セレクトセールの歴史

今年の日本ダービーのポスターのコピーとして使われた､｢それは7071分の1の奇跡｣との言葉｡しかしながら､セレクトセール出身馬に限ってだと､｢それは474分の1の奇跡｣となる｡

ホースマンや関係者の誰もが目指す､ダービー出走となれば､その奇跡の確率はまだ下がる｡ダービーを制したロジャーバローズを含めた､2016年産まれのセレクトセール取引馬は389頭だった｡

うち､フルゲート18頭にその名を記したのは､6頭(アドマイヤジャスタ､ヴェロックス､サトノルークス､ランフォザローゼス､リオンリオン､ロジャーバローズ)となる｡ ダービーに出走できる｢389分の6｣の確率は､もはや奇跡というよりも､夢をこの手で掴める数字のようにも思えてくる｡

しかしながら､この389頭の中には､牝馬クラシック戦線を沸かせた馬もいれば､芝のスプリントやマイル戦線の頂点に立った馬､そして未来のダート重賞戦線の主役になろうかという馬もいた｡

阪神JFを制したダノンファンタジーを含めて､こちらもセレクトセール出身馬7頭(エールヴォア､シャドウディーヴァ､ジョディー､ビーチサンバ､ラヴズオンリーユー､フェアリーポルカ)が出走した今年のオークス｡勝ったのは2016年に誕生した牝馬で最も高い落札額となる､1億6000万円で取引されたラヴズオンリーユーだった｡

昨年の朝日杯FSと今年のNHKマイルCを制して､3歳世代の最強マイラーとなったのがアドマイヤマーズ｡このNHKマイルCの4着馬のダノンチェイサーは､きさらぎ賞の優勝馬でもある｡また､兵庫ジュニアグランプリを優勝して､全日本2歳優駿でも2着となったデルマルーヴルは､その後､UAEダービーにも出走｡
世界の強豪を相手に4着入着している｡

GI馬となったロジャーバローズ､ダノンファンタジー､ラヴズオンリーユーの3頭に共通しているのが､父もまたセレクトセールの取引馬である､ディープインパクトの産駒であること｡また､ランフォザローゼスの父であるキングカメハメハ､そしてアドマイヤジャスタとヴェロックスの父であるジャスタウェイも､セレクトセールの取引馬となる｡

今年で22回目を迎えたセレクトセール｡1歳セクション､当歳セクションを合わせた取引馬の総数は6320頭となるが､そこからは52頭のGI馬が誕生しているだけでなく､ディープイパクト､キングカメハメハに代表されるように､今や種牡馬の父として父系を構築している種牡馬たちも送り出されている｡

まさに日本競馬界の縮図であり､日本生産界の源ともなっているセレクトセール｡今やそこに､｢世界も注目する競走馬市場｣としての称号も与えられたとも言える｡

奇跡では無く､夢を掴むためのコストは決して安くは無い｡しかしながら､ディープインパクト産駒の1頭辺りの平均価格が1億4423万8400円だった､2016年当歳セクションにおける､ロジャーバローズの取引額は7800万円｡
それ以上の価格を提示すれば､今年の日本ダービー馬を手にできる可能性はあった｡勿論､クラシックといった3歳戦だけでなく､今年のヴィクトリアマイルを制したノームコアなど､古馬となってから大成する馬も､取引額を問わずに続々と現れている｡

今年､上場を予定している1歳馬は244頭で､当歳馬は223頭｡その中からはほぼ間違いなく､数年後のクラシック出走馬がいるだけでなく､GI馬やクラシックホースが現れ､そして､日本生産界にその名を残していくようなスターホースがいるはず｡

良血馬の見事な馬体に感嘆のため息がこぼれ､高額落札馬の誕生に驚愕と興奮の拍手を送る｡その光景が繰り広げられる二日間こそが､セレクトセールなのだ｡

この日､セリ会場に入るホースマンやバイヤー､そして､我々のようなマスコミといった関係者だけでなく､TV中継やインターネットでセリを見つめる皆さんもまた､セレクトセールの参加者である｡今年も目の前で繰り広げられる様々なドラマへの心の準備を､共にしてもらうとして､最後に以前の日本ダービーのポスターで使われた､このコピーをモチーフにした言葉を贈りたい｡

｢セレクトセールへようこそ｣

※金額は､全て税別金額