セレクトセール 2021
セレクトセールのみどころ
1998年に始まったセレクトセールは、大種牡馬サンデーサイレンスと、その第一後継種牡馬たるディープインパクトの産駒たちと、歩みを共にしてきた。
上場番号1番は、ゴーマギーゴーの2020。本年の1歳馬がラストクロップとなるディープインパクト産駒が、せりの歴史への感謝や尊敬の意味も込めて、オープニングにコンニチハ。そして、248番のディープインパクト×スイープトウショウでサヨウナラ。せりの来し方、そして行く末などを思う、感慨深い番号に配置してきたなぁ。
なんて、24回目となる「セレクトセール2021」に上場されたディープ産駒は、前記した1番と248番のほかに、52番のワッツダチャンセズの2020、130番のジュエルメーカーの2020、の合計4頭だが、ディープ産駒が不在となる当歳セッションは、落札価格等々、どのような取引となるのだろうか。
ちょっとばかり大雑把かもしれないが、昨年の1歳セッションと当歳セッションの価格比較を、ディープ産駒の数などを考慮して振り返ってみると、今年のせりのイメージがわいてくるかもしれない。
【セレクトセール2020の平均落札価格(税抜き)】
・1歳セッション
牡馬 53,195,652円
牝馬 33,923,077円
合計 45,537,118円
・当歳セッション
牡馬 46,152,672円
牝馬 31,763,889円
合計 41,049,261円
昨年の1歳セッションには、ディープインパクト産駒が13頭上場。最高価格となったのはシーヴの2019で、落札価格は5億1000万円。1億円以上の落札馬は18頭いたが、そのうち9頭がディープ産駒。1歳セッション全体での牡馬の平均価格は5319万5652円、牝馬は3392万3077円、牡牝合計の平均価格は4553万7118円だった。
翌日の当歳セッションは、ディープインパクト産駒が0頭。最高価格はヒルダズパッションの2020(父ハーツクライ)の3億8000万円で、1億円以上の馬は11頭に減少。牡馬の平均価格は4615万2672円(前日の1歳セッションから約700万円の減少)、牝馬は3176万3889円(約200万円の減少)、牡牝合計は4104万9261円(約450万円の減少)だった。
せりは、実際にふたを開けてみないことにはわからない部分も多いけれど、ディープ不在となるセレクトセールは、価格等々、昨年の当歳セッションのアレコレがモデルとなるのかもしれない。
7月12日(月)に行われる「セレクトセール2021/1歳セッション」には、ディープインパクト、キングカメハメハとともに、日本の競馬の柱となったハーツクライが健在で、その産駒は20頭の上場がある。
続いて、ロードカナロア、ドゥラメンテ、そして皐月賞馬エフフォーリアを送り出したエピファネイア、といった次代のリーディング種牡馬予備軍たちがスタンバイ。今年の1歳世代は、従来はディープ(もしくはキングカメハメハ)にあてがわれていたエース級の繁殖牝馬が配合相手となり、産駒たちは総じて、数段階パワーアップが見込める。高額取引馬も、この3頭の種牡馬が軸となって展開する可能性が高い。
1歳世代ではほかに、キズナ、ハービンジャーも質がアップ。ルーラーシップ、ダイワメジャーは、キャリアを重ね、ある程度計算できる種牡馬になっているし、ミッキーアイルのスピードに注目するバイヤーもいるだろう。
今年の2歳世代がファーストクロップとなるドレフォンは、6月の東京開催でハイアムズビーチ(母ユキチャン)が、ソツなく新馬勝ちを決めた。1歳世代も粒がそろっており、支持基盤が広そうだ。キタサンブラック、イスラボニータ、ロゴタイプも、産駒が続々とデビューを果たし、その特徴が明らかになろうとしている。
1歳世代の新種牡馬で人気を集めるのは、ディープ産駒のサトノダイヤモンドだろうか。サトノダイヤモンドのふくよかなシルエットと、スケールの大きさを受け継いだ仔が多い。同じくディープの血を受け継ぐリアルスティールの産駒は、首差し、四肢、背中の造りが、2000m前後の距離にドンピシャ。スラリとした好馬体の仔が居並ぶ。当歳時に比べて、1歳では馬体のラインがクリアになり、成長力と平均点の高さに、良い意味で驚いています。
マインドユアビスケッツ産駒は、総じてドレフォン以上の短距離型のマッチョ。ダートのスプリント戦の勢力図を一気に塗り替える存在になるかもしれない。
数は少ないが、変わり種はSaxon Warriorだろうか。英2000ギニーを勝ったディープの息子。同レースの勝利の価値は、日本における皐月賞と同等かそれ以上。種牡馬としての評価も同様に考えていい。スラリとした手先の長さや肌合いは、日本馬にはない、欧州の香りがします。
翌7月13日(火)には「セレクトセール2021/当歳セッション」が開催される。先日種牡馬引退が発表されたハーツクライの、ラストクロップとなる当歳馬たちが登場。しかし、ハーツの仔は3頭と数に限りがあり、2021年生まれは、ロードカナロア、ドゥラメンテ、エピファネイアの産駒たちが、押し出される形でこの世代を牽引。せりの取引の柱となるのだろうか。
割って入ればキズナ、派手さはないが着々と種牡馬リーディングの上位に食い込んでいる。個人的には、今年の当歳は、モーリス産駒のデキがかなりいいようにも思うし、ドレフォン産駒は、2歳から当歳まで、金太郎あめみたいに、みんなソックリな仔が多いなぁ(笑)。
初日(1歳セッション)のサトノダイヤモンド、リアルスティール、マインドユアビスケッツ産駒たちを気に入った人は、2世代目となる当歳をどう見比べ、眺めるのだろう。
しかし当歳セッションは、どう考えても確たるエース不在。混迷、混沌…… ならば新種牡馬にアタック。
オープニングの301番にレイデオロ産駒・ファイネストシティの2021を置いたのは、新しい何かにチャレンジする姿勢を、皆に問いかけているのかもしれない。なるほど、レイデオロ産駒は16頭が上場予定、気合が入っています(笑)。
ブリックスアンドモルタルも、次期社台グループの切り札にと期待されている一頭。日本に輸入が決まった時から胸躍り、一日も早く産駒の姿を目で見てみたいと思っていた。ニューイヤーズデイは、父も産駒も悠々とがっちり、そして骨太。ダート中距離シーンを息長く席巻する、砂の横綱に君臨するかもしれない。
スワーヴリチャード、シュヴァルグランの仔は、想像していたよりフックラとして丸みがあり、アルアイン、カリフォルニアクローム(日本供用としては新種牡馬)の仔など、当日朝の事前下見で、じっくりと眺める予定でいます。
2021年生まれを境に、これからは持込馬やマル外(外国産馬)の台頭も十分に考えられる。第一にAmerican Pharoah、次いでFrankel。Saxon Warrior やJustifyの仔たちも、しっかりと目に焼き付けておこう。
注記:金額は、全て税抜金額
注記:2021年6月23日時点での情報を基に作成
ライタープロフィール
丹下日出夫(競馬評論家)
「ホースニュース馬」を経て現在は毎日新聞本紙予想。POG大魔王の通称も定着している。