データde出〜た
第1388回 春のG1へ向け好スタートを切る馬は? アメリカJCCを分析する
2020/1/23(木)
中山競馬場の芝2200mを舞台に行われるアメリカジョッキークラブC(以下アメリカJCC)。以前から春の天皇賞を目指す実力馬が多く出走しており、過去10年では2015年のゴールドシップ(本競走7着)、そして昨年のフィエールマン(同2着)が天皇賞を制した。また、2017年には距離や時期がより近い大阪杯がG1に昇格。以降の3年ではまだアメリカJCC出走馬が大阪杯で馬券に絡んだ例はないが、今後は活躍する馬も出現するに違いない。今回は、そんなアメリカJCCの過去の傾向を見てみたい。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
■表1 人気別成績
人気 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 |
1 | 2-3-0-5/10 | 20.0% | 50.0% | 50.0% | 33% | 58% |
2 | 3-1-2-4/10 | 30.0% | 40.0% | 60.0% | 146% | 120% |
3 | 1-1-3-5/10 | 10.0% | 20.0% | 50.0% | 60% | 100% |
4 | 1-0-1-8/10 | 10.0% | 10.0% | 20.0% | 138% | 62% |
5 | 1-1-1-7/10 | 10.0% | 20.0% | 30.0% | 90% | 96% |
6 | 0-1-1-8/10 | 0.0% | 10.0% | 20.0% | 0% | 82% |
7 | 2-1-1-6/10 | 20.0% | 30.0% | 40.0% | 532% | 246% |
8 | 0-0-1-9/10 | 0.0% | 0.0% | 10.0% | 0% | 68% |
9 | 0-1-0-9/10 | 0.0% | 10.0% | 10.0% | 0% | 55% |
10 | 0-0-0-10/10 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
11〜 | 0-1-0-34/35 | 0.0% | 2.9% | 2.9% | 0% | 25% |
過去10年、1番人気は【2.3.0.5】だが、優勝馬2頭は2011年と2012年。ここ3年連続で2着こそ確保しているものの、1着候補としてはやや不安の残る成績だ。続く2、3番人気は計【4.2.5.9】で複勝率55.0%。このうち単勝4.6〜6.5倍の馬は【3.2.1.1】で複勝率85.7%を記録しており、該当馬がいればぜひ注目したい。ほかに7番人気が【2.1.1.6】で複勝率40.0%などの好成績を残している。
■表2 年齢別成績
年齢 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 | 4番人気以下 |
4歳 | 1-4-2-12/19 | 5.3% | 26.3% | 36.8% | 20% | 63% | 0-0-1-5/6 |
5歳 | 4-0-3-17/24 | 16.7% | 16.7% | 29.2% | 100% | 56% | 1-0-2-12/15 |
6歳 | 3-1-2-27/33 | 9.1% | 12.1% | 18.2% | 175% | 86% | 2-1-1-26/30 |
7歳 | 2-2-1-22/27 | 7.4% | 14.8% | 18.5% | 51% | 80% | 1-1-0-21/23 |
8歳 | 0-3-2-14/19 | 0.0% | 15.8% | 26.3% | 0% | 114% | 0-3-1-14/18 |
9歳以上 | 0-0-0-13/13 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | 0-0-0-13/13 |
年齢別の連対率・複勝率では4歳馬が一歩リードしているが、優勝馬は一昨年のダンビュライト1頭にとどまるほか、3着以内に入った7頭中6頭は3番人気以内だった。勝つ確率や配当妙味重視なら、5歳以上の馬のほうがおもしろい。
■表3 枠番別成績
枠番 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 | 1〜5番人気 | 同連対率 |
1枠 | 0-1-2-11/14 | 0.0% | 7.1% | 21.4% | 0% | 105% | 0-0-1-5/6 | 0.0% |
2枠 | 1-0-2-11/14 | 7.1% | 7.1% | 21.4% | 35% | 40% | 1-0-2-2/5 | 20.0% |
3枠 | 2-1-0-11/14 | 14.3% | 21.4% | 21.4% | 52% | 30% | 2-1-0-3/6 | 50.0% |
4枠 | 1-2-2-10/15 | 6.7% | 20.0% | 33.3% | 98% | 68% | 0-2-1-4/7 | 28.6% |
5枠 | 1-2-1-12/16 | 6.3% | 18.8% | 25.0% | 35% | 64% | 1-2-1-6/10 | 30.0% |
6枠 | 4-2-0-14/20 | 20.0% | 30.0% | 30.0% | 143% | 86% | 4-1-0-2/7 | 71.4% |
7枠 | 1-1-2-16/20 | 5.0% | 10.0% | 20.0% | 192% | 132% | 0-0-1-5/6 | 0.0% |
8枠 | 0-1-1-20/22 | 0.0% | 4.5% | 9.1% | 0% | 40% | 0-0-1-2/3 | 0.0% |
枠番別の成績は、中枠優勢の傾向だ。中でも6枠を引いた馬が5番人気以内に支持されると、【4.1.0.2】で連対率71.4%と抜群の安定感を示している。対して1、7、8枠は5番人気以内の計15頭がすべて3着以下に敗退するなど、内や外を引いた馬は特に連対候補としては厳しくなる。
■表4 前走クラス・着順別成績(本年登録馬の該当クラスのみ)
前走 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 | |
OPEN特別 | 1〜2着 | 0-2-0-4/6 | 0.0% | 33.3% | 33.3% | 0% | 58% |
3〜5着 | 0-0-0-4/4 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | |
6〜9着 | 0-0-1-9/10 | 0.0% | 0.0% | 10.0% | 0% | 36% | |
10着以下 | 0-0-0-5/5 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | |
中央G3 | 1〜2着 | 0-2-2-5/9 | 0.0% | 22.2% | 44.4% | 0% | 191% |
3〜5着 | 0-0-1-9/10 | 0.0% | 0.0% | 10.0% | 0% | 34% | |
6〜9着 | 0-1-0-4/5 | 0.0% | 20.0% | 20.0% | 0% | 180% | |
10着以下 | 0-1-1-11/13 | 0.0% | 7.7% | 15.4% | 0% | 87% | |
中央G1 | 1着 | 0-1-0-0/1 | 0.0% | 100.0% | 100.0% | 0% | 110% |
2〜3着 | 0-0-0-4/4 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | |
4〜5着 | 3-0-0-3/6 | 50.0% | 50.0% | 50.0% | 300% | 93% | |
6〜9着 | 1-2-1-6/10 | 10.0% | 30.0% | 40.0% | 385% | 142% | |
10着以下 | 2-1-1-8/12 | 16.7% | 25.0% | 33.3% | 122% | 96% |
本年の登録馬は前走でオープン特別、中央G3、中央G1、海外G1(過去10年に該当馬なし)のいずれかに出走していた。これまでの前走クラス・着順別成績を見ると、オープン特別組とG3組は前走連対馬が上々の成績。前走中央G1組は掲示板外からの巻き返しも数多い。また、この中で優勝馬を出しているのは中央G1組のみである(ほかにG2組3勝、条件戦組1勝)。
■表5 前走G1からの3着以内好走馬
年 | 馬名 | 人気 | 着順 | 前走 | 人気 | 着順 | 前年の主な実績 |
2010 | ネヴァブション | 5 | 1 | 有馬記念(前年) | 13 | 12 | アメリカJCC1着 |
シャドウゲイト | 9 | 2 | 16 | 9 | 金鯱賞2着 | ||
2011 | トーセンジョーダン | 1 | 1 | 7 | 5 | アルゼンチン共和国杯1着 | |
ネヴァブション | 3 | 3 | 12 | 8 | アメリカJCC1着 | ||
2012 | ルーラーシップ | 1 | 1 | 11 | 4 | 金鯱賞、日経新春杯1着 | |
2014 | ヴェルデグリーン | 2 | 1 | 8 | 10 | オールカマー1着 | |
2013 | トランスワープ | 5 | 2 | 天皇賞(秋) | 9 | 17 | 新潟記念、函館記念など4勝 |
2016 | ショウナンバッハ | 7 | 3 | ジャパンC | 15 | 12 | 条件戦4勝 |
2017 | タンタアレグリア | 7 | 1 | 天皇賞(春) | 10 | 4 | 阪神大賞典2着 |
2018 | ミッキースワロー | 1 | 2 | 菊花賞 | 3 | 6 | セントライト記念1着 |
2019 | シャケトラ | 7 | 1 | 有馬記念(前々年) | 7 | 6 | 不出走 |
フィエールマン | 1 | 2 | 菊花賞 | 7 | 1 | 菊花賞1着 |
前走中央G1組の好走馬は表5の12頭だ。表4の通り前走・G1での着順はまったく参考にならず、ここでは前年の成績に注目したい。1年以上の休養明けで勝利を飾った昨年のシャケトラを除く11頭中9頭には前年のG2以上で連対実績があり、残る2頭は1年で4勝を挙げていた。このうち有馬記念(前年)組6頭はすべて前者、G2以上での連対を果たしている。
■表6 前走オープン特別・中央G3からの3着以内好走馬
年 | 馬名 | 人気 | 着順 | 前走 | 人気 | 着順 | 主な芝2000m実績 |
2010 | トウショウシロッコ | 3 | 3 | 中山金杯 | 5 | 2 | 福島記念2着 |
2011 | ミヤビランベリ | 6 | 2 | 中日新聞杯 | 8 | 18 | 七夕賞連覇 |
2012 | ナカヤマナイト | 2 | 2 | ディセンバーS | 2 | 1 | ホープフルS(OP)2着 |
ゲシュタルト | 4 | 3 | 中日新聞杯 | 4 | 2 | 中日新聞杯2着 | |
2014 | サクラアルディート | 11 | 2 | 中山金杯 | 4 | 9 | 【2.1.0.1】 |
フェイムゲーム | 6 | 3 | ディセンバーS | 8 | 6 | 京成杯1着 | |
2015 | ミトラ | 7 | 2 | 福島記念 | 6 | 1 | 福島記念1着 |
2016 | スーパームーン | 3 | 2 | ディセンバーS | 1 | 2 | ディセンバーS2着 |
2017 | ゼーヴィント | 1 | 2 | 福島記念 | 1 | 2 | 福島記念2着 |
2018 | マイネルミラノ | 8 | 3 | 中山金杯 | 12 | 11 | 函館記念1着 |
2019 | メートルダール | 5 | 3 | 中日新聞杯 | 3 | 5 | 中日新聞杯1着 |
続いて表6は、前走オープン特別・中央G3からの好走馬11頭である。こちらの前走はすべて11月以降の芝1800〜2000m戦。また、アメリカJCCより200m短い芝2000mのG3で連対した実績を持つ馬が多いのも特徴で、11頭中8頭がこれに該当していた。中にはミヤビランベリ(アルゼンチン共和国杯、目黒記念)、フェイムゲーム(後に天皇賞・春2着、ダイヤモンドS3勝など)といった長距離型の馬も見られるが、いずれもこのレースより前に芝2000mのG3を制していた。また、一昨年3着のマイネルミラノはG3【1.1.2.12】に対しG2【0.0.0.5】、昨年3着のメートルダールはG3【1.1.3.2】・G2以上【0.0.0.4】と、実績からはG2では苦しいと思われるような馬にも警戒が必要だ。
【結論】
過去10年、前走オープン特別組や中央G3組には勝利がなく、今年は前走中央G1組から1着候補を選びたい。その筆頭格はスティッフェリオ。前走・有馬記念はリスグラシューに3.5秒も離された13着大敗を喫したが、これは厳しい展開の中でも積極的に前を追って勝負に出た結果。表4、5にある通り、前走がG1ならその着順は不問だ。有馬記念(前年)組の好走馬6頭と同じく「前年のG2連対」(オールカマー1着)があり、同コースの今回は大きく巻き返せそうだ。
相手候補はまずラストドラフト。本馬の前走・中日新聞杯が12月に行われたのは過去10年で5回しかないが、それでも3着以内馬3頭を出している。G3組は前走連対馬が複勝率44.4%の好成績(表4)。ラストドラフトは同レース2着のほか、昨年1月には京成杯も制し、この組の多くの好走馬に共通する「芝2000mG3連対」もクリアする(表6)。ただ、4歳馬のため当日4番人気以下ならやや割引が必要だろう(表2)。
その他では、一昨年の2着馬・ミッキースワロー。前走・福島記念で連対に届かなかった(3着)ためラストドラフトには及ばない評価になるものの、こちらも昨年の七夕賞1着、新潟大賞典2着と、芝2000mのG3連対実績馬だ。
なお、一昨年の有馬記念馬・ブラストワンピースは、過去10年に出走例がない帰国初戦。JRA-VAN Data Lab.でデータが提供されている1986年以降でも、1996年のスキーキャプテン(ケンタッキーダービー14着以来、8カ月半ぶり)が2番人気で8着に敗れた1例しかない。中央G1組(表5)の傾向を当てはめれば「前年のG2連対」(札幌記念優勝)を満たすが、単複の回収率が低く、近年は勝ち切れない1番人気(表1)の支持が予想されるだけに、強くは推しづらい印象だ。
ライタープロフィール
浅田知広(あさだ ともひろ)
1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。