので、単純に割ると約4.6年に1回の割合で無敗の皐月賞馬が出現していることになる。ただ、実際には2年続けて(84・85年、91・92年、19・20年)出現するケースが目立っている。
あらためて無敗で皐月賞を制した馬たちを見ると、競馬史に残る名馬ばかりだ。日本ダービーも優勝したのはシンボリルドルフ、トウカイテイオー、ミホノブルボン、ディープインパクトの4頭。ありきたりで簡単な言葉だが、とにかく強かった。ただ、その他の馬も相当な実力があった。ミホシンザンとアグネスタキオンは故障に泣いたが、前者は後に菊花賞や天皇賞(春)を制したし、後者はデビュー2戦目のラジオたんぱ杯3歳Sで、後のダービー馬・ジャングルポケットを2着に下してレコードで優勝していた。もし無事であればダービーも勝っていて不思議はなかった。
つまり、無敗で皐月賞を勝てるような馬は、間違いなく圧倒的な力を持っていると言える。皐月賞から400m距離が延びても心配はいらない。無事に日本ダービーに出走できれば、勝利できる確率は高いと考えるのが普通だ。それだけに昨年のサートゥルナーリアの結果(4着)は意外なものになった。果たしてコントレイルにはどのような結果が待っているだろうか。
■表2 皐月賞と日本ダービー(2冠)を制した馬(1984年以降)
年 | 馬名 | 父 | 備考 |
1984年 | シンボリルドルフ | パーソロン | 無敗3冠 |
1991年 | トウカイテイオー | シンボリルドルフ | 無敗2冠 |
1992年 | ミホノブルボン | マグニテュード | 無敗2冠 |
1994年 | ナリタブライアン | ブライアンズタイム | 3冠 |
1997年 | サニーブライアン | ブライアンズタイム | |
2003年 | ネオユニヴァース | サンデーサイレンス | |
2005年 | ディープインパクト | サンデーサイレンス | 無敗3冠 |
2006年 | メイショウサムソン | オペラハウス | |
2011年 | オルフェーヴル | ステイゴールド | 3冠 |
2015年 | ドゥラメンテ | キングカメハメハ |
続いて、無敗かどうかにこだわらず、春のクラシックで2冠(皐月賞と日本ダービー)を達成した馬たちを調べてみることにした(表2参照)。先ほどと同じように1984年以降では、シンボリルドルフ(84年)、トウカイテイオー(91年)、ミホノブルボン(92年)、ナリタブライアン(94年)、サニーブライアン(97年)、ネオユニヴァース(03年)、ディープインパクト(05年)、メイショウサムソン(06年)、オルフェーヴル(11年)、ドゥラメンテ(15年)と10頭が達成した。シンボリルドルフとディープインパクトは無敗のまま3冠馬となり、ナリタブライアンとオルフェーヴルもクラシック3冠を達成。こちらも素晴らしい馬たちが名を連ねている。
父親に注目すると、シンボリルドルフとトウカイテイオーは親子で達成したことになる。コントレイルの父はディープインパクトなので、今年も親子による春のクラシック2冠(皐月賞・日本ダービー)制覇という記録がかかっている。これまでディープインパクト産駒は皐月賞も日本ダービーも勝っているが、両方を勝った馬はまだ出ていない。なお、ブライアンズタイム(ナリタブライアン、サニーブライアン)とサンデーサイレンス(ネオユニヴァース、ディープインパクト)は春のクラシック2冠(皐月賞・日本ダービー)馬を2頭も出している。
■表3 2冠(皐月賞・ダービー)馬の日本ダービーでの単勝オッズ、2・3着馬(1984年以降)
年 | 馬名 | 単勝 | 2着(人気) | 3着(人気) |
1984年 | シンボリルドルフ | 1.3倍 | スズマッハ(20) | フジノフウウン(7) |
1991年 | トウカイテイオー | 1.6倍 | レオダーバン(2) | イイデセゾン(4) |
1992年 | ミホノブルボン | 2.3倍 | ライスシャワー(16) | マヤノペトリュース(5) |
1994年 | ナリタブライアン | 1.2倍 | エアダブリン(4) | ヤシマソブリン(10) |
1997年 | サニーブライアン | 13.6倍 | シルクジャスティス(3) | メジロブライト(1) |
2003年 | ネオユニヴァース | 2.6倍 | ゼンノロブロイ(3) | ザッツザプレンティ(7) |
2005年 | ディープインパクト | 1.1倍 | インティライミ(2) | シックスセンス(7) |
2006年 | メイショウサムソン | 3.8倍 | アドマイヤメイン(4) | ドリームパスポート(7) |
2011年 | オルフェーヴル | 3.0倍 | ウインバリアシオン(10) | ベルシャザール(8) |
2015年 | ドゥラメンテ | 1.9倍 | サトノラーゼン(5) | サトノクラウン(3) |
最後に表2で記した春のクラシック2冠(皐月賞・日本ダービー)馬の日本ダービーでの単勝オッズ、および2・3着馬について調べた(表3参照)。10頭中9頭が日本ダービーで1番人気に支持されていて、その内5頭が単勝1倍台の圧倒的人気だった。皐月賞で見せたパフォーマンスがオッズにも相当影響を与えるので、基本的にはかなり人気を集める場合が多い。しかし、11年のオルフェーヴルは1番人気ながら単勝は3.0倍もついた。この年は皐月賞も東京競馬場(芝2000m)で行われて、そのレースを3馬身差で圧勝していた。それでもダービーで圧倒的人気にならなかったのは、今となっては意外な感じがする。
サニーブライアンが勝利した97年のレースも印象深い。他の馬が1番人気で優勝しているなか、同馬は単勝13.6倍の6番人気だった。この年だけ異質に見えることだろう。だが、その前の皐月賞ではもっと軽視されていて、11番人気だった。皐月賞はノーマークでの逃げ切り勝ちという結果となり、素直に実力を評価しづらい面があった。日本ダービーでは人気は上がったものの、依然として半信半疑という見方をするファンが多かった。しかし、東京芝2400mのダービーでも再び逃げ切りを果たし、堂々と2冠を達成。低評価を覆す走りを続けて、本当の実力を証明してみせた。異例ではあったが、今後見られるかわからないような貴重なケースだったように思う。
最後にダービーでの2着馬を調べると、意外な人気薄の活躍も目立つ。84年2着のスズマッハは21頭立ての20番人気だった。92年のレースからフルゲートは18頭となり現在に至るが、同年は16番人気のライスシャワーが2着に入った。また、11年は10番人気のウインバリアシオンが2着に好走した。それ以外の年は2〜5番人気の馬が2着に入っている。つまり、6〜9番人気は1頭も2着に入っていない。その分、3着が多いという傾向が出ている。仮に今年はコントレイルが優勝すると予想する場合、2着には2〜5番人気もしくは10番人気以下の馬がくると想定してみるのも面白い。
ライタープロフィール
小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。