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第1387回 降級制度廃止の恩恵を受けたのは3歳馬か?

2020/1/20(月)

夏競馬を迎えると、4歳馬の多くが春競馬より1〜2クラス下のレースに出走できた「降級制度」。この制度が昨年から廃止され、一度クラスが上がれば二度と降級しないという、わかりやすいレース体系になった。これに伴い、以前より不利になったのは4歳馬で間違いなさそうだが、恩恵をもっとも受けると言われていた3歳馬の成績は本当に向上したのか、データを調べてみたい。データの分析には、JRA-VAN DataLab.TARGET frontier JVを利用し、2016年以降の「3歳以上(夏〜秋競馬)」平地競走を対象とした。

■表1 4歳馬のクラス別成績推移(3歳以上・平地戦)

クラス 着別度数 勝率 連対率 3着内率 単回収 複回収
1勝(500万) 2019年 116-130-144-1733/2123 5.5% 11.6% 18.4% 59% 80%
2018年 248-238-248-2445/3179 7.8% 15.3% 23.1% 59% 79%
2017年 227-213-219-2507/3166 7.2% 13.9% 20.8% 69% 68%
2016年 244-257-229-2386/3116 7.8% 16.1% 23.4% 82% 75%
2勝(1000万) 2019年 80-88-84-999/1251 6.4% 13.4% 20.1% 68% 74%
2018年 102-100-98-596/896 11.4% 22.5% 33.5% 64% 80%
2017年 102-89-87-559/837 12.2% 22.8% 33.2% 90% 83%
2016年 93-85-87-668/933 10.0% 19.1% 28.4% 68% 75%
3勝(1600万) 2019年 47-34-33-305/419 11.2% 19.3% 27.2% 98% 84%
2018年 39-25-27-143/234 16.7% 27.4% 38.9% 84% 77%
2017年 39-41-28-170/278 14.0% 28.8% 38.8% 62% 78%
2016年 41-31-32-157/261 15.7% 27.6% 39.8% 101% 84%
オープン 2019年 36-33-31-234/334 10.8% 20.7% 29.9% 69% 79%
2018年 25-20-21-132/198 12.6% 22.7% 33.3% 66% 70%
2017年 15-18-13-131/177 8.5% 18.6% 26.0% 46% 64%
2016年 27-20-24-126/197 13.7% 23.9% 36.0% 97% 93%

2019/10/5 京都11R 長岡京ステークス 1着 10番 サウンドキアラ(牝4歳)

まずは夏競馬での降級がなくなった、4歳馬の成績を見てみたい。昨年は1勝クラスから3勝クラスまで、勝率、連対率、3着内率のすべてが2016年以降で最低の数字と、降級制度廃止の影響が非常に大きく出ている。ただ、その内容はクラスによってかなり違いがあるようだ。
実際にレースを見て4歳馬の成績低下を実感しやすかったのは、おそらく1勝クラスだろう。過去3年に比べ勝利数はほぼ半減しており、「4歳馬が勝ちづらくなった」という印象が強いはずだ。ただ、出走数も3分の2程度になっているため、勝率〜3着内率にさほど大きな低下は見られない
明らかに成績が「悪化した」と言えるのは2勝クラスだ。出走数が2018年以前より1.4倍前後に増えていながら勝利数や好走馬数は減少し、その結果、好走確率の大幅な低下を招いた。以前の1000万条件は、500万条件に比べると4歳の好走確率がかなり高かったが、昨年の2勝クラスは1勝クラス並みの成績にまで落ちている。
一方、1勝クラスとは逆の意味で「実感」に好走確率が伴っていないのが3勝クラスである。一昨年の1600万条件から勝ち鞍を8つ上積みするなど好走馬数は増えているが、出走数も大幅に増加したため、好走確率は大きく低下。3着内率では前年比で10ポイント以上のマイナスになった。ただ、単複の回収率は上々なため「3勝クラスでは4歳馬がよく来るようになった」という印象で予想しても、馬券成績に悪影響はなかったと思われる。
そしてオープン(重賞含む)は3勝クラス同様に好走馬数が増加し、こちらは好走確率の低下もごくわずか。4歳馬の成績が今ひとつだった2017年比ではプラスになっている。オープンには、仮に降級制度が存続していてもその対象にならないだけの賞金を持つ馬が在籍するほか、4歳春までにオープン入りできるほどの馬なら降級しなくても十分に強かった、という面もあるだろう。

■表2 3歳馬のクラス別成績推移(3歳以上・平地戦)

クラス 着別度数 勝率 連対率 3着内率 単回収 複回収
1勝(500万) 2019年 334-277-261-2422/3294 10.1% 18.5% 26.5% 73% 72%
2018年 260-233-231-2502/3226 8.1% 15.3% 22.4% 66% 68%
2017年 271-250-249-2600/3370 8.0% 15.5% 22.8% 82% 81%
2016年 247-229-233-2670/3379 7.3% 14.1% 21.0% 82% 75%
2勝(1000万) 2019年 116-72-81-472/741 15.7% 25.4% 36.3% 70% 77%
2018年 83-78-60-437/658 12.6% 24.5% 33.6% 101% 83%
2017年 83-67-72-501/723 11.5% 20.7% 30.7% 74% 74%
2016年 90-86-56-482/714 12.6% 24.6% 32.5% 73% 74%
3勝(1600万) 2019年 16-16-18-101/151 10.6% 21.2% 33.1% 51% 72%
2018年 16-19-10-51/96 16.7% 36.5% 46.9% 57% 91%
2017年 12-9-8-67/96 12.5% 21.9% 30.2% 66% 68%
2016年 17-10-13-92/132 12.9% 20.5% 30.3% 100% 90%
オープン 2019年 11-12-6-74/103 10.7% 22.3% 28.2% 52% 63%
2018年 17-14-8-76/115 14.8% 27.0% 33.9% 89% 87%
2017年 15-6-10-81/112 13.4% 18.8% 27.7% 75% 63%
2016年 9-10-6-67/92 9.8% 20.7% 27.2% 110% 81%

2019/6/1 東京9R 国分寺特別 1着 8番 ロードマイウェイ(牡3歳)

続いて、降級制度廃止の恩恵が大きいと予想された3歳馬の成績を見てみよう。そんな予想通りに3歳馬が成績をアップしてきたのは1勝クラスと2勝クラスだ。1勝クラスの出走数は例年並み、2勝クラスは微増となったが、どちらも勝利数は大幅に増加した。特に1勝クラスの74勝増が目立つが、率にすると前年比で128%。33勝増の2勝クラスは同140%と、これを上回っている。また、勝率〜3着内率も1、2勝クラスともに2016年以降では最高となった。
一方、3勝クラスとオープンについては、ほぼ例年並みになった。前年比で見てしまうと好走確率の低下が目立つが、これは2018年の成績が良すぎたため。2016〜17年との比較では、さほど大きな差は見られない。

■表3 5歳馬のクラス別成績推移(3歳以上・平地戦)

クラス 着別度数 勝率 連対率 3着内率 単回収 複回収
1勝(500万) 2019年 61-94-97-890/1142 5.3% 13.6% 22.1% 61% 80%
2018年 43-73-59-914/1089 3.9% 10.7% 16.1% 56% 68%
2017年 48-70-70-996/1184 4.1% 10.0% 15.9% 46% 65%
2016年 49-51-72-995/1167 4.2% 8.6% 14.7% 77% 69%
2勝(1000万) 2019年 60-80-69-772/981 6.1% 14.3% 21.3% 95% 90%
2018年 35-43-56-807/941 3.7% 8.3% 14.2% 82% 62%
2017年 40-63-62-813/978 4.1% 10.5% 16.9% 68% 70%
2016年 39-51-72-909/1071 3.6% 8.4% 15.1% 66% 74%
3勝(1600万) 2019年 30-32-35-336/433 6.9% 14.3% 22.4% 108% 92%
2018年 32-39-40-317/428 7.5% 16.6% 25.9% 81% 93%
2017年 32-23-32-309/396 8.1% 13.9% 22.0% 121% 81%
2016年 28-34-28-339/429 6.5% 14.5% 21.0% 70% 85%
オープン 2019年 28-24-32-280/364 7.7% 14.3% 23.1% 59% 76%
2018年 32-32-30-290/384 8.3% 16.7% 24.5% 63% 79%
2017年 37-32-40-276/385 9.6% 17.9% 28.3% 68% 90%
2016年 38-32-28-270/368 10.3% 19.0% 26.6% 97% 74%

表2を見ると「やはり3歳馬が良かったか」と思えるが、その3歳馬以上に降級制度廃止の恩恵を受けたとも言えるのが、表3の5歳馬だ。3歳馬同様に1、2勝クラスで成績を伸ばし、3勝クラス〜オープンは例年並みとなっている。その勝利数は1勝クラスが前年比142%の61勝、2勝クラスが同171%の60勝で、増加率はそれぞれ3歳を上回る。また、1勝クラスの3着内率で前年比6ポイント増になるなど、好走確率もかなり高めてきた。もともとの好走確率が低く、好走馬数も3歳馬に比べ少ないため陰に隠れがちではあるが、「実は5歳馬のほうが……」と言っても差し支えない結果だ。

■表4 6歳以上馬のクラス別成績推移(3歳以上・平地戦)

クラス 着別度数 勝率 連対率 3着内率 単回収 複回収
1勝(500万) 2019年 10-20-21-366/417 2.4% 7.2% 12.2% 33% 58%
2018年 5-8-19-324/356 1.4% 3.7% 9.0% 32% 41%
2017年 8-20-16-271/315 2.5% 8.9% 14.0% 50% 65%
2016年 5-9-12-250/276 1.8% 5.1% 9.4% 26% 45%
2勝(1000万) 2019年 10-27-32-489/558 1.8% 6.6% 12.4% 29% 55%
2018年 19-20-24-558/621 3.1% 6.3% 10.1% 91% 55%
2017年 15-21-19-604/659 2.3% 5.5% 8.3% 70% 59%
2016年 14-15-22-525/576 2.4% 5.0% 8.9% 74% 72%
3勝(1600万) 2019年 8-19-15-304/346 2.3% 7.8% 12.1% 59% 76%
2018年 9-13-19-396/437 2.1% 5.0% 9.4% 59% 52%
2017年 12-22-27-443/504 2.4% 6.7% 12.1% 51% 72%
2016年 9-21-21-384/435 2.1% 6.9% 11.7% 39% 63%
オープン 2019年 17-23-23-509/572 3.0% 7.0% 11.0% 60% 59%
2018年 17-25-32-522/596 2.9% 7.0% 12.4% 57% 65%
2017年 22-33-27-528/610 3.6% 9.0% 13.4% 58% 58%
2016年 15-27-33-532/607 2.5% 6.9% 12.4% 36% 53%

最後に6歳以上の成績も見ておきたい。全体的に1着数よりも2着数や3着数が多く「勝ち切れない」印象で、降級制度が廃止された昨年もその傾向は同様だ。また、1、2勝クラスで連対率や3着内率がやや向上したように見えるものの、出走数、好走馬数自体がさほど多くないため、レースや馬券成績に与えた影響は軽微だったと言えるだろう。

以上、降級制度廃止の影響がどんな形で出ているのか、年齢別に探ってみた。1、2勝クラスへの影響が特に大きく、3歳馬はもちろん、5歳馬も以前に比べればかなり成績を上げていた。また、降級しなくなった4歳馬の成績変化は、クラスによって大きな違いが出ている。特別レースで年齢別の過去の傾向を探る際には、その数字を鵜呑みにするのではなく、これらを踏まえた上で予想の参考としたい。また、年が明けてそれぞれ年齢をひとつ重ねている点にはご注意いただきたい。

ライタープロフィール

浅田知広(あさだ ともひろ)

1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。


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