セレクションセール2020

セレクションセールの歴史

セレクションセールに「選ばれる馬」を生産していく。この目標を抱きながらサラブレッドの生産、そして管理を行っていくことが、日高の馬を強くしていった。

2001年から始まったセレクションセールは、今年で20回目の節目を迎える。セレクションの名の通り、せりに上場されるのを許されるためには、まず選考委員会が定める「血統基準」をクリアする必要がある。その後には委員会の人間による「実馬検査」で合格しなければいけない。

血統基準をクリアするためには、ブラックタイプ、産駒実績と優秀な繁殖牝馬を所有する必要がある。配合する種牡馬もまた、リーディング上位にランキングされているか、未来のリーディングをにぎわすような、新しい種牡馬を選択するのが最善だという結論に達する。

実馬検査をクリアする前段階としては、健康な産駒を誕生させるべく、母胎の栄養管理から始めなければならない。無事に誕生した産駒も昼夜放牧などで運動量を増やしていくだけでなく、飼養管理も平行して行い、ボディコンディションの整った馬を作り上げながら、来たるべき時へと備えていく。

そこまでしてセレクションセールに「選ばれる馬」を目指していく理由。それは、HBA(日高軽種馬農業協同組合)が主催する定期市場において、産駒1頭あたりの平均価格や売却率、そして高額馬の落札額など、セレクションセール取引馬の数字が抜けているからである。

セレクションセールに上場を認められた1歳馬は、それだけでブランドとしての価値を有する。そして、その波及効果は、同じ牧場の生産馬たちにももたらされていく。選考基準には達しなかったものの、セール上場馬と同じ管理をされた馬たちもまた、優れた外見的評価を有することになり、それがサマーセールといった市場における高い評価へとつながっていくのだ。共に放牧地を駆け巡ったことで身についた体力と精神力は、その後の競走生活にも生かされていく。結果として選ばれる馬を作っていくことは、強い馬作りにもつながっていくことになる。

ダイアトニック 2020年函館スプリントS

ダイアトニック/2020年函館スプリントS
「セレクションセール2016」1歳(3240万円)

昨年から今年にかけて、セレクションセール出身馬は目覚ましい活躍を残した。昨年春の牝馬クラシック戦線を沸かせたシゲルピンクダイヤは、牝馬三冠最終戦の秋華賞でも3着に善戦し、今年に入ってからも牝馬重賞戦線を沸かしている。昨年のスワンSで重賞初制覇を果たしたダイアトニックは、今年の高松宮記念でも3着に入り、先日の函館スプリントSで重賞2勝目をあげた。

今年に入って、日経新春杯で重賞初勝利をあげたモズベッロ、そのレースで3着だったエーティーラッセンも、セレクションセールの取引馬となる。また、一昨年の取引馬だったディープボンドは、皐月賞に出走を果たすと、続く京都新聞杯で重賞初制覇。日本ダービーにも出走してコントレイルの5着に入っている。

ディープボンド(左)2020年京都新聞杯

ディープボンド(左)/2020年京都新聞杯
「セレクションセール2018」1歳(1782万円)

こうした活躍馬を送り出した牧場は、近年、総じてブリーダーズランキングも上げてきている。それはセレクションセールの取引馬だけでなく、生産馬全体がレベルアップしている証とも言えよう。

新型コロナウイルス感染症による影響で開催が延期となった今年のセレクションセールだが、せりまでに与えられた充分な期間は、上場馬たちの魅力をさらに引き立たせる時間ともなったはず。このセレクションセールに「選ばれる馬」たちは、改めて購買者から「選ばれる馬」にもなっていく。鑑定台の前に立った時に、その評価がどこまで高まっていくのか、そして、高い評価に応えていくであろう、競走馬としての活躍にも注目してもらいたい。

文:村本浩平

ライタープロフィール

村本浩平(競馬ライター)

北海道在住の“馬産地ライター”として、豊富な取材をもとに各種競馬雑誌で活躍中。

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