セレクトセール2018
丹下日出夫のセレクトセール日記
7月9日(月)|7月10日(火)
2018年のトップバッターは、ハーツクライ×サマーハ。半兄のシャケトラは、日経賞など4勝をあげている目下現役馬。ビロードのような、独特なシャケトラの皮膚感が好きだというファンも多い。
セリとは、そうした血統馬に対する自分の好みを堂々主張できる場所。
もちろん、まず最初に、好みに合うだけのお金を持っているかどうかが前提となりますが(笑)、落札価格は1億3500万円ですか。
もしかして、今年のセリも凄いことになっちゃうのかなぁ。史上最高価格をつけた前年を超える、とんでもない展開になるかもしれない。
次いでルーラーシップ×ブルーミングスノーが、3200万円で落札。ロードカナロア×エルダンジュは5200万円、ジャスタウェイ×アシュレイリバー4500万円と続き、中堅どころの人気種牡馬たちの子供は、ここらあたりの価格を目安に推移するだろうか。
でも、ディープインパクト産駒の大駒が登場するまでには、まだ時間がある。しずしずと時間が流れていくのかなと思っていたら、上場番号13番の母ミスセレンディピティが2億4000万だよ。
なるほど父はキングカメハメハ。ここ数年は産駒頭数自体が少なく、セリに出せる数も限られていたが、そうか。舞台さえ整えば、ディープに対抗する西の横綱。このくらいの値段をつけて不思議はないんだよね。
ちょっと待った。種牡馬リーディングではハーツクライも、横綱昇進も近い大関。26番のライフフォーセールは2億3000万で、その存在を主張。ハーツの胸前、背中や腰の造りが好きだという人も多い。
しかし、21番のディープ×キングスローズの登場で、会場の空気が一変。母はニュージーランド3歳牝馬チャンピオン。全兄サトノアーサーはエプソムC優勝。この血統の皮膚感を、どう伝えてあげればいいのだろうと、この兄弟をみるたびに思う。
次いで33番サファリミス。母はアルゼンチン・1000ギニー制覇。アルゼンチーナの子供たちは目下、サッカーのメッシ級の人気者。つるりとした首、腹回りも丸い黒鹿毛は、ディープのニューモデル。日本ではこれが二番仔、今のうちに、1億1500万円で落とせるのなら手をあげておこう。
50番のブルーミンバーは、今年の桜花賞4着馬トーセンブレスの全弟。52番のジンジャーパンチは、ルージュバックの半弟。父がマンハッタンカフェからディープになるのなら、1億9000万円のお値段も納得か。
71番のノヴァホークは、仏4勝(仏1000ギニー4着)。ブハブハと鼻息荒い、大ぶりな青鹿毛。75番のオーサムフェザーは、全兄スーパーフェザーが青葉賞3着。妹は寄り道などせず、まっしぐらに桜花賞・オークスロードを歩ませたいと、購買者なら絵図を描くだろう。
それをいうならリッスンでしょ。全姉タッチングスピーチは、エリザベス女王杯3着。全兄ムーヴザワールドは共同通信杯3着。クラシック、GTが欲しかったなぁ。
弟は1歳現在、430キロ前後の中型サイズ。眼光鋭く歩様もしなやか。兄弟の中では一番ではないかと、個人的には思う。
アゼリ、ドバウィハイツ、ナイトマジックの血統とシルエットを追い続けよう。ホットチャチャの機敏さ、ラッドルチェンド、シュガーショックの可能性を買いたい。スピード感なら、ウォッチハーでしょ。
なんて、今年の1歳ディープインパクト産駒は、私は、このお父さんのシルエットの影響が濃いスマートなタイプが好き。いや僕は、骨格が大きくて黒くて、肉厚なこちらがいいよ。
何故か本年は、1頭に何人もが手を挙げ、嵐のように集中して値が上がるのではなく、2〜3人がタイミングを計り呼吸を読みながら競っていく。「好みのディープ」を、それぞれがシェアする形で進んでいった。
ワタクシ的には、ディープは、21番のキングスローズかなぁ…。兄たちも、超美顔だったが、本年の1歳は腹構えが大きく、広い額をして賢そう?
いやいや、ハーツクライ×ソーメニーウェイズは、今日の全頭の中で一番好き。来年のPOGのドライチでいくと、ひそかに握りこぶし。
戦い終わって日は暮れて、気が付けば夕暮れ。本日一番の肉体派キズナ×マイスウィートベイビーで大団円。
100番を過ぎたあたりから、1億円の馬を数えるのはもうやめた(笑)が、ふう。平均価格は4585万円。売上合計は96億7450万円。新記録を更新だ。
※金額はすべて税抜き
ライタープロフィール
丹下日出夫(競馬評論家)
「ホースニュース馬」を経て現在は毎日新聞本紙予想。POG大魔王の通称も定着している。