セレクトセール2016

丹下日出夫のセレクトセール日記

7月11日(月)|7月12日(火)

セレクトセール2016

二日目の当歳セールは、ロードカナロア×シーズオールエルティッシュで幕開け。半兄は当セール出身のアドマイヤオウジャエルノルテや、現3歳のエルビッシュ(白梅賞勝ち)など、堅実な兄弟が揃っている。この一族は馬体のラインの品の良さでも知られているが、父ロードカナロアを代表する当歳馬として、トップバッターとして登場だ。

新種牡馬ジャスタウェイは、305番のレイズアンドコールが、まずは初お目見え。引退して二年になる、父の馬体のシルエットを探りつつ見ていたが、同馬だけでなく、全体像は父にジャストフィットした仔が多い。

その父ハーツクライには、ハーツの独特の良さもあるけれど、ハーツよりも気性は穏やかで、産駒たちにバラつきが少ないように思う。

ちなみに、レイズアンドコールの落札額は4700万円、購買者はジャスタウェイのオーナーでもあった大和屋さん。いやいや、おしゃれなことをやってくれます。

それ以降も、ジャスタウェイ産駒は、3000万円超えの馬が続出。当歳からこうしたハイレベルの展開は、生産者と購入側が、お互いに自信のようなものを共有しあえているというか。本年だけではなく、来年や再来年を見据えたビジョンを描き、信頼関係を築くことにつながり、2〜3年後の産駒たちも、本年の価格帯が基準になると思う。

ひとつ先輩のルーラーシップは、そうした流れを作ってきたと、昨日の1歳セリの所感でも記したが、322番のアゲヒバリの祖母は、あのトゥザヴィクトリー。セリの前から父と母の両方をミックスしたような、馬っぷりのよさが評判になっていたが、8400万円で落札。今年の当歳セリは、トゥザヴィクトリー一族というか、フェアリードール系がいっぱいいる。

オルフェーヴル産駒の最高価格はプリティカリーナの1億円、リュヌドールが4200万円。ホーエールキャプチャは、さすが血統馬だけあって、身のこなしが実に機敏。シャムロッカーは、身体も心もゆったりとして伸びやかな、豪ダービー馬の息子です。

さて、ディープインパクトの当歳は、328番にイルーシヴウェーヴが登場。つい昨日の1歳セールに上場された全姉は、5400万円で落札されたが、当歳は牡馬のぶん、ひと回り馬格があり、そのスケール感が2億8000万円の評価を得た。

346番のファイナルスコアは、本馬が初仔。母の血統には、イタリア重賞馬が名を連ねた、ピッカピカの黒鹿毛牝馬です。357番のセリメーヌは、仏4勝(G3:2勝)。四肢のしっかりした、こんな背中の長いディープ産駒も最近多くなった。

409番のリトルブックは、母がドナブリーニの妹。そっと見続けていると、なんだかジェンティルドンナにソックリに見えてくるから不思議。

378番のカンビーナは、個人的にだが、下調べの段階からかなり期待していた馬だった。いざ実馬を見て、これぞ完璧なディープ。当歳時で、これほどバランスの取れた、父のシルエットを受け継いだ仔というのを、初めてみたような気がする。2億3000万円でハンマーが落ちた時は、久しぶりにコーフンしてしまいました。

もちろん、サトノダイヤモンドの弟マルペンサも、首〜背中〜臀部にかけてのライン、脚の長さや歩き方も、兄そっくりで、ほぼすべてのパーツが出色。額の流星もダイヤモンドに似ている。2億円を超え、1000万がビットされるたび、一人二人と声が遠くなっていったが、最後は本日最高価格の2億8000万円。ワールドエースの全弟・マンデラは2億4000万円でハンマープライス。

キタサンブラックの菊花賞・天皇賞(春)制覇もあるからだろう。ディープの全兄ブラックタイドの仔が何頭か上場されていたが、マラコスタムブラダドライアッドは馬体も歩きも推進力と迫力がある。

歩かせると面白い仔なら、ディープブリランテ×エピックラヴですか。惚れ惚れとする、こんな歩きをする馬もいるから、当歳セリは面白い。

当歳セリというのは、値付けにしても、買う方にしても、毎年だがお互いが手探りではあるけれど、終わってみれば68億1150万円の大商い。二日間を合わせて149億4210万円にはビックリ。

来年はいったい、どんなセリになるんだよ(笑)。

※価格はすべて税抜き

ライタープロフィール

丹下日出夫(競馬評論家)

「ホースニュース馬」を経て現在は毎日新聞本紙予想。POG大魔王の通称も定着している。

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