セレクションセール2019
セレクションセールの歴史
憧れと目標は違う。日高の生産者にとっての憧れが、生産馬の日本ダービー制覇とするのなら、生産馬がセレクションセール上場馬に選定されることは、1つの目標と言えるのかもしれない。
今年、血統基準(近親にグレードレースといった、重要度の高いレースでの勝利馬がいる。そして、種牡馬ランキング上位の種牡馬が配合されている)をクリアしただけでなく、セレクションセール選考委員会による実馬検査をクリアした上場馬の数は、僅か242頭だけとなっている。つまりセレクションセールに上場を志す生産者は、種牡馬を決める段階から配合を吟味し、産まれてきた馬を実馬検査までにしっかりと管理していく必要がある。
近年ではコンサイナー(セリまでの期間における、上場馬の管理代行を行っていく)に生産馬を預けることで、その労力こそ多少は減っている。それでも当歳時の管理どころか、母体からのコンディション作りが、良馬生産に繋がっていることは間違いない。
その生産者の努力は売却率や落札額としても現れている。昨年のセレクションセールでは193頭の1歳馬が上場され、うち149頭が落札。売却率は同じHBAの主催する選抜市場として開催された、サマープレミアムセール(本年度は休止)の77.4%に及ばなかったものの、それでも77.2%というハイスコアを記録。売却総額の21億7440万円(税抜)は、過去3番目の売り上げとなっている。
売却率、総売上額ともに、過去最高の売り上げを記録した一昨年よりも数字を落としたのは、もう一つの選抜市場となったサマープレミアムセールへ良質馬だけでなく、購買者の関心も流れた影響もあったように思われる。その意味では唯一の選抜市場として行われる今年は、過去最高の売り上げも充分に期待できる。
その後押しとなりそうなのが、セレクションセール出身馬の、近年における競馬での活躍である。昨年の京成杯を制して、皐月賞と日本ダービーにも駒を進めたのが、2016年の取引馬であるジェネラーレウーノ。その後はセントライト記念にも優勝して菊花賞にも出走し、見事に牡馬クラシック三冠出走を果たした。同じ2016年の取引馬では、ラジオNIKKEI賞の勝ち馬である、メイショウテッコンも菊花賞に出走しており、今年の日経賞で重賞2勝目をあげている。
また、2017年の取引馬からは、今年の桜花賞とチューリップ賞で2着となったシゲルピンクダイヤ、函館2歳Sで2着となったラブミーファインなどがGI戦線を沸かせた。3歳ダート戦線でもダンツキャッスル、ニューモニュメントと重賞まで手が届きそうな馬も出てきており、今後も更なる活躍が期待できる。
今年の上場馬を見ると、血統基準で選ばれたと言えそうなのが、この1歳世代が最後の世代となるサウスヴィグラス産駒や、ダイワメジャー、ハーツクライ、ハービンジャーとリーディング上位にランキングされる種牡馬の産駒たち。また、未来のリーディングサイアー候補と言える、ルーラーシップやロードカナロア産駒もずらりと並んだ。
その一方でこの2歳世代が初年度産駒となるキズナやエピファネイアもいれば、この1歳世代が初年度産駒となるドゥラメンテ、マクフィ、モーリス、リオンディーズの産駒もラインナップされている。この辺は生産界の未来像にもアンテナを張り巡らせている、購買者のニーズを見込んでのことと言えるだろう。
この1歳世代が初年度産駒となる種牡馬の中に、その名を記したのがホッコータルマエ。 そのホッコータルマエもまた、セレクションセールの取引馬となる。 競走馬としての実績は勿論のこと、キングカメハメハの後継種牡馬としても産地での評価は高く、今後も多くの産駒がセレクションセールに名を連ねてくるに違いない。
同じくセレクションセール取引馬のGIホースであるビッグアーサーも、今年誕生した初年度産駒が1歳を迎える来年は、多くの産駒が上場してくるはず。今や、未来の種牡馬が取引される競走馬市場ともなったセレクションセール。今後の生産者や市場関係者にとっての憧れではなく目標は、取引馬の日本ダービー制覇であって欲しい。
※金額は、全て税別金額