社台ファーム
東礼治郎場長、石井猛調教主任、正岡稔調教主任インタビュー

「社台ファーム、ノーザンファーム関係者だけでなく、ファンの方々も楽しんでくれたら」

昨年、重賞20勝を超える快進撃を見せた社台ファーム。
特に現4歳世代の活躍は目覚ましく、天皇賞(秋)を制したマスカレードボール、オークスを制覇したカムニャックが世代を牽引した。
その他にも、ジャンタルマンタルやダノンデサイルがGI戦線で主役を張り、2026年も社台ファームから明るい話題が届けられることは間違いないだろう。
インタビューに応じてくれたのは、昨年から引き続き、牡馬担当の石井猛調教主任と牝馬担当の正岡稔調教主任。現3歳世代も、新潟2歳Sと共同通信杯を勝ったリアライズシリウスを筆頭に、多くの実力馬を輩出している。
POGファンも気になって仕方ない、期待の2歳世代について直撃した。

日本ダービーは惜しい2着でしたが、マスカレードボールの昨秋の活躍は目覚ましいものがありましたね。

石井調教主任

ありがとうございます。素直に嬉しいです。牡馬を担当している以上、種牡馬を目指せる素材を出すことは大目標ですので、今後も慢心せずに頑張っていきたいですね。

ジャンタルマンタルやダノンデサイルなど、「大レースに強い社台ファーム」というイメージが定着してきたように思います。

石井調教主任

そう言っていただくのはありがたいのですが、まだまだ取りこぼしも多いとも思っています。最近、正岡さんと一緒に他の育成牧場を見学しているのですが、勝ち続けている牧場は、良い意味でクレイジー≠セなと感じました。

正岡調教主任

そういう意味では、牡馬側がクレイジー≠ノギリギリまで攻めているので、牝馬もその姿勢を取り入れながら進めています。まだ試行錯誤の段階ですが、スタッフ個々の意識がレベルアップして「もっと勝ちたい」という気持ちが、もっと強くなれば、結果は自ずとついてくると信じています。

石井調教主任

牝馬の動きを見ていると、即効性はなくとも、地道な努力は決して無駄にならないということがよく分かります。

その努力が、昨年のオークス馬カムニャックに繋がったのですね。

正岡調教主任

近年は牡馬のGI勝利が目立ち、牝馬のクラシックもしばらく遠ざかっていたので、本当に嬉しかったですね。秋華賞も期待していただけに(敗戦は)残念でしたが。

前哨戦での強さを見れば、さらなる飛躍が期待できるはずです。さて、現3歳世代のここまでを振り返っていただけますか。

石井調教主任

やはり2歳GIを獲れなかったのは悔しいですね。我々は2歳重賞で結果を出してこそだと思っているので、まだまだ課題は多いと感じています。

ただ、2歳重賞は3勝を挙げています。

石井調教主任

サウジアラビアRCを勝ったエコロアルバ、新潟2歳Sのリアライズシリウス、そしてキャンディードですね。

中京2歳Sを勝ったキャンディードは、前回のインタビュー後に石井主任から「この馬は走るから!」と教えていただき、急遽撮影させていただいた馬でした。巻頭のカラーパドックでも大きく取り上げました。

石井調教主任

近藤厩舎長の見立て通りでした。結果に結びついたことは大きな自信になりました。実際、すごくバランスの良い馬で雰囲気がありましたし、私自身の相馬眼の自信にもなりましたね。

リアライズシリウスについても聞かせてください。

石井調教主任

昨年の今頃は、もう山元トレセンに移動していました。早期移動できるほど動きは良かったのですが、正直、POG向きの(早熟な)タイプだとは思っていなかったんです。背が高く脚も長くて、少し奥手な面もあったので。それだけに新馬戦、新潟2歳Sでの強い勝ち方には驚かされました。

牝馬に関してはいかがですか。

正岡調教主任

数字的に満足はしていません。アルテミスSを勝ったフィロステファニには期待していたのですが、故障で引退……。無事に走り切れる馬を作る大切さを痛感しました。2020年産の成績が非常に良かったので、毎年そこを超えることを目標にしています。

それでは、今年の注目2歳馬について伺います。まずはお2人のイチオシを教えてください。

正岡調教主任

僕はマゲバ24(父コントレイル)ですね。乗った時の背中の感触が抜群でした。

半兄マゲバスピードも安定して走っていますね。さらなる活躍が期待されています。

正岡調教主任

それ以上の大物になると期待しています。あと面白いのは、ミックスセールで購入したチェリーコレクト24(父コントレイル)です。

チェリーコレクトの名前は、毎年のようにノーザンファームで聞いていました。評価はいかがですか。

正岡調教主任

乗り心地が最高です。これまでノーザンファーム育成で走っていた血統を、社台ファームで育てるとどういう結果になるか。純粋に楽しみですね。

王道を歩みたいメンディド24

石井調教主任

僕はメンディド24(父キタサンブラック)を挙げます。冬を越して体がギュッと締まってきたので、王道を歩んでくれると思います。

それでは、いよいよ各厩舎長のオススメ馬を紹介してください。(コメント/石井調教主任)

・岡部智幸厩舎

アンナミルト24(父ナダル)
ダートのマイル前後が主戦場になりそう。秋に2勝目を挙げ、来年のUAEダービーを目標にしています。

ダイワダッチェス24(父キズナ)
キズナ産駒らしくなく、スラッとした体型でスピードがありそうです。

デロングスター24(父マカヒキ)
最初は華奢でしたが、冬を越してグッと筋肉が付きました。手応え抜群で、坂路も楽に上がってきます。

メンディド24(父キタサンブラック)
父の産駒らしく雄大な馬体をしています。走りも力強くパワフルです。

・宇田川皓祐厩舎

レッドミラベル24(父ベンバトル)
リアライズシリウスの半弟。兄は大人しかったですが、この仔は少し違うタイプ。長めの距離が合いそうです。

ワントゥワン24(父ロードカナロア)
血統通りマイル前後があって良そうです。完成度が高く、しっかりした動きをしています。厩舎長も相当な自信を持っていますよ。

・近藤哲也厩舎

ターフドンナ24(父コントレイル)
強めの調教でも2ハロンしっかり動けており、背中の感触も良く、操縦性が高いですね。俊敏さがあり、近々移動を予定しています。

シェーングランツ24(父エフフォーリア)
少し小柄だったのですが、調教を重ねるにつれ、馬体に張りが出てパンプアップしてきました。動きも力強くスピード感があります。

・後藤夕輝厩舎

ウィケットキーパー24(父スワーヴリチャード)
体幹が強くなり、芯の入った走りをするようになりました。近々移動予定です。

トップデサイル24(父ホットロッドチャーリー)
半兄ダノンデサイルと同じ厩舎長が担当しています。兄とはタイプが違いますが、背中が良く、坂路の動きもかなり良いですよ。

・古賀直人厩舎

カンビーナ24(父キタサンブラック)
春にかけて肩回りの筋肉がひと回り成長しました。血統的に中距離から長距離での活躍を見込んでいます。

ゲッレールト24(父シスキン)
シスキン特有の筋肉質な馬体。前向きな性格が受け継がれており、坂路でもしっかり動けています。

・工藤祐也厩舎

ラヴィンジャー24(父ルーラーシップ)
パワーとスタミナのバランスが良い。長く良い脚を使ってくれそうなタイプ。

コンペティションオブアイデアズ24(父キズナ)
コンパクトな体型ですが、体の使い方が上手。推進力のある走りが魅力です。

・田邊義明厩舎

アルテミスハート24(父マテラスカイ)
幼さは残りますが時計は出ており、千葉セリでも注目の1頭です。雰囲気のある馬ですね。

タケショウメーカー24(父サンダースノー)
持ち込み馬ですが動きが良いですね。気性も良く、総合的にまとまっています。

・丹羽崇智厩舎

シトロプシス24(父クリソベリル)
見栄えのする馬体。追い切りを重ねて筋肉の厚みが出てきました。

オメガインベガス24(父サトノクラウン)
前向きな気性で、全身を使った動き。適性は中距離だと思います。

石井主任ありがとうございました。続いて牝馬についてお願いします。(コメント/正岡調教主任)

・佐々木孝嘉厩舎

デアリングエッジ24(父エピファネイア)
肉付きが良く、父らしい前進気勢があります。トモの蹴りも良く、夏デビューを目指します。

トロワボヌール24(父サートゥルナーリア)
バランスが良く、背中の柔らかさが特徴。反応とスピードの乗りが良いです。

・増井竜弥厩舎

カルティカ24(父コントレイル)
芝のマイルから中距離向き。走りたい気持ちが溢れていますが、焦らず秋口のデビューを予定しています。

ノットオーソリティ24(父マインドユアビスケッツ)
闘争心剥き出しのパワータイプ。ダートのマイルから中距離あたりが良さそうです。

・岸上薫厩舎

ベストロケーション24(父ホットロッドチャーリー)
パワフルなフットワークが長所です。芝・ダート問わず短距離での活躍を期待。秋始動の予定です。

・本多泰成厩舎

キャーントストップ24(父ポエティックフレア)
とにかく走りが軽いですね。オンとオフの切り替えができますし、阪神JFを意識できる1頭です。

・弥吉正泰厩舎

インディアマントゥアナ24(父イスラボニータ)
ジャンタルマンタルの半妹。柔軟性と軽やかなフットワークが際立っています。伸びしろは相当大きく、夏の新潟を目指します。

Win the War24(父Flightline)
筋肉量が増え、力強いシルエットになりました。ダイナミックで推進力のある走りを見せています。

・朝日清隆厩舎

ゴージャスランチ24(父モーリス)
完成は先かもしれませんが。スピード能力が高いです。持久力で勝負するタイプになりそうです。

フラッシングジェム24(父アドマイヤマーズ)
心肺機能が非常に優秀ですね。体幹が強く、精神面も牝馬にしては肝が据わっています。

・溝口直樹厩舎

ソラリア24(父レイデオロ)
芝の長距離向き。もう少し体に幅が出てくればさらに良くなります。秋デビューを予定しています。

・広瀬成彦厩舎

ノヴァホーク24(父キズナ)
馬格に恵まれ、日に日に力強さが増しています。早期デビューからクラシックに乗せたい1頭です。

最後に東場長、現3歳世代の感想と次世代への手応えをお願いします。

東場長

長年やっていると、良い年も悪い年もありましたが、今は悪い時でも「光が射している」と感じます。当然、良いときでも課題は見つかっていますし、全体がうまく噛み合っていると思っていますよ。

すでに多くの2歳馬が山本トレセンに移動しているようですし、順調さがうかがえます。それと同時に鈴鹿トレセンの活用も進んでいますね。

東場長

鈴鹿ができて2年目になります、試行錯誤しながらも結果が出ていますね。2歳馬に関しては、状態の良い馬をすでに山元トレセンに送り出せていますし、明るい話題を届けてくれるはずです。

両主任は「東場長の明るさが成績向上の秘訣」とおっしゃっていました。

東場長

(吉田照哉)社長も「仕事は楽しくやらないとダメだ」という考えの人ですしね。鈴鹿も馬房をフル活用できていますし、関東馬が中京や小倉を使う際の拠点とするなど、さらに機能していくでしょう。昨年の猛暑も、空調設備のおかげで夏バテせずに乗り越えられました。もう安心して送り出せます。

新種牡馬との相性の良さも際立っています。

東場長

千葉セリを通じて種牡馬の動向が見えてくるという側面もありますね。新種牡馬を走らせるというのは、千葉セリがもたらした副産物かもしれません。

先ほど、正岡主任からチェリーコレクト24の話が出ました。この馬が社台ファームでどう成長していくのか、興味津々です。

東場長

面白いですよね。社台ファーム、ノーザンファーム関係者だけでなく、ファンの方々も楽しんでくれたらと思っています。

米挑戦も夢じゃないアンナミルト24

最後に、東場長のお気に入りの1頭を教えてください。

東場長

すでに名前が挙がっていると思いますが、私はアンナミルト24(父ナダル)ですね。これは走ってくれないと困ります(笑)。ダート馬として、ケンタッキーダービーを目指してほしいですね。スキーキャプテン以来の挑戦を夢見て、私はアメリカに行く気満々です!

今年もありがとうございました!