セレクトセール2021

セレクトセールの歴史

セレクトセールは、サンデーサイレンスである

セレクトセールの主催者である日本競走馬協会のホームページ「セレクトセールとは」の冒頭に、以下の一文が書かれている。
「セレクトセールは、従来は市場に登場することがなかった良血馬を上場させることにより、サラブレッドの開かれた流通体制を創り上げました」
この「良血馬」が指すのは、主にサンデーサイレンス産駒であるのは間違いない。

サンデーサイレンス

サンデーサイレンス

1994年にデビューしたサンデーサイレンスの初年度産駒たちは、中央の2歳戦だけで30勝、うち重賞を4勝と鮮烈な数字を残すと、翌1995年には皐月賞(ジェニュイン)、オークス(ダンスパートナー)、日本ダービー(タヤスツヨシ)とクラシック3勝を含むGI・4勝の活躍で、わずか2世代の産駒だけでリーディングサイヤーを奪取。以降、13年連続でその座を守り続けた。

距離や条件を問わず、そして2歳戦から古馬まで、どのカテゴリーからも活躍馬を輩出するサンデーサイレンスは、配合された牝馬を“名牝”としていった。また、繁殖実績や良質な血統背景を兼ね備えた繁殖牝馬との間に生まれた牡馬は、安定して優秀な競走成績を残しただけでなく、引退後は種牡馬としての価値を見出されて、さらにサンデーサイレンスの評価を高めていくことになった。

せりに出てくる前、サンデーサイレンス産駒の多くは、「庭先取引」というオーナーと牧場間だけでの直接の取引で売買されていたのだが、その評価を取引価格という“数字”で示したのが、セレクトセールであるのは間違いない。

第1回セレクトセールは1998年に開催。1歳、当歳合わせて230頭が上場され、取引総額は48億5100万円を記録。そしてサンデーサイレンスの産駒は、当歳セッションで6頭のミリオンホース(購買価格1億円超)が誕生した。

それ以降も、サンデーサイレンスの産駒たちは、セレクトセールの主役を務め続ける。11頭のミリオンホースが誕生した「セレクトセール2000」では、「フランクアーギュメントの2000」が、当歳市場の取引馬としては当時の世界最高額となる3億2000万円で落札された。

また、マンハッタンカフェが2001年の菊花賞を優勝し、セレクトセール取引馬としては初めてのGIウイナーとなると、その後もセールで取引されたサンデーサイレンスの産駒たちは、毎年のようにGIレースを勝利。それは“GI馬が上場されている競走馬市場”としての、セレクトセール自体の評価を高めていくことにもなった。

その後も「ダンシングキイの2002」こと、後のトーセンダンスが3億3500万円(セレクトセール2002)、「セトフローリアン2の2003」こと、後のフサイチジャンクが3億3000万円(セレクトセール2003)と、産駒たちが総じてミリオンを超える取引がされていくなか、サンデーサイレンス産駒にしては一際小柄な牡馬だった「ウインドインハーヘアの2002」が、7000万円で取引されていった(セレクトセール2002)。その馬こそが、後のディープインパクトだった。

セレクトセールは、ディープインパクトである

2004年にデビューしたディープインパクトは、まさに空前絶後の活躍を続け、2005年には21年ぶり史上2頭目の無敗の三冠馬となる。その後も引退までに通算14戦12勝、うちGI・7勝という日本競馬史にその名を残す活躍を残したディープインパクトは、2007年にスタッドインすると、翌年の「セレクトセール2008」に36頭の産駒を上場させる。

すると、そのうち31頭が売却され、「ビワハイジの2008」こと、後のトーセンレーヴが2億2000万円で落札。産駒の落札額の合計は、キングカメハメハが2006年の初年度産駒上場時に記録した17億4500万円を上回る、19億1000万円に達した。

ディープインパクト

ディープインパクト

2002年にサンデーサイレンスが16歳で亡くなった後も、リーディングサイヤー上位にランキングされていたダンスインザダークやアグネスタキオン。そして、「セレクトセール2006」で当歳市場における世界最高額を大幅に更新する6億円で落札された「トゥザヴィクトリーの2006」を送り出したキングカメハメハ、といったトップサイヤーたちが支えてきたセレクトセール。だが2008年以降は、取引額でも証明されたように、話題の中心が、ディープインパクトへとスライドしていく。

産駒のレースでの活躍を受けて、ディープインパクト産駒の評価はさらに高まっていき、ミリオンホースどころか、ダブルミリオン、トリプルミリオンの取引馬を送り出していく。

セレクトセールの取引馬からも、GI馬が続々と誕生。2世代目の産駒ディープブリランテ(セレクトセール2009/当歳セッション)が2012年の日本ダービー、3世代目の産駒ラキシス(セレクトセール2010/当歳セッション)が2014年のエリザベス女王杯、4世代目の産駒ミッキーアイル(セレクトセール2012/1歳セッション)が2014年のNHKマイルカップ、2016年のマイルチャンピオンシップに優勝し、セールでの評価は絶対的となっていく。

そして、「セレクトセール2017」の当歳セッションに上場された「イルーシヴウェーヴの2017」こと、後のアドマイヤビルゴが、セレクトセール史上2番目の取引額となる5億8000万円で取引。ディープインパクト産駒は、毎年のように総売上額を更新する、セレクトセールの核となっていく。

2019年にディープインパクトが17歳で亡くなり、その翌年、「セレクトセール2020」は、10頭以上のディープインパクト産駒が上場される最後の競走馬市場となった。その中で、「シーヴの2019」が、セレクトセール全体でも史上3番目の高額となる5億1000万円で落札。競走馬名はショウナンアデイブと決まり、今からデビューが待ち遠しい。

その一方で、次代のリーディングサイヤー候補と言える新種牡馬の産駒たちが毎年のようにセレクトセールには上場されており、昨年の当歳セッションでは、ディープインパクトの子であるサトノダイヤモンド(セレクトセール2013/当歳セッション)の初年度産駒が高い評価を受けた。セレクトセール出身馬は、続々と種牡馬入りし、セールを牽引する存在となりつつある。

『セレクトセールは……』

次にこの言葉に入る競走馬は、まだデビューを果たしていないセレクトセールの取引馬、ひょっとしたら今年の上場馬の中にいるのかもしれない。

注記:金額は、全て税抜金額
注記:競走馬市場における落札金額の順位は、全てせり当時のもの

ライタープロフィール

村本浩平(競馬ライター)

北海道在住の“馬産地ライター”として、豊富な取材をもとに各種競馬雑誌で活躍中。

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