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第1392回 きらさぎ賞の上位人気馬を考える

2020/2/6(木)

今週日曜日に京都競馬場できさらぎ賞が行われる。翌週の共同通信杯と並び、クラシックへの登竜門と言われる注目レースだ。過去10年ではサトノダイヤモンド(菊花賞)やルージュバック(オークス2着)、ワールドエース(皐月賞2着)が勝利を飾っている。また、例年出走頭数が少ないレースでもある。2012年の13頭立てが最高頭数だ。今年も1週前の段階で10頭しか登録がなかった。

いつものように過去10年のデータを分析するが、今回は上位人気馬の傾向に注目してみたい。データの分析にはJRA-VAN DataLab.TARGET frontier JVを利用した。

■表1 きさらぎ賞の1番人気馬成績(過去10年)

馬名 着順 前走レース名 前着 種牡馬 母父馬
19年 ヴァンドギャルド 4 ホープフG1 6 ディープインパクト Motivator
18年 ダノンマジェスティ 9 新馬 1 ディープインパクト Essence of Dubai
17年 サトノアーサー 2 シクラメ500 1 ディープインパクト Redoute's Choice
16年 サトノダイヤモンド 1 500万下 1 ディープインパクト Orpen
15年 ルージュバック 1 百日草特500 1 マンハッタンカフェ Awesome Again
14年 バンドワゴン 2 エリカ賞500 1 ホワイトマズル Unbridled's Song
13年 リグヴェーダ 8 新馬 1 ディープインパクト Nureyev
12年 ワールドエース 1 若駒S 2 ディープインパクト Acatenango
11年 ウインバリアシオン 4 ラジオNIG3 4 ハーツクライ Storm Bird
10年 レーヴドリアン 2 福寿草特500 1 スペシャルウィーク Highest Honor
  • サンデーサイレンス系
  • ダンジグ系
  • ミスタープロスペクター系
  • ●表2〜5も同様に色分け。

2019/11/10 2016/2/7 京都11R きさらぎ賞(G3) 1着 9番 サトノダイヤモンド

表1は過去10年におけるきさらぎ賞1番人気馬の成績。2016年サトノダイヤモンド、15年ルージュバック、12年ワールドエースが勝利を飾っている。この3頭は冒頭で触れた馬たちで、後にクラシックで連対を果たした。2着馬は17年サトノアーサー、14年バンドワゴン、10年レーヴドリアンでこちらも3頭。これら連対馬6頭中5頭は前走1勝(500万)クラスのレースを勝利していた。

一方、4着以下に敗れた馬は4頭いる。その内2頭は前走新馬を勝ったばかりだった。残る2頭は前走重賞に出走し、4着以下に敗れていた。つまり重賞の実績は必須ではない。かといって、素質があっても1勝馬が簡単に通用するレースでもない。前走1勝(500万)クラス組が有利という傾向だ。

また、血統面でも興味深い傾向が出ている。種牡馬(父)はディープインパクトを中心にサンデーサイレンス系が大半を占めている。母父は横文字の英語馬名がズラリと並ぶ。案外見慣れた名前が多いものの、内国産馬や日本に輸入された外国馬の名前がない。これは大きな特徴だ。具体的な系統はRedoute's ChoiceとOrpenのダンジグ系と、Unbridled's Songのミスタープロスペクター系に注目してみたい。後ほど述べるその他の好走馬にも同系統が多いのだ。

■表2 きさらぎ賞の2番人気馬成績(過去10年)

馬名 着順 前走レース名 前着 種牡馬 母父馬
19年 アガラス 7 東京スポG3 2 ブラックタイド ブラックホーク
18年 グローリーヴェイズ 2 こうやま500 2 ディープインパクト スウェプトオーヴァーボード
17年 ダンビュライト 3 フューチG1 13 ルーラーシップ サンデーサイレンス
16年 ロイカバード 3 福寿草特500 1 ディープインパクト Jade Hunter
15年 ポルトドートウィユ 2 シクラメ500 1 ディープインパクト クロフネ
14年 トーセンスターダム 1 京都2歳 1 ディープインパクト エンドスウィープ
13年 ラストインパクト 6 エリカ賞500 2 ディープインパクト ティンバーカントリー
12年 ベールドインパクト 3 未勝利 1 ディープインパクト ドクターデヴィアス
11年 オルフェーヴル 3 シンザンG3 2 ステイゴールド メジロマックイーン
10年 ダイワバーバリアン 5 フューチG1 3 マンハッタンカフェ Kingmambo

表2はきさらぎ賞2番人気馬の成績(過去10年)。1着馬が1頭、2着馬が2頭、3着馬が4頭いる。複勝率は70%で、1番人気を上回る成績だ。前走レースの成績を見ると、旧京都2歳S(OP特別)や、シクラメンS・福寿草特別といった1勝クラスの勝ち馬が好成績を挙げている。前走新馬組はいないが、前走重賞の東スポ杯2歳Sや朝日杯フューチュリティSで好走した馬が負けている。このあたりの傾向は、1番人気馬のケースと似ている。

種牡馬を見ると、やはりサンデーサイレンス系が圧倒的に多く、中でもディープインパクトは産駒が6勝をマーク。母父はミスタープロスペクター系が非常に多い。17年のダンビュライトは父がミスタープロスペクター系で、母父がサンデーサイレンスという逆の配合だ。

■表3 きさらぎ賞の3番人気馬成績(過去10年)

馬名 着順 前走レース名 前着 種牡馬 母父馬
19年 ダノンチェイサー 1 こうやま500 1 ディープインパクト Rock of Gibraltar
18年 カツジ 5 デイリーG2 2 ディープインパクト ホワイトマズル
17年 プラチナヴォイス 4 京都2歳G3 6 エンパイアメーカー マンハッタンカフェ
16年 ロワアブソリュー 7 新馬 1 ゼンノロブロイ Souvenir Copy
15年 アッシュゴールド 3 フューチG1 8 ステイゴールド メジロマックイーン
14年 サトノルパン 6 未勝利 1 ディープインパクト ダンシングブレーヴ
13年 アドマイヤドバイ 3 福寿草特500 2 アドマイヤムーン サンデーサイレンス
12年 ジャスタウェイ 4 東京スポG3 4 ハーツクライ Wild Again
11年 トーセンラー 1 福寿草特500 3 ディープインパクト Lycius
10年 インペリアルマーチ 4 新馬 1 ネオユニヴァース ダンシングブレーヴ

表3はきさらぎ賞3番人気馬の成績(過去10年)。昨年の優勝馬ダノンチェイサーの名前がある。前走はこうやまき特別で1着。血統は父がディープインパクト、母父がダンジグ系のRock of Gibraltarという配合だ。11年1着のトーセンラーは前走福寿草特別3着。父はディープインパクトで、母父はミスタープロスペクター系のLycius。この配合はきさらぎ賞と相性がいい。

4着以下に敗れた馬を調べると、前走新馬を勝ったばかりのロワアブソリュー(16年)やインペリアルマーチ(10年)が残念な結果に終わった。前走重賞組ではカツジ(18年)やプラチナヴォイス(17年)、ジャスタウェイ(12年)が人気よりも走らなかった。血統的には感触が良さそうでも、前走1勝クラス組以外は割引が必要かもしれない。

■表4 きさらぎ賞を4番人気以下で好走した馬(過去10年)

馬名 着順 人気 前走レース名 前着 種牡馬 母父馬
19年 タガノディアマンテ 2 6 エリカ賞500 3 オルフェーヴル キングカメハメハ
19年 ランスオブプラーナ 3 7 なずな賞500 2 ケープブランコ マンハッタンカフェ
18年 サトノフェイバー 1 4 新馬 1 ゼンノロブロイ Distorted Humor
18年 ラセット 3 5 未勝利 1 モンテロッソ アグネスタキオン
17年 アメリカズカップ 1 6 フューチG1 9 マンハッタンカフェ Coronado's Quest
16年 レプランシュ 2 4 シクラメ500 1 ディープインパクト Fasliyev
14年 エイシンエルヴィン 3 6 未勝利 1 Shamardal Monsun
13年 タマモベストプレイ 1 6 シンザンG3 3 フジキセキ ノーザンテースト
12年 マズルファイヤー 2 5 未勝利 1 ホワイトマズル Saint Ballado
12年 ヒストリカル 2 4 福寿草特500 4 ディープインパクト ノーザンテースト
11年 リキサンマックス 2 8 未勝利 1 キングヘイロー テンビー
10年 ネオヴァンドーム 1 5 未勝利 1 ネオユニヴァース トニービン
10年 ステージプレゼンス 3 6 未勝利 1 アグネスタキオン Highest Honor

最後にきさらぎ賞を4番人気以下で好走した馬もチェックしておく。表4の通り、過去10年では13頭いる。出走頭数が少ないこともあり、二けた人気馬はいないが、伏兵馬の出番も十分あると言える。近年は母父ミスタープロスペクター系かサンデーサイレンス系の馬が食い込んでいる。前走成績は1勝クラスで好走していることが望ましい。一方、18年はサトノフェイバーが前走新馬戦1着、ラセットが前走未勝利戦1着という成績で好走した。10年〜14年にかけては前走未勝利1着馬が5頭も好走している。穴馬に関しては格よりも調子・勢いを重視して選んでみたいところだ。

【結論】
それでは今年のきさらぎ賞を展望する。出走予定馬は表5の通りだ。

■表5 今年のきさらぎ賞出走予定馬

馬名 前走レース名 前着 種牡馬 母父馬
アルジャンナ 東京スポG3 2 ディープインパクト Tiz Wonderful
ギベルティ 新馬 1 オルフェーヴル Dubai Millennium
クリノプレミアム 未勝利 1 オルフェーヴル Giant's Causeway
グランレイ フューチG1 3 ルーラーシップ ファルブラヴ
コルテジア シンザンG3 3 シンボリクリスエス ジャングルポケット
サイモンルモンド 未勝利 1 ダノンシャンティ サクラローレル
サトノゴールド 札幌2歳G3 2 ゴールドシップ Fusaichi Pegasus
ストーンリッジ 新馬 1 ディープインパクト フレンチデピュティ
デアリングタクト 新馬 1 エピファネイア キングカメハメハ
トゥルーヴィル 新馬 1 ディープインパクト Fasliyev

まず人気を推測すると、前走東京スポーツ杯2歳S2着のアルジャンナは上位人気が濃厚だろう。同レース優勝馬のコントレイルが次走ホープフルSを制していることも大きい。グランレイは前走朝日杯フューチュリティSで3着と好走。14番人気という超人気薄だったが、G1で好走したのは事実。この点が評価され、今回はある程度人気になりそうだ。そして、前走札幌2歳S2着のサトノゴールドや、前走シンザン記念3着のコルテジアも実績的には上位だ。ただ、きさらぎ賞は前走重賞組が不振。上位人気馬でも過信は禁物だ。血統面でもやや心配。アルジャンナは父ディープインパクトだが、母父はTiz Wonderfulというややマイナーな系統だ。サトノゴールドは父がゴールドシップで、母父がミスタープロスペクター系のFusaichi Pegasus。配合は本馬の感触が一番いい。

2019/12/22 中山5R 新馬戦 1着 2番 ギベルティ

その他の馬に目を向けると、なんと前走1勝クラス組がいない。これはかなりめずらしいケースであり、予想も難しくなってしまった。そこで、前走新馬を勝ったばかりだがギベルティはどうか。父がオルフェーヴルで、母父がミスタープロスペクター系のDubai Millennium。血統的にはサトノゴールドと同じぐらい感触がいい。仮に上位人気に支持されると逆に買いにくい感じもするが、注目してみたい。

ライタープロフィール

小田原智大(おだわら ともひろ)

1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。


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