順位 | 競走馬名 | 性別 | 購買価格(万円) | 父 | 母 | せり年度 |
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1 | ディナシー | 牝 | 60,000 | キングカメハメハ | トゥザヴィクトリー | 2006年・当歳 |
2 | アドマイヤビルゴ | 牡 | 58,000 | ディープインパクト | イルーシヴウェーヴ | 2017年・当歳 |
3 | コンヴィクションUの2023 | 牡 | 52,000 | コントレイル | コンヴィクションU | 2023年・当歳 |
4 | ショウナンアデイブ | 牡 | 51,000 | ディープインパクト | シーヴ | 2020年・1歳 |
5 | ザサンデーフサイチ | 牡 | 49,000 | ダンスインザダーク | エアグルーヴ | 2004年・当歳 |
6 | リアド | 牡 | 47,000 | ディープインパクト | タイタンクイーン | 2019年・当歳 |
7 | ダノンエアズロック | 牡 | 45,000 | モーリス | モシーン | 2022年・1歳 |
8 | ホウオウプロサンゲ | 牡 | 41,000 | キズナ | セルキス | 2021年・当歳 |
9 | ダノンマイソウル | 牡 | 40,000 | ディープインパクト | フォエヴァーダーリング | 2020年・1歳 |
10 | ホウオウリュウセイ | 牡 | 38,000 | ハーツクライ | ヒルダズパッション | 2020年・当歳 |
ファディラーの2023 | 牡 | キタサンブラック | ファディラー | 2023年・当歳 | ||
12 | ダブルアンコール | 牝 | 37,000 | ディープインパクト | ドナブリーニ | 2017年・当歳 |
ダノンモンブラン | 牡 | ロードカナロア | ヤンキーローズ | 2021年・当歳 |
セレクトセール史上、いや、日本の競走馬市場において最高額(6億円)の取引馬となったのが、トゥザヴィクトリーの2006。後にディナシーという馬名が付けられるが、この馬名でレースに出走することはなかった。
ディナシーがこれだけの高い評価となったのは、父キングカメハメハ×母トゥザヴィクトリーという血統背景に加えて、ディナシーが牝馬だったことも要因のひとつと考えられる。
一般的に競走馬市場は、競走成績で優秀な成績を残しやすい牡馬が高い評価を集める傾向にある。ただ、引退後の評価はまた別であり、牝馬は繁殖牝馬セールなどにおいて、購入価格の何倍の評価どころか、海外の繁殖牝馬セールにおいては、10億円を超えるような評価も与えられている。
ディナシーもまた、競走馬としての活躍だけでなく、繁殖入りした先までを見越しての評価額とするのなら、6億円という金額も決して高くはないと思われたに違いない。
日本の競走馬市場において、史上2位となる5億8000万円で取引されたのがアドマイヤビルゴである。
父はディープインパクトで、母は仏1000ギニー(G1)の勝ち馬イルーシヴウェーヴ。日仏のトップホースが配合されたという血統背景もさることながら、さらに評価を高めたのは、現役時の父を彷彿とさせるような、均整のとれた馬体である。
その前年(2016年)の当歳セッションにも、父ディープインパクト×母イルーシヴウェーヴの牡馬(競走馬名サトノソロモン)が上場されており、その時はマルペンサの2016(競走馬名サトノジェネシス)と共に、この年の当歳セッションにおける最高額馬(2億8000万円)になっている。
その兄を見ていたバイヤーから、さらに高い評価を得ていたアドマイヤビルゴは、1億円の一声を鑑定人が発するや否や、1000万円単位で電光掲示板の数字が書き換わっていく。その後もスポッターからのコールが続き、5億8000万円でハンマーが落ちた時には、会場内から拍手が沸き起こった。
セレクトセール2023の当歳セッションに上場された、コントレイルの初年度産駒は20頭。その全てが落札されただけでなく、1頭あたりの平均落札額は1億2860万円という驚異的な数字を記録した。
その平均価格を大きく引き上げたと言えるのが、コンヴィクションUの2023と言えよう。アルゼンチンでG1勝ち(フィルベルトレレナ大賞典・芝2200m)のある母の血統背景と、産駒に共通する見栄えの良さも相まって、セリの朝に行われた展示比較でも多くの購買関係者を集めていた。
そのコンヴィクションUの2023に、5億2000万円という最も高い評価を送ったのが、父の生産牧場である(株)ノースヒルズだった。前田幸治代表からは、
「コントレイル産駒の中で一番いい馬」
との最高の賛辞を送られていただけでなく、コントレイルの主戦騎手だった福永祐一調教師からも、
「コントレイルと共通する品の良さと、バランスの良さを感じています」
と長所が語られていた。2024年開業予定の福永祐一厩舎に預託される予定だが、コンヴィクションUの2023は、前田オーナーからの「最大の開業祝い」ともなった。
2020年のセレクトセールは、1歳セッション、当歳セッションと連日に渡って、母シーヴの産駒が上場された。
初日の1歳セッションの上場馬となったのが、シーヴの2019こと後のショウナンアデイブ。半姉に当たる Cathryn Sophiaはケンタッキーオークス(米G1)の優勝馬。そこに、前年(2019年)に死亡したディープインパクト産駒という希少性も相まって、せり開始前の展示から多くの購買関係者を集めていた。
最初の一声から1億円を超えたせりは、国内の1歳市場では最高額となる5億1000万円で落札。購入した国本哲秀氏はせりの後の会見において、「10億まで降りる気はなかった」 とショウナンアデイブを必ず手に入れたかったという、強い意気込みを語っていた。
翌日の当歳セッションに上場されたシーヴの2020(牡、父ハーツクライ)も2億1000万円で落札されており、シーヴの産駒は2日間で計7億2000万円の評価がされたことになる。
馬名の由来となっているのは、日曜日と冠名の組み合わせ。また、日曜日に放送されていた情報番組からもインスパイアされたと言われているのが、ザサンデーフサイチだ。
注目を集めたのはその馬名だけではない。父ダンスインザダーク、母エアグルーヴという良血馬であり、しかも、この時の落札額となる4億9000万円は当時の国内競走馬市場における最高額。その上、落札したのはセレクトセールの黎明期から注目を集めてきた関口房朗氏だった。
多くのメディアがザサンデーフサイチの動向だけでなく、関口氏の言動も追いかける中、2006年10月の東京開催(芝1600m)でデビューを迎える。単勝オッズ1.3倍という圧倒的な支持を集めるも、その人気に応えられず3着に敗退。しかも、レース後に骨折が判明して休養を余儀なくされる。
復帰初戦は2着に敗れて、続く3歳未勝利(芝2000m)を勝ち上がったザサンデーフサイチであるが、500万下(現1勝クラス)で8着に敗れた後に、再度骨折が判明。その後は5歳時に500万下(現1勝クラス)と紫野特別を勝利すると、なんと11歳まで現役生活を続け、通算41戦3勝の競走成績を残している。
引退後はその良血が評価される形で、2015年から優駿スタリオンステーションにてスタッドイン。決して多くはない産駒の中から、エムワンハルコが盛岡の芝重賞であるサファイア賞を優勝した。
母のタイタンクイーンは、産駒の中から3頭の重賞勝ち馬(Renee's Titan、Fashion Alert、ストロングタイタン)を輩出。そのストロングタイタンに加えて、ミラアイトーン、ギルデッドミラーと、日本でも3頭のオープン馬を送り出している。
その母にディープインパクトが配合されて、セレクトセール2019の当歳セッションに上場されてきたのがリアドだ。
この年は種付けシーズン早々にディープインパクトが種付けを中止し、同じ年の7月に死亡したことで、この配合馬(父ディープインパクト×母タイタンクイーン)はリアドが最初で最後となった。
4億7000万円で落札したのは近藤利一氏。この評価額は前日の1歳セッションの最高額馬となったミュージカルウェイの2018(競走馬名ザレストノーウェア)の3億6000万円を超える評価額であるが、共にディープインパクト産駒であり、2頭そろって近藤利一氏が落札している(近藤氏が亡くなったあと、大塚亮一氏に名義が変更)。
注記:購買価格は税抜金額
注記:2022年7月12日時点での情報を基に作成
ライタープロフィール
北海道在住の“馬産地ライター”として、豊富な取材をもとに各種競馬雑誌で活躍中。